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世界はまだ、俺が魔女で聖女だと知らない  作者: 月森 朔
第4章 宿の主人になった日
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第12話 小次郎と潜入

俺1号はどうなるのか、ご覧いただければと思います。

 野獣エバ攻撃隊からの連絡により、ドラゴンのいる大空洞の状況は共有されていた。大空洞の形状や広さ、天井に開いた穴、赤いアークドラゴンが巣の中に寝ている様などが分かる。その後、攻撃を仕掛けるという連絡があった後、30分が経過した。次第に野獣の牙のベースキャンプは緊迫した空気に包まれていった。


「連絡がないのは問題がない証拠というじゃないか」


 金子さんが明るくふるまうが、誰も答えない。そのタイミングで通信が入る。


『こちら野獣エバ隊。赤いアークドラゴン以外に黒いアークドラゴンが出現し、その2体と交戦中。現在、大和隊の後衛部隊が孤立、救援のためボスとの交戦を継続しています。しかし、ボスが多数のオーク、ゴーレムを呼び寄せており、拮抗状態となっています。どうぞ』


 通信役は野獣の牙の弓使いだったと思う。弦を弾く音が何度も聞こえてくる。ダンジョンガイダンスを背後に従えて攻撃をしていたのだろう。


『こちら野獣ベースキャンプ。状況を把握した。救援は必要か!?……あ、どうぞ」


 狭間さんが問いかけると、すぐに返事が返ってきた。


『こちら野獣エバ隊。フレイヤさんの魔法で持ちこたえています。現在、大和隊の後衛部隊の方が深刻と思われます。割れた地面から新たな坑道に迷い込んだようで、同じくオークやゴーレムに襲撃されているようです。どうぞ』


 狭間さんと一緒に待機していたメンバーの人が口を開く。


「救援に行こうにも場所が分からないことには対応できませんね」


 狭間さんもそれに同意する。しかし、両者とも冷静に会話しているように見えて、常に武器を握りしめており、飛び出すのをこらえているようだ。


『こちら大和ベースキャンプ。緊急会議を開きます。集合してください。どうぞ』


 そんな通信が入る。数人が連れ立って大和のベースキャンプに向かうことにした。こちらは少数なので全員だな。


『こちら、野獣エバ隊のフレイヤよ。きこえる? どうぞ』


 その時、フレイヤから通信が入る。


「お。こちらコージ。今は野獣ベースキャンプに居る。どうぞ」

『コージ、大和の後衛部隊が危険なのよ。探すには、わたくしの力がいるわ。坑道の中を逃げているから音が頼りよ。でも、わたくしはドラゴン対応で動けないわ。ねぇ、わたくしがもう一人いればいいのですけれど。どうぞ』


 なるほど、フレイヤになれってことか。


「こちらコージ。大和側で緊急会議があるが、俺も何か考えてみる。こちらができることがきっとあると思う。安心してくれ。どうぞ」


 そう答えると、


『分かったわ。期待しているわね』


 そんな通信で終わる。フレイヤが動けないなら俺が動くのがいいな。


「金子さん、すみません。ちょっとフレイヤの支援を考えるので、一度エバーヴェイルのベースキャンプに戻ります」

「え? あぁ、そうだな。何かいい案を考えてやれ。ああ見えてまだ若い娘だからな。不安なんだろう。声をかけてやるだけでも落ち着いたりもする」


 そういうと辰巳さんは、金子さんを連れ立って大和のベースキャンプの方へと走り出していった。めちゃ、はえーな。60歳手前の走りじゃない。



 さて、俺がフレイヤになるとして、フレイヤが2人いることになって面倒なことにならないか? 変装するか? 

 そんなことを考えながらエバーヴェイルのベースキャンプにたどり着いた途端に、ステータス画面が開く。フレイヤたちが経験値を稼いでくれたおかげだろう。ちょうど300レベルにあがった。そして、期待していた画面が出てくる。あぁ、俺2号、レベルが上がりそうなのを見ていたんだな。



『こちらの中から選択してください』


『リサイクルショップ店員 古庭 理子 レベル300』

『ペットトリマー     雪見 凛々 レベル300』

『コック         ジェシー・ラバック レベル300』


 期待していたのと違って、これはキワモノばかり…。みんな俺の小説の脇役じゃないか。だが、この中で今の状況ならコレ一択かな。敵はオークやゴーレム…だし…。

 そして、俺はアバターを選択する。



 しかし、その場で変身したのはフレイヤだ。今、大空洞で戦闘している俺2号と同じ姿をしており、短めの黒マント、赤のクロップドTシャツに赤のプリーツスカートに黒いタイツ、そして短めの黒ブーツだ。E&Sのデザイナーが新調してくれたもので、体のラインがとても綺麗に出る。遠目で見てもフレイヤだとわかるだろう。

