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世界はまだ、俺が魔女で聖女だと知らない  作者: 月森 朔
第4章 宿の主人になった日
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第6話 小次郎と大和

「世界はまだ~」で初めての長い作戦がはじまりそうです。

 南さんから大和の話を聞いた翌日、俺は、俺2フレイヤ、俺3ひより、俺4メルに、マナ、金子さん、そして南さんとの緊急会議をしていた。議題はもちろん大和からの依頼。


「大和から22層の共同作戦を提案されています。扱いとしては、ヘルプ要請ですね」


 南さんが内容について展開してくれる。どれくらい前から作ったのかはわからないが、大和から送られてきた作戦資料はしっかりしたものだった。


「大和の調査によると、奥には階層ボスがいるようです。かなりの大物らしく、ドラゴン類ではないかと予想しています」


 ドラゴン類とは、大型の爬虫類というだけでなく、何らかの特殊能力を持っているモンスターを指す。西洋のドラゴン、東洋の竜など形状は様々だが、総じて探索者泣かせの強者というのが共通認識だ。


「そして、こちらが鉱山で手に入るアイテムのようです。持ち帰れていないようなので遠目からの写真になるそうですが」


 写真を見たひよりが声を上げる。フレイヤも表情が変わったが、ひよりが先だった。


「これ…。転送機の部品かも!」

「え? そうなのか?」


 俺の質問に写真を凝視しつつ答えるひより。


「うん。一部だけどさ。これらを手に入れたら、研究がすごく進むよ?」


 是非に欲しいアイテムには違いないが。


「これが手に入ったら、ダンジョンの中からすぐに出るアイテムが作れちゃうってことだよな」

「すぐではないかな…、でも早まるのは確か」


 ひよりの言葉に少し考えるが、


「それなら、大和と共同作戦して、このアイテムをゲットしてくるのが良いかもしれないな」

「メルは問題ないの」

「わたくしも協力するわ」


 メルとフレイヤはOKだ。


「俺もできるならやりたいけど、行くなら俺はポーターかな? コージとして」


 コージは、最近使いだしたスタッフ役の偽名だ。南さんが心配そうにこちらを見る。


「さすがに前線に行かれるのはどうかと思いますけど…。最近レベルあげをされているらしいですし、キャンプで待機なら大丈夫かとは思いますが」

「メルが支援すれば問題ないの」


 メルが助け船を出してくれる。


「仕方ないですね。野獣の牙の方もいますし、メルちゃんやフレイヤさんもいますし。キャンプ要員ですよ?」


 金子さんも俺も行くと言ってくれる。大和のキャンプには探索者の世話をするための要員なんかも居て大所帯だそうだ。俺がスタッフでいるのも問題ないだろうとの事だ。

 マナは特に発言をしていなかったが、大丈夫ってことなんだろう。特に反対もしてこなかった。



 それからは具体的な作戦内容を確認することになった。大和の資料によると、鉱山には大小合わせて10個ほどの入り口がある。そこから2つの入り口が階層ボスに繋がるルートらしい。そこまで調べるなんて斥候の人凄すぎ。

 そして、それぞれのルートを大和チーム、野獣の牙とエバーヴェイルのチームで攻める。階層ボスのいる場所にたどり着いたら共闘する。こんなところだ。


「野獣の牙は、エバーヴェイルが受けるならやると言っているらしいです。メルちゃんが相当気に入られているようですね」


 以前、富士山ダンジョンではメルと共闘したから実力も把握しているのだろう。 

 そして、おれは南さんから大和側への承諾の連絡を入れてもらい、一週間後の22層攻略の準備を開始した。その翌日には、野獣の牙も参加の連絡がきたようで3クランによる合同の顔合わせが行われた。まずは代表レベルでの会談ということで、名古屋ギルドの会議室に集まった。


 さすがにトップ1,2クランだけあり、専属の受付嬢が横に控えている。そして、この会を仕切っているのが天白支部長だったりする。南さんに聞いたが、鉱山の発見はかなりの利益を生むらしく通常ならば喜ばしいことだ。しかし、ここ最近、エバーヴェイルの一件やガームド局長の件などもあり天白さんは結構ストレスフルらしい。中間管理職って大変だよね…。前採ってきた肉を後で差し入れしようとか思った。


 天白さんが参加者の紹介をしていく。まずは俺だった。


「こちらが、エバーヴェイル代表の笹木小次郎さんです。前回のギルドイベントでご覧になっているかもしれませんが、ダンジョン研究者でもあり、新たなダンジョンの攻略情報、魔道具の開発、そして、メンバーの育成など精力的に動かれています」


 おじいさんっぽくゆっくりとお辞儀をする。



 次に大和の代表を紹介してくれる。


「こちら、大和の代表、増田 醍醐さんです」


 30代後半くらいの男性で、野獣の牟田さんと同じく中肉中背。しかし、なんか武術家っぽい所作なんかが垣間見える。


「初めまして、笹木代表。牟田さんは久しぶり」


 富士山ダンジョンでメルと共闘した野獣の牙の代表である牟田遼さんが軽く手を挙げる。


「はじめまして。笹木小次郎です。よろしくお願いします」


 軽く握手をして、こちらも挨拶を返す。終始、増田さんはニコニコしている。


「挨拶に伺おうかと思ってたんですが、最近知ったもので」


 え、何の話?


