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世界はまだ、俺が魔女で聖女だと知らない  作者: 月森 朔
第1章 魔女になった日
12/55

第12話 フレイヤとスキル書

いよいよ、フレイヤさんの知識チートです。どんどん遠慮がなくなっていく感じでいっちゃいます。

 配信から二日後、名古屋ギルドに着くとひどく混みあっていた。マナとはタクシーに乗り合わせてきたため、名古屋駅まではスムーズについたのだが、最後に混雑に巻き込まれるとは思わなかった。


「フレイヤ、どうしましょう」


 タクシーでさんざんフレイヤと呼びなさいと繰り返したおかげで、マナは呼び捨てを身に着けたようだ。そして、マナが困っているのは、ゲート前の人垣。

 待ち時間が結構かかるかもしれないが、配信も予定しているし、ダンジョンガイダンスのレンタルも予約済みだから、行くしかない。


「ひとまず着替えね」


 ちなみにギルドには大きな更衣室がある。俺はフレイヤの姿なので、マナと一緒に女性用に入るわけだ。男性用は混みあっているだろうが、女性用は静かなものだ。また、ギルドの女性用更衣室は1つ1つが半個室となっていてカーテンでしきられており、着替えを見たり見られたりということはない。残念なことに。

 ただし、今は状況が違う。マナが同じ半個室にいるからだ。


「今日は溶岩地帯で暑いので、チューブトップのトップスを用意しました! 胸元にダンジョン模様のアクセをつけてみて魔法使い感を出してみました」


 チューブトップのそれは布だった。どこで見つけたのか、この前のスカートと色が揃えてあり、赤がテーマカラーなのは変わらない。ダンジョン模様のアクセもポイントになっている。ダンジョン模様というのは、ダンジョンで発見される図形のことだ。


 これは、ほぼ水着だなーと思い、おっぱいがこぼれ落ちないか心配になる。


「大丈夫かしら、乳房が見えてはアカウントが停止されてしまうわ」

「大丈夫です! ちゃーんと、フレイヤに合うヌーブラも用意しました。これで、激しく動いても放送事故は起こりません!」


 俺は観念して、ブラジャーをとって上半身裸になり身を任せる。俺がヌーブラをつけることになるとは…。


「やっぱり、いい形。じっとしていてくださいね。よし、ぴったりだわ」


 さすが下着店のバイトをしているためか手際がいい。


「すっごくすっごくイイです! フレイヤ」


 黒いマントに赤いチューブトップとミニスカート、黒タイツに黒いブーツを身に着けた俺を、何枚も写真を撮っていくマナ。


「これ、PicPacに載せておきますね」


 そう、マナは写真を投稿できるPicPacというSNSにパーティのアカウントを作って投稿を始めたらしい。既に、8000人を超えるフォロワーがいるというから驚きだ。


「動画なので、何かしゃべってみてください」

「暑い階層での戦闘にむけてマナが用意してくれた衣装、どうかしら?」


 俺はとっさにペルソナを起動すると、いくつかポーズを決める。フレイヤさんが髪をかき上げたりと女性的な動きで映像に収まっていく。


「ちょっと刺激がつよいかもしれないですけど、おっけーです!」


 マナのカメラが胸元もよぎったりしていたので、谷間が目立っていたかもしれない。


「じゃあ、あたしも着替えますね」


 そう言って、マナも服を脱いで着替えだす。え、ここで着替えるの?


「あ、大丈夫です。鎧といってもワンタッチでつけられますので」


 上半身は裸になってからの装着だったが、ペルソナを起動しているせいか、興味もないといった感じで、自分の準備にうつることができた。マナは着やせするタイプというのがわかった。眼福。




 そして、俺たちはダンジョンのゲートに並ぶために移動したが、ゲートのフロアに降りたったところ、多くの視線がこちらに突き刺さった。スマホを無遠慮に向けてくる者もいる。


「まさか、出待ちじゃないですよね」


 マナがそう聞いてくるが、出待ちだと思われる集団がいくつもある。


「堂々といけば、よろしくてよ」


 そう言うと、ゲートへと向かう。

 ゲート前に行くと、高そうなスーツを着た30代くらいの理知的な男性が話しかけてきた。髪もピシッとセットしてあり、おしゃれメガネが印象的なイケメンだ。そして、手にはこれまた高そうな杖を持っている。魔法系の探索者だろうか。


「はじめまして、フレイヤさんですね」


 周辺からは『先を越された』とか『魔道機構かよ』とかそんなささやきが聞こえる。


「どなたかしら?」


 男性は深めの会釈をする。


「私は魔道機構というクランの副代表をしております佐久間 蓮といいます。よろしくお願いいたします。配信チャンネルの方にもDMを送らせていただきましたが、直接ご挨拶にと思いまして、伺いました」


