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世界はまだ、俺が魔女で聖女だと知らない  作者: 月森 朔
第8章 軍団になった日

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第18話 笹木とダンジョン世界

フレイヤとアリスたちがムー教授の孫娘に遭う回です!

 俺は俺2号。フレイヤを担当している。ムー教授の部屋から出た後、アリスと一緒に中央塔で聞き取りなどをやっていた。特に深淵派の情報などを仕入れるためだ。ムー教授の関係者だと言うと、どちらかの反応に分かれる。惜しい人を亡くしたか、亡くなって清々したか。こちらの世界も、死者に対する文句などは憚れるようだが、濁しつつ色んな事を語ってくれる。フレイヤの姿は、そんな話を引き出すのに役に立つ。ムー教授の関係者だと言っているにも関わらず、悪口に近いこともペラペラと喋ってくれる。となりにいるアリスも人懐っこい喋り方をしてくれるおかげで、話しかけた相手は数人だけなのだが深淵派の動向が明確になってきた。


「あなたたち! おじいさまの関係者ということですけど見ない顔ですね!」


 そこにはフランス人形みたいな少女が立っていた。もちろん服装は飾り気がないフォーマルな服だった。ところで、ここでおじいさまと言えば、ムー教授くらいだろう。もちろん、少女タイプのアバターとなったムー教授ではなく、本物の方だ。


「もしかして、ムー教授のお孫さんですか?」


 アリスがそう聞くと、少し眉をひそめる。


「私の顔も知らないなんて、本当にどこの人? まさか、深淵派の回し者じゃないでしょうね!」


 よく見ると彼女は目の下に隈を作っている。あまり眠れていないのだろうか。


「わたくしはフレイヤ。こちらはアリス。わたくしたちはムー教授の指示で、深淵派の暴挙を止めようと動いております」

「フレイヤ? アリス? まさか。あの、アリスさん。あなたのお父様の名前は何ですか?」


 彼女は目を丸くして訊ねてくる。緊張からなのか、ぎゅっとスカートを握っている。


「え? 私ですか? 父は、ジェシー・ラバックといいます」

「!!!」


 彼女は両手をぎゅっと胸の前で結ぶ。何かをつぶやくと、一息大きく吸う。


「あなたはフレイヤ。何の魔女でしたか?」

「炎ですわ」


 彼女は目に涙を浮かべる。


「おじいさまが言っていた通りだわ。あなた方は地球からの使者ですね」


 ぎゅっと俺の手を握ってくる少女。ぼろぼろと涙をこぼしてくるので、周りの目が気になる。そこで、場所を移そうというと彼女は会議室みたいなところに案内してくれる。

 そこで少し落ち着くまで彼女をぎゅっと抱きしめている。


「ごめんなさい。あの、調和派を助けに来てくれたんですよね。おじいさまが言ってました。熱い気持ちをもつ同志が地球にいると。そして、その人がフレイアさん、アリスさんたち英雄を差し向けてくれると。お願いします。崩壊しかけている調和派を助けてください。私じゃ、おじいさまの代わりになれないんです」


 また、そこまで話して涙をぽろぽろと流し始める。


「あ、私ったら名乗ってませんでした。キュリアルア・ド・ムーと申します。親しい方には、キュルと呼ばれています。どうぞ、キュルとお呼びください」



 その後は、彼女には辛い話と分かりつつもムー教授の最期について教えてもらったり、深淵派から何かされていないか聞いてみた。俺がキュルに質問している間に、アリスが地球側に交信で状況を伝えてくれる。アバターのムー教授の見た目が目の前の少女に瓜二つということは分かった。本当にとても可愛らしいので、ムー教授も魔が差したのだろうか。


「わたくしたちは、今からキュルと行動を共にするわ。深淵派が調和派を急襲する可能性が高いわね。こう見えて、腕には自信があるのよ。あと、仲間もこちらに来る予定よ」


 キュルはまた泣きそうな顔をする。


「あのフレイヤ様、アリス様、ぜひ家に来てください」

「呼び捨てにしてくださいね」


 そういうと、小さく呼び捨てにして練習しているのが可愛い。


「では、フレイヤ、アリス。ぜひ、家に来てください」

 


 そして、俺たちはキュルの家へと向かうことにした。しかし、それは想像していた家とはかけ離れていた。大きな邸宅かマンションみたいなものを想像していたのだが、この規模感は見覚えがある。アパートだ。笹木として長く過ごしたアパート。


