第一話 コンスタンティン王/ボルティゲルンの野望
同時に公開している「アーサーの系譜 ~ブリュ物語~」の直訳版です。
私の解釈を通さない原文ではどうなっているのかと興味をもたれたら、あるいは、参考資料としてご利用いただけるのであればと思い、直訳版も併せて公開させていただきます。
Constantineは大勢の屈強な騎士を引き連れてトトネスへ赴いた。しかし、王の位に相応しいものは誰一人としていなかった。
軍隊はロンドンへ向けて出発した。そしてすべてのメッセージを送った。ブリテン人に援助するよう命令した。なぜなら、彼らは隠れ家から出ることを恐れていたためである。
この便りを聞いたブリテン人は集まり、激しい雨の中、森と山から、兵隊と歩兵たちに守られた軍隊の前にやってきた。
長く続いていた問題を終わらせるために彼らは行進し、ついにこの土地に悪影響をもたらす悪人たちを完全にくつがえした。
この後、彼らは王国のすべての領主と貴族に命令し、サイアンセスターで大会議を開いた。
その場で、手間取ることもなく彼らはConstantineを王に選んだ。否定するほどの図太いものはその場にいなかった。
彼を王に任命したとき、彼らは素晴らしい喜びをもって冠を彼の頭に乗せ、自身が彼の部下であることを認めた。
その後、彼らの助言により、Constantineは優れたローマの血を引く女性を妻とした。
この女性とともに、彼は三人の息子をもうけた。
Constantと名付けられた長男はウィンチェスターで育てられ、そこで修道士の誓約を交わした。
次男はAureliusと名付けられ、彼のサーネームはAmbrosiusとされた。
最後のひとりはUtherであり、この地で最も永らえたのは彼だった。
ゴッセリンの大司教を後見人として、二人の従者が選ばれた。
Constantineが生きている間は平和だった。しかし、それは長くは続かなかった。彼の治世はわずか一二年だった。
彼の家にはとあるピクト人がいた。その男の人格は落ちぶれ、裏切り者で、汚らわしい犯罪者だったのだ。
私は、彼が王に悪意を抱いた理由をいうことはできない。
彼は隠しごとを打ち明けるふうを装い、王をひそかに果樹園の脇へと連れだした。
この犯罪者が話しかけ、ナイフを振りかぶり、抜け目なく突き刺して殺すそのときまで、王は自分の身を守ろうとは考えなかった。
そして、彼は庭から逃げていった。
長い間、私はConstantineを殺したのはVortigernの仕業だと聞かされてきた。
領主や善良な人々を襲った王を失った悲しみは、巨大なものだった。なぜなら、王国には幼い三人の子どもたちを除いて、王子がいなかったからである。
彼らは墓の中に彼を横たえた。しかし、彼の遺言を覚えている賢人はいなかった。
王国は統一され、彼らは自身の王を見出さねばならない。
彼らは、二人の子供のうちどちらを選ぶべきか、とても悩んだ。なぜなら、監督官が預かっている彼らは、見る限り小さく弱く、どちらが良く、どちらが悪いのかわからなかったから。
長男のConstantは比較的適齢だったが、彼の生活を奪うことはしなかった。誰もが、修道院から彼を連れ戻すことを、愚かな恥だと思った。
議会は、Vortigernがいないのであれば、二人の子供のうちの一人を王と定めようとした。しかし、彼は議会の前に現れた。
Vortigernはウェールズ出身の伯爵だった。
彼は強い騎士で、物資と親族にすばらしく恵まれていた。
彼の言葉は非常に礼儀正しく、法律官の中で正当かつ慎重だった。そして彼はずっと前から彼のための根回しをおこなっていた。
「いったいどこに、」彼は言った。「躊躇する理由があるというのだ? 修道士Constantを我らが王とするしかないのだ。彼は正当な相続人で、彼の兄弟は胸までも届かないではないか。しかし、余所者の頭上に王冠を載せるわけにはいかぬ。さあ、彼の肩からガウンを取り除こうではないか。私は、我が魂に罪を負おう。私の手で、彼を修道院から連れ戻そう。貴方がたの前で、彼を王位につけよう」
しかし、議会の領主たちは黙っていた。修道士に王の重責を負わせることで、彼らの目は恐れをなしていたのだ。
Vortigernは邪悪な決意をして馬に乗り、素早くウィンチェスターへと向かった。
彼はConstantを探し、彼と先に話をさせてもらえるよう願い出た。
「Constant殿」彼は言った。「そなたの父は死に、そして彼らはそなたの兄弟に王座を与えようとしております。そのような名誉はあってはなりません。冠と王座はそなたのものです。もしも、そなたが私を愛し信用するのなら、そなたのために我が財宝をさらに増やし、そしてそなたをみすぼらしいボロ布から解き放ち、王権と白テンの毛皮の中に座らせることをお約束いたしましょう。さあ、今こそ選ぶときです。この修道院か、それともそなたの受け取るべき遺産かを」
Constantは王権を強く望んでいた。彼は、彼の修道院を、ほんの僅かにしか愛していなかった。
彼は聖歌と聖書に、とても疲れていた。彼はあっさりと、いとも簡単に、去るための準備をした。
彼はVortigernを信用し、その要求するすべてを誓った。彼がそうした後、Vortigernは彼の手を強く握り、修道院を後にした。彼を止められるものは誰もいなかった。
Vortigernが彼の信頼を確信したとき、彼はConstantに修道士の服を脱ぐように促し、そして毛皮と上等な衣服を着せた。
彼はConstantをロンドンへ連れて行き、人々の歓迎の声なきまま父王の椅子に座らせた。
彼に聖油を塗油すべき大司教は死んでいたし、彼に塗油できるものも、彼と手を組めるものもいなかった。
そこにいるのは、王冠を手に取り、彼の頭に乗せるVortigernただ一人だった。
この王には塗油も祝福もなかった。彼をVortigernの手から救いまえ。