 そういえば、クランからのDMにいた気がする。確か、日本でも有数の魔法系クランだったと思うけど…。


「ごきげんよう。わたくしは、フレイヤ・リネア・ヴィンテル。DMは読めていないの」

「いえいえ、きっと多数の問い合わせがいったことでしょう。私たちも前の配信を見て、是非にお会いして話をせねばと思いまして、こちらで待機しておりました。

 単刀直入にいいます。フレイヤさん、我々魔道機構に参加いただけませんか?」


 営業スマイルが堂に入っているというのが感想だった。


「お誘いは感謝するわ。でも、わたくしはクランには入る予定はないわ」


 そういうと、佐久間さんは笑顔を崩さずに答える。


「承知いたしました。しかし、あきらめてはおりませんので、またお誘いに伺います。よろしくお願いいたします」


 そう言ってお辞儀をして去っていった。



 すると周りからこんなささやき声が届く。


「魔道機構が断られたぞ、あそこ日本3位のクランだろう。もったいねーな」

「いやいや、フレイヤちゃんの実力なら大和だって誘いにくらー」

「まてまて、もしかしたら、もうお国のクランに内定してるんじゃないか? あれ、フレイヤちゃんって何人だ?」


 名前もしっているということは、やはり配信の視聴者が多いらしい。そんな中、ガタイのいい鎧をきた男性が声をかけてくる。


「あ! あの!! 剣1、弓1、スカウト1のパーティですが、パーティに参加しませんか!?」

「ずりーぞ、こっちもどうだい。盾1、剣1、魔法1でバランスがとれるぜ」

「おい、おい、てめーら、まてよ」


 なんか、一斉にパーティへの勧誘がはじまったようだ。マナが喧噪にきょろきょろと落ち着かない。


「ど、どうしましょう。きゃっ、なんか怖い」


 俺は指を鳴らす。パチンといい音が鳴る。男たちがこちらを見る。


「わたくしのパーティは、マナだけで十分よ? ごきげんよう」


 そしてゲートに向けてまっすぐ歩いていくと、進路上の男たちがさささと避けていく。




 これは、パーティやクランを確定させて、変な誘いが来ないようにしないとなー。そんなことを考えながらゲートへ向かった。ダンジョンガイダンスも借り、第7層へと向かっていった。途中からんでくるモンスターはフレイムビットで蹴散らし、魔石はちゃんとサイコキネシスで回収し、最短距離を急ぐ。最短距離を急いだが1時間はかかってしまった。

 そして、第7層。そこは、溶岩のフロアとなっており、ところどころに溶岩だまりがあり、ぶくぶくと泡立ち、煙が立ち上っている。


「ハァハァ、第7層はじめてきました」


 マナの息がきれている。ところどころフェザーステップを混ぜながら移動したので、マナにはきつかったかもしれない。飲み物を飲んで、小休憩をとることにした。そして、お待ちかねの配信に取り掛かろうとする。


「マナ、シナリオは渡した通りよ。いけるわね」

「はい、フレイヤ」

 

バサルゲイラの討伐において剣士はあまり役に立たないといわれている。それは頑健な皮膚に守られており、刃が通らないからだ。鈍器や刺突系の武器によって徐々に弱らせるか、高火力の魔法などを使って倒すかといった選択肢はあるが、防御力の高さに阻まれて多数狩る人がいない不人気モンスターとなっていた。

 マナと倒し方などをおさらいした後、ようやく配信を始める。



 溶岩地帯から少し外れた岩陰でダンジョンガイダンスに配信開始の合図を送る。


「こんにちは フレイヤとマナでお送りするダンジョン探検にようこそー」


 イントロはマナが始めてくれる。俺は、隣でニコニコしていればいい。


「フレイヤ、今日は何をかるの?」

「今日はバサルゲイラを狩るわ。マナは熱波攻撃に注意して、牽制をお願いするわ」


 俺がそういうと頬を両手にはさんで悲鳴をあげるマナ。


「ひぇぇぇ、バサルゲイラといえばドラゴン亜種でランクDの登竜門じゃないのー。大丈夫なの? あたし食べられない?」


 まだまだ棒読み感はぬぐえないが、うまくなってきた感じもする。


「大丈夫よ。私が有無も言わさずに葬るわ」


 そこまできて、コメントが流れ始める。



◆ろくろ :バサルゲイラかー。あいつ固いんだよな。おまけに熱波出すし、やけど注意。で、今気づいたけど、フレイヤちゃんの装備が薄くなってる。

◆ショータロ王 :!(゜∀゜)! 装備の面積が小さくなるほど防御が高くなる伝説の装備だな!


「ろくろさん、ショータロ王、よく来てくれたわね。楽しんでいってね」


 俺はカメラに向かって笑顔付で手を振る。



¥5,000 ◆ショータロ王 :防御力を極限まで高めなければ! 規約のギリギリをねらって!


