第25話 ナニーニャの森
ジニーの訓練を終えた翌日、俺たちは農村への巡行を再開させた。次の村までは割と距離があったので少々馬の歩みを速め、昼を大分過ぎた頃に目的の村に到着した。この村でもお決まりの農地改良と治水を行って、農民たちに感謝されながら一晩過ごした。
翌日、この巡行の最後の目的地であるルースベルの街に向かった。ルースベルは人口500人ほどの大きな街でこの辺りでは最も栄えている。その理由はルースベルの街に隣接するナニーニャの森の存在に依るところが大きく、この街は領内で指折りの要所と知られている。
ナニーニャの森はアルケリア王国で1、2を争うほどの良質な木材が取れることで有名だ。街では採れた木材を加工して楽器や家具を作製し、国内はおろか他国にも輸出して高い評価を受けている。そのため、ルースベルの街で作った木工品はヴァンフォール領唯一の特産とも言えた。特に楽器の作製技術が非常に高く、街にはその秘伝の技術を伝えている工房がいくつも構えている。この工房の価値を代々の領主たちは理解しており、職人や技術の流出が起こらないように非常に気を遣っていた。
そして、領主が気を遣うのは人だけではない。それは森を守る大地の上位精霊ナニーニャの存在だ。精霊ナニーニャに関しては街の人々も非常に気を遣っている。ナニーニャ森は決して人のモノではなく、木材の伐採、植林といった森に対する行為は全て精霊ナニーニャに許可を貰いながら行っている。ここ200年ほどは特に問題もなく、人と精霊が良好な関係を維持している。
しかし、以前は色々と問題が発生していた。それは人と精霊の認識の違いが起因していたころが多かった。例えば、苗木の成育環境をよくするために周りの雑草を除去したり、ある程度大きくなった樹木に対して栄養などを集中させるため間伐などを行ったりするが、当初はこの事が精霊にとって受け入れ難いことだった。精霊にとっては雑草も間伐された木も同じ命であり、区別することが出来なかった。
これらの問題は10年ほどの時間を費やして、精霊と領民のお互いの妥協点を見出すことで両者の仲を深めていった。文官ノックスはそんな苦労の歴史をアリスに丁寧に教えていった。そしてアリスが歴史の勉強に疲弊してきたころ、ルースベルの街に到着した。
この街の主要産業が林業、加工業なので農民の数は全体の2,3割といったところ、そのため農地も大して広くない。俺はさっさとやることやるか……と思っていたのだが、農民たちの様子がちょっとおかしい。気もそぞろで作業に集中しきれていないのが一目瞭然。結構近づいたはずの俺たちに農民たちは気付きそうにない。
俺はノックスの方に振り向いたが、ノックスもこれまでと違った状況に戸惑っているのが分かる。俺とノックスの意見が一致したところで、俺は大きな声を上げてみた。
「おーい。」
ようやく俺たちの存在に気付いた3人の農民が俺たちの姿を見て、慌てて飛んできた。あれはかなりの過剰反応と言えないか。
「どうしたの? そんな慌てて。」
「ひょっとして領都からいらっしゃったお役人様ですか?」
俺がこの集団の代表者みたい話しかけてきたもんだから、一番年上のノックスの方をチラチラ見ながら顔に沢山の疑問符を浮かべて質問してくる。
「領都から来たのは合ってるけど、ここには連絡が言ってなかったの? 僕は領主の息子クルス・ヴァンフォール。農地改良に行くと連絡したはずなんだけど……。」
「あっ、そう言えばそんなお話が……。」
明らかに“今思い出した”みたいな反応をされてしまった。まぁ、俺は気にしないよ。しかし、この態度を無礼とみたリリさんから物騒な気配が漂っている。これまでの農村では歓迎一色だったから頭にきてるのだろう。そんなリリさんを無視して、俺は再び同じ質問をした。
「それでどうしたの? 農作業にも身が入ってなかったように見えたけど。」
「はぁー、その……。」
「おい、あの事を相談すればいいんじゃないか?」
