第二話 ピクト人/コンスタントの死/ボルティゲルン王
Constantは父に取って代わり、王権を掌握した。
神の戒律に背いた者を、王国の誰一人として認めることはなかった。こうして、彼は凶悪な終焉へと進んでいった。
悲しむものはいなかった。
キスとともに主人を売り渡した者は、罪の報いを受けることを望まないであろう。
Vortigernは、Constantと議会をその手に掌握した。
王は彼の喜ぶすべてのことをして、彼の必要とするすべてのことに同意した。
Vortigernは、修道院で育てられた王が世間知らずだということを、早い段階から見抜いていたのだ。
彼は、二人の王子が幼いことを思い出した。
彼は、王国の有力な領主が死に、国民は苦痛と不安を抱えている様子を見た。そして、機会が巡ってきたことを確信した。
今こそ、彼が王国のすべてを専有するために画策した、あらゆる悪巧みに注意を払うのだ。
「陛下」彼は言った。「私は、ノルウェーやデーン人の海賊たちが集結していることを、あなたに教えましょう。我々の騎士が減り、王国が弱くなってからと言うもの、彼らは王国を襲い、あなたの街を略奪し、破壊しようと考えています。今すぐに、そなたの部下を率いて、王国と自身をお守りください。強靭な陣地に食料を配備してください。そして、塔を整備するのです。とりわけ、裏切り者には注意してください。奴らは貴方の城が占領されるのに手助けしようとはしません。奴らは最後まで抱き込まれたままでしょう。もし貴方がこの忠告に対し、正当かつ迅速に行動しないのであれば、別の王が支配することになるでしょう」
「わかった」Constantは答えた。「そなたの手に必要なすべてを。そして、そなたの行うすべてのことを承認しよう。私よりも賢いそなたの知性をもって、この新たな難題にとりかかるのだ。私はそなたを守るために王国のすべてを与えよう。奪われず、燃やされないために。街に館、品物に財宝、これらはすべて城守たるそなたのものだ。そなたの意思は私の喜びだ。さあ、急いで成すべきことを成すのだ」
Vortigernは、きわめて巧妙だった。
彼の隠された欲望を知るものは、誰もいなかった。
彼がもっとも強靭な塔と財宝、彼のための富を手中に収めた後、彼は再び王の前に赴いた。
「陛下」彼は言った。「もしも陛下のためになるのであれば、私は代理人をスコットランドのピクト人のもとに送り、彼らの騎手と隊長、そして彼らの陣地を利用できるようにせねばなりません。危険な戦いの場に赴いたとき、我々は彼らに支援を呼びかけることが出来ます。これらのピクト人とその血族を通して、我々は辺境の男の話を聞くことが出来るでしょう。彼らは我々とデーン人の間で交渉し、我々と敵との間の大使として仕えるでしょう」
「よし」王は答えた。「そなたの喜びにおいて命ずる。そなたが望むだけピクト人を連れて来るのだ。そなたが相応しいと考える報酬を、彼らに与えるがいい。そのために必要な、相応しいことをするのだ」
Vortigernがその身を城塞都市に移し財宝をかき集めたとき、彼は望んでいた通り、その意思に応じて馳せ参じるよう、ピクト人にメッセージを送った。
Vortigernは多くの名誉を持って彼らを迎え、彼らが笑いと慰めのうちに暮らせるようたくさんの酒を与えた。つまり、酔わせて満足させた。
彼の報酬により、Vortigernはこのような状態を維持した。そして彼はそれぞれの耳元で甘く囁いた。それを聞いたもので、感激のあまり号泣せぬものは一人もいなかった。そのときのVortigernは礼儀正しく、王よりも勇敢に見えた。――実に、彼には王座か、あるいはそれ以上の椅子すら相応しいかのように見えた。
Vortigernは言葉を尽くして歓喜を述べた。
彼はピクト人を重用し、以前にもまして名誉を与えた。
彼らが杯の前に長いこと陣取り、全員が心地よく酔っていたある日、ホールにあらわれたVortigernは、彼らの真ん中にやってきた。
