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世界はまだ、俺が魔女で聖女だと知らない  作者: 月森 朔
第3章 魔道具師になった日
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第19話 ひよりと局長

ガームド局長の出番です!

 クランベースの工房エリアに、俺2フレイヤ、俺3ひより、小次郎姿の俺、そして、マナと南さんが集まっている。メルは実家に帰っていることにした。

 大人数が集まったことでマナが嬉しそうだ。


「最初は同時に集まれなかったのに、ようやく時間が合うようになってきましたね。今日もメルちゃんがそろえば完璧だったのに」


 マナが全員で集まりたいということは度々言っていたが、まだ無理なんだ。俺2号、俺3号がドッペルゲンガーを続けてくれているから、そのうちレベルが上がるだろうと思うので、それまでお預けとなる。まぁ、そんなことを考えているなんておくびにも出さずに応える。


「そうだな。みんな忙しいから仕方ないが、そのうちな?

 さて始めるか。今日、みんなに集まってもらったのは、俺とひよりの変装について紹介しようかと思ってね」


 事前に俺3号には話をしている。南さんにも話はしているから実演を兼ねてというところになる。


「南さんに用意してもらった服にちょっと着替えて来ようかと思うから、ちょっと待っててくれ。さぁ、ひよりも行くぞ?」

「ん~、わかった」


 工房エリアには更衣室が完備してあるため、それぞれそこに入っていく。俺は男性更衣室で、スーツに白衣といった姿になる。スーツは若い感じではなく、少し年配で似合いそうな落ち着いた色合いのものだ。ひよりのほうには、パンツスーツと白衣が置いてあると思う。

 それぞれが着替えを終えて工房エリアに戻ってくる。


「ひよりちゃんのパンツスーツって新鮮、でも、胸元きつそう」


 ひよりにはちゃんとブラをしてもらっているせいか、スーツの前がきつそうになっている。


「俺の方はどうだい?」

「よくお似合いですよ。もう少し若い感じのスーツならもっといいと思います」


 南さんがほめてくれる。スーツとか久々に着るよ。


「じゃあ、ひより、打ち合わせ通りにエイジファントムつかってみようか」

 


 南さんには、俺とひよりがエイジファントムを習得したと伝えてある。そして、俺は80代くらいのおじいさんに。そして、ひよりは30前半くらいの美女へと変わる。

 アバターの変身と違って見た目だけという制限はあるものの、この変装スキルはクオリティが高い。


「おじいさんになったわね。笹木のおじいさんに似ているわ」


 フレイヤのコメント。俺のじいさんと会ったことがあることになっちゃうじゃないか。


「そうなんですね。素敵なおじいさん姿ですよ。博士って感じです」


 マナも褒めてくれる。


「ひよりもいい感じじゃないか。できる助手って感じで」


 ひよりが口をとがらせる。


「誰が助手なのさ。研究開発は僕がやってるんだからね?」

「わかってるよ。そういう役回りでいこうってことだよ。俺が笹木小次郎博士、その助手で孫の隼人ひより氏。どうだい? これなら、女の子を多数抱えたクランでも、疎まれたりしなくないか? 不世出のダンジョン博士が立ち上げた孤高のクラン的な?」


 フレイヤとマナは笑っている。南さんは真剣な顔だ。


「そのアイデアはいいかもしれないですね。高齢男性かつ知的な清潔感でハーレム要素が薄れ世の中の男性たちの妬みなんかは緩和できます。笹木さんの個人情報についても漏れ出ているところはどうしても防げませんが、ギルド側でも対策すれば安全性は高まります」

「それならいいですね。ギルドイベントでも笹木博士と助手のひよりによる発表みたいにすると良いかもしれないですね」


 ひよりとなっている俺3号はしゃべり方を調整している。


「僕は…、いえ、私は助手の隼人ひよりと申します。研究内容の紹介をさせていただきます」


 マナが驚く。


「ひよりちゃんすごい。できるリケジョって感じ!」


 できないリケジョがいるのかは分からないが、メガネをかけると似合いそうだ。


「メガネかけよ! メガネが良い気がする!」


 マナも同じことを思ったようで、さっそくダテメガネを探しに行こうと店を調べ始めた。


「では、明日の魔装開発局のガームド局長が来た時も、この感じでいきますか? ガームド局長は、お二人の年齢などを調べれば分かる立場にいますが」

「本当の姿でお会いして、さっきの姿を世間的に使うというのを共有するのでいいですよ。ひよりの研究とも深くかかわることになると思いますし」


 南さんは苦笑する。


「天白曰く、研究が面白いとそこから動かなくなる可能性が高いという話でした。もしかしたら、ご無理を言って共同研究を強行するかもしれません」

「いいよ。僕としても研究は進めたいしさ。一番偉い人と話してれば、話が早いよね」


 俺も同じ考えだ。


「そういえば、クランで研究部門をつくるみたいな話をしていなかったかしら?」


 フレイヤの指摘だが、確かに笹木小次郎が研究者というのを刷り込むためにそういう話をした気がする。


「南さん、クランの中で部門的な物ってどう作ればいいんでしょうか?」

「特に決まりはありませんよ。ただ、責任者なんかを明確にしたい場合は、体制図をギルド側と共有しておいてもらえれば完了です。まずは部門名なんかを考えるといいかもしれませんね」


