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  作者: 夢見枕
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しとしとと降る雨の音で目が覚めた。


青年は夢から覚めて身体を起こし、擦り切れた窓ガラスから外の世界を覗き込む。コンクリートでできた灰色の地面には、黄色い水溜まりができていた。曇った空に浮かぶ灰色の雲からは、いつの日からか降りだした黄色い雨が降っている。


恵みの雨ではない。緩やかな毒性を含んだその雨により、植物は毒を持ち、家畜は死に絶え、人は徐々に弱り絶えていった。


雨により毒されていない食物を争い戦争が起きたが、結果として人間が大量に死に、黄色い雨の量が増えただけだった。


唯一、雨に毒された植物に耐性を持った青年だけが生き残った。ここにあるのは、遺されたコンクリートの廃墟と、毒の植物、そして青年だけだった。


しばらく外の景色を眺めた後、青年はもぞもぞとベットから抜け出し、朝食の支度を始める。


調理に使う毒草を摘みに、雨具も着けずに住まう廃墟の外へと足を踏み出す。黄色い雨が青年の白金の髪へと降り注ぐ。元々茶色だったその髪は、耐性を持った毒素の影響で身体中の色素が抜け落ちていた。


青年は雨で濡れた髪を、時折軽く指で梳いている。雨を天然のシャワーにしているのだ。

毒草の茂るいつもの場所へ 着き、黒々とした草を引き抜く。根に小さな株が付いたその毒草は、最近見つけて青年が好んで食べているものだ。力加減を間違えると根の上で草が切れてしまうので、慎重に引き抜いていく。


「いだだだだだだだだだだだ!」


いきなり叫び声が聞こえ、驚き草から手を離した。

あたりを見渡すと、地面で草がもぞもぞ動いているのが見えた。恐る恐るそれを観察すると、他の草は空に向いて葉を伸ばしているのに対し、それはある程度の高さからしなりと地面に垂れている。

さらに観察すると、そこには苦痛に浮かぶ顔が見えた。



草だと思っていたそれは、青年が久方ぶりに見る人間の少女だった。


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