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世界はまだ、俺が魔女で聖女だと知らない  作者: 月森 朔
第2章 聖女になった日

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第10話 フレイヤと富士山ダンジョン

フレイヤさん、久々の活躍です!

 フレイヤの姿になって富士山ダンジョンにやってきた。富士山ダンジョンは観光客もいくため、服装は普段着にして外国人観光客を装い、タクシーに乗っている。

 この容姿を見たタクシーの運転手さんは、多くは話しかけてこずにそっとしてくれる。フレイヤは言語の壁があるように見えるからな。まぁ、ルームミラーでガン見されることもままあるが。


「お客さん、富士山ダンジョンにいかれるんですかね? あそこ、きのう危なかったんですよ。えーとわかるかな、ダンジョン! あぶない!」


 この運転手さんは、言語の壁を突破するタイプらしい。仕方ない、話すかな。


「ええ、分かってるわよ」

「お、お客さん日本語上手だねぇ。それがさー、遭難者って言ってね。あまりに強いモンスターなんかが出ちゃうとね、下山? いや、上に上がってくるから登山? まぁ、いいや。とりあえず、出てこれなくなっちまってね。救助隊が出たんだよ。それも、野獣の牙っていう、日本でも一二を争うクランってんだからね、すごいよね。

 あ、俺、そこの代表を駅から送ったりもしたんだぜ、へへ。

 まぁ、その人たちのおかげで全員生還したってんだから、頼りになるってんだ。そんで、面白いのがね。中にメルっていう子供の探索者が居てね。その子が、若返りの魔法つかってなんかおばさんを若ぇ姿に変えたってんで、大騒ぎよ。

 うちのかみさんもテレビにかじりついて見てたよ」


 ずっと運転手さんが喋ってる。長い。年のころは辰巳さんよりも年上じゃないだろうか。現役で働き続けるのには頭が下がるが、少し落ち着いてくれ

 その後、富士山周辺でおいしいお店の話を一方的に聞かされながら、富士山ダンジョンに到着した。



 俺は小さめのギルドの管理棟に入り、更衣室を借りた。名古屋と違い、小さなジムの更衣室のような感じだ。事故があった後なのか、探索者は居ない。早速だが、いつもの魔女スタイルになってみる。

 ギルド受付に行ってみると、職員さんが慌ただしく仕事をしている。

「あ、入られますか?」

 こちらに気づいた受付嬢が声をかけてくる。


「ええ、もう入っても大丈夫かしら?」

「12層よりも浅い階層であれば大丈夫です。それ以上は、現在立ち入りが制限されています」

「大丈夫よ。5層に行く予定だから」


 受付においてある階層マップを示す。そこは、山岳エリアとなっている。


「分かりました。でも、十分気を付けてくださいね。あ、あの、フレイヤさんですよね。名古屋ダンジョンの。あの、わたしファンです。握手してもらってもいいですか?」


 笑顔で握手をする。


「ありがとうございます」


 受付嬢は嬉しそうだ。俺も悪い気はしない。


「箕輪さん、いそがしいんだから…こっちの作業も…あ、フレイヤさんじゃないですか!? ねー、フレイヤさんが富士山ダンジョンに来てくれたわよ」


 受付嬢ボスみたいな方が仲間を呼んだ。いっぱい集まってくる。


「配信でみるより可愛らしいわ」


 その後、みんなと握手をした。最初の受付嬢が、こんなことをいう。


「もしかして、富士山ダンジョンにも何かお宝が眠ってますか? 鉱物資源は多いって言われてるんですけど、スキル書とかは出たことなくて」


 ギルド側とするとそういう期待もあるのか。確か、ダンジョン毎に生産量のノルマがあるとか、そういう噂話は聞いたことがある。ご苦労様だ。



 その質問には、あいまいに微笑んで答えず、俺は富士山ダンジョンに入っていった。

5層の山岳エリアには正体不明なオブジェクトがある。それは、300mくらい上空にある軽自動車くらいの大きさの立方体だ。黒光する岩のようでもあり、実際何なのか知られていない。そう言うものが、幾つも浮かんでいるのだ。


