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生きた世界を越える街  作者:
世界をはずれた街
3/7

喫茶店の中は

――――


全体的にレトロな街だ。

いや、正確に言うならば西洋風な町並みといった方がピンとくる。


俺はカナンに手を引かれながら石畳で舗装された道を歩く。

綺麗に舗装された道だ。

手入れが行き届いているのだろう、ゴミが落ちていることはない。

路肩に時折設置してあるゴミ箱もそのことに一役買っているのだろうな。


「なんかお洒落なところだな。

 もうちょっと前時代的だと思っていたぞ」


俺のその言葉に先を行くカナンが首だけを振り向かせ答える。


「貴方が元いた世界からずれた所にある場所とはいえ、隔離されているわけではないのよ。

 少し次元が違うだけで情報やモノはちゃんと入ってくるわ」

「そうらしいな」


そう言って柳はすぐ横にある喫茶店に貼られたポスターを指差す。

それはライブのポスターだ。

バンドはかいさないが向こうではテレビによく出てたはずだ。


「最新の情報も取り入れられている。

 ここでの生活はあまり向こうと変わらないのかもな」

「それはわからないけど、要は慣れよ。

 慣れれば全く気にならなくなるわ。

 ……っと、そろそろ寮に着くわよ」

「へぇー、ここがか」


カナンが指し示す向こう、そこには2階建ての奥に長い建物がある。

まさに寮って感じの建物だ。それ以外に形容しようがない。


ここまで10分ほど歩いた。

駅に近いことは一つの利点ってどっかのテレビ番組で言っていた気がする。


「中に入るわよ」


カナンが俺の手を引っ張って寮の中に入る。

寮の入口を抜けると中は西洋風な外見と少し違い、より一層落ち着いた感じになっている。

白いタイルが敷き詰められた床に赤銅色の壁。

どれもシックで感じが良い。


「寮長ー!

