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世界はまだ、俺が魔女で聖女だと知らない  作者: 月森 朔
第8章 軍団になった日

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第21話 ジェシーとエムオーイ現象

ジェシーとムー教授の回です。

 俺は俺5号。ジェシーを担当している。この2日間はジェシーのペルソナが大変役に立った。ここのところ起こっている深淵派と調和派の対立は、いかに深淵派が世論を味方につけつつ、調和派の持つ資産を奪うかという話だった。キュルの母親が治安維持部隊の投入を聞いてから、影子の分身を5000人ほど動員して深淵派に潜り込ませた。その結果、捏造映像や治安維持部隊の指揮官の汚職が見つかったのだった。

 そこに来て、指揮官からの暴露があり、議会は事実確認の間、深淵派と調和派の調査に入ったのだった。いきなり、治安維持部隊を送るわけではなく、事務方の調査員がやってきたのだった。ちなみに治安維持部隊自体も調査対象になっている。この間、地球のダンジョン増加計画は一時中断となっている。


「この世界、裏工作なんかをしている割に、稚拙な作戦しかないぞ。逆に何か潜んでるんじゃないかと疑うレベルだ」


 目の前には、相談相手になっていたムー教授がいる。ムー教授については、ペルソナがずっと出突っ張りになっている。


「この世界と一括りにするのは心外じゃが、否定できんな。原因はいくつかある。お主たちの住む地球に比べて国も無いし単純じゃからな。裏工作も学派同士の政治じゃから、可愛いもんじゃ。それでも、今回の強引で浅い工作は、深淵派の代表が変わったからじゃろう。明らかに反抗している姿でもなければ調和派に非なんぞ無いからな」


 ムー教授は大きな装置を操作しながら話を続ける。


「しかし、いま、世論は深淵派と調和派は、五分五分まで戻せたとこじゃろう。んん?」


 ムー教授の手が止まる。手元にあるのは魔力の計測装置だったと思う。


「いや、見間違いじゃろう。そういえば、放送の後、フレイヤの人気が出ているようじゃのう」


 その話はジェームから聞いている。フレイヤが放送に出た後、ジェームの依頼でニュースなどを読む仕事を引き受けている。その結果、熱烈なファンがついたらしい。

 ジェーム曰く、ここまで人気の出る司会者はここ最近で珍しいそうだ。ちなみに過去の司会者は、開発経験を積んだ男性が多かったらしい。


「当然だろう。しかし、この世界には歌番組やドラマ、映画みたいな娯楽はないのか?」

「そんなもんは無いな。1番燃えるのは、技術討論じゃ。朝まで5人の別学派のメンバーが議論をする番組じゃ」


 どうしたらそんな歪な文化になるんだろうか。興味が湧いたので聞いてみる。黒歴史に触れてしまうことになるが仕方ない。


「笹木の書いた小説は読まれているのか?」

「おお、あの予言書か。あれは、調和派でも極一部しか見ておらん。しかし、あの予言書のお陰で一生で一度しか作れないほどのスキルが設計できたわい」

「ただの小説なんだがな。万人に見られていないのは朗報だな。他にも娯楽になりそうなものはこっちの世界に来たんじゃ無いか? ダンジョンに飲み込まれた何かを見られるんだろう?」

「ダンジョンに飲み込まれて、この世界に届くのは稀じゃな。そして届いたとしても、表には出てこん。すべて機密扱いじゃからな」


 ムー教授は端末を操作している。こっちでアイドルが歌ったりしたら大変なことになりそうだなぁ。


「んむ。やっぱり変じゃ。魔力の減少が緩くなっておる。いや、1時間前くらいからわずかじゃが、何やら魔力が上がってきておる」


 ムー教授は天候など色々調べ始めるが、答えが出ない。広範囲の異変ならアリスがわかるかもしれない。そこで俺はアリスだけに交信で呼びかける。


『アリス。この1時間くらいで、なにか変わったことあるか? 天気とか身の回りの些細なことでもいい』

『いま、メルとフレイヤが番組で歌ってるよ。この前、エバーヴェイルちゃんねるで好評だった奴。メルが地球の文化を知ってもらおうって言い出してね。それくらいじゃ無いかな?』

