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世界はまだ、俺が魔女で聖女だと知らない  作者: 月森 朔
第5章 娘になった日

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第21話 ジェシーとアクセル

サンフランシスコのダンジョン編です。

 俺は笹木。アリスとして、南さん、フレイヤ、マナ、メルと一緒に酒場の宿に泊まった。夜遅くまで話し込んでいたので疲れが取れないかと思ったが、アリスの体に疲れは微塵もない。もし疲れていたとしても、メルの魔法があるわけで完全回復で翌朝を迎えられるわけだ。


 そして、その翌朝。ニーナは残念がっていたが学校があるからと言って出かけて行った。メルにかけてもらった回復魔法によって足取りも軽やかだった。ルームメイトになって欲しいとメルに強烈なハグが行われて、ニーナの大きな谷間に沈んだメルをマナが引き上げるというシーンが発生した。美女と美少女の絡みは、なかなかの眼福だわ。

 エバーヴェイルちゃんねるのメンバーと南さんは、朝食から撮影するらしい。リアルタイムの配信ではなく、録画にするとのことだ。当初、南さんがアリスについてこようとしてくれたが、言葉も大丈夫なので、未成年のメルについていってもらうことを納得させた。


「ここのパンケーキがおいしいってきいたの」


 メルは行きたい店に向かってジリジリと進み始めている。


「では、アリスさん。くれぐれも無茶しないでくださいね」

「大丈夫よ。パパと一緒にいくから」

「ジェシーさんも心配なんですけどね…」


 俺は聞こえないふりをして、ジェシーの泊まったホテルに向かった。南さんに遊びに行ってもらう手前、パパと2人きりで朝食食べたいとか、そんな理由もつけたので仕方ない。

 ジェシーが泊まったホテルの部屋に向かうとちょうど服を着替えているところだった。


「おはよう。少し待っててくれ」


 少し眠そうな感じだったので夜遊びでもしたのかと聞いたら、アクセルに教えを請われて遅くまで組み手をしていたらしい。


「どこで?」

「ダンジョン脇にあるホールだな。24時間開放されてるんだ」


 夜遊びどころかストイックすぎて心配になる。


「じゃあ、朝食といこうか」


 ジェシーが腕を差し出してくる。親子ムーブをするなら、こうだな。俺は、エスコートするパパの腕に手を通してレストランに向かう。

 ホテルに入った時に思ったが、かなりの高級ホテルのようだ。


「お連れ様は、お飲み物は何になさいますか?」


 おじさんと若い女のコンビに対して好奇の目を向けることなく、給仕をしてくれる。ただし、周囲のお客さんは目を惹きやすい俺たちの話をしている人もいそうだ。


「娘にも同じものを」


 周囲からの好奇心がその発言で薄れたのを感じる。


「パパも気づいた?」

「あぁ、抑制された好奇心だがな。殺意みたいなものは感じないから安心だ。単なる観光客だな」


 常に戦闘を考慮しているのか、出口が見える位置をとるジェシー。そして、俺たちは昼前にダウンタウンにあるダンジョンに着き、1階層に入る。前にも来たが、ここの1階層は浜辺エリアだったりする。海っぽい水辺があり、波まで起こっている。しかし、今回、そこには用はないため、アクセルと約束した9階層にさっさとジェシーと移動してしまう。


 移動した先は、山岳エリアだ。小型のモンスターが多く、狩場や採取場としても優れたエリアとなっている。林の中に草原が点在している形になっており、その1つを安全地帯にしてほしいという話だ。ひより型のダンジョンガイダンスが場所を教えてくれる。


『ここに安全地帯を展開してください。建物はログハウスが良いらしいです』


 実は建物についても注文がついている。幾つかバリエーションが出せることがわかってきたために、写真を撮って送ったら、細かく依頼がついたのだ。そして、その過程で分かったのが、ジェシーの出す建物は以前どこかでダンジョンに飲み込まれたことがある建物によく似ているそうだ。南チームの人に建築マニアの人がいて、ダンジョンに飲み込まれた旅館の記憶から東京ビックダンジョンにつくった温泉宿を見て、ピンと来たらしい。しかし、完全には一致していないらしく、ある程度、素材として取り込んだ情報を基に新たな建物を創造しているんではないかと仮説建てされている。


 つまり、ジェシーのスキルで作る建物が何も考えずに色々と作れるのは、既存の建物を上手くアレンジして、それっぽい建物をつくっている超便利なスキルということだ。既に中に作られている家具なんかも、似たような過程を経て作られるのだろう。


