第20話 フレイヤたちと巨大タコ
エバーヴェイル(一部)集合です!
俺はフレイヤ担当の俺2号。アリスたちがマイアミビーチで巨大サメを倒してから2日後のことだ。俺は今、フロリダにやってきており、隣には俺4号のメル、俺5号のジェシーと俺6号のアリスが集結している。俺1号は笹木と影子 (分身)としてマナと日本に残り、下部組織の編成について進めているのでこの場に居ない。
「本当、冬じゃないわね」
フレイヤがチューブトップに短いフレアスカートという同じく季節とは外れた服装で佇む。
ところで、なぜ全員では無いもののエバーヴェイルがフロリダに集結したか? それは。アメリカ側の海上偵察の結果、状況が変わったためだ。海上偵察の際、海底ダンジョンの周辺に巨大なモンスターが見つかった。巨大なタコに似たソレは海底ダンジョンの周辺を悠然と回遊していたのだ。それだけならば、ゆっくりと攻略を考えればよかったのだが、その巨大なモンスターは巨大サメを次々と召喚するタイプだったのだ。
もちろん、アメリカ軍により兵器が投入され駆除が試みられたのだが、危険を察知した巨大なタコは海底に引き籠った。そして、海中では魚雷なんかも使われたが、巨大タコの放つ遠隔攻撃により破壊されてしまった。
巨大なタコから召喚されたサメの一体一体はそこまでの脅威ではない。採算度外視であれば、先ほどの兵器で対抗できる。しかし、数が多く、永続的に駆除しつづけるのは厳しい。そこで、エバーヴェイルに声がかかったのだ。
その理由は明白だ。フレイヤのサイコキネシス。これで、巨大タコを吊り上げて駆除する。それからアリスたちによるダンジョンの攻略。これで、巨大タコが再登場するのを防ぐという作戦だ。ガームドさんにも頭を下げられたので、アリスが迎えにきたという体裁をとって俺、フレイヤとメルがフロリダに参戦したのだ。攻略の方法については、エバーヴェイル側が任せてもらうというのが条件だ。
そして、航空写真を眺めてみるが、ダンジョンのある場所は本当に深い海しかない。
「5000メートルから引き上げられるかしら」
さすがにそんな遠くから引っ張った覚えはない。
「やってみるの。ダメなら、何か考えるの」
メルは幸子さんにもらったというグローブを装着している。アメリカでも聖女って言われているのに、たくましい感じだ。
「みなさん、記者会見が始まります。どうぞお越しください」
ギルドの職員さんのバルドルさんが呼びに来る。記者会見では、先のアリスとジェシーのサメ退治の話、そして、サンフランシスコでのフレイヤとメルの活躍の話などが出てくる。
そして、今回の作戦内容は細かくは話せないとしているため、自然とフレイヤたちの話にフォーカスされる。
「フレイヤさんは、どなたかと交際されている方はいますか? どんな男性が好みですか?」
「フレイヤさんのファンの方に何か一言ください。あと、ポーズをお願いします」
「メルさんは高校生と聞いていますが、アメリカの大学に興味はありますか?」
「アリスさん、アクセルさんとの交際が噂されていますが、真実ですか?」
「ジェシーさん、シングルファーザーと聞いておりますが、再婚の予定はありますか?」
なぜか、記者会見から、写真撮影会となっていく。俺はブランドのイメージもあるので、しっかりとポージングも決めてやる。しかし、ローアングルは良くない。ギルドのスタッフに視線を送るとカメラマンが注意されていた。
「はい、これで終わりです。さぁ、解散!」
何が主題だったのか、疑問な記者会見だったが、安心感は植え付けられたらしい。やはり、フレイヤの人気が高い。
そして、その翌日には、巨大タコ退治とダンジョン攻略が始まった。今はギルドの持つ空母に皆で乗り込んでいる。なんとギルドは小型の空母を持っていて周辺を3隻のギルド所有の護衛艦が取り囲んでいる。ちなみに、空母にはヘリでやってきた。見えない位置に海軍も待機しているらしい。
俺は船室でアリスとジェシーに特殊なスーツを渡す。ウェットスーツのようだが、ひより謹製の魔道具が取り付けてある。
「環境適応の魔法が付与してあると言っていたわ。一応、深海5000メートル相当の水圧に耐えられるのを実験で確認したそうよ。さらに、必要な酸素なんかも供給するパックがついているわ。結構、水中作業に向けた研究されていたらしくって、この辺は魔装開発局の技術ね」
俺は来る前にひよりから受けたスーツの説明をする。
「なるほど。よし、着てみるか」
ジェシーはその場で服を脱いでスーツを着込む。
「もうパパ、女の子たちがいるんだから、気遣ってよ」
「女の子? あ、あぁ、そうだな」
苦笑しながらジェシーは船室から出ていった。
「じゃあ、わたくしたちも着ておきましょう」
