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第十三話 ウーサー王とイゲルヌ/マーリンの霊薬/アーサー誕生

 王は、この女性の多くの言葉を、称賛を交えて聞いた。

 彼の目は、彼女の美しさに捕らえられた。

 彼女は疑いようもなく驚くほど素晴らしかったために、彼は心から彼女を愛し、心から彼女を切望した。

 彼は食事中、彼女を見るのを抑えることが出来そうになかった。そして、彼の望みと情熱はますます彼女へと向かった。

 彼が食べていようが飲んでいようが、喋っていようが黙っていようが、彼女は常に彼の脳裏にあった。

 彼は彼女をちらりと見て、目が合ったら微笑みかけた。

 それが、彼が示した愛の全てだった。

 彼は、個人的な小姓を通して彼女に挨拶し、贈り物をした。

 彼は婦人に陽気に洒落た言葉をかけ、にこやかに見て、そして友好関係を大いに印象づけた。

 Igerneは慎み深く、思慮深かった。

 彼女はUtherの望みを叶えることも、否定することもなかった。

 伯爵は、これらの様子と笑い声、挨拶と贈物に注意を払っていた。

 王が彼の妻を愛してしまったことは、彼の目に疑いようもなかった。

 Gorloisは、彼女の心の中で自分に取って代わろうとする君主を、信用ならぬとみなした。

 伯爵は食事中に立ち上がり、婦人の手をとって、まっすぐにホールから出て行った。

 彼は彼について親族の人々に話し、厩舎に向かい、馬に乗った。

 UtherはGorloisが去った後、彼の侍従に伝言を送り、彼が王にいとまごいをすることなく宮廷から去るという恥ずべき悪事を働いたことを告げた。

 彼は、彼の身に悪いことが降りかからぬよう、彼の君主に悪意を持って接しないよう、行いを正すように命じた。

 彼が座席に戻らないならば、彼は彼の王にほんのわずかしか信用されないと。

 Gorloisは許可も挨拶もないまま、尊大に馬に乗り、宮廷を出て行った。

 王は、酷く彼を脅した。しかし伯爵は、なにが起きるかについて気にかけていなかったため、彼の脅しにはわずかに留意するのみだった。

 彼はコーンウォールに行き、戦争に備えるために、二つの城に布陣した。

 彼の妻は、彼の父親と血統の本拠地であるティンタジェル城に入れられた。

 それは強い砦だった。誰も登れず、崩すことのできない壁があるために、数人の隊長で簡単に守ること出来た。

 城は、海に近い高い崖の上に建っていた。

 門を破り侵入できるものはおらず、そして、塔に入る門は取り除かれ、ドアはなかった。


 伯爵は彼の女性をしっかりと塔に閉じ込めた。

 彼は、彼の宝を泥棒に侵入されて彼女を盗まれることのないよう、他の場所に隠すことをあえてしなかった。

 このような次第で、彼は彼女をティンタジェルに閉じ込め、封印した。

 彼自身については、残りの兵士たちとより大きな騎士の一団を率いて、他の堅牢な砦に素早く向かった。

 王は、Gorloisが彼の君主に対して守りを固める目的で、彼の城を戦いに備え、準備を整えていることを聞いた。

 ある意味では伯爵に対して報復するために、ある意味では家臣の妻に近づくために、王は巨大な軍勢を配置した。

 彼はセヴァーン川を横断し、嵐に乗じて伯爵の居座っている城の前へと向かった。

 彼が急いでいないことを知って、彼は塔の前に座り込んだ。そして、それらを包囲した。

 軍隊は城の周囲で七日間を費やしたが、壁を破ることはできなかった。

 伯爵は明け渡すことを頑なに拒絶し、アイルランド王に支援を求め、その救援を待った。

 Uther王の心は別の場所にあった。

 彼はGorloisと彼の城を飛び越えて、離れていった。

 その女性は彼の心にとって世界のなによりも甘美だったため、彼のIgerneに対する愛情はその場から彼を急き立て、彼を呼んでいた。

 最終的に彼はUlfinという名の家中でも秘蔵の貴族に命令した。

 彼は、なにをすれば良いのか密かに尋ねた。

「Ulfin」王は言った。「我が馴染みの友よ、相談に乗って欲しい。そなたは我が希望なのだ。Igerneへの我が愛情は、私はすべてを投げ出した。私はまったくの無一文で、元の木阿弥だ。私はこのために行くことも来ることもできない。私は起きることも寝ることもできない。私はベッドから起きることも枕に頭を横たえることもできない。私は食べることと飲むことのどちらもできない。私の頭のなかはあの女性だけでいっぱいだ。我が望みのままに彼女を得るために、私はなにも言えない。だが私は、そなたが我が望みの相談乗ってくれなければ、私が死人となることを知っている」

