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終末への旅  作者: パウエル
第1章
14/33

第14話 休養と魔道具調達

 朝から王都の要人たちを悪魔召喚によって震撼させて当人は、昼を過ぎてもベッドで惰眠を貪っていた。


 別に自堕落な生活を送りたかったわけじゃない。単純に疲れが出ただけだ。魔力を出し惜しみせずに全力で戦ったので、今はその反動で身体が少し熱っぽい。こんな状態を家族に伝えたところ“一日大人しくすること”と祖母カトリーナに強く言われたので今日はひたすら寝ることにする。


 あの後、俺は王都から出来るだけ離れて王都を大きく北回りに迂回して、朝日が昇る直前の時間に王都の東側城壁を越えて屋敷に戻った。城壁の警備は若干厳しめかなと思うぐらいで、俺が戻って来るのを待ち伏せている可能性は低そうだった。


 王宮が俺の捜索を諦めてくれればいいが油断はできない。


 まぁ、王都に入ってからも精霊の存在には気を使ったので探知はされていないと思う。精霊ディアナも聖女が若いので、赤鬼ヴィンジャーノの戦おうとは考えないだろう。しかし、今回の戦闘は反省するべき点がいくつかある。


 戦闘面では、身体の方はサラやアリスとの稽古のおかげで良く動いたと思う。反射神経、足運び、重心移動など幼い身体に合った最適な動きが取れていた。だが、魔法を有効に使えることが出来なかった。


 この世界において魔法師は基本的に後方支援要員だ。魔法は強力だが、必ず詠唱を必要とする。しかし戦闘中にタラタラ詠唱していたら、近接戦闘に持ち込まれてお陀仏だ。そこで対処法がいくつかある。


 一番目としては近接戦闘を行いながら詠唱する方法だが、これは少数派でほとんどいない。理由は魔法師のほとんどが身体を鍛えないから。魔法師は身体を鍛える暇があれば、魔法書を読んで魔法への理解を深めるのが当然だと思っているからだ。


 二番目としては人に任せる、つまり仲間に守ってもらいながら魔法を詠唱する方法だ。これは広く支持されており、かなりの数の魔法師がこのタイプだ。


 そして三番目が魔道具を利用する方法だ。魔道具は詠唱を必要しないため、魔道具の魔法で時間を稼ぎ、その間に詠唱を済ませる。この方法は複数の魔法を同時に行使するため、魔力操作の難度が上がるが普通の魔法師なら必ず覚える技能だ。一流の魔法師なら3,4つの魔道具を使いながら同時に詠唱できる人間がいる。


 俺は一番目の近接戦闘ありの戦い方をしているが、魔道具も併用している。とゆうか魔道具の存在がかなり重要で、神殿騎士との戦闘で苦戦したのもいつもの魔道具がなかった為と言っても過言ではない。


 まぁ、その魔道具は俺が考案したオリジナルの魔道具であり、数百年に及ぶ魔法研究の成果だ。あれがないと戦闘がやり難くて仕方ない。ここにきて早急に用意する気になった。


 俺の転生は知識や経験を引き継ぐことが出来るが、モノや財産を引き継ぐことはできない。俺の転生は死後10~20年の準備期間を経てから実行される。死んだ際に持っていたものが時間と伴に誰かに持っていかれるなら分からない訳じゃない。


 だが、これは違う。死ぬ前に誰もが近づくことができない秘境に武器や金を隠していても、跡形もなく消滅している。試しに知り合いに装飾品をあげたり、生活に便利な魔道具を家に埋め込んでも、転成後に訪れると文字通り跡形もなくなっていた。


 ここまでくると誰かの作為を疑うのは当然だが、その筆頭は創造神たちだが会えないので確認のしようがない。一応、眷属神かみさま、悪魔、聖獣の奴らの何体かには直接確認したが分からなかった。試しにある眷属神かみさまのねぐらの神殿に魔剣を置いておき、眷属神かみさまに見ておくよう言っておいたが見事に消滅していた。しかもこの眷属神かみさまは俺との約束を確認しに行った転生直後まで忘れていやがった。だから魔剣がいつ無くなったかすら分からなかった。


