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世界はまだ、俺が魔女で聖女だと知らない  作者: 月森 朔
第4章 宿の主人になった日
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第17話 ジェシーと東京ビックダンジョン

ダンジョンにお仕事です!

 名古屋ダンジョン22層の攻略後一週間して、俺こと俺1号はジェシーの姿で東京ビックダンジョンに向かった。単独ではなく、俺2号のフレイヤ、俺4号のメル、そして、マナのパーティだ。

 ひよりは、新開発のダンジョンガイダンスのリリースに向けて魔装開発局側に入り浸っているらしい。ガームド局長が帰ってきて開発が加速したらしく、今回の東京ビックダンジョンの安全地帯の話もそこにダンジョンガイダンスの試作機を置くという話もあって、試作機を預かってきたりしている。その試作機の話もあったため、この東京ビックダンジョンでの依頼は大和クランからの個別依頼ではなく、ギルドからの公的な依頼という形となり、作業料として1億円の依頼料が払われることとなった。相場が分からないが、貰えるものは貰っておこうということになった。

 なんか、利用料がどうのこうのという話も聞かされたが南さんに丸投げしてしまったから問題ない。


 そういうわけで今回は、ジェシーが主役だ。目的地の東京ビックダンジョンは30年前、ダンジョンができ始めた頃に開業した展示場だが、開業後5年目くらいにダンジョンが現れたそうだ。

 東京という立地もあり、探索者の出入りも多く、世界でも有数の深いダンジョンとして有名となっている。日本のトップクランである大和も定期的に攻略をしており、今59層が最前線らしい。

 そこにはヘリポートが設置されており、海外の有名な探索者になると成田空港から直接乗り込むらしい。


「ヘリコプター初めて乗りました。楽しかったです」


 そう南さんが楽し気に話す。そう、今回は、大和クランからの依頼ではあるが、ガームド局長からの依頼もあり、最終的にギルド側からの要請となった。そして、移動にヘリコプターが用意されたわけだ。


「メルは、2回目なの。富士山ダンジョンのときに乗ったの」

「わたくしは初めてよ。生身で飛ぶよりも楽よね。一台欲しいわ」


 フェザーステップは結構大変だもんな。文字通り脚力で空を登っていくわけだ。でも、自家用ヘリとか必要か?

 俺は早速ペルソナを起動してみる。ジェシーはなんというだろうか。


「おれは武装ヘリと違って武器がなくて不安になったな。武装ヘリって買えるのか?」


 そんな冗談を言うお茶目なコックだ。俺たちは設定だとわかっているが、マナは軍用に乗ったことがあるんですねとか、武装ヘリってどこで買えるんでしょうとか、素直に応対している。かわいい。


「さて、迎えに来てくれたようだ」


 俺が指さした先には女性が立っていた。


「これは、先日のお嬢さんじゃないか。今日の案内に来てくれたのか」


 それは22層で助けた魔法使いの女性だった。


「ジェシーさん、先日は助けていただいて、ありがとうございました。今日は、ジェシーさん方を現場に案内する役となりました寺野下みどりと言います。よろしくお願いします」

「あぁ、よろしく」


 なんか体が動いて、自然にハグをする。挨拶か!? 


「あ、あ、あ、あの、困ります」


 腕の中でみどりさんが顔を赤くする。それを見てマナが手で顔を覆う。この娘は本当にうぶだな。


「すまない。挨拶の癖でな。日本だとこちらだな」


 ハグから解放して、改めて手を出すと、しっかりと握手してくるみどりさん。


「いえ、でも困ってません。不快じゃないというか、正直嬉しいというか、ええと、ご案内しますね。こちらです」


 そういうと、フラフラしながらも先導してくれる。南さんはギルド側と仕事があるためダンジョン入り口にて別れた。


 その後は29階層までは15時間もかかった。安全な道を回り道したりしたこともあるが、単純に遠かったのだ。


「回復魔法ありがとうございます。おかげでいつもよりも早く着きました。でも、ここを抜けるのは、少し大変なんです。安全なルートがほぼなくて。少し時間がかかりますが、私が道を開きますね」


 目の前には湿地地帯が広がっており、何が潜んでいてもわからない水場が各所にひろがっている。

 そこでジェシーがテリトリーを使う。そこには、幾つものモンスターが潜んでいる様が見える。


「これなら問題ない。前を行かせてもらう」


 手には中華包丁を握る。装備もいろいろあるんだが、なぜ調理器具。


「魚を捌くにはこれだろう」


 ニヤリと笑いながら足元の悪い中を進んでいく。体重は結構あるはずなのに、ぬかるみに足をとられることなく、スルスルと進んでいく。

 そこからはジェシーの独壇場だった。湿地に潜む魚が水面から飛び上がって襲ってくる。それを、次々と料理する。この料理はもちろん攻撃という意味なんだが、調理スキルが生かされているような気がする。そのまま鍋に突っ込んで調理できるくらいのサイズに切り分けられているからだ。

 もちろん、魚を捌いたところで消滅するから意味はないのだが。


「ジェシーさん、流石です!」


 ここにくるまでも、みどりさんがジェシーのことをベタ褒めだ。


「私たち必要なかったんじゃあ」


 マナが暇そうにしている。確かに雑魚処理はジェシーで事足りている。


「大丈夫だ。メインディッシュが向こうからやってくる。結構大きいぞ」


「マッドマーマンです。集団でやってくるので厄介です。一体一体はそこまで強くないですが、連携してきます。気をつけて!」


 周囲が囲まれていて足元が悪い。このエリアが嫌われている理由は、それだけで十分だ。しかし、ジェシーにとっては問題ない。次々に飛びかかってくるマッドマーマンに最小限の動きで反撃を加える。

 鋭い爪を巻き取るように抱え込むと自らの顔に食らわせる。噛みついてくる奴の頭は、頸椎を破壊していく。

 傍観していたマナにも何匹か通してやると対処していた。この程度ならいけるだろう。


「数が多いわね」


 フレイヤの声によって周囲にフレイムビットが撒き散らされ、飛び出たマッドマーマンが弾け飛ぶ。


「フレイヤは、容赦ないな」


 俺の呟きにフレイヤが苦笑いする。


「ジェシーには負けますわ」

「そうか?」


 俺は手元に持っていたマッドマーマンの首を投げ捨てながら答える。


「素敵です! ジェシーさん。何体も同時に捌くなんて、うちの前衛でもなかなかできません!」


 次々とエビの頭でも剥いているかのように一抱えもあるマッドマーマンの頭を削ぎ落とす俺に声援を送ってくる。彼女も攻撃魔法を放ってマッドマーマンを打ち倒している。さすがトップクランの魔法使いだ。

 そうして、29層の踏破に1時間ほど費やし30層にたどり着いた。

 

 30層は岩石地帯は所々に煙、いや湯気が立ち上っている。


「あれは温泉の湯気なんですが、モンスターの出現場所でもあって、お湯を汲んだりするしかないんです。さぁ、メンバーが待機してますのでこちらへ」


 みどりさんの案内でついたところは温泉が多数湧く温泉地帯だった。


人型にめっぽう強いジェシーです。

※南さんの行方を書くのが抜けてたので書きました。

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― 新着の感想 ―
シェフなのに人型に強いのか(困惑 ま、まぁ、オークも人型だし……
シェフとして獣より人型に強い事でいいのか?!
次回はいよいよ温泉回!
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