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手記 2 ――甘い腐敗――

手記 2 ――甘い腐敗――


〈地球暦換算:接触後 第四十二日〉


奇妙なことを告白しなければならない。

今朝、宿舎を出るとき、地球側の警備担当者に「おはようございます」と言った。昨日と同じ言葉で。一昨日と同じ言葉で。

吐かなかった。

それどころか、その言葉を口にしたとき、私の内部に小さな温もりのようなものが生まれた。相手は笑顔で「おはようございます」と返した。同じ言葉で。腐った言葉の交換。それなのに、不思議と、そこに心地よさがあった。

母星ではあり得ないことだ。朝の挨拶は、毎朝新しく創らねばならない。昨日の朝と今日の朝は異なる朝であり、異なる言葉を要求する。同じ挨拶は、相手を「昨日の存在」として扱うことであり、それは侮辱を超えた――存在の否定だ。

だが地球人にとって、同じ「おはよう」は、むしろ安心の印らしい。昨日と同じ言葉があることが、世界の安定を保証している。彼らは変わらないことに安らぎを見出す。我々が変わり続けることに真実を見出すのとは、正反対に。

どちらが正しいのかと問うてはならない。それは通訳官の領分を超える。

だが、正直に記す。あの「おはようございます」は、甘かった。腐っているはずなのに、甘かった。


* * *


地球人との交渉は遅々として進まない。

根本的な問題がある。我々の代表団が発する声明を、私が地球語に変換するたびに、意味が崩壊するのだ。我々の言語では、声明の各単語は一度しか使われない。一つの声明はそれ自体が一回きりの構造体であり、嘘を含む余地がない。だが地球語に変換した瞬間、同じ単語が何度も再使用され、その「一回性の保証」が消失する。

地球側はそれを理解できない。彼らは翻訳された声明を読み、「本当に信用できるのか」と眉をひそめる。当然だ。彼らの言語体系では、同じ言葉はいくらでも嘘に転用できるのだから。

皮肉なことだ。我々の言語が最も誠実であることを証明するためには、この不完全な変換を経なければならない。そして変換を経た瞬間に、誠実さの証明は失われる。

……ふと思った。この構造的な欠陥は、利用できるのではないか。

いや。今はまだ、その考えを記すべきではない。

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