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FILE4:初仕事

「さ、着いたわ…。早く中に入って、孤児さん」

使用人は目の前の扉を重たそうに開けた。

その扉は長年誰も開けていなかったらしく、取っ手や表面に埃がたくさん覆い被さっていた。

使用人が開けた扉は、かなりの量の埃をセリウス達に撒き散らした。

「ゴホッゴホ!!こ、孤児って言うのやめて下さい師匠!!!何度言ったらわかるんですかっ???」

セリウスは埃を吸ってしまったのか、咳き込みながら言った。

「ふぅ、床の掃除もしなくちゃいけなくなっちゃったわねぇ…」

しかし使用人はセリウスの言葉を完全無視し、掃除が増えた事に不満を抱いている。

そんな自分の師匠に、セリウスは今度は良く聞こえるように、大声で叫んだ。

「師匠!!!!!」

使用人は機嫌悪そうな表情…というよりも、面倒くさそうな表情を浮かべて、セリウスの方に振り返る。

「はいはい、つべこべ言わずにさっさと中に入る!!」

そういって使用人はセリウスの背中を後押しした。

「えっ…ちょっ…師匠っ!!!!キャァァ!!!!」

セリウスはなすすべもなく、埃まみれの部屋に飛び込み、見事にずっこけた。

セリウスは半身を起こして頭を振った。埃は彼女を取り巻くような感じで漂っていた。

「師匠〜!!!いきなり背中を押すなんて酷いですわ!!」

そういい、セリウスはキッと使用人を睨みつけた。

しかし、振り返った先には使用人の姿はなく…変わりに空っぽのバケツと、雑巾が置いてあった。

(…これをどうしろと??)

セリウスはそれを見て、目が点になる。

(師匠に詳しい使い方を教えてもらわなくては!!)

セリウスは急いで埃まみれの部屋を出て、使用人を捜す。

「あっ!いましたわ!!」

セリウスの目が使用人を捕らえた。

使用人は雑巾で床を拭いていたのだった。

使用人はセリウスの気配を感知したのか、一旦床拭きをやめて、彼女の方を振り返る。

「アラ、孤児さん…どうかしたの??」

「師匠!!バケツと雑巾の使い方をちゃーんと教えて下さい!!!それと!孤児じゃなくてリウスですわ!!」

セリウスは頬を膨らませながら使用人にそう言った。

「雑巾の使い方って言われてもねぇ…」

使用人は腕を組んでため息をつく。

しばらくして、使用人は何か思いついたのか、手を打って言った。

「初回は特別サービスとしとこうかしらね??」

「特別サービス??」

セリウスは不思議そうに首を傾げた。

それを見た使用人はニヤリと不適に笑い、腰に手をあてて言った。

「そ、特別サービスよ。さぁ、してほしい??してほしくない??どっち??」

セリウスは返事に困った。

「早く言っちゃいなさいよ」

使用人が急かすようにセリウスに言う。

「…師匠、でも」

「さっさとする!!!!!」

「ハィィ!!!」

使用人の物凄い気迫に圧倒されつつも、セリウスは言った。

というか、もうそれ意外の答えしか見つけられなかった。

「じゃ、じゃあ…特別さびす…して欲しいです」

セリウスが言い終えたと同時に使用人はにんまりと微笑む。

「その言葉を待っていたわよリウス!!」

「あはー…」

セリウスは苦笑した。

(そんなこと言ってますけど…全て計算通りなのでしょう??師匠…)

使用人は人差し指をバケツに向けて何か言葉を唱えた。

すると空っぽのバケツの底からどんどん水が溢れ出て来た。

「うわぁ…」

セリウスは思わず感嘆の一言をあげる。

バケツの水が8分目ぐらいまで溜まると、使用人は指を引っ込めてセリウスを見た。

「もしかして…魔法見るの始めて??」

「はい!!!本で何回も何回も魔法が出てくるお話は読んだことありますが、まさか本当にあるなんて思いませんでしたわ♪」

セリウスが瞳をキラキラさせて使用人を見る。

「………本??」

ピクリ、と使用人がその本という言葉に反応した。

そしてセリウスを品定めするようにして足下から頭上までぬかりなく見た。

「!!!!!!」

使用人は何か恐ろしいものでも見たのか、セリウスから後ずさって行く。

「あ、あのー…?」

セリウスは一体突然どうしたものかと、使用人を不思議そうに見た。

使用人は今にも消え入りそうな声で言った。

「あ、申し訳御座いません…セリウス……さ、ま……」

(………………ぇ??)

その言葉を聞いたセリウスは固まった。

暫くの沈黙。

しかし沈黙はそう長く続くものではない。

耐え切れなくなったセリウスは沈黙を破り、使用人に言った。

「ど、どどどどうして私がセリウスだとわかったのです?!」

心の中で「完璧な変装のハズですのに!!」と付け足したセリウスはあり得ないあり得ないと首をふるふると振る。

使用人はさっきと態度がガラリと変わり、深々と頭を下げていた。

「ああ、セリウスさま!!!あなた様をぞんざいに取り扱ってしまった私めをお許し下さい!!」

「ゆ、許します!!許しますわ!だからどうか顔をあげてください」

セリウスは慌てふためいて使用人に顔をあげるようにと促す。

が、使用人は顔をあげることなく、ただただ何度も何度も謝っている。

一体どのくらい説得したのか分からないほどセリウスが説得すると、ようやく使用人は顔を上げてくれた。

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