表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界はまだ、俺が魔女で聖女だと知らない  作者: 月森 朔
第7章 観測者になった日

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

160/204

第14話 影子と触手

ジェシー側のダンジョンです。

 俺は俺5号。ジェシーを担当している。しかし、1人で行動する際はアリスに変身し、スタンピードの手が足りないところを影子の分身で補うわけで、常にジェシーばかりをやっているわけでは無い。必要ならばフレイヤやメルに変身して対応することも可能だ。

 目の前には凍りついた海岸が見える。流石にここまで凍りつく地域では無いはずだが、スタンピードが理由だろうか。

 フレイヤたちとは別行動をしているわけだが、あちらは順調にいっている。



 こちらは、今回は影子の分身を主体に戦うつもりだ。そのため、今はインビジブルで姿を消し、ジェシーの姿で身を隠している。分身たちは総勢30名になり、周辺に散らばっている。積雪の上を文字通り飛んでいくため、彼女たちは氷の上で舞う黒い妖精のようだ。

 フレイヤたちに撮影は任せようと思ったが、記録だけは取っておこうと思う。そこで、ダンジョンガイダンスが分身たちを遠目で映している。


「なんだあれは」


 森の中からは不定形の黒いものが溢れ出てくる。不定形のモンスターといえば酸性の粘液を武器にして戦うスライムが定番だが、黒いというのが解せない。影子の分身は、物理攻撃だけが得意なわけでなく、『遠山流忍術 赤雷』といった雷の魔法みたいなものも使える。かなり万能なキャラなわけだ。それが大挙してスライムに襲い掛かる。雷がほとばしり、なんだか少し怯んだ様子だが、再び蠢きながら近づいてくる。どうも雷には耐性があるようだ。


 そこで、分身たちは検証を始めた。黒いものが森の中から溢れてくるという中で、冷静なことだ。俺も森の方へとスニーキングをしていく。すると見えない範囲に同様の黒いものが無数に見える。

 影子たちからは、氷、風、土といった属性魔法みたいなものが、どんどん放たれる。炎が多少効くという感じだろうか。他は物理的な攻撃に近いのだろうか、あまり効いている気がしない。その黒いものは、近くに寄った影子に触手のようなものを長く伸ばして攻撃をしてくる。しかし、影子は遠距離から攻撃しており、危なげなく離脱している。そして、傍に集まってきた分身たちが、皆腕を組んで悩み始める。


「どうする?」

「どうしよね」

「おら、斬りこんでみますかね」

「無駄ではないですか? 風刃でバラバラにしようとしましたけど、効果ありませんでした」

「黒いから光に弱いという可能性はありますか?」

「確かに火散と赤雷には反応してましたね」

「光って何かありました?」

「一応あるけど、あれはトーチと同じで明かり用ですよ?」

「あー、あれね。一斉に使えば結構な光量でるんじゃないでしょうか」


 影子の分身が作戦会議をしているのを見ていると、何か女子スポーツのコーチにでもなった感じだ。影子は、一人称こそ『おら』だが、一様に丁寧にしゃべるので、なんだか社会人サークルかお嬢様学校の部活みたいだ。いや、お嬢様学校に通ったことがあるわけではないから、あくまでイメージでしかないが。


「では、試してみましょう」


 そう言うと、影子の分身たちは一斉に駆けだし、一体の黒いものに接近すると、機械のような息の合い方でスキル名を叫び、何人もの分身の声が重なる。


「「「遠山流忍術 明星」」」


 それは、まばゆい光を放ち、一体の黒いものを白く染め上げる。そして、その光が収まるころには、攻撃を受けた黒いものは消えていた。


「行けたな」


 俺は少しほっとする。しかし、これを何度も繰り返すのは大変だな。当たらなければ問題ない。俺は透明な状態で影子に変身すると、再度分身を生成する。

 そこから、更に分身が増え、総勢で300人くらいにはなったんじゃないだろうか。



「さぁ、量には量で行きましょうか」

 俺はジェシーに戻り、周辺の警戒を行う。まるで、軍隊の指揮官のポジションだ。その後の検証で、5人分の明星によって黒いものは消滅していくことが確認できた。その後、60組の影子チームに別れると、散開して黒いものへの対処を始めた。相手は数百という数が居たはずだが、地道に数を減らしていく。


 そして、数も数十に減って順調にいくかと思ったが、黒いものの気配が変わる。触手みたいなものが生え、激しく蠢きだしたのだ。周囲を薙ぎ払いながら、影子の集団に向かってくる。速度と範囲が桁違いだ。影子の分身を絡めとろうとしているようにも見える。


