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世界はまだ、俺が魔女で聖女だと知らない  作者: 月森 朔
第2章 聖女になった日

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第13話 小次郎と新居

いよいよインフレの世界に入ってきました。

 契約書を読んでみる。ここに関しては社会人経験が生きた。さんざん、前職で契約書を書かされたからな。そして、契約に穴は見えない。曖昧な部分も少なく、罠に嵌めるような感じはない。どうするか。こうなった時に相談する相手がいないのが困る。いや、相談している振りは大事かもしれない。


「あの、メルの意思も確認してみます。あと、3ヶ月の話はしないように言っておきますね」


 俺は電話をかけるふりをする。スマホを操作している振りをして耳にあて間をとる。


「あ、俺。お疲れ様。あの、若返るあのオーラ、そう、それ。3ヶ月がバレるとメルがヤバいってんで、ギルドが情報が出回らないように手を回してくれたらしいよ。そうそう、テレビで効果時間が短いってやつね」


 俺が電話をしている小芝居をしている間、南さんも電話をしている。上司への報告かな。


「うんうん。いやいや、ギルドは使うなってわけじゃ無くて、秘密を守れそうな人に使ってあげようってことでね。なんか、お客さんとの窓口をやってくれるんだって。うん。そう。もちろん、お金の面は大丈夫。俺がちゃんと契約書を読んだから。あ、もちろん、クラン口座に入れて、そう、税金対策もばっちり」


 そこで少し間をとる。


「あー、連名ね。聞いてみるよ」


 南さんが横でオッケーサインを出してくる。


「じゃあ、そうするよ。はい、うん。あはは、じゃあね」


 小芝居終わり。


「いやぁ、割とちゃんと聞いてきてましたね。しっかりしています最近の子は。でも、オッケーらしいので契約書にサインしますよ」


 契約書は電子化されているらしく、ギルドのプラットフォームで承認できるようだ。南さんは手元にある端末を操作していく。手早い。


「この後、メルも承認すればいいわけですね」

「はい、今頃通知がいってるかと思います」


 んー。メルのスマホはメルのアバターに持たせてるわけで、すぐに承認はできない。


「じゃあ、その間に俺はトイレに行ってきますね」




 そういって抜け出した俺はトイレの個室でメルに変身し、持っていたメルのスマホで契約書を承認した。すぐに小次郎に戻り、先ほどの会議室に引き返す。すると会議室に男性がいた。南さんが紹介してくれる。



「こちらは、名古屋支部の支部長の天白あましろです」


 ピシッとスーツを着こなしている。このスーツ高そう。


「はじめまして。天白です。ようやくお会いできましたね。エバーヴェイルの笹木さん。よろしくお願いします」


 にこやかに低姿勢。そんなに歳でもないし、体も引き締まっている。元探索者かな? 顔もいいと来るから、こんなの不公平だろう。


「よろしくお願いします。笹木です」


 どうして支部長が来たんだろうと思っていると、


「まずは、金城メルさんの若返り魔法のエージェント契約を承認いただきまして、ありがとうございます」

「いえ、こちらこそ、よろしくお願いします」


 がっちりと握手する。手がでかいし、厚い。こりゃ、探索者の手だな。


「さっそくですが、拠点の話です。南が以前にお送りした物件は見られましたか?」


 え? なんだっけ。覚えてない。


「その反応だと、見られなかったようですね。いえ、お忙しいと思いますので仕方ないです。その物件は忘れてくださいという話でしたので問題ありません。

 そこで、よければ、このビル、ハイランドスクエアの24階をクランの拠点として使いませんか?」


 天白さんはビルの絵を差し出してくれて、24Fと書かれた部分を示す。


「え? このビルの? え?」


 名古屋駅前の一等地に立つビルの上層階だぞ??


「はい、ギルドの所有エリアですが、エバーヴェイルさんにお貸ししようと思っています。賃料は、月に30万円でどうでしょう」


 南さんも驚いていない。知っているってことか。


「えーと、安すぎませんか?」


 なんか裏があるのか? 単純に恩を売っておきたいだけなのか?


