第三話 サクソン人の到来/ヘンギスト
彼らがこのような話をしている間に、奇妙な人間を載せた三隻のガレー船がケント港にやってきた。
彼らはとても美しい顔立ちの人々だった。
彼らは屈強で長身な二人、領主HengistとHorsaがリーダーであると、辺境の言葉で話した。
異国の人間の船が王国に入ったという知らせは、カンタベリーでどうにかその日をやり過ごしていたVortigernの元に届いた。
王は平和と親善のメッセージを来訪者に送り、彼らが誰であれ、一刻も早く自分に会いに王城に来るよう、そして速やかに自分の国へ引き返すように願った。
彼の命令を受けたとき、彼らもまた、代理人とともに彼を探していた。
彼らは王と面会し、誇り高い態度で敬意を示した。
Vortigernは注意深く彼らを見た。
彼らの身体は均整が取れ、顔は眩しく、彼が知るどんな若者よりも美しかった。
「お前たちはどこから来たのだ」王は尋ねた。「そして、どんな用事があるのだ? お前たちの生まれた土地について話すのだ」
年長者と強者にはHengistと呼ばれている。その名が、彼らから得られた答だった。
「私達の土地はサクソンと呼ばれている」彼は言った。「私達はそこで生まれ育った。もしそなたが我たちが、海の上でなにを求めていたのか知りたいのなら、そして、そなたの意思と一致したのならば、正しいことを答えよう」
「言うのだ」王は言った。「包み隠さずにな。さすれば、危害は加えない」
「立派な王よ」Hengistは答えた。「立派な王よ。私は、私がありのままに言う以上のことを知らない。我らの種族はとても多産だ。貴方が見聞きするなによりも素速く増える。我らは驚くほど子供を産み、子供の数は数え切れない。女と男は砂の数よりも多く、ここにいる我らの中で大きな不安を抱いている。我々の仲間が増えすぎると、土地は足りなくなるかも知れない。そのようなとき、我が国の王子は15歳以上の青年をかき集めるのだ。それが我らの習慣だ。彼らの中から、最も強く勇敢なものが選ばれ、そして彼らはくじを引き、彼らを国の外へと送り出す。様々な土地を旅し、自身の領地と家を探すために。子どもたちの数が草食獣よりも増え、大地が彼らを許容できなくなったときから、彼らは、そうせねばならない。これらの数多くの理由により、我らは家を去った。そしてマーキュリーを信じて、神の導きによってこの王国に辿り着いたのだ」
王は彼らの信奉する神マーキュリーの名を聴き、尋ねた。彼らの作法について。そして、彼らの信ずる神について。
「我々は、」Hengistは答えた。「沢山の神を持っている。祭壇を立てることが義務なのだ。これらの神は、フォボス、サタン、ジュピター、マーキュリーと名付けられている。他にも、土地に応じて多くの神が信奉されている。我らの父の言葉によって。しかし、我々はすべての神々よりも、最大級の名誉を持ってマーキュリーを祀っている。我々は彼をWoden〔Odin〕と呼んでいる。父は、週のうち4番目の日を彼に捧げる日として、彼を崇拝していた。Wodenに願い事をするための宴を「Wednesday」と呼んだ。そしてそれは、彼の名に由来している。今話した神と並び、私たちは女神Freyaを崇拝している。彼女も我々全員に信奉されている。彼女への愛を示すために、父は週のうちの6日目を捧げた。かつての高い権威により、我々はFreyaの日としてFridayと呼ぶのだ」
「お前たちの信仰は病んでいる」王は言った。「そして、お前たちは邪神を信奉している。とても我慢ならない。しかし、それでも私はお前たちを喜ばしく明白に歓迎する。お前は武具の扱いに慣れた勇敢な男のようだ。私のしもべとなれ。私は喜んでお前たちに家を与えよう。お前たちは財産に不足しないだろう。スコットランドからくる、とある盗賊たちは、今まさに私を苦しめている。私の土地を燃やして、都市を略奪しているのだ。神の祝福において、お前たちの来訪は私に利益を巡らせるかも知れん。主の加護と、お前たちの力で、ピクト人とスコットランド人を滅ぼせるかも知れぬ。この土地のために、私の王国を悩ませ損害を与える盗賊たちを追い払ってきてくれ。お前は気前の良い主人に出会ったぞ。私が彼らに復讐した暁には、お前たちは報酬、賃金、贈り物に不満を抱かないだろう」
このような次第で、サクソン人は船でやってきた。そして王の宮廷は強力な仲間によって強化された。