 この時点で俺は道具を引き継ぐことは諦めた。


 だから武器や魔道具の調達はいつものことだ。だが、5歳児の俺には金がない。ここは祖父母のロイスとカトリーナにねだるしかないかないか。とりあえず、魔道具は明日頼んでみよう。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 静かにノックをして、返事がないことを確認してからシルビィはそっと部屋に入る。


 私は窓際にあるベッドに向かうと、ベッドではクルスお坊ちゃまがお休みになってる。時刻はもうすぐ夕方になるところだけど、まだお休みになってるみたい。ご飯を食べる時以外はほとんど寝てるので、よっぽどお疲れなのかしら?


 そっとクルスお坊ちゃまの頬を触ってみるが、熱はもうないみたい。額の上の濡れタオルを外して、持参したタオルでクルスお坊ちゃまの顔について汗をそっと拭く。


 クルスお坊ちゃまが今朝から体調を崩されて、お屋敷ではちょっとした騒ぎになった。昨日まで元気だったから、私もびっくりした。私がヴァンフォール家にお仕えして2年ほど経つが、クルスお坊ちゃまが体調を崩されたのは初めてのこと。ナターシャさんも“赤ちゃんの頃からほとんど体調を崩さない丈夫な子供”の印象が強かったらしく結構驚いていた。


 大旦那様、大奥様、ナターシャさんたちが慌てているなかで、旦那様だけが割と冷静で、“寝てれば治るよ”と言って皆さんの顰蹙ひんしゅくを買っていたが、旦那様の言う通りになったみたい。


 クルスお坊ちゃまのお世話も終わってしまったので、とりあえずベッドの脇にある椅子に座った。そしてクルスお坊ちゃまの寝顔をまじまじと見つめてみる。良く考えたら寝顔を見たの始めてじゃないかしら、いつも私よりも早起きで朝稽古してるし。そう考えると寝顔をもっと見ていたくなってきて、椅子をもうちょっとベッドに近づける。


 可愛らしい顔、やっぱり奥様の血よね。アリスお嬢様は奥様そっくりの美人顔だけど、クルスお坊ちゃまは柔らかい印象を与える顔立ちね。お二人とも将来はきっと美女美男になるんだろうなー。


 でも、お二人は将来どんな大人になるのかしら?そういう意味じゃ私も2年前は貴族様の家で侍女やるなんって想像もしてなかったな。


 11歳の春、私のお父さんが病気で死んでしまった。秋ごろから体調を崩して、年を越える前にはほとんどベッドから出れなくなってしまった。だが大変だったのはその後だった。お母さんはお父さんの病気を治すために薬代を借金していた。当然、お母さんには借金を返す当てもなく、借金取りが家まで怒鳴り込んでくることになった。


 もう犯罪奴隷になるしか方法がないと思っていたら、旦那様たちが私たちを助けて下さった。助けて頂けた理由は未だに分からけど、私は侍女としてお屋敷に、お母さんは商家の仕事を用意してもらい、借金の肩代わりまでして頂けた。本当に感謝している。


 そしていざヴァンフォール家に来た私は礼儀作法、炊事、洗濯、掃除、裁縫と覚えることだらけで毎日てんてこ舞い。それにあの頃はお父さんが死んじゃったばかりだったから、夜になるとよく泣いていたっけ。


 でも大変だったのは最初だけ、ヴァンフォール家の人達はみんな優しいし、ナターシャさんも何かと面倒を見てくれるし。そして、アリスお嬢様とクルスお坊ちゃまに私はメロメロにされてしまった。


 アリスお嬢様は出会って直ぐに私が気に入ったみたいで、仕事中の私の後ろをトコトコついてくるようになった。そして私の仕事の真似をする姿がとっても可愛い!私には弟はいたけど妹はいなかったので、新しく妹が出来た気がしたっけ。


