お爺ちゃん賢者は村人にドン引きしました。
村人怖すぎ。
よっぽどの事でない限り、アンチマテリアルは封印しよう。
その決心を固めたのは割とすぐだった。
非実体弾銃でも、そこそこの威力は確保できそうじゃしな。
何より、連射性能はこちらのほうが断然高い。
……さて、銃はこのくらいにして、別のものの開発に移ろうじゃないかのぉ。
無事、区画整理は終わったようじゃし、儂は農民関係ではもう関わらないようにしよう。
そういうのは父にやらせておけばよいのじゃ。
儂がすべきは、現時点での勢力拡大及び、村の立て直しじゃの。
そのためにはどうすべきか。
次に開発する物は、というとそれは機動武装である。
銃に搭載したAIだけの性能では心ともないのと、狙撃精度を上げる為だ。
しかしこの武装を作るためには、しばしの期間を必要とする。
地球とやらから持ってきたAIを解析し、【自由意思】を確立させるための時間だ。
その間は……
「反乱の種でも毟り取っておこうかのぉ」
ニヤリ、とかつての魔王が心底怖がった謎の笑みを浮かべる。
本人の自覚はないだろうが、この世界に来てから、というか世界を渡ってからお爺ちゃん賢者の力は格段に上昇している。
クレイは現在七歳となり、転生からすでに一年の月日が経っていた。
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儂は、農業の見回りを父に申し付けられて近隣の農村を見て回っていた。
儂が銃を作っておる間、農場の区画整理は順調に進められていたらしい。
見た感じだと、農場全体がカクカクしており農作業もしやすそうじゃ。
季節は夏の終わり。
いまにも収穫できそうな大きな実をつけた野菜たちが自己主張するかのように大きく畑へと居座っていた。
……しかしどうも、父が『この政策はクレイが開発した』と言いふらしたせいなのか……
村の様子がおかしい。
「クレイ様!そのご尊顔を崇められる日をどれだけ心待ちにしていたことか!」
「クレイ様!あなたは神の御子に違いない!」
どうしてこうなったんじゃ。
儂は体が小さいことをいいことに、周りの大人に体をがっちりホールドされてされるがままになっていた。
やめろ儂はそっち系の趣味は無いんじゃぞ、と言おうとしたら口まで塞がれた。
呆然とした様子で、村民の賛辞を一身に浴びている儂。
もはやクーデターレベルじゃぞこれ。
しばらくして周りが静寂に包まれ、何か小さな物体が集団から飛び出してくる。
「クレイ様のおかげだよー」
そう言って飛び出してきたのは、同じ年齢くらいの少年だ。
その両手には、野菜がたくさん握られていた。
ふむ、やはり少年は癒しじゃな。
村人地獄から一時の開放を得た儂は、一人安堵する。
「ウオォォォォォォオオオ!!!」
そしてその気分を絶妙なタイミングで粉々に粉砕したのは野太い男の声。
そのまま、体をがっちりホールドされる。
持ち上げられて……
「やめろオオオオォォォォォオ!?」
所詮小さな子供である儂は完全に夜空へと投げ出された。
凄い速度で数十メートル近く上昇した儂は村人への腹いせもかねて、儂を受け止めようとしている村人の群れにディフェクトマテリアルを撃ち込んだ。
もちろん威力は軽め、速度にいたっては論外レベルまで落として。
そうしたら撃ち落とした場所に村人が群がってきた。
「ァアッ!!!……」
「グフッ……心地よい痛み……」
「私にも当ててください!」
「僕にも!」
「はあぁ……気持ちイイ」
最後の奴は恍惚とした表情で儂の知らない世界へと沈んでいった。
もちろんそいつには連射性能を最大限まで開放して二百万発ぐらいぶっ放してやった。
もはや怒りを通り越してキモい。
この村民たちはキチガイなんじゃろうな。
すべての村民がこうでないことを一心不乱に祈るお爺ちゃん賢者の姿が、教会で目撃された。
ブクマ有難うございます。
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今後もよろしくお願いします。