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FILE1:脱走

「でも、どうやって旅へ??」

1人の少女は何か考え事でもしているのか、さっきから部屋を右往左往している。

少女の名はセリウス。

そしてここは、彼女の自室。

セリウスは部屋をキョロキョロと見渡す。「何か…何か…」

セリウスは落ち着きのないような様子で、あっちを見たりこっちを覗いたりした。

しかし、なかなかどうしてか、彼女のお目当ての物は見つからないようで、希望に満ちた顔には、いつの間にか影がさして行った。

「やっぱり不可能ですわ…、旅なんて」

セリウスはふぅっと溜め息をつくと、上等そうなソファに、深々と座り込んだ。

そしてセリウスは自分の部屋を浮かない顔で見渡した。


セリウスの部屋は、部屋というよりも、音楽室に近い。

赤絨毯の上には、白いグランドピアノ。

余程お気に入りなのか、ピアノの上には可愛らしい動物のぬいぐるみが何体も置かれている。

グランドピアノは、絨毯の影響で白さが目立ち、とても美しく、輝いて見える。奥には、埃こそ積もっているが、トランペットやホルン、グロッケン等がある。

机の上には、作曲をしているのか、音符が途中までしか書き込まれていない、5本線が引いてあるノート。

そしてここにも、動物のぬいぐるみ。

セリウスはぬいぐるみがとても大好きなようだ。

ソファの端の所にも、片手サイズの動物のぬいぐるみ。

窓の近くのカウンターにも、ぬいぐるみが並べられている。

…どうやら彼女は、自分の気に入っている場所にぬいぐるみを置いているようだ。


「あら…窓側の子達がお日様に焼かれてしまいますわ!!」

セリウスはソファから立ち上がると、いそいそと窓へ行って、全開になっていたカーテンを閉めて、ぬいぐるみ達に光が当たらないようにした。

途端、部屋が暗闇に包まれる。

「お日様の光を遮ってしまえば、室内は当然暗くなってしまいますわね…」

セリウスは苦笑すると、今さっき閉めたばかりのカーテンを再び、渋々と言った感じで開けた。

部屋はさっきの明るさを取り戻した。

「眩しいですわ…アナタ達、眩しいでしょうけど、少し我慢してて下さいね」

セリウスはなるべく急いで、窓側。ぬいぐるみ達を、直射日光の当たっていないソファに並べた。

セリウスは並べ終えると、安堵のため息をついた。

「ふぅ…ひとまずこれで、一件落着ですわ」ぬいぐるみをソファに並べたため、セリウスは座れなくなってしまった。

「…久し振りに作曲でもして、和かな一時を堪能するのも悪くないですわね」

セリウスはおもむろにその様な事を口にすると、作曲場へよ向かった。

セリウスは作り途中の楽譜を手に取ってみる。

「…いっそのこと、最初からやるのもいいですわね」

セリウスはペンを取り出すと、ノートにスラスラと詞を書き出した。



和かな日々のある日のこと 森の声が聞こえてきた



鳥のさえずり 心が澄み渡る



しかし何日かすると それがピタリと止んだ



不思議に思い 森へと足を運んでみる



するとそこには 目にした光景



とても 信じられないもの



翼の生えた 1人の人間



人間かどうかも 分からないけど



何となく その人間は


いつものあの 鳥のようで



鳥のようで…



鳥のようで…



「とりのようで…それからどうしましょうか??」

スラスラと軽快な調子でペンを走らせていたセリウスの指先が止まった。

「…そうですわ!!」

セリウスは突然立ち上がったかと思えば、窓側を希望の目をして見つめた。

「窓から抜け出して旅へ出ればいいんですわ!!何でもっと早く気づけなかったのでしょう??」

セリウスは窓の方へゆっくりと歩いて行った。

「ついに、ついに旅をする方法を見つけましたわ!!!!」

セリウスは窓側のカウンターにしっかりと手を置き、少々興奮気味で、窓から身を乗り出す。

しかしその途端、彼女の表情が曇った。

「結構この部屋高いですわ…」


ここセリウスの部屋は、実は4階。

従って、この部屋から旅立とうとすれば、

…それなりの覚悟が必要であろう。


「…もっと低い位置に部屋を設けておけば良かったですわ…」

セリウスはしゅんとなり、力無く机の椅子に座った。

「窓が駄目なら…後は??」

セリウスは作りかけの曲、詞を脇に寄せ、一冊の本を本棚から抜き取って、机の上に置いた。

本の表紙には、[冒険書]と書いてある。

セリウスはそれをパラパラとめくり、適当にページを開いた。

章のタイトルは「旅の基礎知識」となっている。

セリウスはそこに書いてあることがらを読んでみた。

記述してあることがらは、5つ。



1.両親に迷惑を一切かけないこと

2.仲間を大切に

3.旅立つ際の抜け出し(脱走等)は難易度up!!(関連記事37P)

4.武器は必須 あればお金も

5.世話になった人達(宿の人等)には感謝を忘れず!!





「関連37P…?見てみましょうか」

セリウスは書かれている通り、37Pを開いた。

そして、読んでみること約数10秒間。

「………!!!!!そうですわ!!!!これを試してみましょう!!!!」

セリウスは元気よく立ち上がると、前持って準備した物をバッグに詰め込み、部屋を出た。

「しばしのお別れ…、また帰って来ますわ」

セリウスは自分の部屋の扉を、名残惜しそうに見つめた。

見つめること、ざっと3分。

「こ、こんなんじゃいけませんわ!!!」

セリウスはハッと我に返ると、急いで部屋から遠ざかった。

(今度こそ本当に、行って来ますわ!!!!)

セリウスはそう心の中で決め込むと、二度と振り返ることなく、長い廊下をずんずんと歩いて行った。



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