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世界はまだ、俺が魔女で聖女だと知らない  作者: 月森 朔
第8章 軍団になった日

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第5話 アンテナとダンジョン世界

月のダンジョンのつづきです。

 俺は俺1号、つまり、笹木本人だ。いま、金沢ダンジョンの中から月に降り立ったアリスとフレイヤの状況を逐一確認している。フラムは安全確認のためダンジョン内の複数個所を映し出して見せてくれている。それに加え、フレイヤたちが持ち込んだダンジョンガイダンスも通信と映像記録に使用している。


 フラムがうさぎのモンスターを映し出す。でも、巨大な2足歩行のうさぎは可愛さよりも迫力が勝るため、あまりアップにしないでほしい。やっぱりサイズ感って大事だわ。


「んー。うさぎのモンスターは、フレイヤとアリスを認識してるわね」


 フラムが言う通り、うさぎ達は無関心を装っている感がある。一瞬、フレイヤたちを見ては、視線を戻すということを繰り返している。


「大丈夫ですかね」


 マナが心配そうに映像を食い入るように見ている。


「大丈夫よ。うさぎたちも距離をとってるわ」


 フラムはそう言ったが、理由としては弱い気もするが、アリスたちは円柱に近づかず、追加のダンジョンガイダンスを10機ほど飛ばしている。それらに対しても、うさぎたちは反応しない。隣でひよりが、送られてくるデータを解析している。


『追加したダンジョンガイダンスのデータって届いてる?』


 アリスの声が届き、それにひよりが答える。


「うん、届いてるよ。ちゃんと解析してる。あー、フラムの前情報もあったけど、やっぱり巨大なアンテナだね。そのアンテナは地球からの魔力を吸い上げて、送り出す送信機になってる。普通のダンジョンにはない建造物だし、面白いね」


 俺3号のひよりはペルソナをフル活用しているようだ。


『素材は魔石に近いと見ますね。かなりの魔力保有をできそうですが、今は空に近いように見えます。もし、地球の魔力を吸い上げているとしたら、もっと魔力を感じると思いますね。多分、これは見えている範囲だけが装置じゃないと思います。そして、これは送信側だと思います』


 別の場所から参加しているガームドさんがコメントしてくる。ガームドさんは魔力通信の大家なので装置としての構造がわかるんだろうか。


『ガームドさんの予想は当たり。スキルで見たんですけど、地下に1000メートルくらいの長さがあるみたいです。でも、階層があるわけじゃないから、埋まってるだけかな』


 アリス側でラビリンス・ドリフトを使ったのだろう。ひよりもその情報を加味して、ダンジョンのマップを作り上げていく。ガームドさんが興奮したように声を上げる。


『本当に特異なダンジョンですね! ダンジョンが極めて有機的な雰囲気を持つ中で、無機物的で、意図的な設計を感じるダンジョンは初めてです。強いて言えば、バミューダの海底ダンジョン以来ですね』


 ダンジョンシードから育ったと考えると不思議なものだ。魔力を送るアンテナとすれば、そこから送られる先もわかるんだろうか。


「ひより、このアンテナはダンジョン人の世界に向いているのかい?」


 俺の質問にひよりがこちらに顔を向ける。


「もう、いま言おうと思ってたんだよ?」


 ひよりが頬を膨らませる。可愛らしいが、俺だ。いや、今はペルソナだから可愛くて問題ない。


「じゃあ、もうわかったんだな」


 俺の問いに得意げに胸を張るひより。


「もちろんさ。この装置、常にその世界に魔力を送ってるようだよ。もちろん、今は少ないけどね。ずっと向いているのは地球とは違う場所だけど、僅かにずれたところ。ほんと、1万キロメートルも離れてないよ。いま、イメージ出すね」