「おお、我が王よ」Ulfinは答えた。「貴方の言葉は驚きだ。貴方は貴方の戦争のために伯爵を酷く苦しめた。そして彼の土地を焼き払った。貴方は彼女の夫を牢に放り込むことで妻を勝ち得ようとしているのか? 貴方は婦人への愛を領主を苦しめることで示そうとしている! いや、この問題は私の手には負えません。そして、私は貴方に助言できるものをひとりだけ知っている。Merlinが我らの軍隊に同行しています。彼を呼びにやってください。彼は賢い聖職者で、生きている人間のなかで最も優れた相談役です。もしもMerlinが貴方がどうするべきか言わないのであれば、貴方を情熱に打ち勝たせるものはいません」


 Uther王はUlfinの助言に従い、Merlinを連れてくるように命じた。

 王は苦々しい胸の内を告げた。

 彼は彼の望みを叶えるための道を見つけてくれるよう、Merlinにすがるように願った。そして、彼は有能だった。もしもIgerneによって彼が慰めを得られないならば、彼は死なねばならぬがゆえに。

 それでもこの聖職者は王の意思のために探し、人を雇った。

 もしも王の大いなる悪行と喜びのために金が必要とされたのであれば、金と富は盛大にばらまかれた。

「閣下」Merlinは答えた。「きっと彼女は得られましょう。決して、女性の愛の為に貴方が死んだなどと言うことのなきよう。早く正確に、私は貴方の望むものをもたらすでしょう。さもなくば、私は王の手により邪悪な賞金をかけられます。お聞きください。Igerneはティンタジェルにて、とても厳重に守られています。城はしっかりと閉じられ、そしてあらゆる物資が豊富に蓄えられています。その壁は高く堅牢で、力ではどうにもなりません。そして食料は豊富に備蓄され、包囲したところで攻略はできないでしょう。すべての見張りだけでなく、城守によって城は守られています。私はどうやってその中に入ればよいのか、よく知っています。我が喜びにて、私の霊薬を使うのです。私が作ったもので、人間の顔つきを隣人のそれに変えることが出来ます。そして二人の人間はそれぞれ相方の風貌を得るのです。身体も顔つきも、しゃべり方も見かけも、疑いなく、貴方をコーンウォール伯に見せかけて形作ることができます。理由を述べていたら言葉も時間も足りません! さあ、閣下、伯爵に化けるのです。私は、Bertelの外見を装って、貴方の冒険にお伴しましょう。Ulfin、ここへ。Jordanの外見を装い、来るのです。この二人の騎士は、伯爵の選んだ友人です。彼らは心と心臓で非常に親密なのです。このようなやり方で、我々は彼のティンタジェル城に堂々と入っていきます。そして、貴方はその女性に対し、想いを遂げるのです。我々には、我々の見かけを疑うものはひとりもいないとしか、思えません」

