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世界はまだ、俺が魔女で聖女だと知らない  作者: 月森 朔
第1章 魔女になった日
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第1話 俺とフレイヤ

はじめまして、月森 朔です。こちらは、なろう小説の初作品となります。

自分の好きな要素を詰め込んだ作品となりますので、温かい目で見ていただけると助かります。

その日、起きると目の前に魅力的なおっぱいを見つけた。俺は独身男性で無職でフリーだから、飲んだ勢いで連れ込んだ女性でも居たのならば納得できる。酒でやらかしたことはないので正直納得はできないが、今の状況よりは納得できる。なぜやら、そのおっぱいは、俺についていたのだから。


「な、な、なんだ、これ…、うわ柔らか」


 思わず触った勢いで、しっかりと揉んでみたが、揉まれている感覚もあり、しっとりとした感触も素晴らしいものだった。そんなわけで、さらに夢ではないことがはっきりとしてくる。冷や汗なのか脂汗なのか分からないが、滝のような汗が吹き出してくる。そのおかげで、タンクトップが汗だくになり、肌にぴったりとくっつき体のラインがよく見えてくる。巨乳ずきの自分としては眼福ものなのだが、今はそれどころじゃない。


「どういう事だ」


 今気づいたが、つぶやいた声も高すぎない好みの甘い女性の声だ。俺はふと目についたベッド脇に置いていたスマホのカメラを起動する。カメラの起動時間にイライラしながらやっと自分を映すことができると、そこに居たのは長い赤毛で目がばっちりとして鼻筋が通った、少し気の強そうな北欧系の美女だった。歳は二十歳くらい? SNSなんかで出てくれば、まっさきにフォローしてしまうであろう美女。なんだか見覚えがあるような無いような…。

 そこでようやく周囲を見回す。今いるのは、俺のワンルームマンションの部屋だ。少し期待したが「どっきり!」というプラカードを持った人物はいない。ベッドの下をのぞき込んで見たが、人が入る隙間はそもそも無い。そして気づく。長い髪が邪魔だし、うつ伏せになるとおっぱいがつぶれて苦しい。そして、下半身に押さえつけられているはずの息子の気配がない。

 そこまでしてから、俺は一度ベッドに横たわると、深呼吸をした。


「落ち着け、考えろ。考えるのをやめたらダメだ。そう、考え続けるんだ」


 主人公ならば、そういって困難にも立ち向かうはずだ。俺は、無職になったときも、エッチな妄想と深呼吸で乗り越えた。そして、どうしてこうなったのかを考えようと、もう一度胸をもんでみた。


「仰向けでこの張りはやばいな」


 俺は手に集中しながらも改めて自分のことを思い出そうとした。



 俺は、笹木小次郎 28歳 独身男性。佐々木ではなく、笹木だ。親父が剣士にあこがれて俺に過ぎた名前をつけたが、剣豪になることはなかった。小さい頃はからかわれたが、社会人になってからは話すネタとして使うこともあり、嫌いではない。そんな俺も、3か月前に勤めていた会社が倒産してからは、立派な無職となった。そこからは、親に心配かけるのも何なので新たな道を模索した。一年くらいは仕事をしなくても生活できる貯蓄があったせいか、興味があったMu-tubeのインフルエンサーになって生きるのを目指してみた。一攫千金といえば30年前から出現したダンジョンだと言われるだろうが、俺の興味はダンジョンには向かわなかった。だって、怖いし。

 機材をそろえるのに3か月分の貯蓄を使い切り、カップラーメンの早食いはむせて体に悪いとか、新しいスナックを食べる時に何を言えばいいのか思いつかないとか、いろいろ気づくことがあった。そして、1か月が過ぎたが、まだ収益にはつながっておらず、昨日もそんな中で新たな挑戦を行っていた。

 ここまで思い出して昨日の事で汗が噴き出してきた。俺はスマホで検索する。


「高和港、海、事故…、うずまき」


 検索をしたが、該当するニュースは無かった。


「よかった。あせった…」


 なぜこんなに焦っているかというと、近所にある大き目の漁港である高和港での動画撮影の際、環境破壊をしてしまったからだ。



 昨日、俺は港の底に埋もれている宝をゲットする動画を撮影しにいった。装備は、強力な磁石に長い縄を括り付けたものだ。釣り人からは見えない位置で、めったに人が来ないところを選び、俺は海に磁石を放り込んだ。そこからは投げ込んでは紐を手繰り寄せるといった地味な作業を繰り返す。その結果、釘やら鍋、なんかの機械の部品みたいなものがいろいろ取れた。撮れ高になりそうな貴金属やアタッシェケース、金庫といったものは見つからない。「次はいけるか?」とか「ここは小さめな漁港なので個人の落とし物なんかは少ないのかもしれないですね」といったコメントをはさみながら、淡々と作業をしていく。前職がフィールドワークを行う会社だったのもあって、体力には自信があった。

 なかなか出ないなと、テトラポット近くの日陰になっているところに狙いをつける。すると、ある時、海底に重みを感じた。今まで以上に固く強いロープの張り方に、俺は声のトーンをあげていく。


「なんか来ました。来ましたよ。これは、なかなか強い引きです。金庫とか、そういう重いものかもしれません」


 俺は渾身の力をこめる。びくともしないため、紐を堤防にひっかけながら足がかりを探して、全体重をかける。9月も初頭で、30度そこそこの陽気の中、汗が噴き出す。そこまでやって、テトラポットとかに引っかかったのでは?と焦りも生まれる。そんな心配をしていると唐突にポンッという感触とともに手ごたえが軽くなる。磁石に何かくっついている感触もあり、紐を手繰り寄せると、そこには金属の塊のようなものがあった。