 いたら返事してー!」


カナンの声が響く。

こいつはここが寮であることをあまり考えていないらしい。

……いや、今の時間なら皆学校に行っている時間か。

なら問題ないな。ごめんね、カナンちゃん。


カナンが歩き回り声をかけ続けていると、二階へと続く階段から中年の男性が降りてきた。


「おお、神坂原みさかばらのお嬢ちゃんではないか。

 久しぶりじゃのう。ちっとは成長したかね?」

「久しぶり、寮長。

 昨日話した新入居者を連れてきたわ」

「ほう、こいつがかね……?」


寮長と呼ばれた中年の男性は禿げた頭を右手で触りながら俺に近づいてくる。


「柳です。

 よろしくお願いします」


俺はタイミングを計り手を差し出しす。

彼も俺の行動に反応してテンプレのようなやりとりをする。


「おお、よろしくじゃわい」


そう言って俺の差し出して手を握る。

汗ばんだ手だ。運動しろよ、このメタボ。


そうは思いながらも俺は体裁を保つ。

ここを追い出されたキツいからな。


「そう、寮長にミミから届け物があるみたい」


カナンは駅のホームで渡された巾着袋を取り出す。


「あぁ……いつものやつじゃな」

「いつもの?」

「人間ドックにいってみたら、メタボと高血圧と言われてのう……

 これは血圧を低くする薬なんじゃよ」

「へぇー」


カナンに説明を終えた寮長は「さてと」と言うとポケットに巾着袋を入れる。

そして俺の方に向き直るとこの寮の間取り図を手渡しする。


「これからお前さんが住む場所や利用できる場所なんかを案内していくぞ。

 一度しか説明せんからしっかりと聞いておくんじゃぞ」

「はーい」


寮長が歩き出したので俺も歩き出す。

彼は入口からの廊下を直進する。

すると左手に広い空間が見える。


「ここが食堂じゃ。

 料理を寮生で作ることもあれば作らんこともある。

 まぁ、ほとんど女生徒らが菓子を作るために使っているところじゃ」


彼はそう言いながら、ずれた椅子を揃え直す。

長机が1つに丸テーブルが2つ。

寮生は椅子数から20人を越えないだろう。


「次は浴場へ案内するぞい」


そう言って歩き出す寮長に従い廊下の突き当たりを左に曲がると目当ての場所が見えてくる。


男湯、女湯と書かれたのれんが掛けてある。

がっちり固定されている。

過去にいたずらでもあったのだろうか。

俺達がのれんをくぐるとそこは玄関になっている。

この寮は内ばきようの靴の着用を規則としている。

それを脱ぐための下駄箱がそこにはある。


玄関を抜けると脱衣所になっており、そこをさらに抜けるとシャワーなどがある体を洗う場所、その奥には大きな湯船がある。


「この浴場は夏は夕方4時から夜10まで。

 冬は夕方5時から夜10までと決まっておる。

 まぁ、特別な用事があるときは都合するから時間はあまり気にせんでもよいぞ」


そう言って寮長は浴場を後にする。

いい設備だ。

頑張れば監視カメラ仕掛けられそうだな。

俺はそう思いながら彼のあとに続く。


「次はお前さんの部屋に案内するぞ」


寮長は食堂の手前を左手に曲がる。

見ると右側の壁には扉が4つほどある。

ここが寮生の部屋か。


寮長はその中から手前から3番目の扉を鍵を使い開ける。


「ここがお前さんの部屋だ」


そう言って寮長は中に入るが、新規契約された部屋にしては生活感がある。

中にある机には教科書らしきものが整理されて置いてあるし、ベッドの上の可愛らしい布団だって綺麗に折り畳まれている。


「寮長さん、随分と生活感ありますね」

「そりゃそうじゃ。

 お前さんの他にもうひとりここに住んでおるんじゃからの」


なんだと。

このコミュ障(笑)の俺にそんなギャルゲフラグを立てるというのか。


「……おい、カナン」

「なに?」


俺はカナンを連れて寮長に話が聞こえない位置まで移動する。


「どうして二人部屋なんだ。

 一人部屋はないのか」

「あるにはあるけど寮長がダメだって言うのよ」

「ふじゃけるな。

 女と男で問題が起きるとか考えてるはずだろう」

「そうよねぇ……ちょっと聞いてみるわ」


カナンは寮長に近づくと以上のことを聞く。


「寮長、こんな奴を異性と二人きりにしちゃっていいの?」

「問題ないじゃろ。

 というか一人部屋は何かあったら心配じゃしのう」

「なに?

 なんかあるの?」

「いんや、そういうことじゃなくてじゃのう。

 小学生を一人で置いておくと何が起きるかわからん。

 こいつは利口そうじゃがだからと言って過信もできん」


そう言って寮長は俺を見る。

なるほど、俺が小学生だからか……

って違うわ!!俺は小学生なんかじゃない!!


「寮長さん!僕はこれでも中学生ですよ!」


俺の必死の訂正に寮長とカナンが驚いた顔をする。


「こりゃすまんかった。

 背が低いからてっきり小学生だとおもっとったよ」

「失礼な!

 僕はまだ第二次成長期がきてないだけです!」

「おお、すまんすまん。

 それほど気にするとは思わなんだ。

 お詫びと言ってはなんじゃが飴をやろう」


寮長は俺に飴を差し出す。


「わかればいいんですっ」


俺はそれを素直に受け取る。

飴美味しいもんなー。


「まぁ、じゃからといって部屋の配置が変わるわけでもないんじゃがの。

 中学生といえどまだまだ子供。

 一人暮らしをするにはまだ早すぎる年頃じゃよ」


そう言って寮長は俺にこの部屋の鍵を渡す。


まじかよ。

俺はこの部屋で何年過ごすかもわからないがその間ずっと、ルームメンバーのご機嫌を伺わないといけないのか。

ここが死後の世界か。

………………


まぁ、いっか。


「ちなみに非常口はこの廊下の突き当たり、そしてこの寮の入口から真っ直ぐ行った場所にあるぞ」


寮長はそう言って廊下の突き当たりの扉を指し示す。


「まぁ、これぐらいで寮の主な施設は以上じゃ。

 2階にはレクリエーション施設があったり、寮生の部屋があったりするが、そこらへんはお前さんが追々知っていけばいいことじゃろ」

「そうですね。

 ありがとうございました」


寮長は俺の礼と共に2階に戻っていった。


───


「貴方、小学生じゃなかったのね」

「何回言わせるのだ。

 私は中学生だ」

「上がりたて?」

「真ん中の二年だ」

「そ、そう……」


カナンはそう言って俺の体をまじまじと見る。


「貴方って……小さいのね(笑)」

「ああ?

