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世界はまだ、俺が魔女で聖女だと知らない  作者: 月森 朔
第5章 娘になった日

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第15話 アリスと透明人間

アリスのお話!

 俺は笹木本人、俺たちの中では俺1号と呼ばれている。俺は今、アリスとなっていて、マナに選んでもらったエプロンドレスを着て、南さんの前に座っている。クランベースの事務エリアの奥なので、他に誰もいない。南さんの端末には、以前載ったネット記事が映してあった。あちゃー。


「このマニラダンジョンのこの記事は、アリスさんですね」

「はい。ごめんなさい」


 謝るしかない。


「あの、怒ってないですよ?

まずは、マニラギルドの有力クランを助けてもらってありがとうございます。ギルド側は感謝しています。あと、顔を隠していたのは良かったと思います。ダンジョン内とはいえ、入国審査などを飛ばしてますから。不法入国なんですよ?」


 やっぱり怒ってる? 怒ってる気がする。


「やっぱり、ごめんね」

「いえいえ、怒ってないですよ?

 ギルドとしてもアリスさんの力は期待していますので、各国と揉めないように何らかの肩書きを用意するのもありかなと思っています。ちなみに、ダンジョンのある国で、入国に関する注意点などをまとめておきましたのでご覧ください。

 いざという時は、透明にでもなれるなら見られても気づかれないんですけどね」


 完全な透明化スキルなんてないですけどねと笑う南さん。


「ありがとう。見ておきます」


 これは、飛ぶ場所に気をつければOKというメッセージかな? その会議はそこで終わり、南さんはギルド側で打ち合わせがあるとかで名古屋ギルドに向かった。



 残された俺は、工房エリアに向かう。ちょうどフレイヤとひよりが新しいダンジョンガイダンスでの魔法のテストをしていた。

 最近、ひよりが忙しいので、フレイヤとメルとマナがひよりの手伝いをしているようだが、今はフレイヤだけが手伝っている。メルとマナは、E&Sとの会議があるとかで出かけているらしい。ところで、そんな中、俺は転移であそんでいる? いや、これは立派なラビリンス・ドリフトの検証だから大丈夫。これは、自分会議にて、ちゃんと認められている検証だ。このスキルが巧く使えることは、他のドッペルゲンガーたちからの期待でもあるのだ。


「どうだった? こってり絞られた?」


 ひよりがクスクス笑いながら訊ねてくる。


「そうでもない。目は笑ってなかったのだけど。でも、資料くれたし、あと面白い事を言ってくれたわ」


 俺が南さんの話していた透明化について伝えると、フレイヤとひよりが顔を見合わせて笑い始める。


「どうしたのよ?」


 俺の問いに、笑いが収まってから、フレイヤが答えてくれる。


「南さんは予言者かしら。先ほどインビジブルのスキル書を作ったのよ」


 フレイヤの発言にタイミングが良すぎて驚く。インビジブルって名前だけで、それが透明化関連のスキルなんだと予測がつく。分かりやすい。


「そうそう。石板情報で、光魔法系統に透明化のスキル書ができることが分かったのさ」


 ひよりが石板を見せてくれるんだけど、正直分からない。


「何が書いてあるかは分からないけど、分かったことにしとこっと。じゃあ、そのスキル書をもらって笹木で使ってもいいの?」


 しかし、ひよりが首を横に振る。


「ちょっと待ってね。これを解析してから、ひよりモードのスキルを作るんだから。それが終わったら使っていいよ」


 どういうことだろう。ここのところ、ドッペルゲンガーを消していないから情報の統合が進んでおらず、すぐには理解できない。


「説明していなかったね。発売直後のダンジョンガイダンスのひよりモードって、映像だけでスキルが入ってなかったでしょ? だから、透明化をつけてみようと思ったのさ。ダンジョンガイダンス本体を隠すことしかできないけどね。そうすれば、ダンジョン内で敵に見つからずにダンジョンガイダンスだけを置いておくことができるってわけ」

「え? なんで、ダンジョンガイダンスだけ置いておくの?」


 俺の質問にホワイトボードを指し示す。何やら色々書いてある。ダンジョンを塔のような構造で書いており、各階層に小さな点が描きこまれている。これが、ダンジョンガイダンスかな。



「実はね。最近、転移の罠が増えているからさ。監視用にダンジョンガイダンスを各階に置いておけないかってガームドさんが言っててね。

 でも、通常、ダンジョン内に施設を作るとモンスターが壊しちゃうから厳しいかなーって思ってたら、このインビジブルのスキル書を見つけてね。これを使えば敵に狙われないダンジョンガイダンスが作れるって寸法。さらに新型ダンジョンガイダンスで空白だったひよりモードに透明化の機能を付けられますってなればお客さんも納得できるんじゃないかなって」