──視聴者数:1,128/スパチャ総額:¥5,000


「スパチャありがとうございまーす。そろそろ戦闘なので、お返事できませんので、すみませーん」


 軽いセクハラをマナがスルーし、近づいてきたバサルゲイラとの戦闘準備に入る。今回は熱い戦いを演出しつつ、スキル書のドロップを狙うというのがシナリオだ。そんなわけで、速攻で倒してしまうのも芸がない。


「マナ、いくわよ。フレイムビット」


 掲げた手の先には30個ほどのフレイムビット。近くで剣を構えるマナに注意が行っているバサルゲイラに向けて、フレイムビットを拡散させて飛ばす。一部を胸の下の逆鱗がありそうな場所に潜り込ませる。すべて逆鱗ねらいだが、いまいち反応が来ないので、逆鱗にあたっていない可能性がある。


◆氷バカ :フレイムビットという魔法か。位置制御といい魔力の密度といい相当な練度だね。ただ、簡単にはバサルゲイラの皮膚は傷つけられないね。

◆カナリア :2人で戦うなんて無謀よ! 誰か援護はいないの??? スタッフは!??




「フレイヤ、あたしがひきつけるわ。今のうちに次の魔法を!」


 マナがバサルゲイラの前に立ち、何度か剣で攻撃を仕掛ける。レベルがあがったせいか、マナの体捌きが格段に良くなっているように見える。バサルゲイラは、俺とマナの両方を警戒しており、熱波を散発的に打ち出している。マナはそれも見て避けられる余裕がある。



──視聴者数:7,912/スパチャ総額:¥28,000



 次はペルソナを起動した状態で、再度、フレイムビットを作り出し、目くらましのフレイムビットで派手に攻撃しながら、逆鱗への本命攻撃を行う。

 すると、フレイヤのペルソナのおかげか、逆鱗にピンポイントで攻撃が当たったようだ。その結果、バサルゲイラは体をひねりその場で地団太を踏み始めた後、熱波を四方八方に打ち出し始めた。マナは無事に避難しており、問題はない。

 

◆氷バカ :どういうことだ。皮膚は傷ついていないようなのに、すごくダメージが入ったように見える。

◆非表示:マナちゃん逃げて―。あ、逃げてる。



 体をひねった時に逆鱗の位置がわかる。俺は、フレイムビットの中にフレイムボムを混ぜてはなってみる。ビットとサイズ感は同じだが、かなり凝縮したもので爆発力を高めており、逆鱗の破壊に成功したようだ。

 そのためか、バサルゲイラは怒り狂い、仕返しとばかりに俺の方へ突進してくる。よし、ここで、決め台詞だ。


「わたくしは裁きの炎。その名を刻みなさい」


 今度はフレイムビットではなく、フレイムストームによって炎の竜巻がバサルゲイラの体を包み込み、その体を激しく焦がした。

 そして、数秒後、その場所には、こぶし大の魔石と一冊の本が落ちていた。


「やったー! フレイヤ、すごい!」


 マナが嬉しそうに駆け寄ってくる。


「ええ、ご苦労様。それと何かドロップしたわね。スキル書かしら??」


 俺はダンジョンガイダンスからよく見えるように、驚いて見せる。


「あたし、初めて見ました。スキル書とか買えなかったし」



¥20,000 ◆ろくろ:おおおおおおおおおい、いまのなんの魔法! そして、何ドロップしてんのーーー

¥30,000 ◆ショータロ王 :すげええええ、もう一度、決め台詞オナシャス!

◆氷バカ:なんのスキル!? バサルゲイラからスキル落ちたの聞いたことない!


 マナがスキル書を拾い、ダンジョンガイダンスに向かって見せる。

 スキル書には文様が描いてあり、その文様は個別のものとなっている。ダンジョンガイダンスが瞬時にそれを解析し、ストーンスキンの書であることを回答する。


「えーと、ストーンスキンのスキル書ですね。ストーンスキンって、防御系?」

「防御力が一定時間あがるスキルね。いいものよ。マナつかっておきなさいな」


 俺がそう進めると、マナがひどく驚く。


「え!? いいんですか!? でも、なんかもったいないです」


 この後、何匹も狩って、売る分もつくるつもりだから、問題なし。


「いいのよ。マナの体の方が大事だもの」


 二コリとして言うと、マナが顔を真っ赤にする。


「しゅ、しゅ、しゅみません。つかいましゅ」


 噛みまくりでろれつがまわっていない。ちなみにシナリオにはこの辺は無い。導入以外は戦闘としか書いていないので、アドリブだ。この自然な感じ、とても良いと思います。


¥1,000 ◆ユリラバーZ:尊い

¥4,000 ◆ラクダ叔父:尊い

¥2,000 ◆鞍月 もげる:尊い

尊いらしい。わかったから…。でも、スパチャあざーす。

では、売るためのスキル書をゲットしにいくか!


──視聴者数:16,912/スパチャ総額:¥135,500


読んでくださり感謝です。

ブクマ、評価、感想など反応があるとうれしいです!

よろしくお願いいたします。

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