お爺ちゃん賢者は王宮に呼び出しを喰らいました。
何故、呼び出されたのか……
お楽しみに。
この悪趣味な家も、その内改修せねばな。
そんなことを想いながら、儂は新しい屋敷を後にした。
「精々死ぬんじゃないよ~♪」
スキュラがまるで死刑宣告のようなことを言ってくる。
儂は顔を引き攣らせながら手を振って屋敷の庭から出る。
もはや転移から一日が経過しており、既に太陽は空で紅く燃え上がっている。
照り付ける日光を肌で感じながら、目視で見える金ピカの王宮へと移動する。
歩きながら転移魔法の魔力をため込んでいた儂はふと思った。
「なんで儂呼び出されたのじゃろう……?」
儂は転移の次の日から早速、王から呼び出しを食らっていた。
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「堅苦しい礼儀は面倒じゃ。顔を上げろ」
「ハハッ!では……」
顔を上げて見えたのは、そこそこ作りがいい端正な顔をした壮年の男だった。
一時期は王であることを隠し、冒険者として名を上げたらしい。
腕の筋力の膨らみはいまだ衰えを見せておらず、儂の頬を冷や汗が伝う。
この者にはまだ勝てない。
久々に感じる、生理的な死の恐怖だった。
「そちを呼んだのは他でもない」
処刑でもされるのだろうか。
そうなったら儂は死ぬしかないじゃろう。
いざとなったら王宮ごと焼き払って逃げ出すことも考えていたが、この王がいる限りそれは不可能だ。
「俺と―――」
ああ、王の一人称は俺なのか。
そんなどうでもいいことを考えながら、次に発せられる言葉を予感して冷や汗を垂れ流す儂。
既に片目は恐怖で閉じられ、片目は逃走経路を必死で窺っている。
「勝負してくれんか?」
「…………………………………………は?」
予想外の申し出に、儂は口をパクパクさせて呆然としてしまった。
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「いくぞ元賢者」
「……何故それをッツ!?」
いきなり秘密をばらされ、動揺する。
幸い、周囲には誰もいない。
ここは王都裏の訓練場だ。
連れていかれるにあたり、必死の抵抗をしたのだが抵抗むなしくここまで引き摺られてしまった。
「そんなもの、ステータスを覗けばすぐ分かる。俺に相応しい能力を引き出せることもな」
ステータス?初めて聞いた言葉じゃな。
じゃが、決して儂に良いものではあるまい。
「ほら、来いよ」
ここまで来たらやるしかない。
儂はそう腹を決めて、初手必勝とばかりに【原生簒奪】を放った。
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今後もよろしくお願いします。