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世界はまだ、俺が魔女で聖女だと知らない  作者: 月森 朔
第8章 軍団になった日

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第7話 ダンジョン世界とエネルギー問題

アリスとフレイヤの旅ですね。

 俺は俺6号。今はアリスとして、フレイヤと共にダンジョン人の世界に探索に来ている。今回のミッションは、ひとまず調査だ。調査の1つ目は、地球のダンジョンを操作して急激に魔力を上昇させようとする深淵派について調べること。2つ目は、深淵派以外の派閥や世界の情勢について調べることだ。地球からの魔力供給を実現したとして、


ちなみに魔力供給の方法については、ひよりとガームドさんが考えることになっている。もちろん、その背後に、魔装開発局のエリートたちが控えているんだけど。


 おっと今はそれどころじゃない。現地人の男性をインビジブルの状態で追いかけているんだった。


『アリス。周辺に人はいる?』

『大丈夫。その角を曲がったら姿を表して聞いてみましょ。あ、フレイヤがペルソナつかって声かけてもらってもいい?』

『そうね。わかったわ』


 そして、彼は建物の角を曲がる。


「すみません。ちょっといいですか?」

「あ? 魔石は渡さねーぞ。うちも生活が苦しいんだから…えええ?」


 振り向いた男性はフレイヤを見て、目を白黒させている。


「あ、あ、あ、なんでしょうか」


 男性が顔を赤くしている。


「わたくしたち、この町に初めて来たんですけど、町を案内してくださるかたを探していたんですけど…」

「あ、あ、あ、あの俺でよければご案内しますよ! 俺、ジュームと言います」


 さすがフレイヤだ。こちらでも美的感覚は同じらしい。



 ジュームと名乗った男性は、そのまま町を案内してくれることになった。


「しかし、こんな辺鄙な町に、フレイヤさんとアリスさんはどういう要件でこられたんですか? ここは弱小学派の町なんで、魔石もこんなのしか支給が無いんですよ。フレイヤさんたちは、何学派ですか?」


 ジェームは早口で捲し立てる。学派? なんて答えようか。弱小だから恥ずかしいだっけ? でも、相手も弱小とか言ってるしなぁ。


『ここは修練派がいいわ。魔法のスキルなんかを極める集団ね。修行と称して旅をすることが多い学派だから都合がいいわ』


 フラムがこの光景を見てくれていたようで、助言してくれる。


「修練派よ」


 俺がそう答えると前を向く。


「なんと、あのストイックで有名な集団ですか。直接お会いするのは初めてですが、こんなに美しい方が入っているなんて知りませんでした。喧嘩っ早い血の気の多い集団だと聞いてましたが、正直、印象が変わりました」


 少し早口になるジェーム。


「それはよかったですわ」


 フレイヤが微笑むと、あからさまに顔が赤くなる。では、情報収集といくか。


「先ほどの配給というのは、魔石の配給ですか?」

「ええ、この2年くらいは配給頼りで生活してますよ。前までは魔石じゃなくて、魔力の還流システムが動いていて、ちゃんと供給されてたんですけどね。今じゃ、そのシステムを動かすだけの余剰の魔力もないとかです。でも、大手の学派なんかは、魔石の配給なんかもない豊かな生活をしてるんでしょうね」


 ジェームの発言には、悔しさや怒りというよりは、あきらめが強い印象だ。


「すみません。家で母が待ってるので、この魔石だけ置いてきてもいいですか?」


 もしかしたら、魔石も1人1つではなく、1家族で1つだったりするのだろうか。


「ええ、もちろんですわ。ごめんなさい。忙しいところを引き留めてしまって」


 ジェームはフレイヤが申し訳なさそうな、少し悲し気な顔をすると、大げさに首を横に振る。


「そんなことありません! まったくも、これっぽっちも忙しくないですよ。今日はお2人に会えて、ダンジョンの風に感謝です」


 フレイヤが相手をするとそんな調子なので話が進まない。そこで、俺がジェームのことなどを質問していく。すると、彼はこの町で魔道具研究を行う技術者だったそうだ。しかし、そのエネルギー源である魔力が制限されたことで自然と職を失ったらしい。

