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世界はまだ、俺が魔女で聖女だと知らない  作者: 月森 朔
第3章 魔道具師になった日

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第3話 3人娘と水着

検証は大事です。とても。

 俺がエバーヴェイルの大方針を打ち立てたことで、エバーヴェイルは崇高な目的に向かって始動したのだった。

 それから2日後、最初の活動先となったのは静岡県の浜名湖ダンジョンだった。そして、浜名湖ダンジョンに存在する10層水辺エリアに、フレイヤ、マナ、メルの3人は何故か水着で立っていた。

 オリジナルの俺がメル、俺2号がフレイヤだ。俺2号は、2日前からフレイヤのまま過ごしてもらっている。2日たってもドッペルゲンガーは解除されないし、フレイヤのアバターも解除されずにいる。どういう理屈か分からないが、永遠に俺が2人いる状況もあり得るということか?と考えてしまう。

 そんなことよりも、今は水着だ。どれもマナがコーディネートしてくれた。


「やっぱりホルターネックは胸元強調されますね」


 マナがフレイヤの一部分について評する。ビキニなのだが、首の後ろで結ぶことで、胸元が持ち上げられて、ただでさえ豊満なフレイヤのそれが強調されているのだ。


「メルちゃんは、可愛いワンピースにしました。防御を下げないといけないから、パレオがつけられなくて恥ずかしいかもしれないけど、可愛いから自信もってね!」


 俺は白いワンピースで胸元にレースがあしらわれてある。

 そういうマナは、タンキニと呼ばれるタンクトップにショーツ型の水着を着ている。スポーティなお姉さんという雰囲気だ。

 ダンジョンに入るときには普通の装備でやってきたわけだが、先ほど水辺エリアを交代で警戒しつつ、水辺に立っている木にひっかけただけの布の更衣室で着替えたのだ。


「では、みなさん、始めますよ」

「わかったの」


 ペルソナを使っていないのに、メルは顔を赤くする。なんだか俺も恥ずかしくなるし、もじもじしてしまう。


「わかったわ」


 それに対してフレイヤは堂々たるものだ。ぼん、きゅ、ぼんと惜しげもなく晒しているし、立ち姿も威厳がある。

 そして、ダンジョンガイダンスの配信が始まった。


「こんにちはー。エバーヴェイルちゃんねるにようこそー!」


 マナが開始を宣言する。


「ようこそなの」

「よく来たわね。ゆっくりしていくといいわ」


 メルとフレイヤがマナの後に続く。


「今日は、浜名湖ダンジョンの10層にきています。そして、みなさん、どうして水着なのか気になりますよね?」

 

 さっきからコメントが流れすぎてよくわからない。


¥100,000 ◆ショータロ王:ダンジョンで水着!? サービスが良すぎて困る! ちょっとポーズとってもらってもいいですか?


 そんなコメントが数秒止まって表示される。この人、いつも居るな。


「スパチャありがとうございます! 今日は、エバーヴェイルの新コーナーで、新たな攻略法とかドロップ情報なんかを確認するというコーナーになります」


 この説明でもいまいちわからないだろう。そこからは、フレイヤが説明をする。腕組みをしてダンジョンガイダンスを見上げる形で説明を始める。このダンジョンガイダンス、何かアングルについての微調整がすごいよな。


「浜名湖ダンジョン10層で、裸装備でポロロッカフログを倒すと、アクセサリが手に入るという噂があるのよ。だから、それを調査しに来たわ。でも、わたくしたちが裸になるわけにはいかないのよね。だから、なるべく薄着ということで水着にしたわ。いかがかしら?」


¥100,000 ◆ショータロ王:もう、大満点です! それにポーズありがとうございます! 絶景の深い谷間があるダンジョンですね! 



 俺2号のことだからポーズとったつもりもないだろう。腕組みは、何か説明するときの癖なのだ。あ、メルのセリフもあったんだった。

「良い子のみんなは真似しちゃだめなの」

 やっぱり恥ずかしいな。もじもじしてしまう。


¥115,000 ◆異世界のトビウオ:美女、美少女だらけの水着大会はじまりますね。ポロリはありますか? 気をつけてくださいね。事故であればBANされない前例があるので、はい、気を付けてくださいね!!!



