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終末への旅  作者: パウエル
第2章
24/33

第23話 家族会議

 クルスたちが出掛けた翌日、ヴァンフォール家当主ボリスの執務室は少々重苦しい雰囲気に包まれている。


「さっそく始めようか。」


 ボリスが一声かけると議事進行を任された執事のアルフォンスが咳払いを一つして会議が始まる。


「それではクルス様のご様子についてのお話を進めさせて頂きます。」

「最近のクルスの様子は?」

「ここ最近は農村への農地改良に出向くことが多いですが、今回が最後のようです。」

「もうそろそろ種まき時期だからか?」

「はい、魔法による土地改良は種まき前でないと良くないそうです。」

「そうか、結局いくつの村に回ったんだ?」

「今回で西部、南部を中心に18の村でございます。」


 寒さが落ちついた時期からクルスは農村に出掛けるようになった。これは農村まで出向き、痩せた農地を魔法で豊かにしたり、灌漑用のため池など魔法で整備したりしている。もちろん村人は堆肥作りを行って農地は痩せないように気を配っているし、ボリスも領主の務めとして治水事業には定期的に予算を充てて整備に努めている。


 しかし、これらの努力も上位魔法“豊穣デーメーテール”を使いこなすクルスの力には遠く及ばない。警備隊に所属する魔法師の見たところ、クルスの地の魔法は既に宮廷魔導師に匹敵する腕前だそうだ。我が息子ながらどんでもない息子だ。クルスの魔法のおかげで今年の収穫は余程のことがない限り豊作が間違いないと言われている。


 “豊穣デーメーテール”で農地を豊かにすることは常套手段だが、非常に金の掛かる手段でもある。まず、この魔法を使いこなせる魔法師が圧倒的に少ない。王都にいる王立魔法協会と魔導師団にはそれなりの人数がいるが、その魔法師を借りるにはかなりの金額を用意しなければならない。そして用意できたとしても希望者が多いためかなりの期間待たされる。大体10~20年に一度は魔法を使ったほうが良いとされており、我が領では4年後の派遣を予定していた。


 それがクルスのおかげで魔法師派遣は必要なくなったので、ボリスは王城に中止わびの手紙をあとで書くつもりだ。


 そして“豊穣デーメーテール”を使いこなせる魔法師を貴族が抱えることは非常に大きな意味を持つ。恐らく来年から周辺の領主たちがクルスに対して派遣要請を行ってくるだろう。たった一度の魔法で大幅な収穫増が認められるのだ、飛びつかない領主たちはいない。しかも、この時に払う金額は王都に申請するよりも格安に設定されることが多い。これは金銭よりも近隣領主たちに対する政治的な影響力を重視しているからと言われている。


 だが、クルスの派遣をあまり派手にやるべきではない。王国西部には二人の侯爵がおり、その二人が西部の盟主と考えられている。その内の一人がオルベキスタン侯爵、これまで王国西部では唯一“豊穣デーメーテール”を使いこなせる魔法師が2人もいることで有名だった。ボリスが覚えている範囲でも二度ほど魔法師派遣をお願したことがある(ただし、この時は不作の続く村を1件ずつ支援してもらう小規模な対応で、他の領主たちも同様な対応を行う)。


 それが急に魔法を武器にして幅を利かせれば侯爵にとって面白いはずがない。オルベキスタン侯爵は理知的な人物であり、これまでのところボリスとは良好な関係を築いてきた。ボリスは盟主の地位に就きたいと欠片も思っていないので、侯爵に反感を買わないように配慮する必要がある。