「須藤 愛美、マナと名乗っている探索者がお世話になっていますよね。彼女、オレの姪っ子なんですよ」


 増田…、増田道場の?


「もしかして、増田先生の息子さんですか?」

「はい、そうです。親父をご存じですか? んー、でも、愛美から聞いてない感じですね」


 まさか、増田先生の息子が大和の代表をしていたなんて知らなかった。マナからも聞いていない。そういえば、大和との共同作戦の話のとき、黙り込んでたな。


「じいちゃん子だったからか、そういうとこ頑固というか律儀なんだよなー。親父は母との仲が悪くて別居とか色々あって…あ、失礼、まぁ、詳しいことは後で。ほら、牟田さんの番だよ」


 増田先生のところに娘さん(マナのお母さん)が入っている事情みたいなものが垣間見えたが、後でマナにも聞いてみるか。次に牟田さんが天白さんに寄って紹介される。


「初めてお会いしましたね。先日は金城さんには助けていただきました。今回の共闘、とても楽しみにしていますので、よろしくお願いします」

「ええ、こちらもフレイヤさん、メルさん、マナさんと少数ながら参加させていただきますね」

「いえいえ、立派な戦力ですよ。メルさんの支援と回復は世界トップですし、フレイヤさんは言うまでもなく、マナさんも立ち回りなんかはこの1,2か月ですごい伸びを見せてますよね」


 配信を見てくれているんだろうか。確かにマナの伸びはすごい。最初は初心者に毛が生えた程度だったが、今や辰巳さんや金子さんにダンジョン内で手ほどきを受けることがあるが、立派にこなしている。この前、辰巳さんと軽く乱取りをしてみたが、辰巳さんがほめていたくらいだ。


「ほっほっほ。みんな潜在能力の賜物ですな。私は研究ばかりしているもので、戦いに参加はしませんので、彼女たちが立派に鍛錬している証拠じゃろう」


 笹木博士の口調が定まらないな…。日頃から笹木博士として動画でも撮って慣れておくか。


「さて、座らせてもらっても良いかな」

「ええ、どうぞどうぞ」


 ソファに座ると攻略についての話が始まる。コーヒーが出されるので、俺はそれを飲みながら話をきく。このコーヒーうまいな。

 増田さんから最初に計画について振り返りがあった。計画書については事前に共有されていたため内容も理解しており問題ない。追加された内容としては、それぞれの参加メンバーや配置についての情報だ。

 牟田さんがメンバーのリストを紙で見せてくれる。総勢15人だ。ランクや職なんかも記載されているが、やはりAランクかつ前衛が目立つ構成のクランだ。ちなみに回復職は居なかったが、最近ヒールを覚えた前衛メンバーが1人いるようだ。


「俺のところは、一部休養中のメンバーを除き、全員参加します」


 どうやら育休中のメンバーがいるらしい。前職に男性の育休とか無かったのに、野獣の牙ってば、ホワイトだわ。名前とのギャップがひどい。

 続いて大和のメンバーリストも見せてくれる。


「以前、このメンバーを2分割して攻略を進めたんですが、消耗が激しい上、ダンジョンボスを倒さないと鉱山の中心部、収穫が大きそうなエリアへの立ち入りができないということが判明しました。マッピングに関しては頑張ってくれたんですが、結局撤退を余儀なくされました」


 大和はストイックなクランだと聞いている。25人いるメンバーは自己研鑽を怠らず、収益に関してはメンバーの強化に充てる。そんなことをしているうちにNo.1クランとして不動の地位を得たというのが、南さんから教えてもらった前知識。

 スキル書なんかも買い集めているらしく、魔法職についても多才なメンバーがそろっているとのことだ。もっと規模を拡大することも選択肢としてもあるのだが、強化費用もかかるらしく、新規のメンバー募集はしていないらしい。


「そのため、今回、野獣の牙、エバーヴェイルさんに協力いただいて、2方向からの攻略、そして、最後のドラゴン討伐での共闘をお願いしたというわけです」


 そして、鮮明ではないが、ドラゴンの映像を見せてくれる。


「これは…」


 牟田さんが目を細める。


「アークドラゴン?」

「はい。北米で確認されたことがあり、多数の死傷者を出したモンスターに酷似しています。その時の資料はギルド側から入手しています。天白さん、お願いします」


 その資料には人数をかけて、最後にはミサイルランチャーなどリアルな兵器を投入したりしてようやく倒したようだ。意地の戦いだったようだ。その時の投入人数は40人。広い草原エリアだったので、そのような戦いができたのだろう。


「弱点という弱点がないため、前衛で牽制や防御をしながら、魔法や遠距離攻撃にてダメージを蓄積するという流れになります」


 そのあと1時間ほど情報共有を終え、各クランは準備を進めるのだった。

 俺は次のアバターを出すために、レベル上げを…フレイヤにがんばってもらうかな?


中間管理職は大変なんですよ。。。

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― 新着の感想 ―
コホウノアンゼンカクニ
演技力に補正がかかるスキル書でも出れば良いんですけどね、あればですけど。
博士RPは口調を変えた方がそれっぽいとか言われたからで定まってない事への言い訳に出来ますね。 フレイヤ頑張りすぎと思ったけど、元を辿れば笹木自身だから問題はないか……ないよね?
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