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世界はまだ、俺が魔女で聖女だと知らない  作者: 月森 朔
第8章 軍団になった日

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第17話 ムー教授と孫娘

ムー教授は強烈な感じですね。

 俺は俺1号で、笹木の姿のままだ。今、俺とひより、そして、ムー教授の3人で工房に籠って、ダンジョン世界側への魔力送信や今後の動き方について議論を進めている。フラムは南さんたちと共にフレイヤたちのサポートを継続している。


 ちなみに、ムー教授は白衣から、女児向けの服に着替えている。ひよりの物も合わないため、影子の分身を活用して新しく買ってきたものだ。とりあえず、ムー教授とかいうと大変なことになるので、フラムの親戚ってことにした。


「ムー教授。どうして、地球の魔力を吸い上げる機構がこんなに受け身なの? もっとアクティブに魔力を送るようにすればよかったのにさ」


 ひよりがそう訊ねると、何度も頷くムー教授。


「ひよりもそう思うじゃろ? わしも若い時にそう言ったんじゃがな。この計画が始まった時は、まだ魔力減少予測が甘くてな。ダンジョンを別の世界に送り込むだけで大変だったのも相まって、魔力の上澄みをもらっていくような仕組みになったんじゃ。何が目的か分かっておらんのよ。魔力をいかに持ってくるかが大事なのにのう」


 ムー教授も初期から参画はしていたが、さすがに若かったんだろうな。そういう意見って通りづらいかもしれない。


「じゃあ、後付けでも魔力を送る装置か何かを作れば良かったんじゃないですか?」


 俺がそう聞くとムー教授はため息をつく。なんか、女子小学生にため息つかれるのって地味にダメージ入るぞ。


「それが、そうも行かん。実は、地球への干渉は数が限られておってな。こちらでダンジョンシードと呼ばれるものにあらかじめ仕組んでおいたシステム以外の増築はできんのじゃ」


 ムー教授はそう言いながら顎の下に手をやる。何かを握るようにしているが、空を切っている。


「おっと、髭がないぞ。つるつるのピチピチの顎しかないの」


 髭を撫でつける癖でもあったのだろうか。すこし手が寂しそうだ。


「でも、今回のフラムやムー教授のアバターなんかは、追加で書き換えたんじゃないですか?」

「そうじゃな。これは、ダンジョンに持たせた機能を活用しておるし、そもそも、人類に植え付けたステータスのシステムの基本機能じゃからな。まぁ、その基本をここまで操れるのも、今や、わしくらいなもんじゃ。ハハハ」


 ムー教授は高らかに笑う。ひよりは、それをあっさりとスルーして質問を始める。


「ムー教授、魔力の送信アンテナを地球側でも作れるかな? 小規模の物は地球にもあるだけど、大容量の魔力を送るとなると厳しいんだよね」

「フフフ、よく聞いたの。こんなこともあろうかと、いくつかのダンジョンに材料が出来るはずじゃ。その材料で、簡易のアンテナを作るくらいは朝飯前じゃ」


 その言葉に俺たちは胸をなでおろす。


「ところで、その材料というのは何ですか?」


 俺がそれを聞くと、ムー教授は何かを描き始めた。


「こういう鉱石が必要じゃの。見たことはあるか?」

「データべースを漁ってみるね」


 ひよりが端末をムー教授の絵を撮って、端末で類似のアイテムを探す。すると、ダンジョンが3件ヒットした。


「おお、それじゃ」

「こんな偶然あるんだね」


 産出するダンジョンは3件。1つは南米、1つはアフリカ、そして、最後は千葉のダンジョンだった。そして、なんと今、金子さんが対処に行っているダンジョンだ。


「南さんと金子さんに連絡するよ。どれくらいの量が必要ですか?」


 ムー教授が量を示してくれる。コンテナ1杯分くらいか。ちょっと1日で何とかなる量ではないな。ただし、運がいいことに、モンスターのドロップではなく、採掘系のようだ。


「これが貯まったら、どれくらいでアンテナは作れますか?」

「およそ5日かのう。加工機械なんかは、ちゃんと揃っておるな。お主は、いい仕事をするようじゃ」


 その言葉にひよりが得意満面だ。しかし、そんな表情が曇る。


「でも、こんなに手軽なら、調和派が追い詰められる前に作ればよかったのに、どうして何もしなかったのさ」

「案としては出したがな。すぐには実現できん案じゃったからな。作るのは容易でも、それを運ぶために次元を越えるのは容易ではない。そして、こちらで作ろうにも、お主でも作れんだろうからな」