 それだけで可能なのか。


「どういう名前にしようか? 何か案はあるかい?」


 全員に聞いてみる。みんな、1,2分くらい考えた後、案を披露する。



「ハヤト工房」

 と、ひより。俺の要素消えた!?


「ダンジョン研究所」

 と、フレイヤ。そのまんまじゃないか。まぁ、嫌いじゃないが。


「コジヒヨ研究所」

 と、マナ。頭文字系ね…なんか漫画みたいな名前だな。


「ヴェイルテック」

 と南さん。いいんじゃないか? エバーヴェイルの技術部門。


 その後、話し合いが始まったが、南さんの案がいいんじゃないかという事になった。

多数決をするにしても、俺が過半数いる集団というのもなんだか不思議なものだ。


「じゃあ、ヴェイルテックの所長が俺、副所長がひよりってことでいいな」


 そんな感じで、ほぼ即決で決まった研究部門と体制。それをひっさげて、俺たちは魔装開発局の局長と会うことになった。



 翌日、名古屋ギルドの会議室は緊張感に包まれていた。俺は例の笹木じいさんモードで来ているし、ひよりもひより女史の姿で来ている。


「はじめまして。エバーヴェイルの笹木小次郎さんですね。本当にお会いしたかった。あなたのダンジョン研究は幅が広く尊敬しています。

 こちらがハヤトひよりさんですね。マジックバッグの件をきいています。天才的な魔道具師のようです。ぜひ、深くお話がしたい」


 50代くらいで長身、黒髪のガームド局長が握手を求めてくる。ドイツ人だそうだが、日本人の奥さんがいるらしく日本語がとても流暢だった。

 俺のダンジョン研究はスキル書合成だとか、そのほかのTipsの件だろう。ひよりはマジックバッグの話が伝わっているようだ。

 じゃあ、笹木の爺さんバージョンでなり切ってみよう。


「大したことはありゃせん。長年かけた成果を一度に出しただけじゃ。ひよりの研究はその点、光るものがあるわい。若いもんの力はすごいもんじゃて」


 やりすぎたか? 南さんが笑いを堪えてプルプル震えている。ひよりは能面みたいな顔をしている。きっと呆れてるんだろう。


「さぁ、ひよりも挨拶をしなさい」


 俺が促す。


「隼人ひよりと申します。私も魔道具研究で名高いガームド局長にお会いできて嬉しく思います。ダンジョンガイダンスの亜空間通信論は私のバイブルです。私からも共有したい計画がありますので、この後お時間をください」


 ガームド局長が手を叩いてよろこぶ。南さんが愕然としている。ひよりがきっちり演じているのが驚きなんだろう。


「やはり日本女性は奥ゆかしいね。あんな古い研究でよければ、いろいろお話したいな。この後、日本ギルドとの退屈な会議が終わったら、すぐに訪ねるよ」


 ガームド局長は本当に嬉しそうだ。


「さぁ、天白さん。さっさと雑用は済ませてしまいましょう」


 そう言うガームド局長に苦笑いをする天白さん。決して日本ギルドの偉いさんとの会議は雑用じゃないと思うなー。

そんなわけで、その日、俺たちは日本ギルドのトップよりも遥かに偉い人に対面した。


お読みいただき感謝です!

熱いおじさんを書くのは楽しいですねー。

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― 新着の感想 ―
おおーなるほど、同姓同名の別人でカバーストーリー作るのか。 これは盲点だったな。 たしかにこれなら立ち回り方によってはネットイナゴのヘイトは避けられそう。 あと渋い爺さんキャラならCVはマスターアジア…
嫉妬かわすより投げっぱなしの反撃を自分たちでも、それこそスラップ訴訟のレベルでやるほうがいいと思うけどねぇ
ギルドの国際イベントでの発表会!ダンジョン研究は大金が動き研究職の人達は誘拐や暗殺が心配。世界には同じ顔が3人いる・・と定説で言われてますので、他人が間違われて襲撃を受けない様に、既にエイジファントム…
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