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第十五話 アーサー王/ゲルマン王チェルドリック

 王国の貴族と司教は集まり、Utherの息子Arthurに、サイアンセスターにて国王になってくれるよう、伝言を送った。

 戴冠式の時点ではArthurは15歳の若者だったが、彼の年齢に対して背が高く強かった。

 私が彼の欠点と美点を並べて貴方に見せることは、言葉が横道にそれてしまい、私の望むことではない。

 彼は実に賞賛に値する、徳の高い騎士だった。数えきれないほどの人々が彼の名声を口にした。

 傲慢なものに対しては誇り高く、優しく弱々しいものに対しては慎ましかった。

 彼は強く大胆な騎士であった。極端に狡猾な隊長であり、必要とされる技能と勇気は彼の味方だった。そして彼は大いなるものを与えた。

 彼は恋人――この恋人もまた、栄光あるものである――に愛された一人だった。そして、彼の高名な行いは、正しく記憶されることが相応しい。

 彼は宮廷における儀礼を制定し、非常に素晴らしい作法をもって、優れた態度を遵守した。

 彼の勇気と寛大さ、礼儀正しさと優れた力、その両方を持っていたために、彼が生きて統治している限り、長い間、地球上のあらゆる王子よりもはるかに抜きん出ていた。

 Arthurが新しく王位に就いたとき、彼は自らすすんで宣誓した。サクソン人たちが王国に留まっている限り、彼らに平穏と安息を与えないことを。

 彼がこうした理由は、とても長きに渡り彼らは土地に問題を持ち込み、そして彼の父と叔父を死に至らしめたからである。

 Arthurは彼の仲間を支援のために呼び寄せた。

 彼は戦士たちの組織を呼び集め、彼の報奨金を気前よく与えた。そして、損害への補助金を気前よく約束した。

 彼は軍隊とともに急いでヨークへと向かった。Colgrin――彼はOctaが死んだときからサクソン人の指揮官であり隊長だった――は大勢のピクト人とスコットランド人を、彼自身の大勢の部下とは別に、仲間にしていた。

 彼は、Arthurと会い、彼の誇りを打ち砕くこと以外は、なにひとつとして望まなかった。

 軍隊はダグラス川の堤に寄り集まった。

 二つの軍隊は相手の上に猛然と打ちかかり、そして多くの隊長が死んだ。槍に突き刺されて。あるいは弩によって。あるいは投げ槍によって。

 最終的にColgrinはくつがえされ、戦場から逃げ出した。

 Arthurは、彼がヨークへと身を隠してしまう前に彼の敵を見つけようと、素早く後を追った。

 しかし、手負いのColgrinは街に避難してしまった。そこでArthurは壁の外に座り込んだ。


 Colgrinの兄弟Baldulphは岸の近くで国王Cheldricと彼のサクソン人がゲルマンからやってくるのを待っていた。

 ダグラス側の浅瀬でColgrinの身に起きたことと、彼がヨークにてArthurに厳しく包囲されていることを聞いたとき、彼は極端に重く悲しんだ。Colgrinは彼の希望の全てだったのだ。

