お爺ちゃん賢者は七歳になりました。
一応七歳です。
とぼとぼとぼ……
落ち込みながら、家へと帰りの道を急ぐ。
威力制御が出来なかった。
下手に魔力圧のジャイロ回転なんか起こそうとするからじゃ。
自分でも問題は分かっていた。
「でもさぁ。あんなに威力が出るとは聞いてないんじゃぞぉ……」
勇者へと心の中で猛烈な批判をする。
「すごーいこの黒いの!」
快活モンスターことシルはこんな時でも元気じゃ。
沈んだ心にちょうど良いビタミン剤だの。
鼓膜を本当に破りに来ているのかと思うほどのアホみたいな声量はどうかと思うが、最近の儂の癒しはこれぐらいしかない。
遠くの遥か地平線の小島で、勇者集団が困り切っていることも知らずに、呑気にスローライフな爺さん賢者。
勇者の誘いの手は、飛竜の速度に乗って着々と爺さんへと向かっていた。
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「おぉシル!久しぶりだな!……と、クレイお前か」
「ラルク兄ちゃん久しぶり!ねぇ兄ちゃん、クレイがね、すごい発明したんだよぉ!」
「……ックそうかシル。クレイは凄いなー……ッチ」
露骨な舌打ちが、儂を射抜く。
ふん!四天王や魔王の威圧に比べればカス以下でしかないわ(基準が違うw)
「それはそうとシル。今度遊ばない?」
兄者がシルを誘う。
兄者はシルとあったときはいつもこんな感じだ。
何故なら……
「ごめんクレイと遊ぶ!」
そういって銃を握りしめ、恍惚の表情を浮かべるシル。
もうそれやるよワシは疲れた……と言おうとしたところで兄者の視線がすっと固まる。
「……っそうかシル。じゃ、また今度な」
畑仕事をしていた兄者は、なぜか走って家へと戻っていく。
その背中はどこか、悲しそうであった。
「……ふむ」
単刀直入に言うと、兄者はシルに好意を持っておる。
尋常じゃないくらい、な。
それが拒否されたとなると、ショックは大きいじゃろうなぁ……
儂も若いころはよくやった。
これで兄者が成長してくれればいいのじゃが……
実の兄を見る目線が、限りなく親に近いお爺ちゃん賢者であった。
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「今回の研究の成果はどうだったのクレイ?」
夕食中、食べ物を口に運ぶ動作を止めて両親が聴いてくる。
こういうところは二人とも行動が揃うんじゃの。
不思議じゃ。
「今回は成果という成果はあまりなかったの。【銃】という兵器による大幅な火力確保をしたかったのじゃが」
「威力が出すぎなくて失敗したのか?」
兄者が嘲笑交じりに問いかけてくる。
「いや、逆じゃ。威力が出すぎて海蒸発させてしもうた。島もおそらく何個か吹っ飛んどるじゃろうな」
ええーーー!!!みたいなオーバーリアクションな表情で両親は驚く。
リアクション大きいなこの二人。
暫くはこういった研究が続きます(五話ぐらい)
収穫祭と二つのイベントを一気に持ってくる予定なので、お楽しみに。