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風車  作者: ゆめりん
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後日談というよりはまとめ

「ちょっと待って下さい、ゆめりんさん」


友人に呼び止められ、タイプする指を止める私。


「なんですか」


「この男は今自殺しようとしているんですよね」


「そうですよ、何か問題でも」


すると友人は口元を手で抑え、堪えもせずくすっと笑った。


「え、なんで笑うのさ」


「いやー、なんていうか。これから自殺しようとする男とは思えないんですよね。何が、───よろしい、ならば北海道だ、ですか。滅茶苦茶楽しんでませんか?」


私は少し考え、こう答えた。


「うーん、この男にとって人生に何の後悔もないわけで、人生に対して不満を持っているわけでもないという情報は提示したよね」


「そうですね、確かに書いてあります」


「あるのは社会に対する不満だと」


「ありますね」


「問題はそこだ。結局この男もまた気づいていないんだな、社会の問題にすり替えられているだけで、溜まったストレスを発散したいだけなのさ」


「えー、オチとしてはそこですか」


友人が不満そうな声をあげる。が、それを分かっているとばかりに私は手で制し、


「いや、結果的にこの男は死ぬ。希望通りかどうかは知らないがおそらく凍死で死ぬだろう」


「何故そんなことが言えるんですか」


「簡単さ、男は地図を持たずに走りに行くのさ。携帯も持って行かないしね。確かに走り慣れた道を抜け、太平洋側から日本海側に抜けれるだろう。問題は敦賀というあの場所、あそこまで到達出来ずに死ぬとみた」


「そうですか、人間は容易くは死ねないというそれらしい記述がなされているではないですか」


「いやー、案外容易く死ぬんじゃないか。路頭に迷って死ぬとも言うし。この後書こうと思ってたんだけど、バイクっていうのは皆が思っている以上に快適だけど、同時に寒い乗り物なんだ。体感温度はとても低い」


「ええ、そうでしょうね。風が直接当たるわけですし」


友人の言葉に大きく頷き、私は続けた。


「さらに季節の情報提示をしていなかったが、11月。おそらく敦賀に到着する前に死ぬよね。手ぶらで出たらさ。家族に怪しまれるだとかそういうこと気にしている辺り、バイクに荷物すら持って行こうとしないんじゃないの、この男はさ」


「なるほど」


「と思って書いてた、がこれまでだな。オチは自殺、まあ死ぬことで決まっていた物語だし、第三者視点の書き方としてはこんなもんじゃないか?」


「どうですか、いい練習になりました?」


「いや、ならなかった。やっぱり思いつきで物語を書くのはいけないようだな」


「そうですか、まあ確かにワクワクはしませんでしたけど、結局この男は死ねるのかという疑問は湧きました」


「死ねるかどうか、という議論なら論外になってしまうな。死ねると言うなら死ねる。地図もなしに冒険に出るあたり致命的。更に荷物も積まずにツーリングは文字通り自殺行為に等しい。ツーリングは山もあれば海もある。更に11月で下手に山に入り込めば最悪抜け出せんだろうな。夜は真っ暗で何も見えないだろうし。日が沈むのも早いだろうし。はっきり言って滅茶苦茶寒いぞ。凍死が希望らしき記述をしていたが、ああおそらく凍死だろうよ」


