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世界はまだ、俺が魔女で聖女だと知らない  作者: 月森 朔
第3章 魔道具師になった日

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第6話 フレイヤと佐久間

フレイヤさんへの指名依頼です。

 俺は俺2号。ドッペルゲンガーのスキルで生み出されたとは分かっているものの、特にオリジナルとの違いを感じていない。ただし、だ。今はドッペルゲンガーとアバターの組み合わせで効果時間を測っていて、アバターをずっと解除していない状態で7日間が過ぎている。解除したら、また初めから計り直しになるから、止められない。


「なじみすぎて怖いのよね…」


 そう、フレイヤが板についてきて、暇な時間はファッション誌を読んだりして、ブランド研究なんかもしている。最近見つけたエステなんかも通うようになってしまった。自分磨き的なところも経費にできるというから、高い会員権なんかも買ってしまった。

 ただ、そこまで暇という訳ではなく、この一週間はエバーヴェイルの配信で浜名湖ダンジョンに行ったり、金沢ダンジョンに行ったりと忙しくしていた。


「なんか調子悪いわね」


 今朝からなんだか下腹部が重い。何か持病などを持っていたのだろうか。俺は、フレイヤが何かを知っているかと思い、ペルソナを起動してみる。


「鈍感ね。生理用品買わないといけないわ」


 え? フレイヤって生理になるの? いや、その可能性は思いつくべきだった。そういえば、ギルド申請の時にDNAを採取されたが問題は発生しなかった。これはフレイヤのアバターが人間であることの証拠だった。そして、女性の体であれば、生理が来てもおかしくはない。


「薬局にいきますわね」


 その日、ペルソナのおかげで苦もなく女性としての階段を1つ進んだ。これは、何というか子供が生めるということなのか? んー。検証する必要は感じないし、ちょっと今は考えるのはやめておこう。

 ちなみに、そんな日なのに、今日はギルドからの依頼で名古屋ダンジョンの最前線へのサポートを依頼されているのだ。俺1号は、南さんと買収先の会社との会議があるようで、不在にしている。仕方ないとは思うが、少し不安だ。マナもまだ討伐には厳しいエリアだということで参加をあきらめてくれて、できることは何かを考えて、東京の服飾イベントに出張していた。



 サポートの内容は事前にもらった細かな資料に書いてあった。向かうのは21階層で、そこを突破しようというクランへの援軍だ。どうやら、21層は氷雪エリアのようで、敵はゴラドイエティとブラッドイエティで雪男らしい。ゴラドイエティが物理攻撃で棍棒を振り回し、ブラッドイエティの方が後方から氷属性の魔法を乱発してくるらしい。寒いのもあって、なかなか攻略が進んでいないというのを聞いている。

 そこで、相手の苦手な炎が得意なフレイヤに協力依頼が舞い込んだということだ。俺の魔法ならば多分問題ないと思う。この数回の配信でも狩りをしたが、普通に魔法も使えるし、減ったMPも回復するのだ。

 そして、不安を取り除く情報がある。それは、インベントリの使い方が判明したのだ。最初の検証で発見したインベントリは、ドッペルゲンガーが消えた時に持っていたものを保管することができるという機能は分かった。出すときは、インベントリから物を選択して出すという流れなのだ。でも、入れるところの方法が分からなかった。しかし、これは暇な時間に俺1号が見つけ出した。なんのことはなくインベントリに入れると宣言するだけで可能となった。宣言というのもかなりアバウトで、手近にあるものをインベントリに入れたいと考えるだけで操作が可能となった。

 そういうわけで、俺はそこに生理用品とか着替えとか寒さに備えて冬服などを放り込んだ。手に持っていないといけないものもあるため、それらはリュックに詰めて持っていくことにした。


