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世界はまだ、俺が魔女で聖女だと知らない  作者: 月森 朔
第6章 くノ一になった日

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第19話 バミューダトライアングルと海底ダンジョン

アリスと影子の活躍つづきです。

 俺は俺6号。マイアミビーチに近いカフェでアリスの姿でブランチを食べている。左にはジェシー、右側には俺が出した影子が日本人の付き人感を出して座っている。もちろん、影子ではない、別人に変身している。エバーヴェイルのスタッフという役柄のようだ。

 今朝、巨大なサメ型のモンスターを倒した後、駆けつけた警官とギルド職員に囲まれたのだった。スマホでMu-tubeを眺めてみれば、今朝の騒動の様子を配信していたようだ。エバーヴェイルの名前も出ているので、さすがに有名人になったなと思う。しかし、エバーヴェイルだけでなく、警官隊や謎の探索者集団とも書いてあるので、影子の分身が良い動きをしていたようだ。

 しかし、朝食を食べる時間を逃して、ブランチを食べることになったのだ。影子は自分の分身を消し、1人になっている。


「うまい、このパイのレシピが知りたいな」


 ジェシーが店員のおすすめのフルーツの乗ったパイに舌鼓をうつ。


「こっちのワッフルにのったクリームも最高ですよ。毎日通いたいな」


 影子もそんな感想をいう。


「本当に。このネーブルオレンジのジュース、飾りが可愛いわよね」


 観光地だからだろうか、少し値ははるが、とても写真写りがいい。さっそく写真をとって、マナに送っておこう。PicPacの投稿などでもアドバイスをくれるのだ。


「ところで、職員さん、いつまで待てばいいの?」


 影子とジェシーの間、つまり、俺の目の前の席に4人目が座っている。ガタイのいい中年の男性職員だ。


「バルドンと呼んでください。フロリダの総括支部長との会議が緊急で行われているので、それが終わった後にお礼に伺いたいとマイアミ支部長が言っているもので。待っている間の食事代は経費で落ちますから、どんどん食べてください。もし、目障りならば、私は別の席で待機しますよ」

「別に邪魔じゃないさ。せっかくだから、食べながら話でもして楽しもうじゃないか」


 ジェシーがそういうと、バルドンさんは嬉しそうにビールを注文する。


「え? 仕事中じゃないの?」


 俺がそう訊くと、実は休みのところを駆り出されているので問題ないとのことだ。ほんとか?


「いやぁ、話したいことがいっぱいあったんですよ。でも、朝から質問攻めでお疲れかと思ってね。アハハ、昼からのビールは最高ですね」


 さっそく持ってきた小ぶりな瓶ビールをそのままぐいと飲み干す。


「あ、もう一杯おねがい。実は、今朝のサーファーたちは俺の知り合いでね。本当に感謝してますよ。それにしても、海にモンスターが出るのは珍しいですね」

「そうだな。海中のダンジョンというのも珍しい。外にモンスターが出ているってことは、スタンピードが発生したんだろうが、そんなニュースは知らないな。アリス、何か分かるかい?」


 ジェシーに問われる前にそれを少し調べている。


「近くには、それっぽいものは無いわ。スタンピードのモンスターって半径10キロメートルくらいを縄張りにするんじゃなかったっけ?」


 通説だとそのように言われている。それにバルドンさんが端末を操作しつつ、過去の記事っぽいものを見せてくる。


「陸はそうですが、海、空となるとその範囲がぐんと広がるようです。あ、ナッツをください」


 1人だけ晩酌を始めている感じのバルドンさん。


「じゃあ、もう少し広めに…。あれかな? あっちに1つダンジョンがあるわ」


 俺はそういって指をさす。


「え? どっちですか?」


 バルドンさんが俺の背後に立って、その方角を見る。


「こっちだと、ほぼ真東ですね。距離はどのくらいですか?」

「えっと、ざっと600キロメートルくらい? マイルだと…いくらだっけ」

「370マイルくらいですね。バミューダトライアングルの真ん中ですよ。ここ。これ、ギルドに共有してもいいですか?」


 端末に映し出された地図には、フロリダ半島の先端、プエルトリコ、バミューダ諸島を結んだ三角形の真ん中がちょうどダンジョンがあるあたりだ。


「もちろんだ。いろんな伝説になっているバミューダトライアングルの真ん中にダンジョンとはな。おもしろくなってきたじゃないか」


 ジェシーもちゃっかりビールを飲んでおり、陽気にそんなことを言う。そこにバルドンさんに連絡が来る。数分やり取りした後、状況を教えてくれた。そして、俺が言ったバミューダトライアングルのダンジョンについても話をしている。