彼は悲しげに挨拶し、さも傷ついた男であるかのように装ってみせた。
「我が心において、もっとも親愛なるものは、お前たちだ」彼は言った。「私はお前たちに尽くしてきたし、これからも当然そうするだろう。まこと、私に富があればの話だが。しかし、この王国は完全に王の所有物なのだ。私はなにも差し出せない。私はなにも使えない。私は彼の利益のために節約することしか出来ない。この地における私の僅かな報酬により、私は海の向こうで自分の運命を探すことになる。私は力の限り王に仕える決意を固めた。私が報酬として得た土地で維持できる隊長は、40人にも満たない。すべてが私とともに上手くいったなら、我々は再び会うだろう。何故ならば、私はお前たちの善意に私自身を委ねるからだ。今、お前たちの元を去らねばならないことは、私にとって、とても気が重い。私は乞食同然だ。私には、お前たちに願うことしかできない。私の仕事がうまく言った暁には、お前たちの代理人が再び私の愛を見つけるように」
Vortigernの哀れな言葉はまやかしだった。彼は嘘を言ったのだ。しかし、気持よく酔っ払ったものたちは、彼を信頼した。
彼らは、この卑劣な裏切り者の言葉を、絶対の真理として受け取ってしまった。
彼らは集まって囁いた。
「これから俺たちはどうなるのだ。このままでは気前の良い親分がいなくなっちまうぞ! こうなったら、狂った若造の王様を殺しちまえ。そして、Vortigernをその地位に昇進させるんだ。王国と冠はあいつにこそ相応しい。我々は、あいつのもとで沢山の運試しをしようじゃないか。俺たちは今も神に背いた修道士に仕えさせられて、長い間ずっと我慢してきたんだ」
すぐさま、彼らは国王の部屋に入り込み、腕を捻り上げ、その場で殺害した。
彼らは頭から肩にかけて打ちのめした。そして、宿にいたVortigernにそれを見せつけた。
「さあ、見てくれ。俺たちがあんたと王国を紐で結びつけてやったんだ。国王は死んだぞ。そして俺たちは、あんたが俺たちの元から去っていくのを防いだんだ。さあ、王冠をかぶってくれ。あんたが俺たちの王様になるんだ」
Vortigernは、再び国王の顔を確かめた。
彼は、とてつもない悲しみを装った。しかし、心の中で密かに喜んでいて、それを狡猾に男たちの目から隠していた。
暗いまやかしを隠すために、彼はローマ人を伴って議会に呼びかけた。
彼は謀反人たちの頭を打ちのめした。誰一人として逃げ延びたものはいなかった。
だが、多くの市民は説得された。何人かは、この殺人者が王の身体に手を伸ばしていないことを証言した。誰も彼を疑いの目で見ていなかったし、Vortigernの依頼による悪事だとは、想像するものもいなかった。
二人の兄弟の保護者として定められたものに国王の死が伝えられたとき、彼らはいったい誰が王を殺し、良心の呵責もなく、同じ仕打ちをもって二人の兄弟に奉仕しようとするのか、確信していた。
Vortigernを恐れた彼らは、AureliusとUtherを連れて、海を渡り小ブリテン(ブルターニュ)に逃げ、Budes王の慈悲に身を委ねた。
親類であった彼らを、Budes王は礼儀正しく歓迎した。
彼は大きな名誉とともに彼らをテーブルに迎え、沢山の豪華な贈り物をした。
今、強い陣地と城、そして王国の街を持ったVortigernは、自分こそが素晴らしい誇りを持つ王であると宣言した。
しかし彼は楽しくはなかった。なぜならば、王国は剣によって殺された親族の仇を討とうとするピクト人によって侵略されていたからだ。
さらに彼は、二人の王子が派閥を集め、近いうちに自らの王国に戻る決意をするという、海外からの噂に悩まされていた。
噂は駆け巡った。貴族達は巨大な軍隊に加わり、兄弟を彼らの君主と認め、そしてVortigernはまもなく完全に討ち滅ぼされるであろう。
多くのものがそのことについて話していた。