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風車  作者: ゆめりん
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プロローグ

「風車 我が人生の 轍也 唯風赴くままに ぶらり黄泉路旅」


男は就職活動に使う手帳の一番最初のページに、そう書いた。この一文は男にとっての辞世の句であった。


特に文才もなく、詩才もない。そんな男が書いた一文である。だが彼にとってそんなことは関係なかった。


男は満足し、手帳をゆっくりと閉じて頷いた。そうして目を閉じ彼は思う。


これでいつ死んでもいいな、と。


男は疲れていた。半年に渡る就職活動で何社も会社を巡り、説明を受け、履歴書を書き提出し、面接をし、全く同じ質問と答えが帰ってくる事に絶望したのである。馬鹿らしくなったのだ、就職が。同じ質問と同じ返答と、同じ結末。この無限にも似たループに男は精神的に耐えられなくなったのだ。


だから死のうと思う。こんな馬鹿げたループは終わりにしよう、そう決意したのである。


ただ、この一文では就職難を苦に自殺したと思われる、そう思われるのも癪だとばかりにパソコンに向かい文章を書き綴り始めた。


かつて小説家になりたいと思っていた彼は、「小説家になろう」と言うサイトで作家登録をしており、ある作品を書いていた。いや、正確には書いているのだが、これから死のうとしている人間が続きを書こうと言うのも烏滸がましい事か、と連載することを中断していたのである。


そんな彼が考えに考えた末に出した結論は、「新しい作品を一つ、遺そう」と言うことであった。完全なる遺作である。


結末は決めていた。主人公が自殺する、という結末だ。問題は「どうやって死ぬか」であるが、それは書きながら考えればいいか、といつものように男はタイピングを始めた。


小説タイトルに「風車」と書き、小説本文を書き始める。


「風車 我が人生の 轍也 唯風赴くままに ぶらり黄泉路旅」


と、淡々と書いていく。まず辞世の句を書く事で読者に衝撃を与えられるかも、と考えたが、書いた上でやはり、と男はパソコンの前で唸る。


「この一文では一体何を指すのか分からないよな」


思わず男は呟いていた。それほどにこの辞世の句には意味があるのだ、少なくとも男にとっては。


さて、この辞世の句を説明する必要があるのか否か、男は考えた末、説明は入れない事にした。物語を読み進めていくことによって意味は分かってもらえるだろうと考えたためである。が、物語自体はあっさり終わらせようと思った。重要なのはここまで至った過程と結末だ、そこに重点を置こうと決めた。


その上でこの辞世の句をどう捉えるかは読者次第なのだろう、ととにかく書き進めていく事とした。








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