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世界はまだ、俺が魔女で聖女だと知らない  作者: 月森 朔
第8章 軍団になった日

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第12話 知床とドラゴン

地球のお話

 俺は俺4号。メルを担当しており、今はジェシーとマナ、そして影子の分身と一緒に知床に出現したドラゴンから北海道を守りに来ている。マナもいるため、ラビリンス・ドリフトは使わずに、ヘリコプターで飛んできた。ギルドが最近購入した高速ヘリコプターだそうだが、ヘリコプターに乗ったのが数回のため分からなかった。


「メルちゃん、あたし、がんばるね。役に立ちたい」


 マナは降りる間際に、そんなことを言っている。十分、クラン運営など無くてはならない存在なんだけどな。何か思うところがあるのかもしれない。



 降り立った場所は、港町で学校の校庭だった。既に住民は避難済で、怪我人などはいないとのことで今の所出番はない。残っているのは、自衛隊とギルド職員だ。こういう時に残るギルド職員は、大抵探索者から再就職した人か、就職先から探索者としてのレベルアップを条件づけられた人たちだったりする。

 受け入れてくれた熊みたいにガタイのいいギルド職員の人がこちらに来るなり、すごい大声を出す。まるで応援団みたいだ。ヘリコプターは、このあとトンボ返りするために、エンジンを切っていないのも関係するのだろうか。


「私は! 北海道北部ギルドの臨時職員の田部といいます! 皆さんのお越しをまっておりました!」


 ギルドは探索者から有望な者を臨時職員として安くない給料で雇用しているのだ。彼もその1人だろう。そうすると、彼は少なくともCランクはあるということだ。

 その田部さんの案内で校舎の中へと案内される。そこが臨時の指令本部となっているようで、数名が忙しく立ち回っていた。


「すみませんが、こちらにサインをいただけますか!」


 何か承認する書類でもあるのかと思ったが、出てきたのは色紙だった。


「私は!エバーヴェイルの大ファンなんです!」


 ヘリコプター関係なく声がでかい。そして、仕事の途中にサインを要求するとは面白いな。


「君、おもしろいな。書いてあげよう」


 ジェシーはそう言うとサインをさらさらっと書いてしまう。それも結構カッコいいサインだ。え、いつのまに練習してたの? フレイヤとかマナ、そして、俺…メルなんかは、サインを書くことがあったから、サインをデザインしたりして研究もしたものだったのだが。


「あぁ、俺も結構ファンがいるからな。練習した。さぁ、メルもマナも書くんだ」


 自然と書く流れになってしまうが、エバーヴェイルちゃんねる2人としては書かねばなるまい。


「メル。はぁとなの」


 その間、影子は何かギルド職員か秘書みたいな気配の消し方をしている。そのため、ジェシーは声を掛けない。

 もらったサインに感激して思わずジェシーに握手を求めた田部さんだが、流石に俺とマナには遠慮してきた。

 田部さんによると、今、ダンジョンから出た巨大なドラゴンが近くの山頂にいるらしい。だから、ヘリコプターは低空から近寄ったのか。ちなみに、ドラゴンが獣を捕食していることなどが報告されているそうだ。


「偵察用のドローンで撮影したのがこちらです!」


 それは手に小型の小動物を捉えて食べているように見える。山頂に木が生えていないので大きさがちょっと分かりづらい。


「手に持っているのはヒグマです。体長2メートルはあるでしょう」


 え、でか。


「つまり、こいつは手だけで2メートルを鷲掴みにできるサイズか。これは巨大だな」


 さすがのジェシーも驚く。


「ドラゴンの体長は30メートルと推定されています。これで空を飛びますからね。動く要塞です」


 しかし、こんなのとどうやって戦うと言うんだろうか。そこで田部さんが少し小声になる。それでも普通の人よりも十分声が大きいのだが。


「みなさんに来ていただいたのは、スタンピードへの対処ではあるんですが、さすがにあのドラゴンを探索者で倒すのはきついだろうということで、今、自衛隊がミサイルで砲撃するとか検討しています。でも、手続きのために、ドラゴンの周辺に逃げ遅れた人がいないかというのを確認しています」


