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光の彼方の音  作者: magnolia
2章 -邂逅-
28/30

28 二度目の発現

お待たせしました!

アルヴィンの視点でお送りします。


夜の空気が朝日とともに拭われようとする頃、アルヴィンの瞼がふっ、と開いた。

自分のかいなにある少女を見る。


目を覚ました様子はない。

が、昨夜のように魘されていることもなく、それに胸を撫で下ろす。


固くなった自分の身体を動かそうとして、服を掴んでいた彼女の手が離れていることに気がついた。

ゆっくりと、毛布ごと横たえてやる。



(よく眠っているが……しばらく様子を見たほうがよさそうだ。)



身体を伸ばせば、辺り一面、視界がきかなくなるほどにもやが覆っているのを知る。


湿り気を帯びた空気が、この場所をより一層静謐せいひつなものにしていた。


刹那、何かが脳裏を掠めたが、それは捉える前に思考の中で霧散した。



訝しく思ったものの、喉の渇きが耐えがたかったので湯冷ましを飲もうと、トウコの側を離れたそのときだった。




ゆらり、と空気がたわむ。


干渉してくるのは、『音』。



(――誰だ?)


周囲に人の気配は感じられない。

指向性のわからない力に途惑いながらも、剣に手を添え身構える。




その異変は、すぐそばにあった。




淡き燐光を放ちながら佇む姿。

寝かせていたはずのトウコが、上体を起こしている。

だがそれは自力で起きているようには見えず、何かに上から吊り上げられているかのように見えた。


異様な光景に息を呑む。


そして、閉じられていたトウコの瞼がゆっくりと開く。

黄金きんの光をこぼす瞳は、何も捉えてはおらず、虚空を仰いだままだ。


「―――トウ、コ」


喉が張り付いてしまったかのように、掠れた声が漏れる。


自失しそうになった時、言葉は降ってきた。



(遠話か!?)



驚きとともに途惑う。

人の気配は今も感じられない。



くわえて今の自分の力では、遠話は行えない。



(――トウコを介して行っているのか…?)



警戒した態勢のまま、なす術もなく、それに聞き入る。


性別も、年齢も定かではない。幾多の者が同じ台詞を同時に吐いているように聞こえた。



『――招かれざる者。』


『ここは侵さざるべき場所。それがりつ。長きにわたり、それがことわり。』


『理に干渉する者は、すべからく排除の対象。』




『―――だが理を破りし者。そは待ち望みし者。』


『同にして異。大いなる力。』


『来たり。来たり。待ちあぐむ者よ。』



トウコの右手がふ、と前方を指し示す。

音が反響する。まるで洞窟の中に滴る水滴のように、静かに、断続的に。

それと合図に、引き潮のように靄は去り、先が見えた。


獣道のようなものが、露わになった木立を縫って奥に続いている。



『いま、扉は開かれた。』


『抑えられし力持つ者。彼の者と共に来よ。』



「まてっ―――!」


一方的なやり取りは、初めと同じく唐突に止んだ。


アルヴィンが、自分が柄を握った手が強張っていることを自覚したのは、いくらか時を置いてからだった。ようよう、意識を向けて全身から力を抜く。


そして、トウコを見るが。


彼女は今あったことが夢幻ゆめまぼろしだったかのように、横たわり、静かな寝顔を晒していた。



短くてすみません;

区切りがいいので、ここで一話としましたっ!!

次話もなるべく早くUPしますね。


読んでいただいて、ありがとうございます。

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