 クルスお坊ちゃまはどちらかと言うとあんまり懐いてはくれなかった。クルスお坊ちゃまは変わった子で、いつもお屋敷の中を探検していて何処にいるか分からない困った子供だった。でも我が儘は言わないし悪戯もしないとってもいい子で、うちの弟とは大違い。あと私が落ち込んだり元気がなかったりしたときになると現れて私の頭をナデナデして慰めてくれる。


 このお二人に出会えたことは私にとって本当に幸せなこと。まだ、仕事…というか礼儀作法は覚えることが多くて苦手だけど、仕事も楽しい。今回なんて王都に連れてきてもらって、しかもアリスお嬢様たちの付添いという名目で観光まで出来ちゃった。こんなことは2年前には想像も出来なかった。それにお母さんも弟も餓えずに元気に暮らしている。


 だから私は今という幸せを下さった神様に対して感謝する。


 そして私は仕事に戻る。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 寝込んだ日の翌日、俺は魔道具を買いに街に出掛ける。


 一昨日と同じで俺、アリス、シルビィ、カトリーナ、グルーデの5人で馬車に乗って出かける。今日の目的地は魔道具を販売する魔法工房、装飾品を販売する宝石店、そして王立魔法協会に行くことになっている。


 昨日の夕食時に俺の体調が良くなったことを伝えておいたので、繰り延べていた昨日の予定を消化することになった。そして俺は朝食の席で祖父母に魔道具を可愛らしくおねだりした結果、二つ返事で魔法工房行きが追加された。


 宝石店はアリスにパーティ用のアクセサリを買うためだ。一応、実家から持ってきたモノはあるがカトリーナ曰く、子供が着けるには合っていないということで買うことにした。そして王立魔法協会は俺の希望ということになっている。まぁ、中に入ることは出来ないが外の庭園は観光スポットなので見に行こうとなった。


 まず向かったのは宝石店で、ここでは女性陣が楽しくお喋りしながら“あーでもない、こーでもない”とやっているのを見ているしかない。執事のグルーデもそんな女性陣の後ろで付かず離れずの位置をキープして黙っている。


 そして女性の買い物はいつの時代でも長いと決まっており、一刻(2時間)にも及んだ。


 次にドルーアという魔法工房に向かった。ここは魔道具に詳しくないカトリーナが王都で一番有名・・な店という理由で選んだ。店の前に着いてからその理由が良く分かった。外観は先ほどの宝石店と比べても遜色がないほど豪華な造りで、まさに貴族御用達といったところだろう。


 まぁ、俺の目的から考えれば下手に玄人好みの魔法工房に連れて行かれても困る。店の中に入ると客は少なめな様子だ。明日から新年なので今日みたいな日はゆっくりと過ごすのが普通だろう。カトリーナが今日も外に連れて行ってくれたのも、明日からパーティやらなんやらで忙しくなるからその前に息抜きしたかったのだろう。


 そして店の店員が俺たちのほうに寄って来る。


「いらっしゃいませ、本日はどういったモノをお求めでしょうか?」

「ここにいる孫に魔道具を買ってあげようと思っているの。」


 カトリーナの回答にこの店員はかなり驚いて俺とアリスを見てくる。まぁ、そうだろう。魔法を使うには俺たちは幼すぎる。


「こちらのお子様たちにですか?」

「ええ、私は魔法が得意ではないので助言も頂けないかしら。」


 この発言には店員も困った顔をしている。おそらく素人がおもちゃを上げる感覚で魔道具を買いに来たと感じたのだろう。そして店員は恐る恐る注意を促してきた。


「お客さま、大変申し上げ難いことなのですが魔道具は子供が触るには危険な道具。もう少し成長を待ったほうがよろしいと愚考致します。」


 貴族からの顰蹙ひんしゅくを買うのを覚悟して忠告してきたこの店員はなかなか立派だと思う。正直言って貴族は我が儘な連中だから。


「あなたが何を心配しているか私にも分かっているわ。けど、大丈夫よ。この子、クルスはすでに下位魔法を十分使いこなしていたわ。正直に言って大人の私よりも腕前は上よ。」