 ひよりでも作れないとなるとかなり難しい機構なんだろう。


「そんな時じゃ、深淵派のダンジョンの大規模活動による魔力飽和案がでたのは。スマートさのかけらもない案じゃったが、実現可能じゃ。当然、世論は傾くというもんじゃ。しかし、嘆かわしいことに、調和派が世の中のことを何も考えてない頭の固い奴らだと騒ぎ始めてな。調和派に不満のあるやつが同調して叩き始めて、調和派は崩壊を始めたわけじゃ」


 どこの世界も政治とか大変そうだ。


「そうじゃ、調和派を助ける話はどうなっとるかのう」


 それを聞かれて俺は頭をポリポリもかく。


「それなら考えてる作戦があるんですよ。そのためには、こちらの戦力をなるべく投入しないといけないのですが」

「なんじゃ、そういうことか? 交換を使ってお主が向こうに行くじゃろ。そして、ドッペルゲンガーを出してみるんじゃ。あ、わしも行こうかのう」


 確かにこちらに誰かを残しておけば、移動も可能だな。


「やはり交換で行けるんですね。こちらでは試したんですけど」

「大丈夫じゃ」


 心強い言葉だ。俺はあちらに行くとして、フラムとひよりは待機組かな。俺の身代わりに分身を残しておけば南さんやマナも安心かもしれない。


「どうやって誤魔化そうかな。いきなり、ダンジョン世界に飛ぶのは不自然かな」


 ひよりが手を叩く。


「僕思いついた。笹木の能力って、召喚するとかで誤魔化してるから、召喚を送り届ける送還の能力ってことにしたらどう?」

「おお、それはいいかも」


 さすが、ひより。


「じゃあ、早いうちに出発じゃな」


 ムー教授もノリノリだ。


 その時、アリスから交信が入る。


『あの。ムー教授のお孫さんという方にお会いしました』

『何じゃと?』


 ムー教授が固まっている。え? これ、どんな反応なの?


『可愛いお孫さんですね。ムー教授が亡くなったことは間違いないなく、ムー教授の話すように老衰ということで、不審な死では無かったようですよ』

『そうか…。孫にはわしのことは伝えないでくれ。あと、早く町から去るように伝えてもらえるか?』

『それは厳しいかもしれませんよ? 調和派を立て直すと意気込んでらっしゃいますから』


 フラムがそのお孫さんの絵を映す。そこには、ムー教授が映っていた。いや、アバターのムー教授とそっくりな女の子が映っているのだ。


「お孫さんにそっくりですね…」


 俺がそう言うと、ムー教授が下手な口笛を吹いて目をそらす。


「いやぁ、髪の色とかは少し違うぞ。あと目元もちょっと変えたからな」


 ちょっと変えたっていうところで語るに落ちているじゃないか。ムー教授、やっぱり孫娘をモデルにしていたのかよ。


「だって、可愛いんじゃよ。目の中に入れても痛くないほどに」


 ムー教授は、あきらめたのか孫娘をほめ始める。親バカならぬ、ジジバカなんだろうけど、孫娘をモデルにしたアバターを仕込んで自分の人格移すとか、ヤバい爺さんだ。


『すまんが、孫娘の警護をしてやってほしい。深淵派は、必ず調和派の関係者に対して手を出してくるはずじゃ、孫娘に罪はない。わしがちょっと天才すぎて妬まれてしまっているだけなんじゃ。わしの才能が憎い』


 あぁ、俺の小説にも出てこないくらいの強烈なキャラだったな。事実は小説より奇なりというが、異世界の爺さんに負けるとは、俺の黒歴史はまだ甘かったようだ。


『分かりましたわ。わたくしたちはお友達になったので、今後一緒に動きたいと思います』

『感謝する』


 フレイヤの言葉にムー教授が小さく、しかし、心のこもった礼を言ったのだった。


生粋の女性が珍しいと評判の本作品。ひさびさの生粋の女性です!

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― 新着の感想 ―
この小説、女の子はほぼ笹木しかいませんからねぇ……
女の子だいたい笹木だもんね…(蘇る全部笹木学園の記憶)
 孫娘の体をコピーして憑依して自分のものとする爺。  コイツはまた、倫理観がぶっ飛んだ……。
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