そういうと、みんなは服を脱ぐ。下着の代わりに水着を着こむのだ。恥ずかしがることもなく、皆が裸になり着替えをしていく。まぁ、全員、俺だしな…。だが、なりきりは雰囲気が命。
「この水着もE&Sから出したのよ。どうかしら」
「かわいいの。着心地もいいだけじゃなくて、防御力もあるの」
「フレイヤ、あなた、はみ出てるよ? ちょっと布小さすぎない?」
そんなやり取りをしながら、すぐにウェットスーツを着込む。
そして、メルをバックアップ要員かつ回復要員として1人空母に残す。空母側を襲うようであれば、メルになっている俺4号がフレイヤやアリスに変身して対応することになるだろう。
そして、俺とジェシー、アリスは巨大タコの居る海域に向けて飛び立った。空母からは10キロメートルは離れている場所だ。ジェシーとアリスは、俺のサイコキネシスを使って並行して飛行している状態になる。そして、皆が同じ格好をしているため、遠目には誰が誰かが分かりにくくなっている。それが、今回のウェットスーツの狙いでもある。
「ジェシー、どの辺にいる?」
ジェシーが指をさす。
「あっちの方角、2000メートルってところだな。こちらを伺ってるのか、動いていないな」
言われた方角に集中してサイコキネシスを使う。手ごたえがない。もう少し奥だろうか。なんどか試行錯誤していくと、何かをつかんだ。
「掴んだわ。海面に引き上げるわね」
ぐいと手繰り寄せるように力を加える。サイコキネシスだが、地引網をしているようなイメージだ。使い方に慣れてきたおかげか、かなり力の加減をできている。
「おお、逃げようともがくが、わずかずつ海面に浮上しているな」
「手伝うわ」
俺6号が、アリスからフレイヤに変身する。2人のフレイヤのサイコキネシスにより、ぐんと加速した感じがある。
「まもなく浮上してくるが、おいおい、サメを大量に召喚しはじめたぞ」
俺たちは海面の数メートル上に浮かんでいるが、あの巨大なサメならば飛び上がって食いつけそうな位置にいる。
「この数は、近接戦闘ではちょっと手に余るな。おれもフレイヤになるか」
そして、ジェシーもフレイヤに変身する。同じウェットスーツのフレイヤが増える。
「わたくしの傍に居てね。広範囲に焼くわ」
俺と俺6号のフレイヤがサイコキネシスで巨大タコを引き寄せながら、俺5号に近寄る。すると俺5号のフレイヤが、襲い掛かってくるサメに対してフレイムノヴァを放った。炎の渦が俺たちを中心に竜巻のように周辺の海面を撫でる。いや、もっと激しくかき回す。
そこに海中から襲い掛かってくる巨大サメたち。しかし、顔を出した途端に海中から巻き上げられ炎に巻かれ、そして消滅する。儚いものだ。
「まさに飛んで火にいる夏の虫ね」
巨大サメの猛攻は続くが、無意味な状況だ。
「そろそろ出てきそうよ」
そして、それは海面に現れた。巨大タコと思われていたモンスターだが、黒いタコのような体から無数の触手が伸びている。目と思しきものが多数ついており、死角は無さそうだ。体表は黒くごつごつしており、意外に固いのかもしれない。うん、美味しそうじゃない。
「タコと言えなくはないけど、グロテスクね…」
そんな感想がお気に召さなかったのか、そいつは触手を縦横無尽に伸ばしてきた。しかし、それも3人分のサイコキネシスが押さえつける。触手に巻かれる美女っていうのも、そそられるものがあるが、そんなトゲだらけの触手はお断りだ。
「炎で一気に倒すわよ」
そう発言した後、危険を感じる。
「回避!」
どのフレイヤが言ったかはわかっていないが、俺たちはフェザーステップでその場から飛びのく。突如、巨大タコから何かが放たれたのだ。海面に無数の水柱が立つ。放たれたのは水のようだ。ウォーターカッターのようなものだろう。それは周辺に数発、無差別に放射される。しかし、射線さえ見極めれば問題は無い。
「メルトショットで畳みかけるわよ」
それからは、各々10発のメルトショットを巨大タコに打ち込む。合計30発のメルトが体に埋まり、そこから焦げ臭いにおいが漂ったかと思うと、巨大タコが炎に包まれる。急速に体表の色が白く変色すると触手をばたつかせ、そのうちぐったりと動かなくなる。そして、そのまま巨大タコは消滅していった。
それを見届けた後、俺5号と6号がジェシーとアリスに戻る。アリスは、ラビリンス・ドリフトを使ってダンジョンとその周辺を確認してくれる。
「まだダンジョンはあるわ。さっきのはダンジョンボスというわけじゃないみたい。周辺に巨大タコみたいなモンスターは居ないわ」
「ああ、サメを召喚するやつはいないから大丈夫そうだな。さて、予定通りダンジョンに乗り込むか」
そして、メルに巨大タコ討伐完了の連絡をした後、俺たちはバミューダトライアングルのダンジョンへと踏み込むことにしたのだった。
次はダンジョンへ!