 Baldulphはこれ以上Cheldricのためにぐずぐずしなかった。

 彼はキャンプを撤収し、ヨークへ向けて進軍した。そして軍隊から5マイルほど離れた場所にある森の奥深くに仲間を潜ませた。

 彼の親族、仲間意識を持った客人、Baldulphは鎧に身を固めた6000人の中にいた。

 彼はAuthurが準備ができていない夜のうちに襲いかかり、包囲を止めさせることができると信じていた。

 しかし、Baldulphについて調べていたとある土地のものがこの罠を暴き、国王のもとへと走り、問題を明らかにしてしまった。

 Baldulphの悪意を知ったArthurは、死を恐れぬ勇敢なコーンウォール伯Cadorに相談した。

 彼は伯爵の騎兵700騎と槍兵3000人を手配し、Baldulphが潜んでいる場所へと密かに送り込んだ。

 Cadorは国王の命令を実行した。

 サクソン人たちは彼が来るという噂を聞かなかった。なぜなら、軍隊はトランペットも鬨の声もなく、森のなかを密かにやってきたからである。

 そして、Cadorが敵に近づいたとき、彼は名乗りを上げて姿をあらわし、剣を持って異教徒に猛烈に襲いかかった。

 この戦いで死んだサクソン人の数は3000人以上だった。

 夜の闇と森の障害がなかったならば、誰ひとりとしてその脚で逃げ延びることはできなかったろう。

 狡猾な隊長Baldulphは、あらゆる倒木や低木の下に隠れることによって、安全に戦場から逃れた。

 彼は良き強い親族の半分を失い、どうやって兄弟に連絡を取り、あるいは彼を支援をするべきかと困り果てていた。

 しかし彼は彼と話すことで、技術と勇気によってそうするように、道を見出すのである。

 Baldulphは放浪楽師を装い包囲兵を偵察することを考案した。

 彼はすべての点においてハープ奏者を装った。なぜなら彼は歌をどのように歌い、ふるまうべきか、そして調律するために弦にどのように触れるべきかを知っていたからである。

 彼の兄弟のために、彼は彼自身を馬鹿者のように見せかけた。

 彼はあごひげと口ひげを半分だけ剃り落とし、そして頭髪もおなじように半分だけ剃った。

 彼はあらゆる点において淫らな道化師に見えるように、ハープを首に吊るした。

 Baldulphは今、誰にも知られることなく住居から出かけていった。

 彼はハープを演奏しながら行ったり来たりして、街の外壁の下にまでやってきた。

 塔の上の守衛は彼の言葉を聞き、そして彼を紐で縛り、壁の上に引っ張りあげた。

 救援が来ることを絶望して、そして自由になる方法も、逃げ出す方法も知らない街の人々の中で、Baldulphは語った。

 すなわち、Cheldricが500隻のガレー船を率いてスコットランドの港にやってきており、急ぎヨークに向かっているという知らせが報じられた。

 Cheldricはこれを知って、Arthurがあえて彼に手を出さないでいることを確信した。

 これは正しい判断であった。なぜなら、Arthurは急ぎ撤収したからである。

 国王は彼の隊長たちによる評議会を招集し、彼らの助言により、Cheldricをヨークで待ち受けることはせず、戦いを仕掛けないことを決定した。なぜなら、誇り高く素晴らしい軍隊が彼とともにあるからである。

「国王にはロンドンまで下がっていただきます」貴族は言った。「そして彼の家族を呼び寄せるのです。国王の力は日ごとに増していきましょう。そして、Cheldricが忍耐強く追ってきたのであれば、我々は、さらに自信を持って戦うことができるでしょう」

 Arthurは彼の隊長たちの言葉を採用した。

 彼は包囲軍にそのようにさせ、彼の城を強化し、彼の所有する戦場を選び、彼の敵をさらに悩ませるために、ロンドンまで引き上げさせた。

 Arthurは相談役の助言に従い、彼の甥に手紙を送った。彼の妹の息子、小ブリテンの王Hoelである。

 なぜなら、この土地には大勢の強い貴族が、血を分けた親族であり、そして彼の血統のうち、もっとも屈強な騎士が住んでいたからである。

 この手紙および使者の口により、Arthurは急ぎ救援にくるよう王に願った。

 もしもHoelが急ぎこなかったならば――王はこのように書いた――確実に彼の王国は奪い取られ、そして、彼の遺産が略奪されるのをおとなしく見守っていた者たちには、永遠に恥が降りかかるであろうと。