その後、巨大な軍隊の元、もはやピクト人は侵入できなかった。燃やして、荒らして、そして彼らの思うままに屈辱を与えた。
彼らがハンバーを超え、それが王に伝えられたとき、急ぎブリテン人の領主およびサクソン人とともに、彼らと相対した。
軍隊はぶつかった。そして戦いは激しく長く続き、多くのものが敗北し、死んだ。
ピクト人は、勝利を疑わずに大胆に進軍した。そして、剣に激しく打たれた。
敗北を知らなかった彼らは、勇敢に戦い、苦痛に耐えた。
しかし、彼らの悪しき慣例は、土地を占領したサクソン人によって打ち破られた。
サクソン人とその援助により、Vortigernはこの危険の源を生み出した。彼は彼らに賃金と報酬を与えた。
Hengistは立派な邸宅と品物と素晴らしい財宝を与えられた。彼らの愛情は長い間続いた。
Hengistが見る限り、王は蒙昧だったが、しかし彼は見ぬふりをした。彼は疑いようもなく、彼に利益をもたらそうとしていた。
彼は、王を満足させ優位を得るために、どのような言葉を選べば良いか知っていたのだ。
王が良い気分だったある日、Hengistは心の中で思っていたことを打ち明けた。
「そなたは、私に多くの名誉を与えてくれた」彼は言った。「そして、たくさんの富を私に授けてくれた。私は恩知らずではない。しかし貴方の下僕で、これから将来に渡り、過去に努力したよりも一層、貴方によく仕えるだろう。だが私は貴方自身と、その宮廷について密接に知っている。私ははっきりと見え、聞こえる。そして、貴方が貴方の王国の一人の貴族も愛していないという確信を持っている。彼らは貴方を恨み、そして心に悪意を抱えている。私は喋らないし、なにも知らない。貴方の家を愛する子どもたちを連れ去ったものについては。彼らは、そなたの貴族たちの正当な君主だ。彼らは彼らの王の子どもたちに忠実だ。僅かな間に、彼らは海を越えてやってくるだろう。そして、貴方の王国に損害を与えるだろう。今や彼らは貴方の部下ではなく、損害を与える目的を持っているものだ。邪悪な彼らは貴方を狙う。邪悪な彼らは貴方の破滅を望む。貴方はひどく嫌われ、貴方はひどく脅かされ、彼らは貴方の行く手を遮る。そして、恐ろしい目的で貴方を引きずり倒す。私は、この危険の中において、どうすればより良く貴方を助けられるかを考えた。もしよければ、私の妻と子供と全ての所有物を私の土地から呼び寄せよう。素晴らしい抵当は貴方のものになり、そして、私はより多くの忠誠をもって奉仕しよう。どんな手段を用いても、私は全力で味方の信用を得よう。そして、貴方の受け継いだ土地を少しばかり頂きたい。閣下、私がそなたのしもべである限り、それは偉大なこととなろう。そして、多くのものが貴方の愛ゆえに私に悪意を抱くだろう。彼らの怒りのため、私は夜に家から出ることもできず、壁を超えることもできない。だからこそ、閣下、そなたの喜びにおいて。私にいくつかの街か塔か、あるいは王のための戦いから離れている間、夜に落ち着いて眠れる強い陣地をくださることは、貴方の名誉になるだろう。そなたの敵がそなたの気前の良さに気づいたとき、彼らは偉大な君主を悩ませるのを止めるだろう」
「そなたの家族についてだが」王は答えを出した。「喜んで迎えに行くが良い。そして、敬愛とともに彼らを迎えるのだ。彼らを養うのは私の役目だ。そなたの安息のためであって、信頼のためではない。そなたは異教徒で、そしてキリスト教徒ではない。したがって、そなたが必要とする以外の贈り物を私がしたら、私はとても不公平ということになる」
「閣下」Hengistは答えた。「私は報酬として、とある領地が欲しい。私はそなたに、私が毛皮で覆って歩いて回れる範囲の――それ以上は決して求めまい――土地を譲渡してくれるような礼儀を願う。それは、ただの雄牛の毛皮だ。しかし、贈り物のために私はより確実に行くだろう」
Vortigernは利益を与えた。そして、Hengistは主人に感謝した。
彼は使者を用意して、そして海の向こうの親族へと送った。
彼は雄牛の革を手にとって小さく切り、すべての革から一本のひもを作り上げた。
このひもとともに、彼は戦利品の土地を回った。そして腕の良い石工を集め、その上に美しい城を建てた。
彼自身はこの土地をバンカスターと呼んだ。ひもとともにこの土地を回ったがゆえに「ひもの城」を意味すると言われている。
現在、それは多くのものにランカスターと呼ばれている。この名前の由来について覚えているものは少ない。