 得意げに胸を張るひより。今日は階下の魔装開発局に行ってきたのかパンツスーツなので、胸元がぱっつんぱっつんだ。


「あ。でも、もちろんジェシーの安全地帯を全階層に作るっていうのもアリなんだけど、途方もないでしょ? ちょっと避けたいよね」


 確かに嫌だな。アリスとジェシーで組めば、何とかなるとは言え、疲れることは疲れる。


「それで、透明になるダンジョンガイダンスを据え付ける感じなのね。でも、それだけじゃ、転移の罠に掛かった人を捕捉するのは厳しいんじゃない? 見える範囲になっちゃうし」


 フレイヤがその話をしている間に、お茶を入れてくれる。せっかくなので、みんなでお茶を飲みながら話を続けることとなった。


「実は遭難時の緊急用の発信機を魔装開発局で作ってたんだって。ただ、小型化で出力が弱いのがネックで売り出せてなかったんだ。その発信機の出力を上げようとすると、どうしても費用が高くなっちゃうから、安く配布することができないって悩んでたらしいよ。そこで、中継器として、各階に透明化したダンジョンガイダンスを置く案があったんだけど、うまくいってなかったのさ」


 

 ガームドさんというか、魔装開発局は色々やってるなぁ。そして、ひよりがさらに情報を共有してくれる。


「ちなみに、その発信機を作ってるのはスマホのメーカーらしいよ。そのまま、通話できるようなダンジョンスマホを作っちゃうのかもね」


 それは楽でいいなぁ。今もダンジョンガイダンスとスマホは連携できているが、ダンジョンガイダンスを持たない探索者が外部と通信できるのはいいことだ。



「ところで、そのインビジブルのスキル書は、いつ使ったらいいの?」

「あと少しで必要なデータはとり終わるから、急いで明日かなぁ」


 よーし、透明化したら、どこでも飛び放題じゃないか?



「そのインビジブルの使い方で、わたくしに考えがあるのだけど」


 そこでフレイヤがホワイトボードに書き出す。


「わたくしたちもアリスになって透明化できるわよね。その状態で、ラビリンス・ドリフトを使う。そして、行った先でアバターを変更して透明化を解除する。そうすれば、わたくしたちもアリスになったことを知られずに転移が使えるわよ」


 確かに。俺はいまアリス担当をやっているから自由にアリスとして転移を使っている。しかし、同時に他のドッペルゲンガーがアリスになってしまうと、偶然居合わせてしまうと複数人がアリスになっていることが分かってしまう。具体的には分からないが、なんか面倒なことになりそうだ。そこで、転移の時だけ透明化した上でアリスになってラビリンス・ドリフトを使う。うん、いいじゃないか、フレイヤさえているな。いや、もともと俺なんだから、俺さえてるな!

 変装だとカメラなんかにも映ってしまうし、透明化なら記録に残らないんじゃないかと期待できる。


「その案いいね!」

「あれ? でも、アリスがいないのに長距離移動しちゃうと、やっぱり変に思われない?」


 ひよりがそんなことを言う。細かいが、そう思われるかも。


「アリスは神出鬼没のウェイトレスなのよ? 一瞬だけ送ってくれたことにすればどうかしら?」


 フレイヤも案を出してくれるが、あまり自信がないのか、ぎゅっと体を抱きしめるように腕を組んでくるので谷間が見える。いま、俺がアリスじゃなかったら目の毒だわ。

 だめだ、視線と思考が逸れた。話を戻してまとめてみる。


「じゃあ、アリスはあまり表舞台に出ないようにして、神出鬼没ってことでいきましょう。そうね。みんなを送り届けるエーバータクシーのアリスってことね」

「なんなのさ、エーバータクシーって」


 ひよりが苦笑する。


「ジョークよジョーク。深く考えないことよ」



 そして、俺は翌日、インビジブルを覚えた。隠密と併用すれば、気配も姿も完全に消せる。いつでも暗殺者になれるんじゃないか? ならないけど。



 ◇笹木小次郎

レベル43

HP:1240/1240

MP:1910/1910

称号:ダンジョンスレイヤー

ユニークスキル: アバター▼

アバタースロット1(フレイヤ・リネア・ヴィンテル)

アバタースロット2(金城メル)

アバタースロット3(ハヤト)

アバタースロット4(ジェシー・ラバック)

アバタースロット5(アリス・ラバック)

スキル:ストーンスキン

レビテート

ドッペルゲンガー Lv.4

エイジファントム

回復強化

防御強化

体術

変装

隠密

危険察知

インビジブル


笹木アリスのお話つづきます!

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― 新着の感想 ―
ドッペルゲンガーのLVが下がってますね。
透明化すれば全員で同じアバターになれるのはアドバンテージデカいなぁ。 全員フレイヤで超火力を出すロマン……
出来る事がどんどん増えてきて面白いです!
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