「ギルドとしては不審な輩から守りやすい場所にエバーヴェイルにいてもらうことが重要と考えています」


 んー。確かに、セキュリティがしっかりした所に引っ越そうと思ってたわけだから、渡りに船だ。


「あー、でも、寝泊まりもしたいんで、事務所だと厳しいですよね」


 そこで南さんがフロアのイメージ図を出してくる。


「こちらが居住スペースで、お風呂やキッチンなども備えています。20名まで生活できるスペースがあります。こちらがオフィスエリアや工作エリア、ジムも備えてます。商談スペースはセキュリティエリアの外にあります」


 これで30万円てヤバい。破格だ。


「ちなみに、大浴場付きです」


 よし、契約だ。風呂は正義。


「いつ引っ越せますか?」

「明日にでも」


 さらば俺のマンション。こんにちは、ハイランドスクエアの24階。

 俺は引越しの準備のため部屋に戻ることにした。途中、マナにも連絡をとって、クランの場所を伝えた。驚いていたが、明日の正午に現地集合ということにした。


 

 南さんに引っ越しの話を伝えると引っ越し業者まで手配してくれた。何もしなくても全部やってくれるというお任せコースだ。フレイヤやメルの服なんかは持っていくとして、パソコンなんかも運んでもらうことにした。今日は特に何も持たずにハイランドスクエアの24階にやってきた。


「こじにー、ほんとなんですか? まさか、騙されてないですよね?」

「俺も思った」


 まず、天井が高い。オフィスビルの1フロアだと思ったら、ショッピングモールかと思うくらいの天井の高さがある。入ってみると、居住スペースはマンションみたいだ。20戸全部、2LDKなんだが。そして、オフィスエリアは、何だろう、広い。机なんかが無いからか、広すぎる。30m四方くらいあるだろう。働き放題だな。商談エリアもなんか普通に店につかえそうだ。

 そして、作業エリアは土間コンクリートになっていて、武器や防具の加工に適した場所になっている。工作機械の類は買わないといけないが、これは立派に工房が開けるんじゃないか? そして、最後は大浴場。男女に分かれていて、それぞれが10人は入れるサイズだ。


「あの、なんでこんな施設がこのビルにあったんですか? それも空き家で」

「さぁ、わからん。南さんは、たまたまだとか言ってたけど、ギルドって金あるなぁ。

 ここを俺たちの拠点…そうだな、クランフロア? クランベース、クランハウス? よし、クランベースって呼ぶか」


 いろいろとスマホで部屋の写真を撮っていたマナに聞いてみる。


「マナもここに引っ越すか? 名古屋まで出るの大変だろう」

「え? こんないいところに住んでいいんですか?」


 俺は実質一人暮らしだから、問題ない。


「フレイヤや、メルちゃんとも一緒に住むことになるんですか?」

「あぁ、そういうことになるね」


 部屋が別だから色々揃えていかないとなー。フレイヤやメルの部屋の家具とかどうするか。あとで南さんに相談しよう。

 その時、スマホに南さんから電話がかかってきた。


「あ、南さん。すごいね、このフロア」

「ちょうどいらっしゃってるんですね。そこに私も住みたいくらいですよ。

 ところで、昨日の契約なんですが、さっそく商談が決まりそうなので一報を差し上げたんですが、金城さんはいらっしゃいますか?」


 メルの名前が出るということは、若返りだろう。


「ここにはいませんが、連絡はとれますよ。いつ、商談ですか?」

「商談はすぐにでも。決まれば来日されるのは一週間後となる予定です」


 海外の富豪が来るんだろうな。


「わかりました。じゃあ、その日に合わせてメルに居るように伝えます。日時が決まったら教えてください。あ、ちなみにいくらなんですか?」


 1億円くらい期待しちゃう俺。そんなわけはないかー。


「日本円で130億円になります」

「130円?」

「いえ、130億円です。冗談みたいな金額ですよね。ふふ」


 南さんが苦笑している。130億円って円が130億あるんだよな。


「あのー、どっきり?」

「どっきりではないです」


 130億円。もう、よくわからない世界が始まったようだ。


作者もよくわからない数字が出てき始めました。

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― 新着の感想 ―
ギルドへの分配2割は流石にぼったくりすぎではw
いや、防犯カメラで出入りが監視されてるようなビルに複数のキャラクターを演じ分けてる人間が住むのはまずいでしょ
いるトコにはいんのよ、3ヶ月1億ドルの若返りが惜しくない連中が・・ケッ!
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