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世界はまだ、俺が魔女で聖女だと知らない  作者: 月森 朔
第8章 軍団になった日

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第23話 笹木と自力

イグノアスとの闘いが始まります。

 俺は俺1号。今、元なのか現なのか不明なアビスヴォーカの人たちと戦っている。彼らは、オーファンネストが言っていたアビスヴォーカの幹部たちなんだろうか。その答えは今ないが、深淵派のイグノアスが顎で使っている所から見ると、確率は高いだろうなと思う。しかし、悲しいのは、強いのだが異形の存在となってしまっており、まるでモンスターと戦っているみたいな感じだ。

 俺は分身を多数出して戦うわけだが、相手の体の大きな男…だと思う影は同じく影を大量に放出して手駒につかってくる。あちらの方が打たれ強く、こちらの方が攻撃力や回避力が高いといった側面から、膠着状態に陥る。

 影子をつかっているとこういう戦場が俯瞰して見えることがある。今、まさにそれで、他の戦闘についても状況が分かるようになってきた。


 フレイヤは近接向けの双剣使いと対峙しており、ぐんと間合いを詰めて襲ってくる戦闘スタイルに苦戦している。そこにジェシーがカバーに入ろうとするが、そのジェシーを魔力で出来た弓が打ち付ける。ジェシーはそれを防ぎきるがフレイヤの下までたどり着けない。ジェシーも防壁を巧く飛ばすことはできるが、弓使いも障害物の後ろを移動しながら攻撃をしかけてくるため、反撃が効いていない。

 それならばと俺が放った分身は、双剣使いの近くに行くとすぐに倒されてしまう。双剣使いの攻撃力がかなり高い証拠だ。


 メルは同じようなスタイルの武道家と戦っているようだ。しかし、リーチの違いで防戦が続いている。相手の攻撃を防ぐために手数の勝負を仕掛けるメルだが、リーチの違いで半分も相手に届いていない。


 その中でアリスだけは遊撃スタイルを続けている。彼女はムー教授を抱えながらになるが、相手に攻撃を加えている。アリスが対峙している相手は、遠距離追尾型の魔法使いのようだ。一撃一撃は強くないのだが、攻撃スピードが速い。アリスも逃げながらになるため、苦戦している状況には変わりない。

 この現状を分析すると、相手は少なくともレベルは300以上の猛者だろう。そして、そのレベルを超えてくると戦い方次第でレベルの数倍の強さを発揮する。アビスヴォーカの幹部はそんな連中だったのかと驚くしかない。


『ちょっと苦手なスタイルの相手と組まされている感じだな』


 ジェシーがみんなに呼びかける。


『じゃあ、相手じゃなくて、おれたちが役割を取り換えるしかないな』


 言いたいことが分かった。皆がそれぞれ対処を始める。



 まずはフレイヤだ。


『じゃあ、わたくしはジェシーかしらね』


 今までフレイヤに襲い掛かっていた双剣使いだったが、フレイヤがいきなりジェシーに姿を変えた。剣よりも素早い手捌で双剣が弾かれている。その手には中華包丁とぺティーナイフが握られている。


「どっちが刃物に慣れているか勝負しようじゃないか」


 さっきまで遠距離偏重の露出度の高い魔女を追い詰めていたと思っていた双剣使いは、次の瞬間には防戦一方になっていた。ジェシーの手捌に剣が耐えきれず、剣が砕け、体に何かが突き刺さる。刃物ではなく、さらに重く固い塊。刃物をもったジェシーの拳が体に次々と刺さっているのだ。器用に刃物を持ちながら殴っているのだ。


「さぁ、料理の完成だな」


 そういうと双剣使いは4つに切り離されて消滅していったのだった。



 そして、役割変更を呼びかけたジェシーはアリスに変身すると、弓使いの背後に現れる。そして、遠距離から攻撃を仕掛けてきていたその弓を破壊する。


「私はパパほど優しくないよ?」


 弓使いはナイフで応戦するが、アリスの足技に翻弄されてしまう。こちらはさっきまでナイスミドルだったのが、ウェイトレス姿になってひらひらとスカートを翻しているものだから混乱もする。そして、最後は太ももに頭を挟まれた後、組敷かれて首をもがれて消滅してしまう。



 そして、自分よりもリーチのある相手との戦いに苦戦していたメルというと。

「じゃあ、メルは影子になるの」

 影子になったメルは、ガチンコの拳の打ち合いから、中距離からの搦手を混ぜた攻撃に変わる。相手はそれらを捌くために手いっぱいになっているが、強引に距離を詰めて渾身の一撃を加えた。そして、その一撃を受けた影子が消滅していまう。顔は分からないが、一瞬気を抜いた感じはする。しかし、その首が後ろに現れた影子によって体から泣き別れとなった。


「それは分身ですよ? さようなら」


 影子はそう言うと刀を構えなおす。



 次にアリスは、メルに変身した。


「ムーちゃん。メルの後ろに立つの。逃げ回らずに正面から倒すの」

「ムーちゃん!?」


 先ほどまでムー教授を抱えて転移していたアリスが、ムー教授とあまり身長の違わないメルになったことで、足元に下した。


「ブレアド」


 身に着けた拳闘スキルとカウンター技を使って鉄壁の防御を作り上げる。無数の魔法攻撃が、それらにすべてはじき返される。それは、まるで聖域だ。

 そして、ゆっくりと確実に敵に近寄り。


「幸子師匠直伝、48連撃」

「うわぁ。手が見えんぞ」


 後ろから付いてきていたムー教授の言葉と共に相手の魔法使いは文字通り砕け散って逝った。



 そして、俺だ。俺は、分身は残しつつ、影子からフレイヤに変身する。


「わたくしの出番ね。小手先は通じないと思いなさい」

「フレイムマジック…フレイムノヴァ」


 俺は広範囲殲滅魔法を使う。相手が手数で攻めようが、この攻撃に巻き込まれたら高耐久であろうと厳しいだろう。逃げようとする相手の影を、影子の分身が相手を道連れにしたりしてほとんどが消滅してしまった。