 王は、Merlinの言葉を信用した。そして、彼の助言を喜んで採用した。

 彼は、愛情を注いでいた貴族のひとりに、軍隊の指揮権をひそかに渡した。

 Merlinはその技巧を駆使して、伯爵とその身内に似せて、顔と装いを変貌させた。

 その夜、王と彼の仲間たちはティンタジェルに侵入した。

 詰め所の門番、そして仕事部屋の執事は、彼を彼らの君主とみなした。

 彼らは快く彼を歓迎し、そして喜んで彼に仕えた。

 肉が焼かれたころ、王は見事に騙された女性との喜びを持っていた。

 この抱擁によって、Igerneは懐妊した。貴方たちがArthurの名で知っている、善良で、勇敢で、信頼できる王を。

 こうして、高名で騎士道精神に溢れる君主、Arthurは生まれた。


 そのとき、王の部下はUtherが軍隊から離れたことをとても素早く知った。

 隊長は城の前に座り込むことにうんざりしていた。

 速く家に帰るために、彼らは鎧に身を包み、武器を手にとった。

 彼らは命令通りに戦いもしなければ、壁にかける梯子を作りもしなかった。しかし、彼らは無秩序に塔に近づいた。

 王の部下はあらゆる方向から城を攻撃し、伯爵は男らしく身を守った。しかし、ついに彼は自害して果てた。そして、城はすみやかに奪取された。

 運の良い何人かは塔から脱出し、足早にティンタジェルへと逃げた。

 そこで、彼らはこの不幸な出来事と伯爵の死を公にした。

 伯爵の死を嘆く人々の悲しみの声は、王の耳にまで聞こえてきた。

 彼は部屋から出ていき、悪い知らせを持ってきた伝令を叱責した。

「いったいなにを騒いで混乱しているのだ?」彼は叫んだ。「私は無事で、傷ひとつないぞ。再びお前たちが私の顔を見ることができたことを、神に感謝するのだ。この知らせは真実ではない。お前たちはこの伝令が告げるすべてを信じてはならぬ。彼らの言葉に真実があるとみなしてはならぬ。理由は明快、私の家族が私が死んだと思ってしまうからだ。私は誰にも別れも告げず、話すこともなく城を出たのだ。私は裏門からこっそりと出て行ったことを、そしてティンタジェルのお前たちのところへ馬を駆ったことを知るものはいまい。私は裏切り者を恐れていたからだ。今、男たちは私の死を嘆き、泣き叫んでいる。なぜなら、私は塔の中で勝ち残っていたところを、誰にも見られなかったからだ。確かに、私の塔が失われ、壁の向こうで大勢の槍兵が死んで横たわっていることを知るのは、耐えがたい出来事だ。しかし、私が生きている限り、少なくとも、私の物資を手放すつもりはない。私は王の前に出て行き、和平を請う。彼は快く私を許すだろう。私は、彼がティンタジェルに来て、我々を探して損害を与える前に、すぐに赴く。もしも彼がこの窮地において我々に襲いかかるのであれば、我々は聞こえぬ耳のために笛を吹くことになるだろう」


 Igerneは彼女が君主とみなした彼の助言を賞賛した。

 彼女の優しさゆえに王は彼女を抱きしめ、別れを告げるかのようにキスをした。

 彼はまっすぐに城から出た。彼の仲間たちも一緒だった。

 彼らが道の上で馬に乗っていたとき、Merlinは再び彼の魔法の言葉を唱えた。それによって、王とUlfinは彼らの見かけに戻り、元通りの姿になった。

 彼らは抑えることもなく軍隊へと急いだ。なぜなら、王は若者とともに、城が迅速に落とされ、伯爵がどういった経緯で殺されたのかを知ることになったからだ。

 彼は彼よりも先に隊長たちに命令し、この男たちから真実を聞き出そうと努めた。

 Utherは冒険について考え、いったい誰が伯爵を遺言を残さぬまま死に追いやったかの証人として、貴族たちを集めた。

 彼はGorlois伯爵が貴族としていかなる行為を働いたのか、臣下として相応しくなかったのか、邪悪な貴族だったのかを思い出させた。

 彼は悲痛な男を装ってみせたが、しかし、ほとんどは単純に彼を信じはしなかった。

 Utherは彼の軍隊とともにティンタジェルに戻った。

 彼は壁の上にいるものたちに向かって叫んだ。なぜ塔を守っているのか。君主は死に、城は落とされ、王国からも海の向こうからも助けは来ないというのに。

 城守は王が真実を言っていること、助けはこないことを知っていた。

 よって、彼は城の門を開け、砦とその鍵を王に渡した。

 その愛が熱情の只中にあったUtherは、すぐにIgerneを娶り、彼女を王妃とした。

 彼女は子供を連れていた。彼女は出産を迎え、彼女は息子を産んだ。

 この息子は、世界中に満ちる称賛の噂とともに、Arthurと呼ばれた。

 Authurが生まれたのち、UtherはIgerneとともにannaと名付けられた娘をもうけた。

 この娘が成長したとき、Lot of Lyonesという実に礼儀正しい君主に与えられた。

 この結婚により、屈強な騎士で、かつ気高い闘士であるGawainが生まれた。


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