 この痛烈な叫びがHoelのもとに届いたとき、彼はいかなる弁明も障害も求めなかった。

 彼の家臣と親族は、ただちに馬具に身を包んだ。

 彼らは船を並べ、そして備蓄をした。

 これらの船の中には、隊長と弓兵を除いた騎士だけでも12000人が乗っていた。

 彼らは快適に海を渡り、追い風とともにサザンプトンの港へとやってきた。

 Arthurは大いなる喜びで彼らを迎え、彼らがそれに相応しくしてみせたように、敬意を表した。

 彼らはサザンプトンでぐずぐずせず、美辞麗句や無駄なもてなしによって一日も浪費しなかった。

 国王は家臣を招集し、そして彼の親族もひとところに集めていた。

 演説もトランペットの吹奏もなく、二つの軍隊はリンカーン市に向かって進んだ。そこにはCheldricの軍隊も押し寄せていた。しかし、未だ奪取されてはいなかった。

 Arthurは速やかに、そして密かにCheldricに襲いかかった。

 彼はホルンやラッパで騒ぎを起こすことなく、静かにサクソン人たちに降りかかった。

 Arthur王と仲間たちは、厳しく、断固とした作法で大勢を殺した。かつて無いほどの虐殺と、悲しみと破壊がサクソン人に1日のうちに降りかかった。

 サクソン人は逃げることだけを考えていた。

 彼らはより身軽に走るために鎧を脱ぎ、そして戦場に馬を捨て、幾人かは山と谷のそばへ逃げたが、大勢のものは敵の手から自らを守ろうとして川に飛び込んで、惨めに溺死した。

 ブリテン人は獲物に休息も平穏も与えずに、その踵で厳しく追いかけた。

 彼らは大勢を力強く剣を叩きつけた。頭を、首を、そして敵の胴体を。

 追跡はリンカーン市からケリドンの森まで続いた。

 サクソン人は深い森のなかに避難所を見出し、そこで残った力を結集した。

 一方ブリテン人は、森を監視し、そして厳しくそ状態を維持した。

 今、Arthurはサクソン人が夜の間に目を盗んで、そして彼の手から逃げ出さないかを恐れていた。

 よって、彼は家族に木を森の覆いの上に切り倒すように命じた。

 彼は樹の幹でもうひとつ手を打った。素早く枝に紐を通して結びつけ、敵を取り囲んだのである。

 そして、更に彼は彼の障壁の横に陣取り、誰ひとりとして中から出てこないように、そして誰も中に入れないようにした。

 森のなかのものたちは完全に困窮した。彼らには食べるものも飲むものもなかったからである。

 彼らの栄養のために、パンとワイン、それに肉と小麦粉を運び込む方法を思いつくだけの賢さと強さ、富と勇気を持つものは、誰一人としていなかった。

 三日間、彼らは食料なしで耐え、木曜日まで肉体は弱々しく空腹だった。

 飢餓によって死なないために、そして森のなかで立ち往生しないために、彼らはどうすればよいかを相談した。

 彼らはArthurに近づいていって、衣類に馬具、そして彼らの持つすべてを受け取り、ただし船だけは見逃し、彼らが彼らの土地に向けて去っていけるように懇願した。

 彼らは彼の権力のもとに人質を置き、そして年に一度貢物をすることを約束した。国王は、彼らに裸足で岸まで歩いて行き、裸で船に乗り込むことだけを許した。

 Arthurは彼らの言葉に信頼をおいた。

 彼は、出ていくことを許し、彼らの約束の保証のために人質を受け取った。

 彼は彼らに船を与え、しかし損害を与えた鎧兜は取り上げた。こうして彼らは身体を包むマントも、実を守るための剣もなしに、王国を離れた。

 彼らの帆が視界から消えるまで、サクソン人は水を横切って出て行った。

 私には、彼らがなにを望んでいたのかも、彼の心に誰の名前があったのかも分からない。しかし、彼らは船で引き返した。そして、イングランドとノルマンディーの間の海峡を通り抜けたのだ。

 彼らは帆とオールとともにデヴォン地方へやってきて、トトネスの港に錨を下ろした。

 異教徒は脅迫の言葉を吐き出し、そして土地の人々を虐殺した。

 彼らは船から溢れ出て、そして人々の間に彼ら自身を散らばらせ、武具と衣類を探し、農場に火を放ち、キリスト教徒を殺した。

 彼らは土地を行ったり来たりして、彼らの目に止まり手にとったすべてを持ち去った。

 彼らは獲物から武器を奪っただけでなく、彼らを彼ら自身のナイフによって暖炉の上で殺した。

 そして、サマセット地方のすべてとドーセット地方の大部分が、これらの海賊たちによって損なわれ、彼らの喜びのために壊滅させられた。彼らの行為を止めることができるものは誰一人としていなかった。

 なぜなら、彼らに対抗できるであろう貴族たちは、国王とともにスコットランドにいたのだ。

 道と土地を通り、衣類と略奪したすべてでいっぱいにしたサクソン人は、船でバース市にやってきた。

 しかし街の住民は素早く門を閉じ、そして彼らから壁を守った。


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