「どうやら、近隣の海岸にもモンスターが出たようです。沿岸警備隊と軍が出動して、対処しているようです。海岸の遊泳が禁止になっているので、発砲も許可してパトロールをしているようです」

「観光地なのに難儀だな」

「サメの騒動は度々ありますから、慣れている部分もあるんですけどね。でも、モンスターとなると通常兵器だと及びもつかない奴がいますからね。まったくパニックホラーの世界ですよ。空をとぶサメとか出たら笑っちゃいますね」


 陽気なおじさん2人が、ビール瓶を打ち合わせて、飲み続ける。


「めったなことを言わないでよね。本当に出てきたら面倒よ」


 さっきから静かな影子は、交信を使って誰かと連絡をとっているようだ。


「誰と連絡してたの?」

「あ、はい。ひよりと。海底ダンジョンだった場合、水の中じゃないですか。もし、いくならそういう環境に行くための道具がいるんじゃないかって聞いたんですよ。そしたら、月に行くときのためにスーツを作ってるから、それで行けるんじゃないかって言ってました」


 さすがひよりだな。そう言えば、ひよりも工房エリアで影子を何人も分身させて研究を手伝ってもらっているようだ。影子って器用だから、かなり使えるらしい。


「さすが、ひより」

「もし、ダンジョンを攻めるにしても、海の中にあるのは厳しいな。近接だけじゃ厳しい。フレイヤの力が必要だ」


 ジェシーの言葉どおりだ。ここにいる俺たち、俺5号と俺6号でフレイヤに変身して倒すというのが良い方法だろう。海底ダンジョンに対して同行者がいなければ、好き勝手に暴れられるというものだ。

 そして、そこからたっぷり1時間以上待たされた後、米国ギルドからの依頼としてエバーヴェイルに、バミューダトライアングルのダンジョン調査の依頼が来た。あくまで場所の特定というのが依頼の内容だ。


「かなり気を遣った依頼だな」


 ジェシーがちびちびとテキーラを飲みながらコメントをする。俺も再度感知を働かせるが、場所については確定だろう。


「場所は分かるし、ダンジョンにも転移できるけど、正攻法でたどり着くには厳しいかも」


 バミューダトライアングルというのを差し引いても海底というのが厳しい条件だ。


「調べたが、バミューダトライアングルの水深は5000メートル級だな」


 5000メートル級…。ダンジョンが存在できるというのもすごい環境だ。高和港と違って、元々が水棲のモンスターばかりだったんだろうか。さもなければ、溺死してダンジョンが勝手に消えてしまうはずだ。


 その日、フロリダの支部長たちから礼の訪問を受けた。礼の内容は2つ。フロリダにある4つのダンジョンの安全地帯構築と、マイアミビーチでの人命救助に対するものだ。更に運がいいことに、今回の騒動で最初にサメを見つけたのが我々だったらしい。他の地域に行方不明者はいないとのことで、一安心だ。国際的にもギルド側から警告が出され、討伐においては米国ギルドが主体となって動くこととなった。

 そして、その内容はニュースでも大々的に報道され、アリスとジェシーは有名になった。影子は協力者の探索者として名前を伏せられたのだった。

準備してからのダンジョン攻略ですね。

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― 新着の感想 ―
これ、人口密集地に「多い」傾向があるとはいえ、一部は秘境とかにもダンジョンありそうだなぁ……ギアナ高地とか。ウルルとか。チョモランマとかに出来てたらだいぶキツそうね。
宇宙も海底も、人類には辿り着くのが難しい場所にダンジョンがありますねぇ……
バミューダトライアングルの中央の底かぁ 普通にクラーケンやらそれっぽいのが多数居そうだな 後は乗組員が霊の潜水艦的なアレやら幽霊船やらそんなのがいてもおかしくなさそうだな
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