 フラムの話を思い出しながら、最近の状況などを訊ねてみる。この世界は、国という単位は存在しない。その代わり、魔法や魔道具といった魔法に関連する技術研究を行う組織が複数存在しており、それらが自治組織を築いている。そして、それらが集合して1つの大きな共同体を作っているのだ。合衆国に近い形だが、アメリカの州に対してその数倍の学派が存在している。そして、大統領は存在せず、各学派から出ている議員による議会が頂点に立っている。


「ここは、光関係の魔道具を主に研究する学派なんです。でも、水や食料、農産物を研究する学派の方に優先的に魔力が送られていて、先細る一方というか、生かされているだけですね」



 生活水準について訊ねてみると、面白いことが分かった。

 この世界のインフラのほとんどは魔力に頼っていたそうだ。過去形なのは、その魔力が減少してしまい、魔力頼りの生活が崩れてしまっているからだ。地球で言う電力網に近いのが魔力の還流システムというものらしい。自然と水が流れている場所については、浄水設備のようなものがあるらしいが、それも魔力に頼っていたりする。水さえ手に入らない場所では、水を出す魔道具が使われている。熱源はガスを使うこともなく、魔力を火に変えたり熱に変えたりする魔道具が使われている。つまり、魔力頼りで便利な生活をしていたのだが、それが崩壊してきている状況のようだ。


『オイルショックみたいなものかしら』

『そうかも。地球も魔道具の依存度を上げるのは危険だね』


 フレイヤと交信で話しながら、ジェームについて歩く。

 この町は数年前はもっと活気があったらしいが、ここ最近ダンジョンから得ていた魔力がぐんと減ったそうだ。仕方なく、運搬する必要があるということで不人気だった魔石が、現在の主流の魔力源となったのだ。それも、今や配給制で細々と使っている始末。


「ここ、俺の家です。よかったら、お茶でも飲んでいきますか? 母もお客さんが来たら喜びます」


 家は3階建ての箱型の建物で、周囲と画一的な外観だ。それなりに手入れはされているようだが、質素で寂しい様子だ。ジェームはドアを開ける。


「自動開閉もできなくなってるんですよね」


 言われるまで気にしなかったのだが、本来は自動ドアらしい。


「おかえりなさい」


 中から老年の女性が現れる。なんだか、声に覇気がない。


「ただいま、母さん。これ、配給の魔石。魔石の質が更に落ちてしまったよ」


 俺たちはドアの外で待っていると、ジェームの母親が声をかけてくる。


「お客さんかい? あらあらあら、ジュームが女の子を連れてきたよ。あらあらあら。どっちが彼女なんだい?」


 先ほどまでけだるそうな雰囲気だったのが、急にテンションが上がる。


「母さん、ちがうって! フレイヤさんたちは、修練派の方々で旅の途中にこの町に寄ったらしいんだ。俺に町を案内してほしいんだって」

「あらあらあら、あんたが指名されたのかい。そりゃ、そりゃ、あー、お茶くらいしかでないけど、いかがですか? どうぞ中に入って。昔話なんかも色々できるわよ。ジュームが新型の投影装置を作った話なんかはおすすめなのよ」


 新型の投影装置? 光の研究といっていたし、映像関係なんだろうか。ちょっと気になるな。


「いいですか? では、お言葉に甘えて。私はアリス。彼女はフレイヤです。お母さま、よろしくお願いします」

「お母さま!? あらあら、ふふふ。私はバーナよ。なんだか、体の調子がよくなってきたわね。さぁ、どうぞどうぞ」


 こうして、俺とフレイヤは、初めてダンジョン人の一般家庭へと踏み込んだのだった。


フレイヤはこちらでも人気がありそうですね。

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― 新着の感想 ―
 …………これ、魔力を送るより科学技術の基礎知識を送った方が良いんじゃないか?
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