「そっそれは本当でございますか。私もこの仕事を長く勤めておりますが、こちらの坊ちゃんのような年齢で魔法を使えるとは聞いたことがありません。」

「この子は明日で6歳になるけど、半年ぐらい前から魔法が使えるらしいわ。」


 俺の年齢を聞いてから店員は再びマジマジと俺の顔を凝視してきた。ちょっと居心地悪いが、まぁーこれが普通の反応だろう。とりあえず俺は店員ににっこりとした顔を向けておく。


「はぁ、にわかには信じがたいことですが、分かりました。それではこちらにお出で下さい。」


 そう言うと店員は魔道具が陳列してある棚のほうに案内してくれた。


「こちらの棚に陳列しておりますのが我が工房の標準的な魔道具です。お坊ちゃんの得意属性を教えて頂けますでしょうか?」

「クルス。」

「はい、得意なのは地の魔法ですが今回は別の属性でお願いします。」


 この答えには店員が驚いている。きっと一般的な魔法師と同じ考えを子供が言うもんだから信じられないだろうな。それにさっきから驚くたびに開く口が段々広がっている気がする。この店員にとっては可哀想だが当分口は空きっぱなしなるだろう。


「はぁ、それではどの属性でございましょうか?」

「火、水、風、雷の下位魔法が使える腕輪タイプの魔道具でお願いします。」

「4つの属性ですか……、しかも指輪ではなく腕輪の魔道具……。」


 もう何から突っ込めばいいのか分からなくなった店員にちゃんと理由を説明してあげる。


「はい、重撃ダブル連撃イテルの訓練がしたいんです。」

「なるほど……そういうことでしたか。」


 店員は俺の考えに理解が及んだためか、大分マシな反応を返してくるようになった。


「しかし、お坊ちゃんは何処で重撃ダブル連撃イテルのことを知ったのですか?」

「領都にいる兵士の人から教わりました。」

「なるほど、分かりました。少々お待ちください。」


 すると店員は一旦店の奥に引っ込んで、なにやら書類を持ってきた。


「在庫を確認してきましたが、ご希望の品はありませんでした。時間が掛かりますがお作り致しますか?」

「何の属性がなかったですか?」

「雷の属性です。代わりに地の属性のものならご用意もありますが。」

「その腕輪はどの魔法陣が刻まれていますか?」

「“火よファイヤ”、“水玉ウォータボール”、“風弾エアブレット”、“土柱アースピラー”でございます。」

「その腕輪を見せてもらえますか。」

「少々お待ちください。」


 再び奥に引っ込んだのでそれを見計らってカトリーナが質問してくる。


「いいの、クルス?新しく作ってもらっても構わないのよ。」

「お婆さま、たぶん大丈夫です。」

「そお、ならいいわ。」


 そして店員が奥から一つの腕輪を持って戻ってきた。腕輪を確認すると銀製で、装飾にも金をかけた逸品だというのが分かる。魔法陣も想定の範囲内だったので問題ない。


「如何でしょうか?」

「試し打ちって出来ますか?」

「はい、ご案内致します。」


 店員は店の裏にある魔法演習場に連れて行ってくれるようだ。しかし、俺は使う前からこの魔道具を買うことをすでに決めている。魔法陣からどんな魔法が使えるか俺には分かっている。試し打ちは怪しまれないようにするための建前でしかない。


 そして俺が腕輪型魔毒具を欲しかった本当の理由は別にある。


 腕輪の表側には用はない、必要なのはまっさらな裏側だ。


読んで頂き、ありがとうございます。あと2,3話で一章を終えたいと思います。

そして2章からはもっとドンパチさせるはずです。きっと

これからもよろしくお願いします

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