 夏がくる前に侯爵のもとを訪問する必要があるだろう。下手をすると収穫前に“豊穣デーメーテール”を頼みに来る切羽詰まった貴族がいるかもしれない。


「村人たちからの反応はどうだ?」

「皆、クルス様の噂を去年から耳にしていたようで、大変協力的に作業を手伝っていたそうです。」

「同行している二人からは何か言っているか?」

「どちらもクルス様の精力的なご活躍に感心しておりました。内政官のノックスも“クルス様の施策には恥ずかしながら勉強になる”と言うほどです。」


 皆、クルスの活躍にべた褒めだな。ノックスなど内政官として20年近い経験があり、あいつが誰かを褒めるなんて滅多にない。そして改めてクルスに感謝しなければならない。


 去年の大干ばつは本当にヤバかった。


 去年はここ三十年で最大の干ばつがこの国を襲った。この状況に対して王都から雨を降らせることの出来る魔法師が派遣されたが、干ばつは王国全土広がっているため派遣された魔法師の数がまったく足りていなかった。更に困ったことに西部の中でも重要地域である大穀倉地帯であるオルベキスタン侯爵領や王都にほど近いルマール川周辺に魔法師を割かれ、ヴァンフォール領がある中部地帯は手付かずの状態になった。


 正直、打つ手がない状況だった。


 そこに声をあげたのが、我が息子クルスだ。


 いきなり自分が雨を降らせると言い始めて俺も大分戸惑ったのを覚えている。もちろん、クルスの魔法の才能が並じゃないことぐらい知っている。だが、雨を降らせることが出来る魔法師がどれだけ貴重な存在なのかは俺も分かっていた。才能があるとは言え、当時8歳の息子に出来るなんて想像がつかなかった。


 クルスは半日かけて俺とアルフォンスを粘り強く説得してきた。そして俺はクルスの真剣な顔を見て、息子に賭けてみる気になった。警備隊の騎馬隊と魔法師から一個小隊をクルスの護衛として編成し、クルスはヴァンフォール領の北側にある領地境エグスト山に向かった


 エグスト山は領内で最も大きな川の源泉があり、この水源を回復させることが最善手と言えた。そこでクルスは三日間雨乞いの魔法“鎮魂の雨メルディア”を唱えた。その結果は非常に劇的だった。クルスを送り出した4日後、干上がりかけていた川の水量がかなり回復してきたと報告が上がったきた。実際、領都に流れ込む支流の水量も改善されて、突然の事態に領都の民がお祭り騒ぎになるほどだった。


 その後、クルスは“鎮魂の雨メルディア”の恩恵を唯一受けられなかった領内西部の農村や小さな川で再び“鎮魂の雨メルディア”の魔法を唱えて雨を降らせた。また、このとき魔法を詠唱しているクルスの姿を見た農民によって“領主の息子は雨を降らせることが出来るらしい”と噂が広まった。


 そしてクルスたちが戻って来ると、同行していた魔法師からクルスの魔法に関する報告も上がってきた。この時になって始めて俺とサラはクルスの凄さが分かった。


 クルスはエグスト山で3刻(6時間)ほど雨を降らし続け、その後死んだように眠る日々を3日間に渡って繰り返した。精霊の力を借りたとは言え、警備隊の誰よりもクルスの魔力量が突出している可能性が高いと報告してきた。更にその魔法師の私見として“我が国に8人しかいない宮廷魔導師と肩を並べるのではないか”と言ってきた。


 そしてこの意見には近衛騎士団で数多くの魔法師を見てきたサラも同意見だった。サラの話だと普通の魔法師が雨を降らせても半刻(1時間)も耐えられない程で、複数の魔法師が順々に魔法を交代しながら雨を降らせるのが本来のやり方と教えてもらった。


 サラも正直に言ってクルスに対してあまり期待していなかった。一時間も雨を降らせれば大したもので、この危機的な状況を変化させるだけの効果はないと考えていた。だからこそ、この報告には衝撃を受け、クルスの実力に戦慄した。サラも“自分の息子ながら恐ろしい子になったわ”とちょっと寂しそうな顔をしていたのが印象的だった。


 だが、クルスの活躍のおかげでヴァンフォール領の小麦は3割減で済んだ。他の地域の悲惨な状況を考えると上出来だ。そしてこの干ばつの影響で今年はどこの領主も苦しい状況であり、クルスの魔法は喉から手が出るほど欲しいだろう。先日もここ最近のクルスの活躍を聞きつけた領内北部の村長の息子が近隣の村々からの要望としてクルスを派遣して頂けないかと懇願してきた。