「フレイムリンク。残しはしないわ」


 そして、残った相手に対しても、連鎖し空間を伝播する炎が敵を追撃していく。



 この戦いが同時進行していくわけで、一瞬で決着がついたように見えた。


「やったか?」


 ジェシーがそんなことを言うが、フラグを立てないでほしい。


「くそっ、ムーの用意した奴らの方が強いと言うのか…とでもいうと思ったか。こいつらは、何度でも生成できる駒よ。こいつらと遊んでいろ」


 そう言うと、再び同じ奴らがイグノアスの近くに現れる。


「やっかいな敵ですわね」


 俺がそう呟くと皆が思いを漏らす。


「おらと戦うってなるとこういう感じですね。敵にしたくないなぁ」


 自己分析がよくできている影子。


「回復はできるの。でも、ずっと付き合うのは嫌なの。お腹は空くの」


 メルは燃費が悪いからな。


「もう食べ放題じゃないんだから。お替わりはできませんよ?」


 ニコニコしているアリスは余裕そうだな。



 そこで、ジェシーから交信がくる。


『これはイグノアスを倒すのが一番早いぞ。というわけで、アリスで詰めて、ジェシーで一気に倒すというのはどうだ?』

『賛成なの』


 そして、皆が無言でムー教授以外が全員アリスになる。そして、イグノアスの周囲に現れるとジェシーへ姿を変える。5人のジェシーは手早く影たちを殲滅してしまう。すべての影の首があらぬ方向に曲げられ、そして消滅する。


「この化け物共め!」


 化け物じゃないが、恐ろしいのは分かる。こうして、イグノアスを取り押さえようとしたところ、イグノアスが目を見開いて何かをしたように見えた。


「いかん、何か魔法が発動…」



 ムー教授の言葉が途中でかき消される。そして、ジェシーたちの姿が消え、その場には俺とイグノアスの2人と静かになった装置が残されたのだった。

 残された俺というのも、ジェシーの姿ではない。笹木小次郎の姿だ。


「装置の起動もやり直しになるから、この手は使いたくなかったが。その顔が見れたならよかったな。スキルに依存した原住民は滑稽だな」


 イグノアスが体を起こす。取り押さえていたジェシーが消えたからだ。


「何をしたんだ一体」

「教えるわけないだろう」


 俺はなんだか体が少し大きくなったように見えるイグノアスに殴られ、10メートル近く吹き飛ばされる。


「ハハハハ。さすが我が魔人薬、力が溢れるぞ。ムーに協力したのがお前の罪だ。さっさと殺すとしよう」


 俺は転がりながら考えている。あれ? そんなに痛くないぞ。


「分裂し変身するスキルは苦戦したが、お前本人は大したことがないのだろう」


 俺は体を起こしながら状態を確かめる。アバターは出せそうにない。しかし、体が不調というわけではない。


「大人しく寝ていれば、首をおとしてやったものを」


 そして、イグノアスは踏み込んでくる。確かにSクラスくらいの動きだろう。しかし、俺には、それがちゃんと見えているし、なんだか遅くも感じる。


「いや、寝ているほど眠くもないし、辛くもないんだが」


 そう言ってイグノアスに拳を振るう。メルがやってくれた幸子さんとの特訓の成果は体にしみこんでいる。


「がっ」


 イグノアスはさすがに倒れなかったが、反撃にお気に召さなかったのだろう。


「ちょっとは戦えるという事か。このやろう」


 イグノアスが再度殴りかかってくるが、俺に当たることはない。手で捌き、体を捻る。そして、イグノアスの息が乱れたころに反撃を入れる。


「ステータスだけなら、アリスやフレイヤにも負けてないんでね」


 俺が打ち込んだ拳はイグノアスの意識を完全に刈り取ることに成功したようだ。


「ふぅ、倒せたけど、アバターが消えたままなのか?」



 その時、交信が入る。


『笹木。本人が活躍したのは初めてじゃない?』


 フラムからだった。


『お。復活したのか?』

『いいえ、最初から消えていないわ。イグノアスの魔法か何かは距離制限のある物みたいね。イグノアスも倒したし、もうアバター使えるんじゃない?』


 そう言われたので、俺はその場でフレイヤに変身してみる。


『本当ね。じゃあ、皆を呼び戻して、イグノアスと装置を回収しますわ』


 こうして、ダンジョン人の世界での深淵派との戦いは終わったのだった。


お気づきの方は居ると思いますが、

笹木は新たなアバターを出すたびに強くなっていました。

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― 新着の感想 ―
すっぴん最強説(たぶんそこまでではない) 燃える展開で実にいいですね!
>「装置の起動もやり直しになるから、この手は使いたくなかったが。その顔が見れたならよかったな。スキルに依存した原住民は滑稽だな」  今回のは笹木のステータスの暴力だけど、他の戦える地球人はスキルに依…
まぁ、アバター解放の条件がレベルだったりしてましたからねぇ。 それにステータスも上がってましたもんね。 戦闘経験は言わずもがなwww
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