2. 先輩(仮)のランチタイム
キンコンカンコン。
学校で響くチャイムのような音が社内に響き渡る。
これがうちの会社の昼食休憩の合図であり、
この直後社内のほとんどの人々が食堂へと向かう。
食堂に続く中央の通り道に一斉に入りだす人々の列に僕も入り込み、
いつもと同じように、今の自分の抱えている仕事の状況について考え始める。
もう、昼かぁ。期限はまだ先だけど、
言われた仕事そろそろ終わらせないとマズイな。
さすがに、あの量の仕事に対してどんだけ時間かけてんだよって感じだよなぁ。
それに..
頭の中で自分への不甲斐なさがとめどなくあふれ、
食堂券売機まえまで来ると、
テンションはもう下がりきれないとこまで下がっていた。
食券購入後食堂のおばちゃんにそれを渡し、カレーを受け取り、
いつもの同期が集まっているテーブルに向かう。
「おつかれっす」
「おぉ。今日も疲れてんな。」
「いや、そうでもないよ」
このくだりは何回目だろうか、わりと新人のころからやっている。
彼は篠田浩二。
僕とは違い院卒で、自分とは違う部署にいる開発設計部門の技術者である。
彼の部署は残業がかなり多く、土曜も来ることがあったりと、
正直自分より絶対疲れているだろう。
このくだりをするたびに、
「こんな疲れた顔のやつをよく会社は採用してくれたもんだ」と疑問に思う。
「えっ、絶対疲れてるでしょ。流し台の底の方の生ごみみたいな顔だし」
「さすがにひどくない!?」
思わず最後、裏返った甲高い声でつっこみをいれる。
この人とは思えない言葉を平然と吐き出したふとっちょが蒲田優一。
やつの部署も残業が多く、そのストレスを俺にぶつけてきている気がする。
うん、絶対そう。
「優しい人になってほしい」という親の願いがこもった名をさずかったのに、
実に親不孝者である。
「やめろよ、蒲田。ちゅうさんは生ごみなんかじゃないだろ。
生ごみなんかじゃなよな。な。ちゅうさんは生ごみなんかじゃないぞ。
ちゅうさん生ごみじゃない!!ちゅうさんは...」
大きな声で言わないで、ほんと頼むから。
周りにいる先輩とか同期の女子がこっちちらちら見てるから。
めっちゃいじめられてるみたいになるからね、まじで。
完全に煽っている感じになっているが、
至ってまじめに正義を貫こうとしている長身のっぽで
目鼻立ちがはっきりした彼は沢渡祐樹。
彼はいわゆる優等生なやつなのだが...
自分の正義を貫こうとあまり周りが見えていなくて、こんなことになる。
ほんとやめてほんと、もういいから。
「そういや、沢渡のとこは新人入るの?」
話を変えるために、僕は沢渡に話題をふった。
「えっ...あぁ入るよ、院卒の北海道出身の男の子が一人。」
「やけに詳しいな。どこで知ったの?
メールでそんな情報とんでこなかったと思うし。」
「二週間前にさ、ほらおれらが新人の頃もあっただろ『新人と先輩の交流会』。
あれがあって、先輩側で参加したんだ。
そのときにさ、仲良くなって今一緒にLUINやっててこれっ。
それで知ったんだ。」
沢渡は上機嫌にスマホを僕に見せる。
その画面には「先輩の部署にきまりましたよ~」というメッセージと、
なんか知らんキャラが親指立ててるスタンプが押されていた。
彼のコミュニケーション能力の高さにはほんとに関心する。
「へー。あれやったのか、すげーな」
「屋鳥も一緒にやったんだよ、なっ。」
「まぁ」
普段は僕の次にあまり話さない背が低く、声も低い彼は屋鳥。
好きなアニメとか漫画の話になると饒舌に話す。
どこか自分に似たものを感じている。
「そういや、屋鳥の部に新人は来る?」
「来るよ、女の子が。
...それがさぁ、可愛いじゃなくてすごく美人なんだよ。
なんていうかやまとなでしこ的な。
ギャルって感じの可愛さとかじゃなくて、どちらかというと聖女というか、
すべてのものを包み込む人類の母というか。
まさか理系であんな美人な女の子がこの世界にいるとは思わなかったよ。
「彼氏絶対にいるだろうな」と一般の人は思うかもしれないけど、
オレは美しすぎて、逆にいないのではないかなと思っている。
いや、絶対そうだよ。俺がなんで知ったかっていうと、
部長と課長がトイレから出てきて新人の話をしてたのを聞いてさ。
新人の名前を知ったら、思い出したんだよ。
そういや、交流会でひときわ輝く女の子がいたなと。
そうその時俺は確信したんだ、彼女と俺は...」
二次元キャラの話のように三次元女子のことを饒舌に話すこんな屋鳥を
初めて見てる。...正直唖然である。
偏った思考が多々ある話だが、彼をここまで言わせる女子とは恐るべし。
気になる。まっでも、他の部署だし僕には関係ないだろうがね。
あと、なんで彼もこの会社に採用されたのか...疑問である。
とても遅れてしまい、申し訳ないです。
それと文章また長いです。一分じゃダメかもです。すみません。
次回投稿は早めにしたいと思います。
何卒、よろしくお願いします。