 地球の映像に重なるように球体が描かれる。


「遠くない場所という予想がありましたが、こんなに重なるように存在する惑星があるんですね。びっくりです」


 南さんの驚きは他の皆も共通しているようで、皆が口々に感想を述べ合う。


「惑星の規模は予想だけど、大きく外れないと思うよ」


 ひよりの言葉を裏付けるようにフラムが発言する。


「私の認識とも合います。そちらがダンジョン人の惑星ですね」


 フラムがそう言った瞬間、ガームドさんのマイクから雄叫びのようなものが聞こえた。


『失礼しました。長年追いかけてきた謎が1つ解決したもので、では一旦ここは引き上げて上陸計画を建てて見ますか』


 そこでジェシーが割り込む。


『ガームドさん。そこにダンジョン人の惑星があるとわかったんだ。このまま、ダンジョン人の世界に行ってみたら、いいんじゃないか?』


 このパパは軽い。まるで、昼食の買い出しにスーパーへと娘を送るが如く軽い。


『いや、ここは何かダンジョンガイダンスを改造して送り出すのが安全じゃないかと思います。ラビリンス・ドリフトで偵察機を送り込むことも不可能じゃないなと、ひより先生ともお話をしてます』


 いつもイケイケのガームドさんでも戸惑っている。


「実は秘密の帰還方法があってね、2人には仕込んでるよ。危なくなれば戻って来れるから。ごめんね、心配させちゃったね」


 ひよりが舌をちろっと見せる。分身保険のことを言ってるんだろう。


『なんと、そんな方法が!? それは、他の探索者にも使えるものでしょうか!?』


 ガームドさんのマイクが音割れする。


「残念だけど、フレイヤとアリスだけだね。アリスのスキルを利用してるから」

『あー。そうなんですね』


 ガームドさんが残念そうだ。


『しかし、緊急事に脱出できる方法は、喉から手が出るほど欲しいですね』

「時間があれば作りたいね」


 ひよりがこちらを見る。あー、これは2人体制でやろうとか、そういう意味の視線だな。


「ああ、俺も手伝うよ」


 ひよりが親指を立てる。


「ありがとう。じゃあ、もう、問題は無いかな?」


 ひよりの言葉にフレイヤから反応がある。


『わたくしは問題ないわ。でも、アリスはラビリンス・ドリフトで転移する先は見えるのかしら?』


 あ、そうだ。次元を超えた先の感知ができなければ、飛ぶことができないはずだ。ひよりが何やら端末を操作し始める。


「それならば大丈夫だと思う。アリス。この魔力のラインを追いかけて感知してみて。ゆっくりでいいよ。途中でダンジョンの入口みたいなのに入っていかない? それが次元の狭間だよ。こんなすごい長距離探知ができるようになったのもガームドさんのおかげだよ? 僕だけじゃできなかったよ」


 ひよりは、アリスの近くにいるダンジョンガイダンスを使って道標的なことをしているようだ。これは、本来の使い方に近いかもしれない。


『ひより先生、私は感無量です』


 先ほどまで不安がっていたガームドさんが、ひよりに褒められて舞い上がっている。


『あ、ここだね。ラビリンス・ドリフトで入れそうな気がするよ』

「いいんですか? このまま、ダンジョン人の所に乗り込んでしまって」


 南さんが俺に聞いてくる。


「大丈夫です。彼女たちを信じましょう」


 俺の言葉に南さんが頷いてくれる。俺にも信頼感とか風格が備わってきたかな。


『これで問題はなくなったかしら?』


 フレイヤが落ち着いた声で訊ねてくる。誰も異論を唱えない。


「大丈夫そうだね」


 俺の言葉を受けてジェシーが指示を出す。


『じゃあ、フレイヤとアリス。ミッションスタートだ』

『オーケー。パパ』

『行ってきますわ』


 映像で身長の高いアリスが小柄のフレイヤとベルトを繋げて、ぎゅっと抱きしめる。ダンジョンガイダンスに向けてピースサインをしたアリスが一言つぶやく。


『ラビリンス・ドリフト』


 2人はその場で掻き消え、魔力の残滓がわずかに残ったのだった。


いよいよダンジョン世界に飛び込みます!

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遂にダンジョン人側に!
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