第1話 年始と自分会議
あけましておめでとうございます@中の世界
昨年、アバターというスキルに目覚め、フレイヤから始まりジェシーというアバターを使えるようになり、クラン『エバーヴェイル』も活動の幅を広げてきていた。メルの若返りはすでに200億円ほどを稼ぎ、ひよりの知財は莫大なライセンス費が出てこようとしている。たぶん、メルの稼ぎより一桁多いのではないかと言われているので、もう分からない世界だ。
それに比べると少額に見えるジェシーも、安全地帯の構築と継続的な使用料が約束されていて年間数億円は固いとされている。その安全地帯の拡大路線も話にでており、安全地帯の数に比例して収入も上がっていくだろう。
そのほかというと、E&Sの契約などでフレイヤやマナは外部役員という形をとっているのもあり、他に見ると少額になるがサラリーが発生している。
そして、そのすべてが一度クランに入り、クランシェアという形で分配される。ただ、そのクランシェアもエバーヴェイルの総資産によって価値が変動するらしく、膨れ上がっていく総資産に対して常に変動しており、把握はあきらめている。南さんが管理してくれていたが、その南さんも個人では動けなくなってきたということで、ギルド直轄の税理士事務所を専属という形で入らせているらしい。
つまり、お金については考えなくても、生活はできる状況だし、気にしないというのが結論だ。今までの生活で、お金の心配をしない年明けなんて初めてなんで、良い年明けかというとそうではなかった。
会議机を囲んで、俺たちは一様に暗い顔をしている。マナは、年越しだけは実家に帰るとかで、今は不在にしている。
俺は両肘をついて手に顎を載せながら、つぶやく。
「黒歴史を母さんが読んでた件は、もう忘れよう」
「いつまで同じ話題を掘り返すのよ。1号がずっと繰り返し言っているわよ?」
俺の言葉にフレイヤ(俺2号)が追求してくる。
「2号、お前には、俺の彼女になったと誤解させた責任を取ってもらうんだからな…」
俺の返しにフレイヤが途端に縮こまる。
「反省しているわ」
年末に母にフレイヤと共に会いに行ったのだが、その時に、母は俺とフレイヤが恋仲だと思い込んでいた。何故なら、俺の願望が過分に含まれた自作小説を母が読んでおり、フレイヤのフルネームを覚えていたらしい。
俺が好きだった子か、付き合いのある子を入れて勝手につくった話だとは思わなかったのだろうか。いや、けっこう思い込みの激しい人だし、フレイヤと既に恋人同士だったのではないか説を考えていたんだろう。
「ただ、母さん、小説の中身について詳しく読み込んでたな…。俺も忘れてるエピソードなんかもあったわ」
あの後、母さんが食事を出そうとしてくれたが、夜は2人で行きたいところがあると言うと残念がるどころか、すごく嬉しそうに帰してくれた。しかし、それまでは時間があるだろうということで、1時間ほど雑談をして帰ったのだ。
その時、死にかけのメンタルを酷使して、小説について尋ねてみた。そしたら、色々知っていた。フレイヤの炎魔法や、ダンジョン攻略の話などもエピソードも知っていた。ただ、ほかの脇役たち、メルやジェシーといった名前は覚えておらず、追求はなかった。
「しかし、小説の中身で色々知りたいこともあったが、現存しないならば仕方ないな」
ジェシー役の俺5号が締める。ジェシーに威厳がありすぎる。俺の存在感が霞むから、ほどほどにしてほしい。
ジェシーの言うように、俺の小説はダンジョンに飲み込まれた原稿用紙にしか存在しない。コピーとか存在しないわけで、俺の記憶と母さんの話していた内容くらいが俺のスキルを知るための材料となる。
「わかった。一端、この話はやめて、これからの計画について共有するか」
そこからは、各自の今後の取り組みについて話が出た。
指標としては、俺のステータスだ。すでに俺のレベルが300を超えている理由は、東京ビックダンジョンにてジェシーの姿で日課のように30層のエルダーエイプを倒して回っていたからだ。もちろん、フレイヤ達の狩りなども含まれるので、相乗効果でレベルが上昇したのだ。
ちなみに、このままレベル400になれば、次のアバターが出てくるんじゃないかと予想している。何がでるかまでは分からないが。
◇笹木小次郎
レベル310
HP:6202/6202
MP:11123/11123
称号:ダンジョンスレイヤー
ユニークスキル: アバター▼
アバタースロット1(フレイヤ・リネア・ヴィンテル)
アバタースロット2(金城メル)
アバタースロット3(ハヤト)
アバタースロット4(ジェシー・ラバック)
スキル:ストーンスキン
レビテート
ドッペルゲンガー Lv.4
エイジファントム
回復強化
防御強化
体術
変装
隠密
危険察知
ジェシーが手を上げる。
「俺は安全地帯の構築を大阪、福岡、仙台の順でやる予定だ。規模のでかい安全地帯だけじゃなくて、小さい避難小屋みたいなものも作ってやろうかと思ってる」
ジェシーは出張続きになりそうだな。
「わたくしもジェシーの護衛で、メルとマナと一緒にダンジョンに行く予定ですわ」
「そうなの。ついでに撮影をするから、金子さんも連れて行くの」
金子さんが行くのなら、俺がコージとしてスタッフで行く必要はないかな。そこで、俺3号のひよりが発言する。最近多いひより女史の姿じゃなく、年相応のひよりの方だ。ダンジョンに潜るつもりが全くないらしく、研修もチューターも受けていない。でも、ダンジョンへの貢献度は計り知れないから、何故か仮免ギルド登録のはずが、Dランクがついてしまっている。ただし、ダンジョンには潜れない。
「僕は開発を継続中。転送機の開発に向けて名古屋ダンジョンの22層にあったアイテムを貰ったんだけどさ。わりと難航しててね。俺1号には、僕になってもらって一緒に研究をお願いしたいな」
2人体制なら、開発も進むかな。
「僕が魔装開発局にいくからさ。部屋でアイテムの解析をしてもらってもいい?」
ひよりの要望を優先するかな。ダンジョン攻略に早く色々と投入したいところだ。
「分かった。次のアバターが出現するのを待ちたいし、ギルドベースにこもることにするかな。でも、魔装開発局って年始は何時からやってるんだい?」
ガームドさん以外はクリスマス休暇をとっていたが、年始はいつなんだろう。
「2日には始まっているようだよ。年始を長く休む習慣はないみたい」
そうなのか。3日くらいは休みたいなぁ。
ジェシーがこれで終わったかなと立ち上がる。
「今日は美味しいもの作るから準備をするかな。さて、誰か手伝ってくれ」
よし、先日まで腕を振るっていた経験を活かすかな。アバターのジェシーを起動する。
「2人で作るか」
ジェシーが2人になりタッグを組んで料理を作る。
「ごめんなの。メルとフレイヤは、マナから一緒に初詣にいこうと言われているの」
確かについでに配信をしようという話にもなっていたはずだ。配信の収入も多くなってきており、フォロワーに対するサービスも必要だ。
「あぁ、行ってこい。ついでだ、ひよりも初詣にいったらどうだ?」
「え? 僕? うーん、そうだね。最近忙しかったし」
ひよりも行く気になっているし、俺は5号と一緒に料理を作って待つことにしよう。なんか、いろいろ考え込んだ時に料理を作ると気がまぎれるのだ。
そんなわけで、俺たちジェシー2人で調理を開始した。
ジェシー2人が揃えば、きっとすごい料理ができますね。
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