「いるわね」


 300mも離れると点でしかない。ドローンで観察したり、狙撃が上手い人なんかが弾を打ち込んだりもしたが、びくともしない。そのうち、そういうモノだと思われて放置されている。しかし、それは破壊不可能なオブジェクトではなくフライングダイスというモンスターということをフレイヤさんは知っている。

 周りには誰もいない。今日は休んでいることになっているので、配信はしない。俺は、ペルソナを起動して、フレイヤさんの戦いに身を任せる。

 フレイヤがすこし気合いをいれるとフェザーステップで300m上空まで駆けあがろうとする。フェザーステップで宙をけり、たんたんたんと軽快に駆け上がっていく。

 300mを駆け上がるのは骨が折れるが、フレイヤさんのステータスだと余裕だ。あっという間に、フライングダイスのところに辿り着き華麗に着地。そのまま足場にする。


「ふぅ、じゃあ。狩らせてもらうわね」


 フレイムマジック、メルト

 その魔法は一点集中の高温を発する玉のようなものだ。それをフライングダイスの真上にくっつける。置くといった方がいいだろうか。魔力を常に供給することで、じわじわとフライングダイスの表面が融解していく。そして、中まで玉が転がり込むと、グツグツという煮えたぎる音のあと微弱な振動が起こり、次第に揺れが激しくなる。


「さてと」


 その後、足場にしているフライングダイスからフェザーステップで別のフライングダイスに飛び乗ると、さっきまで乗っていたフライングダイスが砕け散った。次々に俺はメルトをフライングダイスの上に仕込むと、時間差ですべてのフライングダイスが砕け落ちる中で消滅していく。そして、フライングダイスを8体倒したところで初のドロップがある。スキル書だ。俺はフェザーステップで地面に落ちる前にスキル書をキャッチした後、地面に降り立った。


「これよ、レビテートのスキル書」


 これは自身を空中に浮かべる魔法だ。フェザーステップのような高機動ではないが、空中を移動するスキルとしては使いやすい。

 そして、今の世の中で空中を移動できるスキルは一般的ではない。乗ることができる鳥型の召喚獣が関の山だ。そういうわけで希少なスキル書をゲットすることができた。

 ちなみにこのフライングダイスだが、爆発などの急激な衝撃に対して強いという特性があり、ミサイルのような近代兵器を以てしても壊れない。逆に溶かすほどの高温を長時間あてることに弱い。


「では、いくつかスキル書が出るまで狩りますわ」


 今回は売るつもりはない。自分用とマナ用、もしかしたら、今後クランに人が加われば、その人に使ってもらうことを想定している。だって、空飛べるスキルとかあったら、高層マンションに住んでても狙われるよ? 変な人に売れないからね。

 それから、俺はフライングダイスを狩りまくった。合計50体は狩ったと思う。そのころには3つのスキル書が手に入り、俺とマナと後1人分となった。

 そして、うれしいことに、小次郎のレベルも55となった。前回、レベル100で3つの選択肢が出たわけだが、200くらいまで上がれば、別の選択肢も出るんだろうか。そのあたりは検証し甲斐がある。



 俺はスキル書を持って引き上げようとした。すると、ドロップ品の中に魔石だけじゃなくて、黒々としたキューブを見つけた。


「あら、マジックバッグの材料じゃない」


 なんだって!? 