「小さいと思われましたよね。ムー家の家は他にあるんですが、そちらは悪戯や侵入が絶えず警備のみを入れて閉鎖しています。私はここに母と2人で住んでるんです。母は夜まで戻りません」


 そんなところに初めて会った2人を入れるというのも不用心だと思ったが、自分たちが不審者じゃないので、一端置いておこう。元の笹木なら事案ものだ。



「お仲間の方は、何時こちらに来られますか?」


 さっき言ってしまったが、何時とは決めていない。しかし、そこに笹木から交信が入る。


『もう出られるよ。俺のユニークスキル召喚の派生スキル、送還によって、仲間を送る。あ、まずは、俺が行って再度召喚するって形になるけどね。ジェシーとメルにも声をかけてるから大丈夫。知床の騒動は収まったようだ』


 前半は、新しい設定なのか良くわからなかったけど、笹木が先にきてドッペルゲンガーを再召喚するのだろう。


「キュル。となりの部屋を借りていいかしら。地球からの特殊な転移になるから見られたくないのよ」


 キュルは快諾してくれて、俺とアリスは隣の部屋を借りる。


『アリスと交換』


 目の前にいるアリスの代わりに笹木が立っている。笹木は、影子の姿にすぐ変身してしまう。


『アリス、ジェシー、メル。ドッペルゲンガーを解除しますね。あ、ムー教授も行きますか? はい、分かりました』



『じゃあ、こっちでドッペルゲンガーを起動っと』


 そうして、目の前には、アリス、ジェシー、メル、そして、ムー教授が現れる。ひよりとフラムは地球に一度残留することになる。よほど危ない状況じゃなければ、交換のことも考えて1人は残しておきたい。


『成功したよ。フラム、ひより、引き続き、対応よろしく』

『了解。がんばってね。僕もムー教授をこっちでも呼びながら、製作に励むとするよ。笹木も用意しておくから心配しないでね』


 そんな返事をもらった。しかし、狭い部屋の中に、6人はちょっと多い。



「キュル、ちょっと驚かないようにするのよ。大勢来たから」

「分かりました」


 キュルの緊張した声がドア越しに聞こえる。そして、対面となった。さっきからムー教授が静かだ。ペルソナを切ってるのか?



「わー、え!? 私?」


 キュルが各自の顔を見ていって最後に1人のよく似た女子の顔に目がとまる。もちろん、ムー教授だ。やっぱり、こうなるよね。


「私にそっくり」

「わし…わたしは、えー、ムー、じゃなかった。そう、エーミ…です」


 ムー教授が偽名を名乗り始めたぞ。


「エーミちゃん。はじめまして。すごく似ていてびっくりしちゃった」


 キュルとエーミことムー教授は握手をする。ムー教授は、手を握った途端に涙をぽろぽろとこぼし始める。なんだ、この祖父と孫娘は涙もろいんだろうか。


「ごめん、痛かった!? 似ているっていうのが嫌だったかな。ごめんね、ごめんね」


 キュルが誤解して慌てる。


「ちがうのじゃ、あ、ちかうの。うれしかったから。謝らないで」

「うれしい? うん、私もうれしいよ。来てくれてありがとう。調和派と地球が仲良くなれるように頑張るから、よろしくね」


 その後、他のメンバーからの自己紹介なんかをしていく。ジェシーがキュルに伝説のコックのお方ですねと訊ねられて、アリスが爆笑するという一幕もありながら、わずかな時が過ぎる。その後、ジェシーがドアの方を見る。


「慌てて誰か走ってくるな。中年女性で、右足が悪い」

「あ、母です。ちょっとお待ちください。皆さんのことを話さないと」


 そして、キュルが玄関の方へ行った。すると、玄関を開けたところで、女性の慌てた声が聞こえる。


「深淵派が組織した治安維持部隊が、この町に攻めてくるわ。キュル、今すぐ逃げましょう」


 これは待ったなしの状況のようだ。しかし、治安維持部隊というが、治安があれているようには見えない閑散とした町だ。何が起こっているんだろうか。俺たちは厳しい顔をして拳をにぎるムー教授に注目したのだった。


笹木「きちゃったよ」

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― 新着の感想 ―
死後、孫娘の姿を模したアバターで復活するとかゆー、絶対に孫娘には知られてはいけないムー教授の秘密。
キャルのママとムー教授が出会って果たして見抜かれないかが問題よね
 孫にムーのおっちゃんだと知られたら、間違いなく孫は情緒がバグるな。  バグって、それから落ち着いたら、ムーのおっちゃんを白い目で見ると思う。  なんで孫娘の姿になっとんねん、キモッと。
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