私は苦笑し友人に言ってやった。


「次の物語は、もっと練習になるような物語を書いて下さいよ。後面白いオチつきの物語を」


友人もまた苦笑してそう言ってきた。


「そうだ、な。今回の反省点は第三者視点で結局一人を描いたことだ。ここは一人称を使うべきだっただろう。本編とは逆の問題点が出てしまった」


「まあ、序盤の見せ方は妙でしたけど。男が自分自身の遺書を残すように物語を書いていく・・・新手法!?」


友人が大げさに手を広げて大声で言ってくる。


「新・・・手法、だと。まさか、この私が新しい何かを開拓してしまったのか。恐ろしいわ」


「いえ、まあ誰かがきっとやってる手法だと思いますけどね」


「そうだね、私が最初ってこともないだろうね」


「ところで、この男が書いていた最初の辞世の句、どういう意味だったんですか」


友人が首を傾げながら尋ねてきたので、私は鼻で笑いながら、


「いやー、これまた大したオチでもないんだけどね。意味としては風車ってのはバイクの事なんだよ」


「あー、なるほど。おかしいと思ってたんですよ。なんで風車で轍なんだろうって。轍なんて出来るわけないじゃないですか」


その友人の言葉に私は大げさに頷き、こう答えた。


「確かに、けど二重の意味がこめられてる。この男はバイクを愛していた。だから風車 我が人生の轍也 なんて詩を詠んだのはある。けれど同時に自分自身を風車にたとえていたのさ。虚しいだろ、自分の主張が思った通りに通らなかったりするの。よくあるでしょ。歯車が噛み合わないって言うのかな」


「ありますね、僕とゆめりんさんでさえありますし」


その言葉が意外で、思わず、えっ、と声を出すと、友人からも間の抜けた声でえっ、と口から出た。


そうしてしばらくの静寂の後。気まずくなった私はわざと咳払いをし、話を続けた。


「こほん、まあ、なんだ。人生の虚しさを風車に例えたのさ。自分自身が社会という風で虚しくクルクル回る風車だったとね。彼は一生懸命仕事もしたさ、けれど見返りはどうだったんだい、得たものはあったのか。問題はそこさ。ブラック企業に入って、出て、結果得た物が何もなさすぎた。寧ろ失った物の方が大きかったんじゃないか。そこさ、そこを書きたかったのさ。だからわざわざ轍なんて表現を使った。つくはずもないのにね、跡なんて」


「割りとそこだけ深かったんですね、あれか。出オチってやつか」


「そう、ね。最初出てきてそれでオチがついちゃった・・出オチってやつかも。って使い方あってるのかい?」


友人は首を傾げ、んー、と少し考え、こう笑顔で言ってきた。


「いいんじゃないですか、オチがついてるし。最初でオチをつけるなんて流石ゆめりんさんです」


私は親しみと憎しみの念を込め、


「やかましいわ」


と笑顔で答えておいた。


「ところでゆめりんさん、これジャンルは冒険ってなってますけど」


「ああ、気づいた? 人生って冒険の連続だと思うんだよね」


「けどこの男、冒険する前に終わってますけどいいんですか」


「いいよ、私にとって冒険だったから」


すると友人は難しい顔をしながら、どういうことですか、と尋ねてくるので、


「大したオチでもないけど、第三者視点で物語を書くのと、こういう重苦しいテーマをどう料理してやろうか、ってそういう意味で冒険だったということさ」


「そういうことですか、本当に大したオチもないですね」


「けどすっきりしたろ、だから冒険であってるのさジャンルはさ」


この私の言葉に満足したのか友人は大げさに頷き、こんな事を尋ねてきた。


「今後もこういうの続けるんですか」


「そうだ、な。思いついた物から書いて練習しようと思う」


「じゃあ次回はしか煎餅のあの話、書いてくださいよ」


うわ、そうきたか。


「いや、あれは面白半分に語って聞かせただけで、書くとしたらジャンルはコメディーかな」


友人は間髪入れず、


「いえ、ファンタジーでしょう」


と答えてきた。その言葉に少し考え、気づけばこう答えていた。


「なる、ほど。確かにファンタジーかもしれないな。分かった、気が向いたら書こう。タイトルはしか煎餅で、ファンタジーで、R18か」


「いえ、R25くらいじゃないですか」


R25・・・だと。そんなくくりはなかったはず。


「すまん、25はないな。まあ、文章削ってしまえばR15でサクっといけるだろう。単発であの路線を全力で行こう」


「頑張って下さい」


「はい」


しか煎餅、あれを書くのか・・。気が進むような進まないような。そんなもどかしい気持ちを持ちながら私はこの物語を静かに終えることにした。


「あ、ところで」


終わろうとしたが、友人のその一言に遮られる。


「どうした、まだ何かあった?」


「ええ、あの社会に対する不満ってやつ、あれはなんか共感出来た気がします。だから近頃のライトノベルなんかもゲーム世界に入ったりとか、そういうのがテーマなのが多いんですね」