 久々にフレイヤになったのもあって、少し体の調子を確認する。やはり、プロポーションが良い。早く高級エステに行きたいし、温泉につかりたい。そんな思いをぐっとこらえる。あとの楽しみにとっておこう。

 俺はマジックバッグからE&Sに用意してもらった黒いコートを取り出すと身にまとった。長い赤毛をまとめた上で、フードをしっかり被った。変装というよりは、着込んで誰か分からないようにした感じだ。



 ここからの作戦はこうだ。フレイヤのスキルで鉱山の上に飛び、大空洞の天井にあるという穴から侵入。そして、戦闘音を頼りに大和の後衛部隊を探す。発見後は、フレイヤ姿ではなく、新たなアバターになり救出する。ほら、完璧だ。いや、完璧とはほど遠いな。音を頼りにってところに不安しかないが、フレイヤの耳の良さを信じよう。


 そして俺はテントの外へと顔を出す。周囲には誰もいない。野獣の牙のベースキャンプも今は無人のはずだ。


「では行きますわよ」


 黒いコートを着こんだまま、フェザーステップにて空に駆け上がる。体や顔が見えないように、フードが外れないことを気にしつつ高度を上げていく。移動中の辰巳さんたちに見られないようにという配慮だが、もう既に大和側のベースキャンプについているだろう。

 ところで鉱山の標高は1000メートルくらいと計測されている。なかなかの高い山で、斜面は細かな岩と砂利でおおわれており富士山に近い様相だ。しかし、富士山ほど綺麗な形ではなく、歪な稜線をしている。


「有りましたわね。大穴」


 山頂に大きい穴が開いている。火山を思わせるものだが、実際には火山ではない。その下には大空洞があり、今もみんなが戦っている。

 


 俺はその穴の中に躊躇なく飛び込んでいった。足から落ちる形になったのでコートの裾がはためく。スカートも同じくめくれあがってしまう。俺はスカートを抑えつつ、フェザーステップで速度を落とすという器用な動作を行いつつ穴を下っていった。


 風切り音で最初は聞こえなかった穴の下だが、確かにドラゴンらしき咆哮と金属音や魔法による破裂音みたいなノイズがどっと押し寄せてくる。そして、俺は大空洞内に入り込んだところで、素早く地面に落ちている岩塊の傍へと身を寄せる。2頭のアークドラゴンが戦っているのが、フレイヤたちだろう。火の魔法がちらちらとして人型のモンスターを屠っているのが分かる。しかし、黒いドラゴンが召喚を続けているようで、消耗戦の様相だ。しかし、ドラゴンたちも攻撃を加えているが決定打は無い。特にメルの回復魔法の光が前衛たちを覆っている限り、ゾンビのごとくよみがえってくるのだから。


 さて、俺は俺の仕事をするか。

 周囲の確認にと耳を澄ませてみると、今潜んでいる岩塊の近くからもオークたちの叫びが聞こえる。ちょうど、そこには地面に亀裂が入っていた。ただし、亀裂といっても50メートルくらいはある巨大なものだ。もはや地盤沈下とでも言ってもよいだろう。周辺に落ちている岩塊が地盤を砕いたのかもしれない。そこには、いくつか装備らしき物が落ちていることも見て取れる。ここの下に後衛部隊が落とされて、召喚されたオークがなだれ込んでいるのかもしれない。


「この穴の中で炎の魔法は控えるべきかしらね」


 しかし見えないことには探すこともできない。何とか見えないものかと目を凝らしてみると、意外に見える。おー、暗視みたいな能力なんだろうか。フレイヤさんってば、高性能だな…。

 そして、俺はレビテートを使いゆっくりと穴の中へと潜ったのだった。


なかなか戦闘シーンが難しくて筆が進まないですね(汗)

フレイヤの戦闘が派手じゃない感じなのは、作戦に忠実に動いていることなんかもありますが、相性が悪い敵というのもあります。爽快感を損なわずに、苦戦する部分を描写できるように、上達できればなぁと思う日々です。週末には戦闘回の区切りが来ますので、もう少しお付き合いくださいm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
アバター、また全員女性やんけ!(歓喜) 笹木が書いてた小説の主人公がアバター化すれば、笹木も戦力に出来そうですね……
1号がフレイヤに変身してるのが良かったよ 1号の最初の変身がフレイヤだからもう変身しないかと不安していた
3人のうちいったい誰を選んだのか…!? リサイクル店員は何か特殊なアイテムを持つ…!? それともペットトリマーでドラゴンを懐かせる…!? あるいはコックでモンスターを料理する…!? >フレイヤの戦闘…
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