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世界はまだ、俺が魔女で聖女だと知らない  作者: 月森 朔
第2章 聖女になった日

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第19話 フレイヤと幻影

ドッペルゲンガーを入手して、笹木に安寧を!

 俺は実家の父がぎっくり腰になったと言って不在にし、メルは高校に通わないといけないとかそんな理由で不在ということにした。そういうわけで今週は、フレイヤとマナが一緒に狩りをすることになった。

 今、小次郎がほしいのは、ドッペルゲンガーのスキル書だが、ドッペルゲンガーをドロップするモンスターをフレイヤは知らなかった。しかし、影魔法系統リストから、その最下位にあたるスキル書が幻影ということは分かった。さらに言うと、ギルドサイトから幻影を出すモンスターについても判明している。

 幻影は魔法としては弱いとされている。幻影の効果は、近くにぼやっとした自分の虚像を作り出すといった魔法だ。なぜ、弱いとされているかというと、その姿があまりに不鮮明で、よほど知能の低いモンスターくらいにしか使えないことや、匂いなどもしないため、知覚の鋭いモンスターにも効果がないといったことが理由だ。

 そんなわけで、スキル書が出ることがわかっているにも関わらず、幻影を出すモンスターであるサーマルスネークは人気が無い。その人気がないモンスターを狩りに、フレイヤとマナは三重県の鈴鹿ダンジョンに来ている。


「こんにちはー、エバーヴェイルちゃんねるにようこそー。今日は、鈴鹿ダンジョンに潜りに来ました。フレイヤとマナでお送りします!」


 マナに気合が入っているのが、鎧が新調されていることで分かる。なんか俺の服に合わせてきてる? わずかにある差し色が赤だったりする。


「今日はサーマルスネークを狩るわ。よく見ておきなさいね」



¥50,000 ◆ショータロ王:ああ、お待ちしていました! 炎の魔女さま!

¥50,000 ◆ろくろ:ひさびさだー、やふぅぅぅぅぅ。お変わりなく美人ですね!


 ──視聴者数:109,213/スパチャ総額:¥105,000


 早速だが接続数がやばい。いろいろ期待されているんだろうな。だが、今日はバサルゲイラの時と異なり、スキル書を高確率で落とす方法は知らない。ひたすら狩ることになるわけだ。

 しかし、マナと来たのはよかったかもしれない。程よく強く、剣の練度を上げるには良いモンスターと聞いている。



「スパチャありがとうございます! あたしの鎧が新しくなったことは気づきましたか??」

「ええ、とても素敵よ。お揃いね」

「そうなんです! このシリーズに無かった色なんですが、ちょっと無理を言って作ってもらいました!」


 マナがVサインを出してくる。え、オーダーメードなの? さすがに最近稼いでいるから。あ、いや、この辺を経費で落とせるようになったからか?


「フレイヤもとっても素敵です! 今日は秋が見えてきたので少し厚手のスカートでスリットがあるものを用意したんですけど、とっても可愛いです」

「ありがと。では、いきましょう」

「はーい、れっつごー」


 軽いノリで、2人で鈴鹿ダンジョンの7層を目指す。鈴鹿ダンジョンの最大到達階層が30層なので、序盤の階層の位置づけだ。Cランクであれば余裕と呼ばれているところだが、フレイヤとマナであれば問題ないだろう。


「フレイムマジック、フレイムビット」


 俺は手元に多数のフレイムビットを浮かべる。敵を感じたら即迎撃というか狙撃の感覚だ。見つけたら撃つを繰り返している。

 マナも警戒を解かずに歩いている。前回の配信の時、少しではあるが、金子さんに罠や敵の待ち伏せの察知について手ほどきを受けていたのを実践しているんだろう。

 まぁ、7層まで見せ場が無いままたどり着いたわけだ。ちなみにダンジョンガイダンスは俺の周辺を良く飛び回っている。こいつのすごいところは視聴者数の変動を見て、どんな場面を映すといいのか、誰を映せば視聴者数が増えるのかを学習するところにある。

 そんなわけで、俺の斜め前から見下ろすアングルとか背後から見上げるようなローアングルを狙ってくるから困る。配信規定はインプットされているはずなので、その中でぎりぎりを狙っているのだろう。


¥80,000 ◆銭湯魔人:み、みえ、みえない!! おしい! もっと右でお願い!


