第16話 小次郎と変装
活動活発化の準備運動開始といったところです。
※すみません、16話を先にアップロードしてしまいましたので、こちらを先に読まれた方は15話をお読みくださいm(_ _)m
小次郎の姿で南さんと2人だけで話をしている。
「笹木さんに共有しておかないといけないことがあります」
畏まって何だろうか。マジックバッグの寄付の件で、天白支部長が東京ギルド本部に行ったと聞いているが。
「こちらをご覧ください」
何かの棒グラフを見せてくれる。
「笹木さん個人にむけた誹謗中傷の数です。ギルドで分かる範囲で、SNSなどで収集したものになります」
へー。グラフの上限が10万件でほぼ横ばいなんですが? 線が2本あるな。
「下の赤いグラフは、過激な内容になります。有り体に言うと、殺人などの予告です」
ひぇー。なんで、こんなに嫌われてるの俺。
「時期的なものを鑑みますと、フレイヤさんのクラン加入が判明した時、その後、メルさんの加入が判明した時に爆発的に増えています。一部はお二方を自分のパーティやクランに欲しい方々からの工作行為と考えられます。残りは、それに便乗して面白おかしく煽るタイプ、それを真に受けて正義感で中傷を繰り返すタイプ、そんなところかと思います。
ちなみに殺人予告をした方々にはしかるべき措置をギルド側から行っておりますのでご心配いただくことはないです。みなさん、不審な情報に踊らされていた善意の第三者といったところでした。善意というのが殺人予告というのが皮肉なんですけどね」
なるほどな。誰か俺を追い落としたい奴がいるのか…。こんな底辺だった奴なのに。出る杭は打たれるということだな。
「分かりました。でも、なぜそんなことを調べてくれたんですか?」
南さんが別のページを見せてくれる。
「それについて説明する前にこちらをご覧ください。
これが騒動の起点となったのではないかという書き込みやSNSの発信になります。どれも、国籍が不明になっています。故意に隠匿されたIP情報というわけですので、逆に情報が絞れます。笹木さんは印象操作によるクランの自然解体を狙われていました」
「大型新人アイドルを獲得した途端に芸能事務所社長のスキャンダルが出るようなもんですね」
南さんが苦笑する。
「そんなところですね。どこの誰かは判明していませんが、その輩から守ることがギルドの役割です。先日、天白が東京ギルドで話し合いをした際もセキュリティの強化などについて話がでました」
天白さん、色々動いてくれてるんだな。やはり良い人だ。
「話は分かりました。でも、俺にできることはあるんでしょうか」
南さんがその質問の答えをスライドで示してくれた。どこまで準備がいいの、南さん。
「セキュリティの強化としてハイランドスクエアにクランベースを構えていただいています。これで、最低限のセキュリティは守られると思っていますが、不十分と言えます。
笹木さんの個人情報はできる限り表に出ないようにしておりますので、顔などは判然としていません。幸い、笹木さんが有名な方で無くて助かりました」
俺が世の中にでたことなんてほぼない。前回のMu-tubeくらいか。再生数二桁で、自己再生が半分くらいだったが。
「あ、Mu-tubeはそういえば消してたっけな」
「ギルドの方で閉鎖しております」
えええ、そんなことできるの? しかし、できるんだろう。ギルドってMu-tubeとずぶずぶだし。
「情報の拡散を抑えることですが、今後活動が活発化します。ギルドイベントへの参加などが控えています。そちらでの出演を控える形にしようかと考えています」
「確かに顔がバレれば、何かと危険が伴いますね」
そこは確かだ。しかし、フレイヤとメルの顔がバレているのに、俺だけ顔を見せないというのもなんだかなぁ。その気持ちを南さんに伝えてみる。
「笹木さんらしい優しい考え方ですね。でも、お二人はお強いです。少なくとも自分の身は守れるだけのレベルもあります。でも、笹木さんはダンジョンに潜られていませんし、一般人と変わりませんよね。もちろん、ストーンスキンは持ってますが、あれは%で防御力があがりますし、一般人ではさほど効果はありません。この話はひよりさんにも当てはまります。彼女はすごい技術を持っています。誘拐されないとも限りません」