 俺は村長の息子にクルスの行動について細かく説明した。現状クルスは南部、西部を中心に農地改良を行っていること、“豊穣デーメーテール”の魔法が種まき前に状態で行わないと成育に良くないこと、したがってクルス一人の手では領内全域をカバーするのは無理なころ、そして北部と東部への農地改良は来年になることを説明した。この説明に少しは反発するかもと思っていたボリスだったが、村長の息子は確約が取れたことを喜んだあと礼を言って帰っていた。


 クルスの存在はボリスにとって大きな悩みの種に成長して、苦笑するしかない。


「どうかなさいましたか?」


 俺の苦笑を見て、アルフォンスが質問してくるが正直に答えずに誤魔化すことにする。


「いや、なんでもない。他に報告は?」

「ひとつ気になる報告があります。訪問した農村の一つでクルス様が子供に魔法を教えていたそうです。」

「子供に?」

「はい、クルス様が言うには才能があるそうです。」

「ほー、それは是非とも伸ばしたいな。」


 うちのような地方領で魔法の使える人材はかなり貴重だ。領都には学校もあるので裕福な家庭の子供たちなら魔法を覚えられるが、農村ではほとんど魔法を使える人材はいない。だが、農村の子供たちに魔法の才能がないとは限らない。そして、クルスが目を付けたということは相当な才能があるかもしれない。


「それで、クルスはどうすると?」

「しばらくは定期的に教えに行くといって言っておりました。」

「そうか。」


 ひょっとしたら時期を見て、領都に連れてくるのかもしれない。学校に通わせる、あるいは警備隊に加えれば魔法に関する教育を受けさせることが出来る。この件はしばらく放置でいいだろう。


「そう言えば、この前の狩りで魔獣を仕留めたと聞いたな?」

「はい、狩人たちのまとめ役であるガルから報告を頂いております。」


 報告者が執事のオーランに変わった。


「南東部にあるダーナ村の近くの野山で狼の魔獣が発生しました。魔獣の大きさは通常の3倍ほどで比較的若い個体だと推測されます。」

「被害はなかったんだな?」

「ダーナ村では被害はありません。ただ、狩人たちから負傷者が2名出ましたが問題ないそうです。」

「過去、その野山で魔獣が出た時期は?」

「ここ最近ですと12年前、19年前、38年前、46年前になります。」

「んー、法則性は分からないか?」

「残念ながら。」


 これは仕方ないか。魔獣の発生兆候あるいは発生間隔が分かれば備えることができるが、少なくともアルケリア王国においてそんな情報聞いたこともない。今回は被害がでなかったことを単純に喜ぶことにしよう。


「ガルはクルスのことについて何か言っていなかったか?」

「今回、自分たちが魔獣を退治できたのはクルス様のおかげと、後いつでも一人前の狩人としてやっていけると言っておりました。」

「分かった。」


 苦笑しているオーランに俺も苦笑で返すしかなかった。確かにクルスを狩人にすればもう悩むこともなくなるだろうが、そんなこと出来ないな。


「アルフォンス、クルスの教育についてはどうなっている?」

「最近は隣国の制度、体制について色々ご興味をお持ちのようです。」

「隣国?」

「特にパルパディン帝国にご関心があるようです。他の隣国は基本的に我が国の制度との違いがほとんどありませんので、面白いそうです。」


 最近はアルフォンスも教えることがないので、クルスは興味持ったことを色々と調べている。調べる内容は多岐に渡るが、それぞれのモノにはなんの脈絡がないことが多い。この前は確か建国時に王都建設に携わった建築家の自叙伝を読みながら建築の勉強をしていたな。


「しかしそんな本よく見つかったな。」

「出入りの本屋も大分クルス様の好みを把握されてきたようです。今回のパルパディン帝国の本は些か高価でしたが、クルス様の興味を引かれるモノは嗜好品が多く、本屋も売れずに在庫として抱えていた本のようです。」


 本屋の裏事情を聞いて、俺は脱力してしまう。まぁ、いい。そして俺は話題を変えることにする。


「ところで魔法の方はどうなんだ?」

「あまりかんばしくないようです。」

「どうしてだ? つまづいているのか?」

「いいえ、そうではないようです。」


 些か聞き捨てならない発言に俺は緊張感を高めたが、アルフォンスの表情には苦笑いの成分が多い。


「クルス様は何冊か魔法書を持っておりますが、その中身のほとんどを理解なさっているそうです。勿論、理解できるからといっても全ての魔法を使える訳ではありません。自分に向いていない魔法はいくら練習しても無駄なのだそうです。」