「え、でも代官様に任せるしかないだろう。」
「知らねえのか、領主様の息子様っていったら精霊様を連れているって噂があったぞ。」
「あっ、そっか。」
農民たちは小声で相談しているつもりだがはっきり言って全部聞こえてくる。段々面倒臭くなってきたので、少し怒気を滲ませて3度目の質問を行った。
「それで。」
「領主様の息子様、実はこの街で大変なことが起こっているんです。」
「クルスって呼んでください。それで大変なことって?」
「少し前から森の中にいた精霊様たちがいなくなってしまったんです。」
「精霊が……いなくなる?」
「はい、木こりの連中や代官様がそれで大騒ぎしていて、今街が大変なんです。」
精霊がいなくなる。確かにこれは異常事態だ。ノックスも事態の深刻さを理解したようで、俺と同意見のようだ。
「ノックス、代官の屋敷の場所は分かっているよね?」
「はい。」
「急いで案内して。」
「畏まりました。」
「あのクルス様、代官様はこの前領都に出掛けてしまったと聞いたんですが。」
「そうか、ありがとう。」
俺たちは「お願いします!」と大声を張り上げている農民たちに背を向けて、馬を走らせた。
まずは事情を聞くため、代官の屋敷に急いだ。
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代官の屋敷に着いたが、農民の言っていた通り代官は不在だった。そこで、代官の補佐を務めている人物に事情を聞くことになった。ところが、その人はちょうど森の様子を見に行っているらしいので、俺たちは屋敷で待つことになった。
俺たちはこの屋敷に入るのを急いでいたが、やはり街の様子はおかしかった。
ルースベルの街はボロスト準男爵が代官として治めている。そしてボロスト準男爵は我が領内で数少ない爵位を持った人物。
アルケリア王国の貴族制度はこのカルディア大陸内のほとんどの国家で導入されている。そもそも貴族とは国家或いは王家に対して著し功績を上げた者に贈られる称号。貴族にはいくつかの特権が与えられ、国家の要職に就く。ボリスのように国土の一部を国王から委ねられて、国土を治める貴族のことを領主貴族と呼んでいる。
また、貴族には爵位という位階が存在する。それは上位の位階から公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、準男爵、騎士爵の7位階。この中の公爵から男爵までの爵位は世襲が許されており、その権力は普通の一国民と隔絶した差が生じた。一方、準男爵、騎士爵は形式上では同格となり、共に世襲が許されていない。つまり一代限りの貴族ということで一代貴族とも言われる。
準男爵、騎士爵に大きな権限はないが、爵位を持つ者は他の貴族と比べて圧倒的に多い。それはこの二つの爵位が名誉よりも資格としての側面が強いことに起因する。例えば国家の意思決定は王家と有力貴族の合意に基づいているが、国家の運営する上では多くの労働力が必要となり世襲貴族たちだけではとても賄えない。そこで、平民から優れた人材を募集して、文官として王宮で働く人たちに準男爵の爵位を授けている。
同様に、近衛騎士団や国軍の指揮官クラスにも同じ意味を込めて、騎士爵を授けている。実はサラも爵位を貰ったことがある。最初は騎士爵だったが、副団長のときには男爵を授かっていた。ボリスとの結婚と伴に爵位は返上したが、サラのように平民から世襲貴族になることは平民にとって憧れの一つと言えた。
そして平民たちにとって準男爵、騎士爵を授かる最大の栄誉は苗字を名乗れることだった。二つの爵位は一代限りだが、苗字は残る。つまり、苗字持ちの平民は過去に爵位を授かった証であり、平民社会では一定の敬意が払われている。
一代貴族にはもう一つの特徴がある。世襲貴族の爵位は国王のみが授けることができるが、準男爵、騎士爵に関しては子爵以上の領主貴族ならば自己の裁量で一定数授けることが出来る。つまり領主貴族も文官、武官の一部に爵位を授けて領地を運営している。