 そういえば、アイテムについての話をするのは初めてだ。今まで、モンスターの写真とか眺めてたな。作り方は分かるかな…。


「作り方は分からないわ。魔道具師の領分ね」


 魔道具師…いたわー、キャラにいたわー。これは、レベルをもっと上げていくべきなんじゃないか? そうだな。きっとそうだ。



 俺はそこから心機一転、フライングダイスを再度狩り始めた。リポップして2巡目を狩る。しかし、5層の入口付近に人影が見えたのでその時点で終了とした。


 収穫は、スキル書『レビテート』6冊。 黒いキューブ 7つだった。そして、小次郎のレベルも上がっている。


 ◇笹木小次郎

 レベル66

 HP:480/480

 MP:923/923

 称号:ダンジョンスレイヤー

 ユニークスキル: アバター▼

          アバタースロット1(フレイヤ・リネア・ヴィンテル)

          アバタースロット2(金城メル) 

 スキル:ストーンスキン



 レベル上げのために、エルダーウッドゴーレム狩りに向かうのもありだなぁ。次の配信は何にしよう。マナとも相談かな。俺は、そう考えながら、その日の狩りを終えた。


「フレイヤさん、おつかれさまです!」


 受付嬢が魔石の買取を担当してくれる。名古屋ダンジョンと違って受付と買取カウンターが同じだ。


「あの、フレイヤさんのクランに金城メルさんも入ったんですね」


 ギルド職員だから分かるのだろう。


「そうよ。昨日、ここに来ていたのよね」

「はい。大活躍でした。それで、クランに入ったことがまたニュースになってますよ。エバーヴェイルは評判がいいんですけど、笹木代表への風当たりが強いようで…」


 え? どういうこと? クラン員って公開なの? おれがキョトンとしていると察してくれたのか、


「クラン員についてはデフォルト設定だとギルドのサイトで公開されるんですよ。だから、探索者で秘匿設定にしていないと公開されるんです」


 ひー、そんな設定しらない。いや、説明してもらった気もするが、知らない。まぁ、でも、どうせ知られるんだからな。あ、マナに話してねーや。後で小次郎から説明入れよう。



「あ、あと伝言が1つあります。エバーヴェイルさんの拠点について相談があるので、名古屋ダンジョンの南さんに連絡をいただきたいそうです。代表の笹木さんに連絡がつかないみたいでフレイヤさんに伝言がきました」

「そうなのね。仕方ない人ね、でも、笹木も忙しいみたいだから許してあげて」

「いえいえ、すごい人材をいち早くスカウトするなんて、きっと飛び回ってらっしゃるんだと思います」


 スカウトはしていないが、さっきは飛び回っていた。物理的に。

 


 そんなわけで、数十万円を稼いだ俺はホテルへと戻った。メルが泊っているとされている部屋の中で小次郎に戻り、さっそくだがマナにメッセージを送る。


「俺の親戚で、親に頼まれて高校生をクランに加入させます…と。名前は金城メルというので、仲良くしてあげてっと」


 よし、まぁ、細かい説明は後でしよう。ギルドも気になるが拠点の話だし、明日連絡するとだけメッセージを送った。



「次にスキルだな」

 俺はスキル書『レビテート』を使用する。


 ◇笹木小次郎

 レベル66

 HP:480/480

 MP:923/923

 称号:ダンジョンスレイヤー

 ユニークスキル: アバター▼

          アバタースロット1(フレイヤ・リネア・ヴィンテル)

          アバタースロット2(金城メル) 

 スキル:ストーンスキン

     レビテート



 これで高いところから逃げられるし、高いところへ逃げられる。素晴らしい。

 ところで、またフレイヤになる。探索の汚れを落とすために大浴場に向かうのだ。そして、堪能した後、考えていることがある。


 くずアイテムのデータベースをあさってみよう。掘り出し物があるかもしれない…。


すこーしずつ小次郎が強くなってます。すこーしずつね。

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― 新着の感想 ―
ええ…少人数クランへの新規加入者なんて大事な話をマナにせずに加入させてたの…
 フレイヤのペルソナ 笹木と会話出来る事から、笹木のレベルさえ上がれば並列思考的な感じでフレイヤのアバターを独立運用させ(RPGゲームの仲間の様に)、笹木またはメルの同一人物で合同参戦が可能になりそう…
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