何を期待しているんだ。いや、分かるけど。



  ──視聴者数:690,213/スパチャ総額:¥315,000



 そんなわけで、接続数が100万人を超えるんじゃないかと思う中、ポロロッカフログ討伐を始める。ポロロッカフログは、牧歌的な見た目だが牛くらい大きくて、相手を丸のみにしようとしてくるやっかいなカエル型モンスターだ。

 それを倒すときに裸装備であれば、悲哀のアクセサリが手に入るらしい。おかしな話だが、フレイヤで探した石板に書いてあった攻略情報だった。裸装備という定義は難しいが、裸装備の範疇が下着レベルなら水着で大丈夫じゃないかとなって検証に来たのだ。

 ちなみに石板情報については、ダンジョン研究をしている笹木が解読したことにして、マナに共有している。事の真相については南さんには話していない。


「では、攻撃開始です!」


 俺は水辺に入り込んだマナに支援と持続回復を付与する。今日は支援職として働き、前に出ない予定だ。

 マナがポロロッカフログに正対すると注意がそちらに向く。フレイヤがその間に、フレイムビットを何発か当てる。腕を振りおろしフレイムビットを操る流れで、あちこち揺れている。角度を変えつつ飛び回るダンジョンガイダンスがその姿を捉えているわけで、きっと良い映像が撮れているだろう。



 フレイムビット1つでは大したダメージはないが、何個も積み重ねることでポロロッカフログの動きが鈍くなる。そこにマナが踏み込んで、一番近い腹の部分を切り裂いた。

 腹を立てたポロロッカフログがマナを殴り飛ばそうと手を振る。マナは素早く避けるが、足場も悪いため、側転するような形で水辺に投げ出される。健康な足が宙を舞う。やはり、ダンジョンガイダンスはそれを追いかけて撮影していく。


「とどめを刺すわ。離れるのよ」


 フレイヤがそういうとマナは水辺から上がって距離をとる。フレイムストームがポロロッカフログを包み込んだ。消滅していくポロロッカフログから魔石と小さな何かがドロップする。

 フレイヤがサイコキネシスで引き寄せた物を俺も確認に向かう。


「どうですか?」

「悲哀のネックレスね」


 それは、裸装備という哀しい状況で敵と戦闘をすることで手に入るアクセサリ。防御力と回復力をあげるという装備だ。この他に、悲哀の指輪とか、悲哀の腕輪なんかがあるらしい。デザインも牧歌的なカエルが出したとは思えないほど、洗練されたデザインだった。


「やりましたー。悲哀のネックレスをゲットしましたー。やったねメルちゃん!」


 手持ち無沙汰にしているメルにマナが声をかけてくれる。


「うん、よかったの。マナおねーちゃん」


 そう応えるとサムズアップして健闘を称えあった。

 その後、10匹ほどをポロロッカフログを狩り、配信を終了することになった。


  ──視聴者数:1,030,101/スパチャ総額:¥3,015,000



 配信終了した後、帰り支度をしようかとしていると、がやがやと声が聞こえてきた。数人というか、かなりの人数の声が聞こえてくる。言い争っているようなそんな感じだ。

 はじめに見えたのは、半裸の若い男性探索者だった。その恰好は、水着だけで武器を抱えている。


「いたいた! まだいた! すっげ、生フレイヤちゃん! でっけーな、たまんね」


 なんか柄が悪い感じだ。


「おい、やめろっ。ダンジョン内の不必要な接触は探索者のマナーに違反するぞ」


 それを真面目そうな男性が追いかけてくる。その後、がやがやと十人ほどの探索者がやってくる。

 こっちを見て、その真面目そうな男性が声をかけてくる。


「すみません。配信をみて、一緒に狩るんだとか言って仲間が飛び出していって。邪魔するつもりはないんで、行ってください」

「いいじゃん、一緒に狩れば、めっちゃ効率いいぜ!」


 鍛えているのだろう、黒光りする体を見せつけてくる。メルになんてものを見せるんだ。ドキドキするじゃないか。マナがその時、俺の前に立ってくれる。


「あたしたち、引き上げるために着替えるので、離れてもらってもいいですか?」


 半裸の男が沸き立つ。


「生着替え!? いいじゃん! おれ、そういうの燃える派!」


 燃えなくていいし、離れてくれ。


「すみません。おい、お前らも手伝ってこいつ連れてくぞ」


 全員がパーティの仲間だったようだ。俺たちの姿を遠巻きにニヤニヤと見ているのが大半だ。スマホで無断撮影してこないだけマシとも言える。

 その後、半裸の男はパーティメンバーに連行されて去っていった。その後、俺たちは手早く着替えてダンジョンを後にした。

 配信には屈強なガードマンが必要かもしれないなぁ…。


水着回でした。いかがでしょうか。

エバーヴェイルのために真面目に取り組む回でしたね。はい。

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― 新着の感想 ―
開幕初手10万投げ銭連打は笑う。コイツの財力どうなってんだ、絶対上位探索者だろ
土魔法の合成で護衛ゴーレム作ったほうがいいかもなー
 暴力の世界だから、こう言うのはどうしても出てくるのは分かる。 分かるけど、それでも湧き上がるヘイトは抑え込めない。  こやつのアレっぷり、実はこっそり配信されててあまりにもデリカシーや理性の無い危…
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