 そして、俺はダンジョンの受付までやってくる。ファンだという探索者が多く話しかけてくるので、ほどほどに相手をしていると待ち合わせをしていた人がきた。


「フレイヤさん。お久しぶりです」


 そこに居たのは、魔道機構の副代表である佐久間 蓮だ。何度かクランに誘ってきた人で、高身長でおしゃれ眼鏡の似合うイケメンだ。


「久々ね」

「今回はよろしくお願いします。なかなか突破できず、困っていまして、フレイヤさんを頼りにしています」


 イケメンスマイルがまぶしい。


「ええ、できる限り協力するわ」


 聞いている限りの戦いの内容であれば、フレイヤのフェザーステップと高火力があれば問題ないと思う。


「ポーターも雇っていますので、荷物があれば運ばせますが、それだけですか?」


 俺の背中の小さなリュックを見る。


「そうよ。パッキングは得意なのよ、フフ。荷物は結構よ」


 思わず笑ってしまう。そんな訳はないが、佐久間さんはスルーしてくれた。


「分かりました。では、早速出発しましょうか」



 佐久間さんともう2人の剣士と回復職、そして、ポーターの5人と旅立つ。


「あとは20階層まで先に向かっています」


 階層を進みながら、状況などを改めて聞いてみる。


「我々は前衛が少な目、後衛が多いという魔法重視のクランです。そのため、本来なら火力で押し切るんですが、ゴラドイエティ自体が魔法への耐性が高く。討伐が進まないんです」


 炎系の魔法使いは居るようなのだが、物量で負けているらしく、現在火力アップに向けて計画中らしい。しかし、炎系強化による効果を見るためにもフレイヤへの協力話が上がったらしい。


「ありがとうございます。単独での協力は嫌がる方が多いんですが、我々を信用してくれて感謝いたします」


 佐久間は紳士だなぁ。そんな事を考えながら、先を進む。



 ダンジョンは常にモンスターで溢れているわけではない。湧きが少ない場所として道が存在する。それは確固たる道というよりは、進むために都合の良いモンスターがいない場所をつなげた結果できた道というわけだ。その結果、攻略が進んでいる20層までは大した戦闘も無く向かうことが可能になる。では、21層でそれができないのはなぜか。それは、ダンジョンの性質なのだが、階層のボスを倒すことで、次の階層に進めるようになるのに加えて、その階層のモンスター配置が変わり、比較的安全に通れる道ができるのだ。

 そんなわけだが、その安全な道を使っても21層までは最低でも10時間はかかる。移動後にすぐ戦闘では厳しいため、手前の19層にあるキャンプで1泊することになっている。 そういえば、フレイヤでダンジョン内で寝泊りをするのは初めてだな。


 キャンプにつくと魔道機構のクランの人たちがベースキャンプで各々作業をしていた。魔法使いには女性が多いと言われており、例にもれず魔道機構も女性が多めだ。その中の魔法使いスタイルの女性が佐久間さんに話しかけてくる。


「あ、副代表。フレイヤさんを連れてこられたんですね」

「ええ、すんなりとこれたよ。夏目くん、フレイヤさんをテントに案内してもらってもいいかい?」


 夏目と呼ばれた魔法使いの女性は俺をテントに案内してくれる。女性用テントがあるらしく、相部屋だということだ。まぁ、仕方ないなぁ。仕方ない。

 テントに入ると中にいた数人から一斉にみられる。そして、取り囲まれる。


「本当にフレイヤさんだ! あの、私ファンです! 炎の魔法、とってもすごいです!」

「私も私もファンです。あの、手帳にサインいただいてもいいですか?」


 若い子たち。フレイヤと同じか少し上くらいの子たちが話しかけてくる。


「あなたたち、フレイヤさん、移動直後なんだから後にしなさい」


 夏目さんが間に入ってくれる。


「ごめんなさい。あの、後でサインください」

「もう、いい加減にしてね」


 懲りない女の子に夏目さんはうんざりしている。


「いえ、いいのよ」


 俺は荷物を置き、少し休ませてもらう。実は割と疲れている。フレイヤの体になって、こんな疲労感は初めてなので、生理が原因かもしれない。


「でも、すこし仮眠をとらせてもらうわ」


 そういって俺は眠るのだった。


つづきます!

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