 殺されたいか貴様」

「別に他意は無いわよ(笑)

 気にしないで(笑)」

「…………」


こいつ俺を煽ってやがる。

今までの仕返しと言うわけだな。けしからん。


俺はカナンに無言で近づくと彼女の右手を掴む。

そして片手で彼女の手首を固定するとそのまま手を外側に倒していく。


「痛い!痛い!

 や、止めて、謝るからぁ!」


カナンが涙目になりながら訴える。

可愛いが侮辱は許せぬ。


「昼食を奢ってくれるなら考えないでもない」

「なんでもするからぁ!

 早く止めて!」


ん?

言質とれり。


「ならやめてやろう」


そう言って俺が間接技を解くと彼女は握られていた手首を擦る。


「この他にやることはあるか?」

「ん……?な、ないけど……」


彼女が涙目でそう言う。

可愛いな。誘ってやがる。


「なら街の方を見てみたい。

 案内してくれるか?」

「それくらい一人で……」

「なんでもするっていったよなぁ?」

「うっ……」


やっと自分が何を口走ったか理解したらしい。

今更ながらに後悔している。


「わかったわよ。

 何処となりともついていくわよ」


カナンは開き直る。

こいつ、全く学習していない。

ハニーよ、少し落ち着け。


───


寮を出ると目の前には喫茶店がある。

『Cafe de fiore(カフェ ド フィオーレ)』

それが看板として掲げられている。

意味はわからない。

中に入ってみた。


中に入ってみると4,5人の客がおり、小さなウエイトレスさんが二人ほど歩き回っている。

女の子だ。

中学生と小学生ぐらいだろうか。

カウンターに男がいる。

若い。きっと高校生くらいだろう。


俺は女の子たちに『いらっしゃいませ!』と言われながらカウンターへと歩いていく。

マスターらしき男の前にくると椅子に座りながら一言告げる。


「マスター……犯罪だぜ……」

「言っておくが強制してるわけじゃないぞ。

 なんか勝手に働きだしたんだ」

「言い訳が板についてるな。

 さすが、マスターだ」

「さすがってなんだよ。

 ていうかお前誰なんだ」

「客に向かってお前とは失礼だな」

「客になりたきゃ何か頼んでからいえ」

「ふぅん、来店したばかりの客は客じゃないと」

「そういう訳じゃない」

「でもそう言うことだろう」


にらみ合いが続く。

最初が肝心だ、と某先生も言ってたしな。


「お前……やるか……?」

「おお、やってやろうじゃないか」


バシンッ


「止めなさいよ。

 こんなところで騒ぎを起こさないの」


カナンがウエイトレスから借りたお盆で俺達を叩いた。すごく痛い。


「でもカナンさん、喧嘩吹っ掛けてきたのはこいつですよ」

「だからって貴方は高校生なんだから我慢ってことをしなさいよ。

 相手は小さい子供なのよ」


む。でも悪気は無いようだから免除するか。


「そうですよ。

 僕はここのおすすめメニューを聞いただけじゃないですか」

「ああ?」


バシンッ


「煽るな!そして乗るな!」


再度叩かれる。

三度目はさすがに根をあげるぞ。

超いてぇ。


「か、カナンさん。

 この生意気なガキは何ですか」


男が頭を押さえながら聞く。

やっぱり痛いらしい。


「この子は新しくこっちにきた子よ。

 こう見えても中学生だから気をつけてね」

「へぇー、中学生ねぇー

 ……ちっさ(笑)」


俺は男の右手を取って手首を固定、外側に思いっきり回してやる。


「いってぇぇっ!!?」


その声にウエイトレスさんが集まってくる。


「お、お客さま!従業員への暴力は……!」

「静かにしてなさい。(身長)削りますよ?」

「ひ、ひっ!?」


俺の凄みを帯びた目を見て彼女らは後ろに下がる。

このまま折ってやろうか……


「だ~か~ら~、やめろっていってるでしょ!!」


横から回しげりが飛んでくる。

側頭部を狙った一撃だ。

俺は咄嗟に手を離すとそれをしゃがんで避けて前を見る。

白。いい清純さだ。


横の男を見る。

彼もその光景を見た一人だ。

満足そうに手を顎にあてながら頷いている。

ふと目があった。

我ら二人、生まれし日、時は違えども志は同じとす。同志よ、我はここにいるぞ!


