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お爺ちゃん賢者の分家のカムが反乱を起こしました。

次回はオール戦闘かな?

 村人地獄は、あの後数日間に渡り続いた。


 儂の行くところすべてが村人という名の中ボスに溢れていた。


 ぶっちゃけラスボス魔王より厄介だった、とだけ言っておこう。


 「……ふぅ」


 思い出したくもない回想を終え、よっこらしょとベンチから起き出す。


 ちなみにベンチの設置も儂のアイディアじゃ。


 まだまだ完成品とは言えんがの。


 「今日は収穫祭、かぁ……」


 今日の予定をふと思い出し、思いっきり顔を歪めて不快感を表す。


 またあの中ボスの群れに突っ込むのかと思うと吐き気が止まらんわい。


 


 しかし問題はそのあと起こるひと騒動だ。


 儂は既に察知している。


 「……本当にいいのか兄者?」


 「何の話だ?」


 儂の問いにしれっと答える兄者。


 分家の者は既にスタンバイを終えている。もちろん追尾魔法もつけた。


 今夜は忙しくなりそうじゃ。





        ****





 「「武闘大会やってるよ!!!開始は午後三時から!!」」


 一生懸命声を張り上げ、受付を取っているのは治癒師のオバチャンの息子である、武器屋経営のゲイルじゃ。


 鍛冶を少し嗜んでいるだけあってその体つきは凄いの一言に尽きる。


 「おい村長の次男はやらねえのか?箔付けにもなるぞ?」


 何度も武器屋を見に行くうちに仲良くなったゲイルとはもはや敬語抜きじゃ。


 それにしてもなかなか策士じゃのぉゲイルは。


 箔付けとはいいことを考えよる。


 「俺は村長家はクレイに継いでもらいたいからな。村人への示しだ」


 いやいや兄者と争う気はないぞ。


 無駄な戦いが起きるからな。


 「いや、お前知らないのか?村の有力者会議では、お前んとこの両親がお前に家を継がせる、って明言してるんだぜ?分家筆頭のカム以外は全員が賛成だ」


 ……知らなかった。


 てか駄目じゃろ両親、何考えとるんじゃ。


 アホだアホだと散々言い続けてきたが、流石にここまでとは思いもせんかった。


 「……だから兄者を担ぎ出したのか……」


 本家筆頭は分家を優遇することは無い。


 今のうちに恩を売っておいて後で甘い汁を吸おうと、そういうことかカム。


 「じゃ、ゲイル。武闘大会への参加を頼む。」


 「おし分かった。また後でな!」


 三時までは武闘大会は開かれない。


 ここでゲイルとはいったん分かれて、ほかの屋台を見ることにした。





         ****




 武闘大会一回戦、二回戦、三回戦と相手になるほどでもなかった。


 流石に殺しはダメなようなので、錬成で足元を縛って両手の掌で黒焔、背中に雷を纏わせて後ろで魔暴嵐テンペストを起こしたら、大体が白目で泡吹いて救急搬送されて試合終了。


 あっけない終わり方じゃ。


 そして今始まろうとしている四回戦――対カム戦は、そうはいかない。


 噂によると、カムというのは相当な実力者らしいからのう。


 ここまで儂と同じく、一切の反撃も許さず勝ち上がってきたようじゃ。


 「今夜は楽しくなりそうじゃな」


 儂は声をかける。


 「……ッ何故それを……」


 意表を突かれたような表情で慌てて答えるカム。


 その姿が、真実を雄弁に物語っていた。


 「では試合、始め!」


 まずは手始めに。


 「【黒焔】」


 今度は見せかけでなく、しっかり魔力を込めて光速で射出する。


 儂の全力全開での射出能力は音速を凌駕し、光速にすら並びうるのじゃ。


 これを簡単に止められるか?





 「……クソッ【犠護の朱印】!発動!」


 暫く経ってから、防御アイテムが展開される。


 【犠護の朱印】は、文字通り一回だけ何があろうと身を守る朱印だ。


 今回はネックレスに仕込んでいたようじゃな。


 「お主、これが限界か?貴重な【神具】まで使うとはそういうことかの?」


 儂はカムを煽る。


 冷静な奴にはほとんど効果はないじゃろうがの。


 「やってくれるな次男坊……」


 悔しそうに呟くカム。


 ざまぁ、じゃな。


 




 「だが、貴様は一つ計算を違えた!重大なミスだ」


 暫く経って再び威勢よく声を張り上げた。


 ミス?はて?


 何の事じゃろうか、皆目見当もつかない。


 「俺たちの襲撃計画は夜じゃない!昼だってことだよォ!」


 なんだそんなことか。


 「やりますよ嫡子様!」


 「「【転移珠玉ポータルオーブ】発動ォッ!!」」


 いきなり神具使いおって。


 何考えとるんじゃこの馬鹿、魔力暴走起こるじゃろうとの忠告はとりあえず後回しだ。


 内心毒づきながら、辺りを見渡す。


 リングにいたカムの胴体から、祭りの端っこにいたと思われる兄者の体から大量の紙が排出される。


 それらは次々と実体化し、近隣の人々に襲い掛かった。


 流石に殺しまでしたら村人がいなくなってしまうため縛って無力化だけのようだ。


 「これに対応できるか?」


 勝ち誇ったような笑みとともに、愉悦がこもった声を儂に向け、去っていったカム。


 「もちろんじゃ」


 本当は昼に実行計画を練っていた?


 そんなこと知らないとでも思ったのかの?


 儂は余裕の表情でどっこいしょ、と立ち上がった。

 

 楽しくなりそうじゃ。


 

 

 


 


  




ブクマ有難うございます。

出来れば評価もしてくださるとうれしいですぅ……

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