『わかった。この世界の魔力があがっているらしくてな。何か起こっていたら教えてくれ』

『了解。パパ』


 ムー教授にそのことを伝えると、ムー教授は驚いた顔をする。


「なんと、放送しとるのか」


 ムー教授が手元にある映像装置を起動する。そこには、メルが最近流行りの音楽を歌っている姿が映る。衣装もエバーヴェイルちゃんねるで使ったものだ。こちらの世界でカバーすると著作権とかそういうのはどうなるんだろうかと考えていると、ムー教授が吠えた。


「な、な、なんたる衝撃じゃ」


 え? 過激なこともない。踊りながら歌うメルは可愛らしいし、俺自身じゃなければ推したいところではある。しかし、ムー教授は若い女の子好きすぎだろう。孫娘の身代わりになって治安維持部隊とやりあったときは、これを予測しての孫娘に似せた設計にしたのかと思ったんだがな。


「こ、こ、これじゃ!! 魔力上昇の理由は!」


 ムー教授は映像装置にかじりつくように見ている。


「どういうことだ?」


 ムー教授がこちらを向くと、なんと涙を流している。やめてくれ、ジェシーと女子小学生だと事案ものじゃないか。フレイヤにでも変身しておこうかと考えていると、ムー教授が変なことを言い出した。


「奇人オラグムッホの説エムオーイ現象は正しかったんじゃ!」


 うん、分からん。


「ムー教授、もう少し詳しく教えて欲しいんだが。エムオーイ現象?」

「すまん。地球の文化に触れすぎて発狂し急死した研究者のオラグムッホが提唱した学説じゃ。しかし、本人が急死したことで地球の文化には触れないように法律ができた。彼は、地球の文化には生命力を上げる効果があり、それをダンジョンが吸収することで魔力が生成されるという仮説を出していたのじゃ。その現象を今見せられてるのではないかと思う」


 なんか眉唾な話のようにも聞こえるのでコメントに困る。そもそも、ダンジョンの生命力とか魔力生成についてはメカニズムがよく分からない。


「よし、地球側のわしに確認するぞい」


 ムー教授は、いつもはひよりになっている俺3号がムー教授となって魔力送信の装置を頑張って作っているのを覚えていたようだ。そして、そのエムオーイ現象について交信で聞き始める。俺みんなに聞こえる交信じゃないか。そして、地球のムー教授から驚きの返事が返ってくる。


『エムオーイ現象はあると思うぞい。この地球にあるダンジョンの魔力生成能力が埋没した生命力にしては多すぎると思っておった。ダンジョンはより効率的な別の生命力を吸収しておると思った。この世界のテレビや配信は、その生命力を上げるのに効果的なんじゃろう』


 こちらのムー教授は腕を組んで何かを考えている。


『つまりじゃ。この世界の魔力が瀕しておる理由の1つが魔力節約のためにただでさえ少ない人気番組【言い負かすまで終われません】がなくなったからじゃというのか』


 この世界、ちょっと人気番組が偏りすぎてるぞ。



『可能性があるわい。中止を呼びかけたのは深淵派じゃったよな。そして、その頃から更に魔力量が落ちたのじゃ。状況証拠としても一致するのう』


 ちょっと会話に混ざるか。


『じゃあ、地球のコンテンツを配信すると魔力問題は解決するのか?』


『効果はあるじゃろうな。しかし、それだけでは焼石に水じゃの。あまりに魔力頼りの生活の見直しと、その間の地球からの魔力供給は必要じゃろうな』


 しかし、この話を聞いてやれることがわかってくる。よし、ジェームに持ちかけてみるか。

 その時、アリスから交信が入る。


『パパ、緊急。深淵派の代表が次元を破ろうとしてダンジョンを暴走させようとしてるわ。奴ら、別の次元に逃げる気よ』


 海外がないこの世界だと逃げる先は別次元なのか。


『わかった。すぐに向かう』


 そして、俺はムー教授と共にアリスの所に向かった。


エムオーイ現象・・・謎ですね。

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― 新着の感想 ―
ヤックデカルチャー!
言っちまえよ。『エモい』って。
>エムオーイ現象  え? どエムオオイ現象?(ゲス顔)
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