第二話 「動く冒険物語」
海で死のう、男はそう決めたら早かった。
実は以前も海で死のうと思ったことがあったのだ。それは仕事を辞めた時。
とにかくやることも何もなくなって、生きている意味を見失った時があった。思えばあの時死んでいれば、と男は後悔することがあった。
死んでいれば、どうだっただろうか。あの面白いアニメにも出会えなかったし、ゲームにも出会えなかった。
そんな馬鹿げた事を考えると、死ななくて良かったと思う。
だが、今は違う。もうこの先面白いアニメもゲームも出ないだろうし、悔いはないな、と言うことだけだった。
いや、一つだけあるか。
そんな時、絶望から救ってくれた友人達。その友人達に顔向けが出来ないな、と言うことだけだろうか。
だが、よくよく考えれば海に飛び込むのだ。死体が出るはずもない。もう家族に顔向けが、と考えることもないだろう。誰に顔向けするなどと考えるより、とにかく海に飛び込みたい、男の頭の中はそれで一杯だった。
もう生きているのが辛いのだ。もうこの絶望から立ち上がれそうにない。
救いがあるとするなら、死ぬこと以外に考えられなかった。
「さて、何処だったか」
男はパソコンの電源を入れ、起動画面にパスワードを入力し、デスクトップのグーグルクロームのアイコンをダブルクリックし、検索をかけた。
検索ワードは「自殺 名所 和歌山」である。
あった、三段壁だ。
確かここには色々張り紙がされてたり、自殺防止用に色々な対策がされているはず、と更に調べていくと、やはり、されていた。
なるほど、タクシー運転手は客を三段壁に送るが、自殺者は荷物を持っていないらしい。当然だろう、自分もまた荷物等持って行かない。死ぬのだから持っていく必要はないだろう。
が、これは面白く無い記事を見つけたものだ、と男は思った。
自殺の名所として知られて、結果的に自殺対策が取られ保護されるなどというオチは求めていないのだ。
「ならばいっそ山で死ぬか」
男はパソコンの前でそう呟き、次の検索ワードを入力した。
「山 凍死」と入力し検索をする。
そして一番最初に出てきた記事をクリックし、見ると、結構面白かった。
凍死というのは凍って死ぬわけじゃないことを初めて知った。てっきり低体温になってそのまま死んでいくのかと思ったが、どうやら違うらしい。感覚としては寒さを通り越して感覚が麻痺し、そうして眠るように、と言うことらしい。
ということはなんだ。死に方としてどうなんだこれは。時間がかかるのではないか、そもそも凍死するのにどれくらいの時間がかかるのかよく分からなかった。
もっと凍死について調べてみる必要性が出てきたので調べてみる。
「凍死 時間」
と、調べると結構出てきたが非現実的なことを思い知らされた。おそらく寝ていても寒くて目が覚める、と言うオチである。
なら目が覚めなければ問題ないのではないか、と「睡眠薬 凍死」と調べたが、これまた芳しい情報は得られなかった。
結論としては死ねない。
男の夢、打ち砕かれる。
───が
「なるようになるか」
男は気分を変えた。もう事前の情報なしで行ける所まで行って、結果的に死んだらそれまでだと思うことにしたのだ。
次は天気予報を調べたが、大型台風が来ておりそれどころではないと言う結論に至った。
「晴れの日がいい」
男が晴れの日を希望するのには理由があった。それは男の「足」に理由がある。
足と言っても、二本足の足の事ではない。車の事だ。
自殺すると家族に思われたくないし場所が特定されるため自動車は使いたくなかったのである。
そこで男はバイクを使うことにしていた。愛車であるセロー250で行ける所まで行こう、と決めたのだ。
かつてはこの愛車で本州を半周し、四国もほぼ全県下道で巡り、九州も佐賀以外下道で巡った。
行っていないのは東北と北海道だけだ。ちなみに一日マックスは500キロ走りぬいた、この時は疲れて発狂するかと思った。
「案外、走ってる最中眠気に襲われてそのままこけて死ぬかも」
それはそれでいいと思った。ツーリングでこけるなどライダーとしての誇りが許さないとは思うが、万が一それが原因で死ぬならば。
それが運命だったのだろう、と男は受け入れることにしたのだ。
さて、どっち方面に行くか。
どうせ死ぬなら美しい景色の中、と阿蘇を目指して走るか。だが、阿蘇は人の目につきやすく死にづらそうだ。
ならば四国とも思うが、男としては四国の道を走りたいとはあまり思えなかった。面白くないのである。後夜はおそらくぶっ飛ぶ。別に死ぬから構わないが、面白くもないコースで死ぬのもな、と思い至った。
ならばどこまでも挑戦してみようではないか。
───よろしい、ならば北海道だ。
男の中で死に場所は決まった。北海道目指して走ることに決めた。
走るコースとしてはやや退屈ではあるが、日本海側の一本道を走っていくことにする。そして敦賀に出て、そこからフェリーで北海道へ。
そして北海道をガンガン走って、走って、走りぬいてやる!