ボリスは爵位に無頓着なところがあるため伯爵の権限で授けられる上限の半分程度しか授けていない。つまりボロスト準男爵は我が領で数少ない貴族。昔、アルフォンスとの勉強の中でボロスト準男爵を褒めていたこともあった。つまりかなり優秀な人物なんだろう、じゃなければルースベルの街を任せるはずがない。
そのボロスト準男爵が街から外出して直接領都まで陳情しに行く事態。
農民たちの言っていた“精霊がいなくなった”から考えれば、ボロスト準男爵の裁量権を越えた事態というのも納得できる。それに妙な胸騒ぎがする。
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屋敷に戻ってきた文官と有力者たちの説明で状況は概ね把握できた。
まず、12日前の夕暮れにナニーニャの森で大きな音が2回発生した。これはかなりの数の住民が聞いており、まず間違いない。その日は日没までの時間が僅かにしかなかったため、ボロスト準男爵は森には入らなかった。翌日、ボロスト準男爵を中心とした少人数で森に入ったが、精霊たちはまったく姿を見せなかった。
普段なら下位精霊などは森の仲をウロウロしており、人を見つけると自分の存在を教えてくれるのだがこの日は一体も現れなかった。また人から精霊にお願いをする場合、森の中程にある柵のところまで行けば、必ず中位精霊の誰かが声を掛けてくれるはずだったのに、それがなかった。
ボロスト準男爵たちは柵のところで昼過ぎまで待ってみたが、状況が変わらなかったので一度街に戻った。そこでボロスト準男爵は屋敷に残っている過去の記録を全て洗い出して、打開策を模索した。しかし、今回の事態の解決する手掛かりは見つからなかった。ここまでに6日の時間を費やした。
その後、街の有力者たちとの会議の結果、ボロスト準男爵自ら領都に事情説明に行くことになった。出発したのが2日前、そしてそんな中で俺たちが登場した。
連絡に行くのが少々遅かった気もするが、もう仕方ない。さて、どうしよう? この問題を対処するために俺が森の中に入るか?
そもそもボロスト準男爵たちは森の隅々まで捜したわけではない。精霊との約束事として森の中心部にある精霊たちの住みかには決して近付かないことになっている。柵のところで引き返したのはこの約束を考慮してのこと。森の中心部には歴代の街の代官の中でも2人しか行ったことがないらしい。
しかし、何事にも例外はある。実は精霊の契約者ならば森の中心部まで行くことを許さている。ボロスト準男爵が領都に行ったのも領都の警備隊にいる契約者を借りるのが目的だろう。
そして、俺はこの条件に見事合致する。どうしたもんだか? 正直言って迷っている。子供がしゃしゃり出るのは良くないと思っているが、この部屋にいる街の有力者たちから期待の籠った眼差しを向けられている。
だが、そんなことよりもさっきから非常にイヤ~な予感がしている。根拠がある訳じゃない、ただの勘だ。
しかし、悪い予感ほどよく当たる。行くのが嫌じゃないだが、俺が行くと言えばアリスたちが絶対についてくる。俺一人ならどうにでもなる自信があるのだが、力を隠しながらアリスたちをフォローするには限度がある。
俺が黙って長考に入っているとアリスがその沈黙を破ってきた。
「何を迷っているの、クルス。」
「僕だって悩むときはあるよ、姉さん。」
「でも、この事件を対処出来るのはクルス以外にいないでしょ。」
「多分、お父様は警備隊の魔法師を派遣してくれると思うよ。」
「けど、カナルさんならクルスにも来て欲しいって絶対いうじゃない。」
「まぁね、でもひょっとするとお母様まで来るかもしれないよ。」
「つまりクルスはそれほどの危険があると思っているのね。」
俺の煮え切らない態度にアリスは怒ることなく、的確に言葉を重ねて俺の逃げ道を塞いでいく。
「はぁ、嫌な予感がするんだよ。」