「なんでしょう? これは、蓋?」


 円形で例えるならば水筒とかタンブラーの蓋のような形状で、素材はよくわからないが金属のようで、黒光りしている。

 俺はそれをひとしきり映していると、海面にボコボコと泡が多数浮いてきた。そのうち、小さな渦ができ、海面をふらふらと渦巻きが海水を吸い込んでいるように見える。俺は思わず手元にある蓋のようなものを凝視する。


「まさか、なんかの設備を壊した?」


 海底に何か地下室とかケーブルとかあるのだろうか。そういう話は知らないが、海底にある蓋を外して、そこに水が流れ込んでいると考えるとつじつまが合う。テトラポットの陰になっているが、1メートルくらいはあるうずまきが、ズズズズと水を吸い込む音を発している。海底まで5メートルくらいはあるため、海底が見えないが明らかに何かの空間に水が吸い込まれているのだろう。

 俺はその足で港の管理事務所に駆け込んで、うずまきの動画を見せた。50代くらいの職員さんは、潮流によって渦ができているだけだろうと結論付け、危ないからテトラポット付近で撮影はやめるようにという軽いお叱りを受けた。地下施設なんてあるはずもないと、ひどく笑われたのを覚えている。

 職員さんの言葉は安心材料ではあるが、手元に持って帰った蓋のような金属片がなんとも気になる。仕方なく、俺は買い置きのビールをしこたま飲んで寝た。寝苦しい夜だった気がするが、その結果がコレだ。


「なんのつながりもわからん」


 呪い? 変身? 性転換? そこまで考えて1つ思い至る。


「ステータス」


 俺は虚空に向かって一言を発する。この世には30年前からダンジョンが出現し、その結果、人類は自らの状態をステータスという画面を通じて確認できるようになった。俺は高校の実習でダンジョンに潜ったことしかないが、そこで倒したスライムによるレベルアップの2が輝いているはずだった。ステータス画面は開いた。しかし、ステータス画面の色が違う。いつもの画面は薄い青だったのに、これは薄いピンク色だ。その違いに驚きつつも、中身を確認してみる。


「レベル500?」


 レベルの枠に2となるはずが、500という数字が見えている。500というのは人類のレベルの最大値を超えていないか? そして、もっと大きな違いがあった。


「フレイヤ・リネア・ヴィンテル」


 ステータス画面の名前が笹木小次郎ではなかったが、この名前には覚えがあった。


「俺の作ったキャラじゃん…」


 フレイヤは、俺が学生時代に創作した小説に登場する人物だ。世界に現れたダンジョンを生み出した世界の住人で、主人公をいろいろ手助けをしてくれる美女。そして、主人公ともいい関係になる…まぁ、ここはいいだろう。薄い本も厚くなるというものだ。

 ダンジョンが生まれた理由については所説あるが、俺はダンジョンが異世界とかから送り込まれた説を支持している。まぁ、その設定で小説を書いていたわけだが…、根拠なんかは無い。


「え、これ、じゃあ、ダンジョンの影響? スキルなのか」


 ステータスの画面には、アバタースロット1というように書かれていた。

 アバター…自分のキャラに変身するスキルと思われる。ダンジョンが生まれてから30年、スキルによって鋼の肉体を得たような人や翼を得た人もおり、変身なども十分に考えられる範疇だ。


「昨日のうずまきって、もしかして、ダンジョンだったとか?」


 そこでようやく思い出す。確か、ステータスの画面には戦闘履歴もあったはずだ。

『ダンジョンボス ロックダイン討伐( 窒息死)』

 え? 窒息死?

 まさか、海底のダンジョンで…水が入り込んで…溺れた?

 ダンジョンの小説を書いた時に調べた記憶を辿る。ダンジョンは階層に分かれており、そこから上階にはモンスターは移動できない。例外はスタンピードで、ダンジョンが生まれてから時間が立つか、討伐が進まず魔素といわれるエネルギーが溜まってくると発生し、ダンジョンの外までモンスターが溢れ出す。

 つまり、ダンジョンの中で溺れ死んだ原因が俺で…、あの蓋みたいなものはダンジョンの蓋? え、そんなもの聞いたことないんだが。

 なぞは深まるが、そのダンジョンボスの討伐の後だろうか、獲得履歴の欄には、ユニークスキル「アバター」を得たと書いてある。そして、俺は寝ている間にアバターのスキルを起動して、今、こんななりになっているというわけか…。そんな偶然あり得るの? そんな疑問は浮かんでくる。

 とりあえず、アバターがスキルならば解除も可能だろう。


「アバター解除」


 その言葉と共に、俺はあっさりと元の姿に戻ったようだ。洗面台まで行くと無精ひげを伸ばした28歳の俺が鏡に映っていた。先ほどまですごい色気を放っていたタンクトップが、ただ汗に濡れた布切れに変わったように感じる。もったいなかったという思いが持ち上がる。風呂に入って、いろいろ確認することがあったはずだ。


「アバター起動」


 しかし、姿は変わらない。ステータスを表示すると、アバターのスキルには、

『アバター(フレイヤ・リネア・ヴィンテル):炎の魔女、ダンジョン人、レベル500』

 と書いてある。炎の魔女? 魔法が使える? 確認が必要だ。名前をしっかり言わないといけないのかもしれない。

 俺は、再び言葉を発する。


「アバター フレイヤ・リネア・ヴィンテル起動」


 すると、洗面台の鏡には、再び、北欧系の美女が現れた。俺はスキルの確認を行うべく、全裸になって風呂場へと踏み込んだ。この風呂に女性が入り込んだのは初めてだ。まぁ、俺なんだが…。


読んでくださってありがとうございます。

現代ダンジョンが好きなのと、変身が好きという点で今回のお話を思いつきました。少し書き溜めたものができたので、モチベーションアップのため公開を開始します。

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