俺のレベルがフレイヤたちの経験値で上がることは伏せているんだった。だけど、これを説明するにはアバターの話をすることになるか? いや、まだ共有する状況じゃないと感じる。もちろん、南さんを信用していないというわけではないが、もっと強くなって手札がそろってからという気がする。アバターの種類を増やし、ドッペルゲンガーのレベルを上げていけば俺は更に強くなっているだろう。でも、まだその途中過程と言える。
そこで俺が思いついたのは単純な話だった。
「変装とかでいきましょうか。例えば、歳をごまかして老けさせるとか。逆に若くするとか」
「そんなところかと思います。でも、本質は笹木さんが強くなることが求められると思います。そして、それが厳しいと感じられるようであれば、クランメンバーごとギルドのメンバーになっていただく方法もあります。そうすれば、後ろ盾がギルドの理事国になります」
要はダンジョンでレベルあげをしてきて、後ろ盾がなくても大丈夫なようにしなさいと言いたいんだろうな。
「分かりました、レベル上げについては、時間を見つけてやっておきます」
「はい、お願いします。では、ギルドイベントの進め方についても詳細を詰めていきたいと思います」
俺は自室に引き上げる。そこには、ため込んだスキル書を置いていた。売ることとかも考えていたから残していたが、南さんとの話でどれを使うかを決めた。
スキル書には「エイジファントム」という変装スキルがある。これは変装スキルの派生で、16個のスキル書を消費して作ることができた。効果は、見た目年齢を任意の年齢に変化させるものだが、赤ちゃんになったり赤ちゃんが大人になったりなど体格が違いすぎると働かないスキルだ。スマホのアプリなどにある年齢変化フィルタのリアル版みたいなものだ。それを俺は覚えてみて、ステータスを確認する。たしかにエイジファントムが追加される。
◇笹木小次郎
レベル29
HP:392/392
MP:563/565
称号:ダンジョンスレイヤー
ユニークスキル: アバター▼
アバタースロット1(フレイヤ・リネア・ヴィンテル)
アバタースロット2(金城メル)
アバタースロット3(ハヤト)
スキル:ストーンスキン
レビテート
ドッペルゲンガー Lv.2
エイジファントム
俺はエイジファントムを早速使ってみる。
「エイジファントム」
いきなりだが老人になってみる。姿見を見ると、俺の服を着たおじいさんがいた。これ、亡くなったおれの爺さんそっくりじゃないか。
「おお、これはこれは」
なんと見た目だけと思っていたが声色も変化している。なかなかに優れものだ。しかし、使っているとMPが徐々に減ってきているのが分かる。少し時間を見ながら計算をしてみると、俺のMPだと2時間もすれば解除されてしまうようだ。
「じゃあ、少しずつ若返るかのう」
なんか楽しくなってきた。なりきりにも熱が入る。
「若返りの映像を見ているみたいだなーって、親父に似てきた」
壮年くらいだと親父みたいに見える。
少しそこから実験をしてみた。どうやら年齢の設定はイメージによる影響もあるようで、ちょっと小太りなじいさん、やせ型なども多少は変えられることが分かった。
「使えるな」
俺の検証は終わらない。
「よし、ひよりだな」
ひよりの姿になってみる。いま、俺3号がひより姿で工房に籠っているため、この部屋からはでない。そのまま、30代くらいのひよりを思い描いてみる。すると、妙齢の女性になる。
「おおお、ひよりってこんな感じになるのか。これでしっかりした大人の喋り方すれば、いつものひよりと同一人物だなんて分からないな」
ちょっと演じてみるか。
「隼人ひよりと申します。魔道具の研究を続けて18年ほどになります。魔道具の中でも亜空間利用と亜空間通信に関する開発を専門としております。よろしくお願いいたします」
立派な研究者だな。これで衣装も相応な物に変えれば良いだろう。
ちょっとこの案を南さんと共有しよう。
よし、このまま、俺の強化向けのスキルについて考えるか。スキルがん積みの俺ツヨ目指して、スキル書消費していくか。そして、俺はそこからスキル書の選定を夜まで続けたのだった。
変装って夢がありますよね。
ミッションインポッシブルとかルパン3世とか好きです。
こちらの変装は、魔法的なものですが。