 モンスターが形態変化をしたという可能性もあるが、影子たちからの情報と俺の感知によって、それが違うことはすぐに分かった。インビジブルと隠密だろうか。森の中に潜んで居る者がいる。この流れは、タイの洞窟で起こった状況に似ている。モンスターを強化する魔道具を使われているのだろう。相手は1人のようで、場所も特定できている。しかし、この流れで倒したところで、再び逃げられる可能性もあるということだ。何とか敵の本拠地を見つけたいところだ。

 俺はペルソナを起動する。ペルソナに作戦を立ててもらおう。すると、何か思いついたみたいで笑みが漏れる。


「わざと負けてみるか。あの黒いのだが、影子を捕まえたいように見える。ここは負け戦を演じてみるのもありだな」


 なかなか難しい演技になりそうだ。しかし、影子の分身たちには作戦がすぐに伝わる。倒されないようにダメージを受けないで1人が黒いものの触手に捕まってみる。仲間を庇って足を滑らせたふりが巧い。


「きゃっ。いやぁぁぁぁ」


 悲鳴までが可愛い。影子の声色とは違うため、忍び装束の中は別の女性にでも変身しているのだろう。そして、その分身は消滅することなく、触手に絡めとられていき身動きが取れないようになる。分身はある程度のダメージによって消滅してしまうのだが、消滅しないということはダメージを受けないように捕獲されていると考えるのが自然だ。

 その分身は簡単には解けないように触手が忍者装束に深く食い込み、体のラインを明らかにしていく。


千種(ちぐさ)を助けるのよ!」

 どうやら、捕まった分身の名前設定は千種らしい。焦った仲間が一斉にとびかかるが、触手が邪魔をして、なかなか倒せない様子も巧い。明星も効きが悪いところも相まって、てこずっている感じが出ている。いや、これは本当に手こずっているかもしれない。


 次第に黒いものに取り込まれた千種の姿が見えなくなった。そして、千種の気配がその場から消えた。消滅した訳ではないようだ。気配の移動を感知したので、遠くに飛ばされたようだ。俺は、分身の位置を探るためにアリスに変身する。そんなに遠くない位置に転移したようだ。アリスのラビリンス・ドリフトとは原理が違うが、一瞬で遠くに移動することは可能なようだ。しかし、それも同じ地域で100キロも離れていない。影子の分身は情報源か人質のどちらか、もしくはその両方の狙いで攫われたのだろう。


 強化された黒いものとの戦闘は続いている。まだ、潜んでいるものが居るのだ。その人物に気づいていない振りは継続だ。俺はなるべくそいつの特徴を覚えようと、感知を強化する。

 分身の1人が声を上げる。

「食べられた!?」

 分身たちが仲間の仇とばかりに黒いものに飛び掛かり、そして、過剰なほどに明星を重ねて黒いものを消滅させた。そして、その消滅跡に仲間がいないことに気づき、数名が狼狽えて泣き出す。数名が残り、他は残っている黒いものの対処に走る。

「千種が死んじゃった。どうしてこんなことに。一緒に好きなチョコレート買いに行こうって言ってたのに」

「西尾。今は戦闘中よ。千種は死んだとは限らないわ。上の人に捜索を打診しましょう。今は、目の前のモンスターに集中よ」

「でも、でも」

 彼女たちはぎゅっと抱き合っている。


 彼女たちは強い。この悲劇を乗り越えられるだけの経験を積んできたはずだ。などという、ナレーションが流れそうな場面だ。そして、唐突にその寸劇をじっと見つめていた存在が消える。ラビリンス・ドリフトの感覚がそいつが影のようなものとなり、すごい速度で移動していったのを感知した。

 分身が飛ばされた先と同じ方向へと向かっていったようだ。

「さぁ、影子の分身、千種。相手の情報をしっかり入手してくれよ」

 ちょうど、その頃、フレイヤたちの狩りも完了したようだ。さぁ、どう動くかな。


さぁ、どうなるのか!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
笹木が罠を仕掛けて、笹木がスライムに捕まって、笹木が悲しんでそれを笹木が慰めて、えっと笹木が、笹木が、笹木が、、
使い捨てくノ一……なんて非道な作戦なんだ……(すっとぼけ
あんなに良い奴なのに、こんな所で簡単に死ぬなんで...... 千種ちゃん 。゜ヽ(゜´Д`)ノ゜。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