その言葉に私は腕を組み、少し考えた。


そうして次に口を開いた時、


「さて、どうだろうな。確かにこの現実はつまらない。だからゲームの世界に、と言うのはそう悪い話じゃないし、個人的に夢のある話だと思う。けど、ゲームの世界は世界でつまらない側面も持っている、そういう暗い所まで書いたらまた違ったライトノベルが出来そうだけどね。もしかすると誰かがもうやってるかもしれないが」


「ん、といいますと」


「ゲーム世界には見えないヒエラルキー、階級が存在している。そういう現実的な事も盛り込めばより現実的かもしれないね。先行組が圧倒的に有利だとかね、どうしても超えられない壁があったりね、結構ゲームも色々あるんですよ、事ネットゲームには多い。だからソロプレイヤーが多いのも現実か。が、そのソロプレイヤー全員が主人公になれるかというと、難しいかなって。ずっと序盤のダンジョン引き篭もって雑魚倒す作業とかずっと寝ずにやってみるといいよ。そしてそれを文章にしてくれって、主観が入りすぎて書けないと思う、あまりに現実的すぎて。まるで社会の縮図だな、ってレベルに酷い格差があったりする。それで本人が幸せならいい、けど本人も内心飽きながらその作業をする、そうしないとレベルアップ出来ないから。より効率的な情報やプレイ方法があるにも関わらずそうしないって人の方が圧倒的多数なんだよ」


「意外と深いんですね」


「だから私は今のところゲーム世界に入ってどうこうってのは書いていないし、そういうつもりもない。が、それでも書けというなら書こう。ただ、救いのない現実よりもっと救われない物語を書こうと思う。その上で、そこを乗り越えて救われる物語をかけたら、きっと自分としても成長出来るかもね」


「なんか矛盾してませんか?救われたり救われなかったり」


「ネットゲームやってるとあるんだよ。救われたり救われなかったりと。そう単純じゃないんだな、やっぱり人が絡んでるからなあ。暗黙の了解とかあるし、大変だよ」


「そこらも是非いずれ書いて欲しいですね」


「えっ、し、しか煎餅書いた後気が向いたらね」


「ではいずれ、言質頂きました!」


「あっ!」


こうして、今回の物語は終わりを告げる。慌ただしいような、大したオチも期待出来ないような日々を生きていくのに、時にこうした砂漠の中のオアシスのような癒やし系物語も悪くないか、そんなことを思いつつ。

あっさり終了。次回の「しか煎餅」はおそらくファンタジーで書くと思います。本編のサヴァイバル・タクティクスも進めないといけないのですが・・・。


最後に一筆。


社会に不満を言うな、そんな大人になるな。なんて人はいうけれど、今の大人が作った都合の良い言葉だと思う。問題から目をそらしているだけ、直視しようとしないだけ。現実は不満だらけだ。それでもなおこの社会が保たれているのは我々が日本人だからだろう。だからストレス社会なんて呼ばれててもその異常性に気づかないのだ。どうして我慢しながら働かなくてはならないのだろうか。時に我慢は必要だが、いつまで我慢し続けなければならないのか。


死ぬまで我慢?


それは死んでも御免だし、それなら死んだ方がマシかもしれんなあ。


なんて事を遠回しに言ったら「なら自殺するのか?」と父に言われたので今回の作品を書いてみた訳である。自殺する人間の気持ちが分かるかと思ったが、どうだろうか。まあ、私なら自殺するでしょうね。後未練があるとしたら今てかげている作品が終わっていないことだけなので、あれが終わってからだなあ。

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