俺達は今までのことなど忘れて固い握手をした。


「なんなのよ、一体……!!」


カナンは状況が分からず困惑している。

そのあざとさ抜けた感じがたまらんぞい。


そう思いながら暫しの親愛に勤しんだ。


───


「美味しいな。やるじゃないか」


出されたオムライスを食べながら柳は言う。

高校生でこの様なものを出せるとは驚きである。

絶妙な加減で焼かれた卵はとても柔らかく、ふわっ、という擬態語がよく似合う。

米の部分も玉ねぎが刻み込まれており、ベースとなるソースはオリジナルだろう、色々な具材が煮込まれているように感じる。正直かなり旨い。


「そうだろう。

 うちで一番の料理だ」

「うむ。心服したぞ。

 次からも食べさせてくれ」

「いいぞ。いつでもこい」


男は胸を張っている。

かなり嬉しいようだ。

手の込めたものを誉められると嬉しいよな。


「そうだ、名前を聞いてなかったな。

 俺は柳だ」

「そういえばそうだったな。俺の名前は安倍清晴あべきよはるだ。

 ここでは『Flower(フラワー)きよまる』と言われているぞ」

「かっわいいー(棒)」

「ほんとだよな。

 何で呼ばれてるんだかわからない」


その言葉に隣のカナンが反応する。


「それはこの店名がfiore(花)だからよ」

「マジで。

 この店ってそういう意味だったの?」

「店長が知らなくてどうするのよ。

 この店は『花のカフェ』という意味よ。

 フランス語とイタリア語が何故か混ざってるのよね」

「「へぇー……」」


俺も一緒に感嘆してみる。

そういう意味だったんだな。

いい意味じゃないか。


「花はそこのウエイトレスか」

「俺だろ」

「お前じゃないだろ」

「はぁ?なにいってんのお前」

「じゃあ、聞いてみるか?」

「おう、聞いてみろよ」


俺は隣でちまちまコーヒーを飲んでいるカナンに話しかける。

彼女は苦いものが苦手らしく時おり顔をしかめている。

そんな貴方も大好き。


「カナンよ、この店の花と言えばウエイトレスだろう?」

「そうね。決してきよまるではないわ」

「カナンさん、本気でいってるんですか?」

「本気もなにもその通りじゃないの」


その言葉にきよまるが落ち込む。

華があると本気で思っていたようだ。


「ま、ますた~、大丈夫ですかぁ……?」


幼いおなごの声が聞こえる。後方からだ。

振り向くとフリルを着こんだウエイトレスがいる。

俺と同じぐらいの身長だ。きっと中学生だろう。


「あぁ、大丈夫だ……

 かなりショックを受けたが気にするな……」

「そ、そうですかー……?」


その少女はきよまるを気にしながらも注文を取りに行く。


「可愛らしい中学生じゃないか」

「言っておくが手を出したら殺すぞ。

 それにあいつは中学生じゃなくて小学生だ」

「はぁ?発育良すぎだろ。嘘をつくんじゃない」

「どこ見てんだ」

「身長だろ。

 俺は胸を見ているほど余裕がないんだ」

「チビめ」

「スッ」

「止めなさい!」


お盆で叩かれる。


「カナン、かなり痛いぞ。

 次やられたら泣いちゃうぞ」

「泣いてもいいのよ?」


むむ、こいつ確実に適応してきている。けしからんぞ。

俺がそう思っているときよまるからも非難の声が飛んでくる。


「ホントですよ。

 かなり痛いんですよ、それ。

 なんでもモース硬度5以上とかなんとか」

「それはすごいわね。

 ……っていうかなんでそんなところに力入れてるのよ」

「父さん曰く暴漢用らしいです」

「ウエイトレスに戦闘させる気なの?貴方の父親」

「らしいですね。

 実際、父さんが昼番だったときは戦闘してたらしいですし」


そのことを聞いたカナンは頭に手を当てる。


「そういえばお父様から聞いたことがあるわね。

 Cafe de fioreは危険だから近づくなとかなんとか」