 それを聞いて安心する。フレイヤになって砲撃するにしても、ドラゴンってのは耐久性が高いからな。なかなか倒せないだろう。


「そういうことなら、おれたちは小型のモンスターを狩るとかか?」

「そうなりますが、実はドラゴンが他のモンスターを蹴散らしてしまって、周辺に隠れている状況です」



 そんな話をしていると田部さんが呼ばれ、ひどく慌てて話をしている。


「登山者が逃げ遅れてるだって!?」


 田部さんとは、こそこそ話ができないな。そこからは自衛隊の方を含めて、作戦の練り直しとなった。まずは人命救助となったのだが、そこをエバーヴェイルに依頼という形になった。自衛隊のメンバーは、レベル平均が100は超えているのだが、隠密系や感知などのスキルを持っていないらしく、ジェシーにお鉢が回ってきた。


「あぁ、いいぞ。ところで、登山者はどこに?」


 登山者は山頂からドラゴンが見えたので慌てて避難している間に滑落し、数時間失神していたらしい。意識を取り戻した後にスマホで救助を求めた時には、近くにドラゴンが居る状況となったようだ。

 そして、俺たちは4人で作戦を立て始める。


「じゃあ、おれが救助に向かうから」


 待機してろって言うんだろうな。ジェシーはニヤリとする。


「ドラゴンを女性3人で倒してくれ。救助が終わったら、合流するから」

「「「え?」」」


 見事に息が合った。


「フレイヤがいないのに、ドラゴンなんて厳しいと思うんですが」


 マナが弱音を吐く。いや、俺も吐くぞ。しっかり、吐いておこう。


「メルも、あのドラゴンを殴り倒せる気がしないの」

「ゾンビアタックですよね。そうですよね。おらの代わりはいくらでもいるから」


 これは影子の分身。


「大丈夫だ。ひよりが片手間に作った強力な武器があるからな」

「初耳なの」


 つい、口を尖らせてしまう。


「むくれるな、サプライズだからな。ひよりからの餞別だ。魔力を蓄積する装備を作ってたら、魔力をめちゃくちゃ消費するが強くて長い矛ができたらしい。これをマナに渡す。メルには、殴るたびに魔力が乗るグローブだ。それで、影子は糸だと」

「おらだけ、なんか普通」

「忍者といえば糸だろう。使い方はこのメモをみてくれ」


 影子はそれを手に取り、笑顔を取り戻す。



 そして、作戦は開始された。もしかしたら、応援に付いてくるかもしれないと心配していた田部さんだが、エバーヴェイルさんの足手まといになると言って山の近くで登山者を引き取る役目を買って出てくれた。さすがにCランク以上は、引き際なども分かっているようだ。

 我々は、ドラゴンと登山者が居る山の登山口の1つにたどり着く。ドラゴンから見えづらく、登山者の場所へも一番近いということで、自衛隊が調べてくれた登山口だ。送ってくれた自衛隊はここで待機するらしい。さすがに、すごい度胸だと感心する。

 登山口から見た山は4月だというのに、まだまだ雪がある。もちろん、そんなところを登るわけなのである程度装備が必要だったりする。そして、この短時間で登山に向いた服装を変えているのは、一瞬で着替えが可能なE&Sの魔道具だったりする。


「おれはこっちだな。倒せとは言ったが、無理はしないでくれよ。じゃあ、また」


 ジェシーは感知で登山者の場所を把握したのだろう。隠密を使いながら、すごい速度で山を登っていく。一般人が平地を走るよりも速く登っていくのは、人間技じゃない。トップランカーでもない限り、探索者でもあれほど速くは登らないだろう。


「うわぁ」

「おいおい、やばいぞ」


 そんな自衛隊の人が動揺した声が聞こえたのだった。うん、ジェシーだもんな。


ジェシーと山で会うのは怖そう。

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― 新着の感想 ―
糸と忍者は合わせてはいけない組み合わせ 秘技!亀甲縛りの術!(相手はモンスター) 猿轡を添えて
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