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世界はまだ、俺が魔女で聖女だと知らない  作者: 月森 朔
第5章 娘になった日

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第10話 親子と遠征

ジェシーとアリスのお仕事です。

 俺は俺1号、笹木小次郎本人だ。最近、アリスのアバターを解放して、ダンジョンを自由に転移する楽しさを覚えてしまった。梅田ダンジョンの救出劇の後、ラビリンス・ドリフトの効果検証としてダンジョン内を飛び回っている。

 ちなみに、アリスの能力はギルド内で情報共有されるそうで、突然変なところから現れても不問らしい。一般にも近く発表があるらしいが、スキルの効果を弱目に発表するとか聞いている。


「アリス。じゃあ、今日は博多ダンジョンにいくぞ」


 ジェシーが話しかけてくる。俺はジェシーの娘のアリスとして、ジェシーと一緒に安全地帯の構築を日程の95%削減にて進めている。ダンジョンに乗り込んで、1日で数か所安全地帯を構築していく。同日に何個も設置できるのだが、ダンジョン間を飛べないというアリバイづくりのため、あえて1日に1箇所だけに絞っている。日本ギルド側で要望が出ているのが、深層を持つダンジョンだけとなっているが、今回のことですべてのダンジョンの深層近くに安全地帯を作ってほしいというお願いが出てきている。

 無理なお願いでもないので、順にこなしているのだ。


 クランベースで出発の準備をしていると南さんが話しかけてくる。


「今日は博多でしたよね。美味しいラーメン屋さんともつ鍋屋さんの情報をスマホに送っておきました」

 そこにメルの恨めしそうな声が聞こえてくる。

「メルも食べたいの…」


 テーブルに突っ伏しているメルだが、さっき朝ごはんを食べたばかりなのに、お腹がすいたらしい。


「ごめんね。1人だけしか運べないから」


 俺がそう言うとメルが泣きまねをする。泣きまねと分かりやすい泣き方だ。


「メルちゃん、最近できたカフェいこ?」


 マナがそういうと泣きまねが止まる。


「帰ったら何か作ってやるから」


 ジェシーがそういうと、「もつ鍋食べたい」とささやいてくる。


「わかった。もつ鍋だな。本場のを食べて勉強してくる」


 ジェシーがそういうと、また、しょんぼりとしてしまう。


「本場…」


 どうやら本場に食べに行きたいらしい。しかし、マナはどうしても一緒に飛べないことがわかってしまったのだ。アリスと一緒に飛べるのは、ドッペルゲンガーだけだった。ドッペルゲンガーが変身したアリスでも、俺本人が一緒に飛べるのは分かった。この結果から、アリスのラビリンス・ドリフトは、自分以外には効果が及ばないことが分かった。俺の分身を1人運べることは、どちらかというと例外なんじゃないだろうか。

 普通、同一人物は2人いないのだ。

 

「あたしは良いから、みんなで行ってきていいですよ」

「マナおねーちゃん…。我慢する」


 メルがぐっと我慢している。俺4号…、食欲が絡むと途端にメルの演技が上手くなる。いや、演技じゃないのか? 


「あ、テイクアウトすればいいんじゃないかしら?」


 フレイヤの言葉にメルががばっと起き上がる。


「テイクアウトできるお店を探しておきますね」


 南さんが笑顔で答えるとメルも笑顔になる。



 そんな一幕もあったが、ジェシーを連れてラビリンス・ドリフトを使う。

 ちなみにアリスのMPは8310ある。なぜMPに注目したかというと、ラビリンス・ドリフトはMPを徐々に消費するタイプのようで、この前、梅田ダンジョンに行ってから測ってみたが、直線距離に応じてMPが消費されるようだ。ダンジョン内はでほとんど消費しない。ただ、深層から戻るときはMPを1しか消費せず。浅いところから深層に行く際には少し消費する。それも、10とかだ。

 それを自分会議で話してみたところ、ひよりが解釈してくれた。

 魔力のエネルギー準位というものがあるらしく、魔力が高い深層から低い深層に飛ぶ際には、周囲の魔力を使っているんじゃないかという仮説を立ててくれた。そして、ダンジョン間は、もちろんダンジョン外で魔力が低い場所を飛び越すので、エネルギーとしてMPを消費している。なるほど、そんな感じに考えると納得がいくと思った。

 そして、梅田ダンジョンの1階層と名古屋ダンジョンの1階層を飛んでみた結果、MPを150消費した。梅田と名古屋を結ぶ直線距離が138キロメートルほどなので、簡単に考えると1キロメートルでMP1くらいを消費すると考えると良いのかもしれない。



◇アリス・ラバック(アバタースロット5)

 レベル400

 HP:6310 /6310

 MP:8310 /8310

 称号:神出鬼没のウェイトレス

 スキル:ラビリンス・ドリフト

     配膳

     掃除

     ストーンスキン

     レビテート

     エイジファントム

     回復強化

     防御強化

     体術

     変装

     隠密

     危険察知 



 つまり、MPが8310あるアリスは、約8300キロメートル先にあるアメリカのサンフランシスコのダンジョンに飛ぶことができると考えられる。

 しかし、2人で飛ぶ場合は、MP消費がほぼ倍になる。しかし、俺はドッペルゲンガーを消すこともできるわけで、現地でドッペルゲンガーを生成することも可能なのだ。つまり、俺にその制約は当てはまらない。

 そこから距離を少し伸ばそうと考えると、MPを補給するような何かが必要かもしれないが、そこまで遠い場所に行く用事はないし、何個か経由すれば地球の裏側にも到達できるのだ。