その言葉と同時に俺は椅子の背もたれに頭を乗せて天井を眺めた。
俺一人で夜にこっそりと対処するという裏技もあるが、後で確実にばれる。ドンパチが始まれば戦闘音が街まで届き、アリスたちの乱入を許すだろう。今回は赤鬼に変装しても俺の不在を誤魔化すことができない。
もしサラが此処にいたならば迷いはしなかった。サラにはそれだけの実力と経験があり、サラが負けるような相手ならば今の俺では勝てない可能性が高い。たが、サラがこの街に来るかは五分五分。それに待っていても事態を悪化させるだけ。
腹を括るしかない。
大体、ここで知らん顔出来るくらいなら、去年の干ばつでも何もしなかった。
「行くのね。」
俺が体勢を戻すと、俺の決意をアリスは自分のことのように喜んでいる。
「ついてこないでって言っても無駄だよね。」
「クルス一人に危険なことを押し付けたりしないわ。それに……少しは覚悟も出来ているわよ。」
最後の悪足掻きは一蹴された、この前の狩りのことが完全に裏目に出たのね。
「森に入ったら僕の指示に従ってもらうからね。」
「分かってるわ。」
ノックスもリリさんも大分渋い顔したが、最終的には納得してくれた。そして俺、アリス、リリさんの三人で森の中に入ることになった。代官に仕える補佐官は道案内に立候補してきたが、足手まといだから辞退してもらった。
それに街の有力者たちは俺たちの会話から森に入る危険性を今更ながら認識したみたいで、俺たちを引き止めてくるのが面倒臭かった。取り返しのつかない事態が生じて場合、普通の領主なら叱責程度で済まないだろうし。彼らにしてみればちょっと様子を見てきてもらうぐらいの感覚だったのだろう。
早速、森の中に入って行くとナニーニャの森の雰囲気にアリスとリリさんが圧倒されている。
「すごい静かね。」
「この森にはほとんど動物もいないらしいよ。いるのは小さな動物と昆虫くらいだってさ。」
「道理で静かなんですね。それにしても立派な樹木ですね。」
「そうね、でもなんでこの森の樹はこんなにスゴいのかしら?」
「それは、この森の中心部に魔泉があるからだよ。」
「魔泉?」
「前に魔法の勉強をしているときに教えたけど、魔力はこの世界の有りと有らゆるモノに宿っている。そして自然界に存在する魔力は有限にしかない。」
話しの途中で一旦足を止めて、地面の土を一掴みした。
「けど、パルがこの土から魔力を分けてもらうと、この土の魔力がほとんどなくなるんだ。でも、時間を置くとこの土の魔力は回復するんだ。土は生きている訳でもないのに人みたい回復する。……不思議だよね、でもこの考え方は結構な数の魔法師が支持しているんだ。」
「そこで魔泉が関係してくるんだ。魔泉はこの世界のあちこちに存在している魔力が異常に涌き出てくる場所。魔泉の魔力量は異常な水準だったから回復の範疇には入らないけど、ある考え方が提案されたんだ。自然界にあるモノは常に魔力を消費して、常に魔力を生み出し続けるっていう説をね。」
「姉さん、今の説明で分かった?」
「ちょっと難しかったけど、なんとなく分かったわ。」
「そっか、この森が立派なのも精霊ナニーニャが魔泉の魔力を適切に制御しているからなんだよ、あと魔泉に長いこと留まっていると獣は魔獣化するって考えらえている。」
「えっ、そうなの!」
「まぁ、魔獣化した瞬間を見た人はいないから仮説の域を出ていないだけどね。」
「そっか。」
落胆したアリスの顔を見ると、やっぱり魔獣を倒してみたいんだなと思った。その後も緊張感の乏しいまま森の奥に向かった。
半刻(1時間)ほどで小さな柵のようなところに辿り着いた。ここまでの一本道は割と歩き易かったが、この先は道が整地されていないようだ。
「二人とも、この先は気を付けて。何が出てくるか分からないから。」
「分かったわ。」
「はい。」
そして俺たちは森の奥へと歩みを速めた。しばらく進むと周りの樹木が圧倒的な雰囲気を感じさせるモノに変化していった。森の入り口で見た樹木とは比べものにならないほど大きな樹木で、一体どれほどの樹齢を重ねているのか想像がつかない。