「まぁ、それはそうだが、さっきの話と何の関係があるんだ?」

「つまり更に魔法の理解を深めるためには新たな本なり、師なりがいないと難しいようです。無論、魔法の修練は継続されていますが。」

「うーん。」


 魔法があまり得意ではない俺にはいまいち理解できないな。


「つまりクルスは魔法に対して退屈していると言ったところかしら?」

「そのご理解で正しいと思います、奥様。」

「まぁ、仕方ないわね。あの子は知識に関してはかなり貪欲な所があるから尚更ね。だけどクルスが欲しがるような魔法書は王宮にでも行かない限り手に入れるのは無理でしょう。」

「そうなのか?」

「基本的に魔法研究の成果である魔法書は王宮から外に出せないようになっているわ。王宮の魔法師たちですら自宅に持ち帰れば、即刻首あるい斬首になることもあり得る。去年あの子に上げた上級魔法書は普通なら王宮から出せない代物、あれ以上のモノはいくら私の口添えがあっても取り寄せられないわね。」

「つまりクルスは新しい知識なり魔法なりに触れられないから退屈しているってことなのか?」

「ええ、そういうことよ。」


 つまり知的探究心が満たされないといったところか。確かに魔法師という人種にはそういう側面が強いと聞いたことがある。ただ、そう考えると気になるのは今後のこと。


「やはり、クルスには王立学校よりも王立魔法協会や魔導師団に入れるように話をつけたほうがいいんだろうか?」

「難しいわね。確かにあの子ならどちらに入ってもやっていけそうな気がするわ。でもそれがあの子のためになるか正直分からないわ。」

「アルフォンスはどう思う。」

「少なくともクルス様は王立学校に行かれることを受け入れていらっしゃるご様子でした。」


 この悩ましい問題に対してなかなか答えがでない。クルスは王立魔法協会や魔導師団に入れば喜んでくれるだろうが、そうなった場合クルスが爵位を継ぐ可能性はほぼ無くなる。逆に王立学校に入れても、クルスにとって学ぶべきことがあるか疑問だ。退屈のあまり悪い遊びでも覚えられた目も当てられない。


 答えが出そうもない問題を考えながら、ふと前を向くとオーランと目が合った。これまでの会議の間オーランはほとんど喋っていない。オーランは俺の補佐として領内の運営に携わってきたが、クルスのことに関してはほとんど携わっていない。この役目は半分引退したアルフォンスに任せっきりにしていたので、オーランから意見を求めなかったがどう思っているのだろう。


「オーランはどう思う? 率直な意見を聞かせてくれ。」

「……私は王立学校への進学で問題ないと思います。」


 オーランは少しばかり驚いた顔をしていたが、はっきりと断言した。


「何故だ?」

「クルス様の魔法の才を伸ばすためには王立魔法協会等へ行くことが近道であること分かっております。しかし、今急いで王立魔法協会を選ぶ必要はないと思います。王立学校を出た後で改めて考えれば良いことだと考えます。」

「だが、王立学校に行ってもクルスは満足するだろうか?」

「クルス様は好奇心旺盛なお方、退屈なさればなさったでまた新しい事に興味を持つでしょう。それにクルス様はまだ9歳、急いぐ必要はないと思います。」

「んー。」

「それに王立学校に行くのはクルス様だけではなく、アリスお嬢様も。クルス様はアリスお嬢様を一人で王立学校に行かせるような真似はしないと思います。」


 この意見は予想外だったが、納得できる意見でもある。サラもオーランの方を見て、目を丸くしている。確かにあの二人は仲も良いし、アリスもクルスを色々頼りにしている。それにあの二人の関係はアリスの方がクルスに依存しているようにも見える。いま二人を離すような真似をしても、


