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世界はまだ、俺が魔女で聖女だと知らない  作者: 月森 朔
第4章 宿の主人になった日
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第11話 大和と分断

戦闘にイレギュラーはつきものですよね。

 俺は俺2号(フレイヤ)だ。黒ドラが自分の巣の上の天井を破壊するという暴挙に出たせいで、巨大な岩が多数降り注ぐ結果となった。俺は、サイコキネシスを最大限の力で使いそれを止めようとしたが、岩のあまりの重量に完全に静止することができないことが分かった。そこで、落下を遅らせることに集中する。


「今のうちに避難よ!」


 俺が何をやっているか分かったのだろう。たった数秒の猶予ができたに過ぎないが、野獣の牙と大和の前衛は、こちらに向かって退避してくる。大和側については黒ドラと赤ドラのせいでよく見えない。しかし、あちらにも多少岩が降り注いでいて、黒ドラも赤ドラも無傷ですまないんじゃないかと思う。

 大岩がゆっくりと水の中を沈むように地面に落下すると轟音と共に土埃が舞い視界が一時的に奪われる。


「大和隊が分断された! 後衛部隊が孤立してしまった」


 そう発言したのは増田代表だった。増田さんの声に焦りが見える。確かにこちらに退避してきたのは大半が赤ドラに張り付いていた前衛たちだった。


「増田さん、視界がもどるまで動かないほうがいいです」

「しかし…」


 土埃が晴れてくると天井の岩が地面に落ち大きな障害物となっていた。


「フレイヤさん、ありがとうございました。あなたのおかげで命拾いしました」


 野獣の牙のメンバーが礼を言ってくる。牟田さんからも加えて礼を言われる。


「いいのよ。でも、結局岩は落ちてしまったわ。野獣の牙のみなさんは、無事かしら?」


 俺の隣にはメルとマナも居るし、野獣の牙は無事だとわかる。いよいよ大和側が心配なわけだが。


『こちら大和隊の後衛部隊です。全員無事ですが、岩の落下でできた亀裂に入り込んで出られません。ドラゴンからは逃れています。どうぞ』


 しっかりした声で通信が入ったため、みんなから安堵の声が漏れる。


「こちら大和隊の前衛部隊だ。分かった。前衛部隊も全員そろっている。イレギュラーが起こったため戦闘は中止。迂回路を探索してくれ。もし発見できなさそうであれば、こちらから救助に向かう。どうぞ」


 増田さんが大和の後衛部隊に向かって指示を出す。

 今回は、ドラゴンの攻略ではあるが無理をせずに情報を持ち帰るという方針になっていた。しかし、そこで不吉な音、多数の足音が近づいてくるのが聞こえてくる。フレイヤの耳が良いおかげでどちらから来たかもわかる。二足歩行のようだが、人数的に後衛部隊では無いことが分かる。


「あちらよ、大人数だからモンスターの可能性が高いわ」


 俺がそういうと皆も警戒を始める。メルがその場にいる総勢40人くらいに向けて支援魔法を飛ばす。

 そいつらは、黒いオークだった。オークといってもゲームによくいるような豚のお化けみたいな物ではなく、洋ゲーホラーにいそうな形相だ。口からは鋭い歯がみえ、鼻がつぶれ、細い目からは黒目しか見えず、灰色の皮膚をしている。皮鎧を着こんで武器を持つ、その姿はある程度の知能と凶悪さを持ち合わせていることがうかがえる。


「おいおい、こいつらどこから出てきた!?」


 誰かが叫ぶが、そのまま戦闘に入ることになった。次第に晴れてくる大空洞だが、その中にこちらを睨みつける黒ドラと赤ドラが2体見えたのだ。

 黒ドラが地面を踏みつけると魔法陣が展開し、続々と黒いオークが現れてくる。


「黒いのが階層ボスっぽいですね」


 しぶといアークドラゴンのくせに手勢を連れているとなると中々に厄介だ。


「少し時間を稼いでくれないか、後衛部隊の撤退の間だけでいい」


 大和側からの要請に牟田さんが俺を見てくる。


「わたくしは問題ないわ。むしろ、倒してもよいのでしょう?」


 そういうと、周囲にいるオークに向けて炎の連鎖、フレイムリンクを使う。それは次々にオークに絡みつき、焦がしていく。


「わたくしと勝負しなさいな」


 黒ドラに微笑みかけてみると、こちらに向けてブレスを放つ呼び動作を見つける。


「そうは、させるかってよ!」


 増田さんがそういうと手持ちの武器を黒ドラの口めがけて投げつける。とっさに避けたため、黒ドラのブレスが止まる。武器放り投げていいのか?と思ったら、既に手元に武器を構えている。投げつけるためにいくつか武器を用意しているようだ。

 マジックバッグが役に立っているようで、替えの武器が何本も置いてある。

 そのうち、大和側の人間が何人かが黒ドラに取りつき始め、戦闘が本格化する。赤ドラも多少攻撃に加わるがダメージが残っているのか、攻撃に精彩がない。


 黒ドラは前衛たちと距離を取りつつ、更にオークを召喚していく。今度は赤ドラが鳴き声を上げ始める。咆哮ではなく鳴き声だった。


 ゴロゴロという音とともに、小型ゴーレムの集団が湧き出てくるように集まってくる。


「これは、ちょっと時間がかかりそうなの」


 メルが杖を握り、自己へのバフを軽く掛けていく。


「なんでこんなにすぐ助けを呼ぶのよ!? もっとがんばってから呼んでよ」


 同じことをみんな思っていると思うが、そんな苦情はとりあってくれないだろう。


『こちら大和隊の後衛部隊です。オークとゴーレムが大量に発生しました。後退しながらの戦闘となります。脱出を試みますが、負傷者も出ていて危険な状況です、うあっ』


 途中で通信が途切れた。


「あっちは良くない状態のようだね。増田さん、さっさと倒しますよ!」


 牟田さんはそう言うと、両手に剣を持ち、周囲のオークを切り刻み、ゴーレムを蹴とばす。そして、ドラゴンへの道を開けていく。大和の前衛は自己回復が出来る要員が居るため、まだ崩れていない。


「フレイヤさん、少々熱くてもいいので対処をお願いします! A、Bは余裕が出来次第、ドラゴンに向かいます! そのあと、ドラゴン対応に参加してください」


 牟田さんの要請が出たので、フレイムリンク、サイコキネシス、ドレイン・ウィップによって小型モンスターを殲滅していく。マナはメルに迫ってくるオークを袈裟切りにしている。しかし、オークのせいで皮鎧が何か所か破損している。皮鎧が破損したところから下着が見えているようだが、あれは水着だ。


「マナおねーちゃん」


 メルがマナの治療を施す。

 その後、次々と小型モンスターを倒しているのだが、周辺からの沸きが多い。今はフレイヤの殲滅力が勝っているので問題はない。大魔法で範囲攻撃なんかができればいいのだけど、閉所ではそうは行かない。しかし、大和の後衛部隊が心配だ。なにか良い手はないだろうか…。


「あ…」


 俺は妙案を思いついた。そうだ、俺1号がいるじゃないかと。


俺1号! 出番ですよ!

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― 新着の感想 ―
「あ・・・」って言うとるし忘れてたやろ。
冒頭、号だけにルビ振られてますよ。
だから笹木1号をベースキャンプで待機させる必要があったんですね。
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