 カリフォルニアも地球の裏側に近いわけだし、ジェシーの料理をお届けすることも可能だ。


「ハーイ。エーバーイーツです!」

「いきなり、どうした?」


 ジェシーに真顔で聞かれる。


「ジョークよ、ジョーク。ラビリンス・ドリフト使えば、どこにでも出来立ての料理のお届けもできるなーと思って」

「おー。確かに」


 そんな親子の会話をしながら、博多ダンジョンに欲しいと言われた18階層と27階層、そして、前線の手前の40階層に安全地帯を作ることになった。18階層に是非作ってほしいと言われたのが、温泉があるためだ。

 そのため、先に40階層に向かうことにした。温泉は安全地帯の構築に少し時間をかけたいという話になった。


 そして、ジェシーと一緒に降り立つ。ちなみに、手をつなぐだけで同行できるため、抱き着いたりなどは不要だ。ハグはいいが、抱きつかれるのはぞわっとしてしまう。できれば、女の子がいい。


「ここが、40階層か。殺風景だな」


 もらった資料によると、砂利に覆われた平地で、砂地に潜むゴルドスコーピオンという金色の2メートルくらいのさそり型モンスターが居るらしい。ゴルドというのは体表が金色を表すが、金が取れるわけではなく、致死性の高い毒とハサミの攻撃により難易度高めのモンスターだ。


 遠くでゴルドスコーピオンを狩っているパーティがいるのがわかる。


「遠くで狩ってるな」


 アリスもジェシーも広範囲の感知能力がある。アリスについては、超がつくほどの範囲となるが。


「狩ってるわね。場所はこの辺がいいそうだけど」


 建てる場所については博多ギルド側で指定があった。モンスターが湧きづらく、周辺から見やすい場所に作ってほしいとのことだ。少し移動することとなると、ゴルドスコーピオンが襲い掛かってくる。ジェシーは、そのタイミングが見えているので、ハサミを手で払い、追撃できた尻尾を鷲掴みにする。人間など貫通しそうな長い針があり、先端からは毒液が垂れてくる。


「活きが良いな」


 そんなコメントの後、尻尾、足がすべて外されていく。


「カニみたいなもんだ」


 ゴルドスコーピオンが丸裸になって消滅していく。


「でも、あまり美味しそうじゃないよ?」


 俺のコメントに、「そうだな」と返し、安全地帯の予定地までたどり着いた。


「ここは、荒野の酒場のイメージが合いそうだな。よし」


 ジェシーがテリトリーを展開した後、そこには西部劇に出てきそうな酒場風の建物が現れる。酒場の扉も、小さな観音開きの扉だ。雰囲気あるなぁ。


「雰囲気によく似合うよ、パパ」

「だろう?」


 俺が褒めるとジェシーが得意げだ。流石に建ててすぐに移動というのも勿体ないため、中に入ってみる。カウンターの後ろには酒を置く棚もある。ホールには丸テーブルと椅子が置いてある。


「ちょっと置いていってやるか」


 そう言って、ジェシーはマジックバッグに詰め込んでいたビンの酒をいくつか置き始める。俺は俺で皿などを出してみる。このあたりの演出をすると楽しいんじゃないかというだけの理由だけでエバーヴェイル側で買い集めたものになる。


 その時、ダンジョン酒場に近づいてくる集団がいた。


「よし、例のあれをやるか」


 ジェシーが俺に声をかける。ちょっとやりたい遊びがあったので、親子でやろうということになった。


 恐る恐る入ってきた探索者に向けて、俺が1オクターブ高い声で、


「いらっしゃいませー。ようこそ、お好きなお席をご利用くださーい」


 怯んだ探索者たちはキョロキョロと店の中を見回す。


「え、え、え??」

「おい、やばくね? さっきまでこんな店なかったぞ」

「かわいい…」

「おいおいおい、おかしいって、モンスターの罠なんじゃないか?」


 各々混乱している様子だが、強引に席に案内する。そして、メニュー表という小道具を出す。西部劇風にはできておらず、ラミネート加工されたメニューを差し出す。


「いかがですか? お食事はステーキがおすすめでーす。ビールも各種ございますよー」


 二コリというと顔を赤くする探索者。


「おれ、罠でもいいや。こんな可愛い子に食われるなら食われたい」

「おい、考えろって、ちゃんと…、あ、ビールください」

「バカ、ちょっとは考えろよ。ノンアルありますか?」

「お前ら分かってるだろう。噂のジェシーさんだよ。めぐり合えて嬉しい」


 1人がそういうと、釣られて笑う2人。


「え? どういうことだ? え?」


 食われてもいいと言っていた男性だけが、キョロキョロと仲間の顔を見ている。


「1人だけドッキリ成功だね」


 俺がそういうと、1人を残してみんな笑う。


「え、え? ジェシーさんって誰。おい、おい、俺も仲間にいれてくれよー」


 そんなわけで、何回目かになるのだが、ジェシー酒場を2時間制で開店した。


26日中にあげようとして忘れていました(汗)

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― 新着の感想 ―
>梅田と名古屋を結ぶ直線距離が138キロメートルほどなので、簡単に考えると1キロメートルでMP1くらいを消費すると考えると良いのかもしれない。 >MPが8310あるアリスは、約8300キロメートル先に…
よし、エーバーイーツでジェシーの料理を頼もう! ……エーバーイーツがない(´・ω・`)
わはは、博多(つか福岡)は楽しいと言っちゃ飲み、悲しいと言っちゃ飲み、勝ったら祝勝会で飲み、負けても反省会で飲むからな!www そりゃー酒場は大好きだよね!(福岡の民感)
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