「それに王立学校には同年代に子供たちが集まる場ですので、ご学友を得るという点についても非常に重要な事と思います。」

「……アルフォンス、どう思う?」

「なかなか良い着眼点かと。」

「そうだな、……よし取り敢えずこのまま王立学校に行くことにしておこう。サラもいいかい?」

「ええ、それでいいわ。」


 一つの問題が片付いたとこで話しをガラッと変えてもう一つの主題について話すか。ここまで基本的に黙っていたナターシャの方に視線を向けると、彼女も俺の視線に気付いて気を引き締めているように見える。


「ナターシャ、クルスとシルビィの仲はどうだ?」

「大変よろしいと思いますが、旦那様のご期待している間柄には程遠いと思います。」

「まだ、クルスに女は早いかぁ。……逆にシルビィの方はどうなんだ?」

「やはり年齢差がひらき過ぎている所為か、異性というよりも弟のように見ていると思われます。更に最近はマイス様がシルビィにベッタリですのでその辺りも影響しているのでしょう。」


 ボリスは二人の婚姻について真剣に検討している。かなり打算的なことだがクルスを女性で縛りつけて置きたいと思っている。我が家の悪しき伝統のように、クルスはこの伯爵領がせまいと感じる日がいつか訪れるだろう。


「アルフォンス、サラ、二人はどう思う?」

「私もナターシャと同じ意見でございます。」

「私もよ。」

「……そうか。」


 そう言って俺は短く嘆息した。仕方ないか。うちの家系は女っ気のない男がほとんど、俺が知っている範囲でも例外はオベール兄さんくらいだからな。だが、放置できる状況でもなくなった。多分、クルスに対する婚姻の申し入れがこれから露骨に増えるだろう。西部の貴族はもちろん、王都や北部の貴族たちからも接触があると考えられる。


 来年にはクルスが王立学校に行くことになるが、俺の正直な気持ちとしてはそれまでに婚約者を決めておきたい。俺も王立学校に入ってから知ったが、あの年頃の連中は節操がない。高位貴族男性の女癖の悪さと分別のなさ、令嬢たちの同性に対する陰湿さと異性に対して豹変する振る舞い。知りたくもなかったが確かにあれが人の一面であることを見せつけられた。もちろん、クルスがそんな人間になるなんて微塵も思っていないが心配になる。


 俺はこの性格とオベール兄さんのおかげで王立学校ではその手の醜聞と無縁でいられたが、クルスには無理かもしれない。下手をすると変な女を宛がわれて、騒動に発展するかもしれない。クルスは優秀だし、人の機敏にも敏感だから大丈夫だと思いたいがこればかりは自信が持てない。


 対応策に頭を悩ませているとサラの意外そうな声が聞こえてきた。


「アルフォンス、どうしたの? ちょっと笑っているわよ?」


 その声を聞いて俺も視線を上げてアルフォンスの方を向く。確かに生温かい目で俺の様子を見ている。


「申し訳ありません、旦那様。ですが、旦那様がご子息の婚姻についてお悩みになられる日が来たのかと思うとなかなか考え深いものがありまして、失礼致しました。」


 この返答にはぐぅーの音も出なかった。サラも若干気まずげな表情をして、アルフォンスから視線を逸らした。確かに俺もサラもこういう男女の機敏について疎く、幼い振る舞いを繰り返していたので反論できない。


「アルフォンスは現状どうすればいいと思う?」

「恐らく周りが騒ぎたてても徒労に終わると思います。消極的ながら現状維持で良いと思います。」

「うむ、……そうか。」

「クルス様は賢いお方ですので自身の状況についても直ぐに察するでしょう。」

「私もクルスの方はほっておいていいと思うわ。」

「クルスの方は?」

「シルビィには一度クルスとのことや結婚ついて話してみましょう、それで本人も多少は自覚するでしょう。」


 なるほど、確かにシルビィの年頃なら結婚している友達もいるだろうし、まったく考えていない訳もないか。サラに任せてみるか。


「分かったよ、サラ。」

「それとシルビィの相手は私とナターシャで少し探しておくわ。」


こうして実りは少なかったとは言え、会議が終わった。大人たちの悩みは解消されることはなかったが、ボリスは幾分とすっきりとした表情をしていた。


半日近い遅刻です。待っていた方はすいません。次話も何日に上げられるか分からない状況です。一応、目標は木曜にしておきます。さて、月曜ですの頑張って働きましょう。

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