本来ならその樹木の雰囲気に当てられて厳かな気持ちなるところだが、先ほどから森の中にいる生き物の気配が急速になくなり、そして空には雲が掛かってきた。
不気味な雰囲気としか言いようがない。
緊張したまま1限(10分)ほど歩いていくと、一本の古木に辿り着いた。
どうやらここが目的らしく、二人は古木に近づいて行った。しかし、俺は古木の周りの大地が気になった。おかしい、本来なら此処にあるべきモノが見当たらない。大地に対して入念な魔力感知を行っていくが、やはり魔法陣がない。そんな時に。
「枯れちゃっているの?」
「見たいですね、でも不思議の感じがします。」
そう言ってリリさんが古木に触ろうと手を伸ばすが……。
「触るな!」
俺の怒声に二人がビクリと反応して、古木から何歩か遠ざかる。何か言いたそうな二人を無視して、俺は古木に手を翳す。
この古木が魔泉であることは間違いない。しかし、この古木の魔力はかなり弱い。まるで魔力が尽きかけているような雰囲気。土の精霊パルもさっきから頻りに“おかしい、おかしい”言いながら古木の周りのぐるぐる回っている。
異常事態の三連発。魔泉の枯渇、魔法陣の消失、精霊の失踪。
このまま見ているだけでは埒が明かない。俺は覚悟を決めて、この異常事態の源である古木の魔力に自分の魔力を絡ませた。
「出てこい! 隠れても無駄だ!!」
俺の突然の罵声を聞いて二人の緊張感が一気に上がり、更に俺の視線の先を追って俺たちが通った方向とは逆方向にある一本の樹木を見つめた。
僅かな間を空けて一人の男が現れた。
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「ま、まさか、魔人族だというのか!!」
「……。」
リリさんは恐らく始めて見る魔人族の姿に激しく動揺している。カルディア大陸において魔人族を見かけることはほぼ無い。ほとんどの国が魔人族の入国を禁止しているからだ。
「貴様、こんな所で何をやっている! 答えんか!!」
「……。」
魔人族はリリさんの詰問に答えることなく、俺の方を値踏みしている。魔人族の男は20代から30代前半にみえる容貌だが、当てにならない魔人族の寿命は人の倍以上と言われている。体格はボリスと比肩する長身だが割とほっそりと身体つき。マントから剣の柄が見えるので剣士のようだ。
そして、おとぎ話で語られる魔人族の特徴、薄紫の肌と黄金の瞳がこの男の存在感を強烈に印象付ける。
「小僧、何故隠れていることが分かった?」
「こっちの質問には答えてくれないくせに、質問するなんて図々しい人ですね。」
「……。」
随分と低音で威圧感のある声が俺に向けられたが、俺はどこ吹く風とふてぶてしく態度で男と接する。男は俺の嫌味に特に反応することなく、俺のことをジッと見ているだけだ。
「まぁ、いいでよ。教えて上げますよ。」
俺はなるべく傲慢に答えた……。
「そんな下手糞な隠れ方で僕の目を誤魔化そうなんて笑っちゃいますよ。なんでそんな自信満々なんですか? 自分が一番強いとか思っちゃってるんですか? まったく、その自信がどこから湧いてくるのか知りたいですよ。」
「……。」
俺の罵詈雑言に男は少々驚いているようだが、怒気は見られない。俺の挑発は失敗。むしろアリスとリリさんが俺のあまりの悪態に目を見開いている。
「二人とも前を向いて。」
「う、うん。」
俺が二人を睨むと、慌てて前を向いた。
「もういいでしょ。どうしても聞きたいなら、僕を地面に這いつくばらせてからもう一回聞いたらどうです。その時は答えるかもしれませんよ。」
これ以上の問答を無用という意味を込めて、俺は街で借りてきた安物の剣を抜く。同時にアリスとリリさんも剣を構える。
「ガキが粋がるなよ。」
その言葉を合図に戦いの幕が上げられた……、
次話は久々のドンパチです。