「言いつけ守らなくていいのか?」

「いいのよ。

 実際、昼番は変わったんだしね」


カナンはそう言うと立ち上がりお金をカウンターに置く。

俺とカナンとのふたり分だ。


「レジで支払ってもらえませんか?」

「結果支払われるお金は変わらないんだからいいじゃないの」


カナンはカウンターに背を向けると歩き出す。

もうここを発つ気でいる。

ならばついて行こう。

ネタはもうやってしまったしな。


「美味しかったぞ。

 すぐ近くだし近いうちにまた来れるだろう。

 じゃあな」

「おう、じゃあな」


きよまるにそう言うと俺はカナンについて店を出る。


いい店に出会えた。

俺のオススメ店舗リングリストに加えておこう。


「食事も取れたし何か面白そうな場所はないのか?」


俺は前を行くカナンに声をかける。


「色々とあるけど今から行くと帰るのが19時ぐらいになってしまうわ。

 今日はこれぐらいにして後日行きましょう」


そう言ってカナンはスマートフォンを見せて時間を確認させる。

現在時刻15時40分。今は夏だから浴場が使えるようになるのはもう少し後か。


「一緒に入るか?」

「なんでそういうことになるのよ!

 『じゃあ寮に帰るよ』とか考えないの!?」

「考えん」

「考えてよ!」


俺はそう言われながらカナンの手を引いて目の前の寮へと入っていく。


「だから行かないっていってるでしょ!?」

「照れ隠しなど俺には通じんぞ。

 俺は本質を見抜く」

「待って、待って!

 流石に二日連続はダメだってばぁ!」


そんな応酬が4回ほど続いた。

そしてそんなことをしていると後ろから声をかけられた。


「あれ?カナンさんじゃないですか。

 今日はどんな用事で来たんですか?」


俺たちが振り返るとそこには150cmほどの制服を着込んだ女の子が立っている。

高校生だろうな、それにしては小さい。


「あら、ひみじゃないの。部活はどうしたの?」


ひみと呼ばれた少女が応じる。


「今日は部活がないんですよ。

 三日後には定期試験がありますから」

「それは大変ね」

「ホントですよね。

 ……それで今日は何しにここへ来たんですか?」

「ああ、これに寮の説明とかをしに来たのよ」


その言葉にピコンっとひみが反応する。


「もしかして、今日から入る子って……」

「そう、これのこと」


その言葉を聞くとひみは俺に駆け寄って中腰になる。

いい胸の揺れ方だ。

ロリ巨乳とは…………真理かッ。


「僕、今日からこの寮に入るの?

 名前はなんて言うのかな?

 お姉さんの名前は『ひみ』だよ!」


矢継ぎ早に話してくる。

随分と楽しみだったようだな。


「ぼ、僕は『柳』といいます。

 よろしくお願いします、ひみお姉さん……」


上目遣いをしてみる。

可愛さアピールは大事だ。

カナンの視線など気にしない。


「可愛い!

 今日から同じ部屋だし、お互い仲良くしよ!」

「あ、はいっ」


……って、同室だと?

楽しそうであるが、猫を被ってしまったおかげでこれは気を使うぞぉ↓?

やってしまった……


しかし、我がルームメートはにこにこして俺を見ている。

可愛い生物もいたもんだ。

それに低身長、モッテルだろーなー……。


そう思いながらカナンに視線を移すと口元を抑えて笑いを堪えている。


……してやられた感じかー……



「さぁ行こっか?」


ひみが俺の手を取る。

小さなやわらかい手だ。

俺はひみに手を繋がれながら自室へと向かう。

それだけしているとこれからの同居生活がうまくいくような気がしてくる。

気がするだけだが、そのような印象を受ける少女であった。


――――

言ってませんでしたが、柳くんは主人公です。

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