 たまに、こんなスパチャが飛んでくるが、ダンジョンガイダンスはコメントに応答して動いたりは…え? してる? まさかな。


──視聴者数:409,213/スパチャ総額:¥1,545,000


 そんなわけで危なげもない道中、30個くらいの魔石を獲得していた。フレイムビットとサイコキネシスの組み合わせは楽だわ。本当に。

 さて、サーマルスネークの狩場にやってきた。基本は、幻影をおとりに襲い掛かってくる習性がある。木などにぶら下がっているモヤモヤしたものがサーマルスネークの幻影であり、近くにサーマルスネークがいるよーと教えてくれる合図にもなる。

 そこからはマナが切り込み、俺がフレイムビットで狩るのを繰り返し、たぶん50匹くらい倒したであろう時、ようやくスキル書が出てきた。


「やりましたー。スキル書です!」

「フレイヤ、ゲットしましたー」

「やったわね。では、もう1つねらいますわ」


 マナが固まる。割と時間をかけて1個だったので仕方がない。


「仕方がないわね。ちょっとずるっぽいけど」


 俺はサイコキネシスでその辺の木々をゆすり始める。グラグラ揺れて、何かが木から落ちてくる音がする。


「そして、あつめますわ。そして、フレイムストーム」


 必殺、一網打尽。50匹はいなかったかもしれない。サイコキネシスで集めた蛇団子を火であぶって倒す技。技?


「フレイヤ、1つスキル書でてますよ!」


 マナが拾って持ってきてくれる。そこから何度か一網打尽を行ったが、スキル書はさっきまでの2冊で終わってしまった。


「そろそろ、終わりますか」

「そうね。2冊もゲットしたもの。上出来よ」


 ちなみにこのスキル書は1つ50万円くらいで取引されている。そして、南さん経由でギルドに買取依頼を出しておいたのだ。戻ったら、何個買えているかな。

 ちなみに幻影からドッペルゲンガーを生成するためには、128個必要だ。


「エバーヴェイルでは、幻影のスキル書を集めています。よければ、ギルドの市場を見てみてくださいね。では、またねー」

「協力おねがいするわ。では、ごきげんよう」


 そういって配信を終えた。


「ふ~。疲れましたね。フレイヤ。今日は鈴鹿に泊まりですし、松坂牛を食べにいきませんか? あたし、おいしい店確認しておいたので!」


 俺としても楽しみにしていたわけで、二つ返事で了承する。



 ちなみに幻影のスキル書を集めていることは、クラン内でも共有している。起案はフレイヤで、魔法の研究に必要というのが理由だ。その内容については今は明かせないが、協力してほしいと。マナは反対するわけもなく、南さんも問題なし。そして、あとは俺(小次郎)とメルなわけだから、多数決でも勝てる。ひどいもんだ。

 今日は、それでも自分でいっぱい取れるなら節約になるかと思ったが、思った以上にドロップはしなかった。買取がどうなるか、そこが楽しみだ。



 そして、その夜。ホテルから近い焼肉店で女子会が開催される。


「フレイヤ。このお肉、溶ける! 口にいれた途端に溶ける!」

「ほんとね。とろけて無くなるわ」


 俺たちがきゃっきゃ言いながら食べていると、店長さんがやたらと絡みに来る。

「これね、希少部位なんだけど食べるかい? お代はいいよ、お試しで」

 こういうのが何回も来るものだから、お腹もいっぱいになってくる。フレイヤは割と小食なのだ。マナもそろそろ満足したようだ。

 そして、最後に店長がまたやってくる。


「あの、お姉さんたち、有名な探索者なんだって?」


 誰かが俺たちのことを知っていたんだろう。しかし、有名かどうかって客観的な内容だしな、ええ、そうです!とも言いにくい質問だなーと思っていると、お酒も入っているせいか、マナが応える。


「ええ、そうです! フレイヤさんは、とーっても有名で強い炎の魔女さんなんですよ」

 大きな声のせいで、ただでさえ目立つのに、みんなこちらを見てくる。スマホを向けるんじゃない。まぁ、別に気にしないけど。


「おおお、あの、この色紙にサインしてほしいんだ。ここに飾っとくからよ」


 壁には芸能人やらの色紙がたくさん貼ってある。まぁ、お肉もおいしかったしサービスしよう。


「あと、写真も頼みます!」


 なぜか他のお客さんも巻き込んで写真をとることになった。やはり、フレイヤ人気だなーと思いながら鈴鹿での夜は更けていったのだった。

 しかし、店長、肩に手を回すのはNGな。


松坂牛たべたいです! セルフ飯テロです!

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― 新着の感想 ―
幻影から数えて7段階上がドッペルゲンガーか
仲間に隠す理由あんのかな
”「こんにちはー、エバーヴェイルちゃんねるにようこそー。今日は、鈴鹿ダンジョンに潜り”の次が改行されてます。 誤字報告ではどうにもなりませんでした。
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