 場所を選定してジェシーが『テリトリー』を使おうとしたところ、遠くから聞き覚えのある声が聞こえてくる。


「ちょっとまったーーー」


 大柄な体格、手に持った剣、大きなリュック。山賊ではない。アクセルだ。


「入口付近で待ってたんだけど、こんな奥にもういるなんて」

「ああ、すまない。合流してから安全地帯の場所にくるんだったな」


 ジェシーも俺も忘れてしまっていた。安全地帯を作る流れがルーティンになってしまっていたせいで、アクセルと会うことが抜けていた。


「アリス、今日も美しい。これ、花をもってきた」


 わざわざドロップ品の花を獲得して待っていたらしい。


「ありがと。お花はもらっておくわ。でも、付き合わないからね」

「わかってるって」


 2メートルの身長でもじもじしていて、なんか可愛いと思ってしまった。いや、これはあれだ、男としての同情的な感情だな。


「じゃあ、ログハウスを建てるぞ」

「まってくれ、ボーンウルフの群れが近づいてきた。倒してからがいいんじゃないか。俺が倒そうか?」


 すでに20メートルくらい近くに迫ってくるモンスター達を見て戦闘態勢をとるアクセルの質問にジェシーは眉をピクリと動かしただけだった。


「テリトリー」


 そのスキルが発動すると風が巻き起こるように魔力の膜が広がっていく。そして、10メートルまで近づいてきたボーンウルフの群れを弾き飛ばして林の奥深くに押し返してしまった。角度が良かったものは、木々の上を抜ける間に色々ダメージをうけて消滅していくのが見える。


「こんな感じだ。ログハウスには何が欲しい?」


 ジェシーが聞いてくるので思い浮かぶものといえば、


「BBQ場?」


 お腹が減ったわけではないが、大自然みたいなダンジョンの中といえば、BBQだろう。ジェシーのは本格的すぎるので、焼肉っぽいBBQでも十分だ。


「サウナ。ぜひアリスと入りたい」


 アクセルは恥ずかしげもなく、そんなことを言う。


「え? 大胆ね」

「いや、裸じゃないって。アメリカは水着だから。やましい気持ちなんてないから!」


 アクセルが弁明するが、やましい気持ちがないなんて嘘だ。俺も男だから分かる。


「水着なら良いじゃないか。早速作るぞ」


 ジェシーはそういうと、ささっとログハウスと付属するスパにBBQ場を作ってしまう。


「一瞬でできた。なんて不思議なんだ。これ、本当にスキルなのか? 安全地帯だけでもすごいのに、外側だけでも立派な建物ができているなんて」


 ジェシーが咳ばらいをする。


「中身もちゃんとできているはずだ。キッチンは命だからな。それにスパもちゃんとできているぞ。水着着用で頼むぞ。アリスは嫁入り前なんだから」


 俺5号め、なんてノリがいい。俺もそのノリについて行きたくなってしまう。


「パパ。変に期待させるような発言はやめて」


 その後アクセルを置いて、20階層と31階層に安全地帯と宿泊施設のログハウスを設置しにいく。1時間ほどで戻ってくると、アクセルが鍛錬をしながら待っていた。ずっと剣を素振りしていたらしい。


「お仕事お疲れ様です!」


 汗だくのアクセルにジェシーが手ほどきをしてやるといって、歩み寄っていく。アクセルは喜んで、何度も投げ飛ばされていく。


「ケガはしないでよ?」


 言っても無駄そうだから、本気で注意しない。そこから、たっぷり1時間ジェシーの訓練に付き合う。途中、俺も少し足技なんかを披露した。


「ジェシー先生の技は武術の極みだし、アリスの足技は芸術だ」


 訓練の後は、みんなでスパを楽しむことになった。

 もちろん、ちゃんと水着を着ているので、裸の付き合いではない。アクセルも水辺での戦闘用に水着を持参していて、何も変なことは無いのだが。


「あぁ、美の女神が俺の前にいる」


 なんて、歯の浮きそうなことを言ってくるアクセル。後で聞いたのだが、イタリア人のクランメンバーから色々教わっているらしく、とりあえず褒めてくれる。悪い気はしないが、褒めるときに手つきが怪しい。絶対、変な想像をしながら褒めてるだろう。

 思わず胸とか尻を隠す。張り切ってビキニにするんじゃなかったな…。


 そして、そんなダンジョン内で余暇を楽しんでいると、ダンジョンガイダンスに連絡が入った。フレイヤからだった。


安全地帯はアクセル君に好評のようです。

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― 新着の感想 ―
>「水着なら良いじゃないか。早速作るぞ」 アクセルが3度見するような通なスク水でゼッケンに「ありす」な感じの用意しちゃえばルパンダイブしてきそうよね ところでアクセルって誰でしたっけ?ガチで忘れた
>ニーナは残念がっていたが学校があるからと言って出かけて行った。メルにかけてもらった回復魔法によって足取りも軽やかだった。ルームメイトになって欲しいとメルに強烈なハグが行われて、ニーナの大きな谷間に沈…
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