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世界はまだ、俺が魔女で聖女だと知らない  作者: 月森 朔
第3章 魔道具師になった日

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第5話 南先生と買収計画

クランとお金の話です。

 何日か連続で配信を続けた後、今日は配信はお休みとなっている。

 その代わりにタイトスカートのスーツを着こなす南さんが先生になって、俺とマナ、フレイヤにクラン内のお金の制度について説明をしてくれる日となっている。

 いろいろと資料を作ったりしてくれていたのだが、この話のための準備だったらしい。本当に有能な人だなぁ。


 最近用意された大型モニターを前にして南さんが説明を始める。


「今日はエバーヴェイルの給与とクランの資金の使途についてご説明します。よろしくお願いします」


 俺たちは、よろしくお願いしますと頭を下げた。大型モニターに南さんの作った資料が映し出され、それを指さしつつ南さんが話始める。


「クランは税金対策になるということは、ご存じかと思います」


 それは知っている。クランに収入を集めることで、メンバーの税金を抑えられるという話だ。ただ、しっかりと理解しているわけではない。


「では、説明していきます。

 クランメンバーは魔石の販売やクエストの報酬などを個人として受け取るのではなく、クラン口座に入れます。すると、それはクランの収入であり、メンバー個人の収入ではなくなります。その代わり、クランは後日給与などでメンバーに報酬を渡します。

 こんな回りくどいことをするのは、高額の報酬を得る探索者は多くの税金を払うことになるからです。高額になれば税金が50%を超えてきます。

 そのため、クランからの報酬で税金がかからない範囲で報酬を渡します。

 探索者は控除額も特別に大きくなっていますが、その範囲に収めることになります」


 マナが勉強モードに入っており、質問をする。


「はい、先生!」


 ぴしっと手を挙げているマナに苦笑しながら南が指名する。


「先生ではないですが、はい、マナさん」


「あの、控除額?の範囲に報酬が減ると、探索者さんが損をするんじゃないですか?」


 南さんがほほ笑む。


「そこが今回のお話の大事なところですね。大手のクランは導入しているところが多いんですが、クランシェアというクラン内の株式みたいなものを報酬の代わりに分配します。

 これは、クランの資産を分配する際の権利をポイントとしてお渡しするものになります。クランの資産は変動するものですので、明確な価値を持っているわけではありません。ここに対して、現在の日本の税制では税金を課すことができません」


 へー、そういうことなのか。スタートアップ企業とかの未公開株式を社員に給料代わりに渡すようなものか。南さんはイラストを交えて説明を続けてくれる。


「このポイントの配布により現金の給与と合わせて、損をしないようにしてあります」


 それを聞いてマナはがりがりとメモを書いている。


「わかりました。損はしない、ですね」


 南は優しくうなずく。


「そして、初期メンバーである笹木さんとフレイヤさん、マナさんには、初期ポイントを配布します。そして、メルちゃんですよね。こちらの貢献についてもポイントを支給します。ですが、メルちゃんとも話をして、今のところ100億円規模のポイントでなくても良いという話をしています。その代わり、長期にわたりポイントを定期的に支給することで貢献に報いる形で報酬を渡す形にしました」


 南さんが苦心をしてくれて、色々俺とメルとの間を行ったり来たりしてくれたのだが、同一人物なんだよな。最近、ドッペルゲンガーのおかげで同時に話せるようになって楽になった。


「ポイントについては、クランから脱退するときに返却する。その時の価格設定で、現金の支給となります。ポイントはクラン外では使えません。クランの資産などを個人用に購入したい時などに使用することも可能です」


 そこまで説明して、一息つく。


「南さん、ありがとう。ここまでやってもらえるなんて助かる」

「いえ、大手クランのシステムを真似てますし、色々先行の資料なんかもあったので、そこまで手間ではなかったですよ」


 さすがのエリート南さん。その手間を省くというのも仕事の内なのだ。


「では、ここからはクランの資産の話です」

「いま、100億円ほどの現金があります。こちらは、このままではクラン税として30億円ほどが税金として支払うことになります」


 税金が30億円かー。30億円って何が買えるのかいまいちわからない。


「30億円って宝くじ何回分なんでしょう…」


 マナも同じようなもんだな。フレイヤは静かだな。寝てる? いや、なんか別のことを考えてるな。南さんは気にせずに続ける。


「そのため、税金で持っていかれるならば、ダンジョン攻略に有用な会社を買収しちゃいましょう。というのが次のお話です」


 税金で持っていかれる前に経費として使っちゃいましょうという話か。


「買収費用は、経費になるのかしら?」

 そこでフレイヤが質問をする。たしかに、買収費用は経費に認められなかった気もする。

「良いところにお気づきです。クランには優遇税制があり、買収費用を経費と認めるという仕組みがあるんです。ただ、制限もありまして、国から優良と認められているクランは無税、準優良で半額となります。そのため、優良クランに認定されることがクランとしての税金対策の第一歩となります」


 そういう話があるのか。税金の話は奥が深いというか、日常生活で気にしてないから知らないことばかりだ。


「あっ、それで、最近の配信で役に立つノウハウを伝えてたんですね」


 南さんは「はい、その通り」と答える。

 

「こちらは、最近ギルドの上層部を通して得た情報なんですが、エバーヴェイルは優良クランに内定しているようです。次に行われるギルドの国際イベントでの発表に関する期待値もありますが、税制において準備が整ったと言えます」


 南さん、すげーな。そんなこと考えてくれてたのか。俺以外も、感心している感じだ。


「南さん、あなた、有能なのね。いろいろ動いてくれて感謝するわ」


 フレイヤが南さんを褒めると、南さんがあからさまに照れて、謙遜を始める。


「本当ですよ、南さん、ありがとうございます」


 マナが追い打ちをかけると南さんが顔を赤くする。



 そういうことで、南先生の講習の最後は、どの会社を買収するかという話に移っていった。



 何社かピックアップしてあるのは、買収に応じる可能性があり、買取が可能な規模の会社だ。


「俺はオーブマシナリーがいいかな。ちょっと考えていることがあってね。魔道具をつくってみたくって」


 オーブマシナリーは、魔道具の開発を進めている町工場から起こった地場の会社で、小さいながらも堅実な企業体制が好感を持たれている…俺の前職はそこからの委託業務を行っていた会社だ。

 次にマナが手を挙げる。


「あたしは、E&S、そのエッジアンドスピア-ズで、フレイヤさんをモデルにしたブランドを作りたいです!」


 そういえば、そんなことを前に言ってたな。


「フレイヤさんはいかがですか?」


 南さんがフレイヤに聞くけど、


「わたくしは、特にないわ。強いて言うなら、マナと一緒にブランドを立ち上げるのは楽しそうね」

「フレイヤ~~」


 マナが感極まってフレイヤに抱きつく。この光景、あぁ、眼福。



「では、その2つ両方を候補に考えてみますか」

「え? どちらかじゃなくて?」


 南さんに質問すると、笑ってVサインをしてくる。


「はい、どちらも買収する方向で進めます。それくらいの資金がありますから」


 こうして、エバーヴェイルの買収計画が始動したのだった。


いろいろ設定を考えていて楽しい回ですが、読む方からすると、何々?って感じかもしれません。

これがわかればいいと思います。

「クランのうまみの1つが節税」

世知辛い!

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― 新着の感想 ―
この世界だと政府の抱える戦力より探索者全体の戦力の方がずっと大きそうだから、ガッポリ持っていった税収をいらんことに使ったら報復されるという緊張感が役人や政治家にありそうな気がする 法や権力はそれを執行…
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